お金の寺子屋

FP3級実技(個人)解説-2020年1月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、2020年7月に満60歳となり定年を迎える。Aさんは、X社の継続雇用制度を利用し、65歳になるまでの間、厚生年金保険の被保険者として同社に勤務する予定である。
Aさんは、公的年金等の社会保険の取扱いについて理解を深めたいと思っている。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<X社の継続雇用制度の雇用条件>
1年契約の嘱託雇用、1日8時間(週40時間)勤務
厚生年金保険、全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入
賃金月額は60歳到達時の60%(月額24万円)で賞与はなし

<Aさん夫妻に関する資料>
[Aさん(1960年7月17日生まれ)]
公的年金加入歴:下図のとおり(65歳でX社を退職した場合の見込みを含む) 20歳から大学生であった期間(33月)は国民年金に任意加 入していない。
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中

[妻Bさん(1967年9月9日生まれ・専業主婦)]
公的年金加入歴:18歳からAさんと結婚するまでの5年間(60月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。

妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
Mさんは、Aさんが65歳になるまでに受給することができる公的年金制度からの老齢給付等について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

ⅰ) 「1960年7月生まれのAさんは、原則として、( ① )歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができますが、Aさんが( ① )歳以後も引き続き厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務し、総報酬月額相当額と基本月額との合計額が( ② )万円(2019年度の支給停止調整開始額)を超えるときは、当該年金額の一部または全部が支給停止となります」
ⅱ) 「60歳以後の各月(支給対象月)に支払われる賃金額が60歳到達時の賃金月額の( ③ )%相当額を下回る場合、Aさんは、原則として、雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を受給することができます。特別支給の老齢厚生年金は、在職老齢年金の仕組みによる支給調整に加えて、高年齢雇用継続基本給付金との間でも調整が行われます」
1. ①64 ②47 ③61
2. ①62 ②47 ③75
3. ①64 ②28 ③75
正解:
男性は、1961年4月2日以降に生まれた場合、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができません。
この事から、1959年4月2日~1961年4月1日に生まれた場合、64歳から報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができると考えてください。
65歳未満の人が給料と老齢厚生年金を同時に受け取る場合、総報酬月額相当額と基本月額の合計が28万円を超えると、在職老齢年金の仕組みにより、老齢厚生年金がカットされます。
高年齢雇用継続基本給付金の支給要件は、60歳到達時の賃金に比べて75%未満の賃金で働いていること等とされています。
【問2】
Mさんは、Aさんが65歳以後に受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の額は、満額の780,100円(2019 年度価額)となります」
2. 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額には、妻Bさんが65歳に なるまでの間、配偶者の加給年金額が加算されます」
3. 「Aさんが70歳0カ月で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、当該年金額の 増額率は30.0%です」
正解:
1. 国民年金保険料の未納期間がある場合、老齢基礎年金を満額受け取ることはできません。
2. 厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人が、老齢厚生年金を受け取っている場合、65歳未満の配偶者がいて、当該配偶者の厚生年金保険の被保険者期間が20年未満であるなどの要件を満たした場合、加給年金が支給されます。
3. 老齢年金の繰り下げを行った場合、1ヵ月あたり0.7%増額されますから、5年間繰り下げた場合の増額率は42%です。
【問3】
Mさんは、X社の継続雇用制度利用後の社会保険に関する各種取扱いについて説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんが継続雇用制度の利用後、65歳でX社を退職し、厚生年金保険の被保険者でなくなった場合、妻Bさんは、60歳になるまでの間、国民年金の保険料を納付する必要があります」
2. 「Aさんが60歳以後も全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者となる場合、引き続き、妻BさんをAさんが加入する健康保険の被扶養者とすることができます」
3. 「Aさんが雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を受給する場合、当該給付金を最長で2年間受給することができます」
正解:
1. 正しい記述です。
2. 正しい記述です。
3. 高年齢雇用継続基本給付金は、60歳に達した月から65歳に達する月まで支給されます。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
会社員のAさん(40歳)は、X社株式(東京証券取引所市場第一部上場)に投資したいと考えているが、株式投資をするに際して、債券投資との違いも理解しておきたいと考え、国内の大手企業が発行するY社債(特定公社債)も併せて検討することにした。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<X社に関する資料>
総資産 1兆8,000億円
自己資本(純資産) 4,800億円
当期純利益 320億円
年間配当金総額 200億円
発行済株式数 4億株
株価 1,500円
決算期 3月31日
決算期:2020年3月31日(火)(配当の権利が確定する決算期末)
<Y社債に関する資料>
発行会社:国内の大手企業
購入価格:104.5円(額面100円当たり)
表面利率:2.0%
利払日:年1回
残存期間:4年
償還価格:100円
格付:A
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
Mさんは、X社株式の投資指標および投資の際の留意点について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「株価の相対的な割高・割安を判断する指標として、PERが用いられます。<X社に関する資料>から算出されるX社のPERは、1.25倍です」
2. 「配当性向は株主に対する利益還元の比率を示す指標です。<X社に関する資料>から算出されるX社の配当性向は、62.5%です」
3. 「X社株式の期末配当を受け取るためには、権利確定日である2020年3月31日(火)の4営業日前の2020年3月25日(水)までにX社株式を購入しておく必要があります」
正解:
1. PER=株価÷一株あたり純利益= 1,500円÷(320億円÷4億)=18.75倍です。
2. 配当性向=配当金相当額÷当期純利益=200億円÷320億円=0.625=62.5%です。
3. 株式の受渡しは、約定日から起算して3営業日後ですから、2020年3月31日(火)の権利確定日に株式を保有する為には、2020年3月27日(金)までに株式を購入する必要があります。
【問5】
Mさんは、Y社債に投資する場合の留意点等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「一般に、BBB(トリプルB)格相当以上の格付が付されていれば、投資適格債とされます」
2. 「Y社債の利子は、申告分離課税の対象となり、利子の支払時において所得税および復興特別所得税と住民税の合計で10.21%相当額が源泉徴収等されます」
3. 「毎年受け取る利子は、購入価格に表面利率を乗じることで求められます。表面利 率は、発行時の金利水準や発行会社の信用度などに応じて決まります」
正解:
1. 正しい記述です。
2. 申告分離課税される利子所得に係る税率は、所得税と住民税と復興特別所得税を合わせて、20.315%です。
3. 毎年受け取る利子は、額面金額に表面利率をかけて求めることができます。
【問6】
Y社債を<設例>の条件で購入した場合の最終利回り(年率・単利)は、次のうちどれか。なお、計算にあたっては税金や手数料等を考慮せず、答は%表示における小数点以下第3位を四捨五入している。
1. 0.84%
2. 0.88%
3. 1.91%
正解:
最終利回り(%)={2.0+(100-104.5)÷4}÷104.5×100=0.8373…%です。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんの4人暮らしである。Aさんは、2019年中に養老保険の満期保険金を受け取っている。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(60歳)]
会社員

[妻Bさん(52歳)]
2019年中に、パートタイマーとして給与収入80万円を得ている。

[長女Cさん(20歳)]
大学生。2019年中の収入はない。

[母Dさん(85歳)]
2019年中の収入は、公的年金の老齢給付のみであり、その収入金額は60万円である。

<Aさんの2019年分の収入等に関する資料>
[給与所得の金額]
780万円

[養老保険(平準払)の満期保険金]
保険の種類:養老保険(特約付加なし)
契約年月:1989年10月
保険期間・保険料払込満了年齢:60歳
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
満期保険金受取人:Aさん
満期保険金額:500万円
正味払込済保険料:400万円

妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2019年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
Aさんの2019年分の所得税における総所得金額は、次のうちどれか。
1. 805万円
2. 830万円
3. 880万円
正解:
給与所得の金額780万円は、全額総所得金額に算入されます。
一時所得は、500万円-400万円-50万円=50万円で、このうち2分の1の25万円が総所得金額に算入されます。
よって、総所得金額=780万円+25万円=805万円となります。
【問8】
Aさんの2019年分の所得税における所得控除に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「Aさんの合計所得金額は1,000万円以下となりますが、妻Bさんの合計所得金額が38万円を超えますので、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができません」(注)制度改正あり (注)制度改正あり
2. 「Aさんは長女Cさんに係る扶養控除の適用を受けることができます。長女Cさんに係る扶養控除の控除額は38万円です」
3. 「Aさんは母Dさんに係る扶養控除の適用を受けることができます。母Dさんに係る扶養控除の控除額は58万円です」
正解:
1. 給与所得控除額は最低65万円(制度改正後の現在は55万円)が保証されていますから、妻Bさんの合計所得金額は38万円(同48万円)を超えないため、配偶者控除の適用を受けることができます。
2. 長女Cさんは、合計所得金額が48万円以下である等、扶養控除の対象となる要件を満たします。
19歳以上23歳未満の扶養親族は特定扶養親族として一人当たり63万円の扶養控除を受けることができます。
3. 65歳以上の人に対する公的年金等控除額は、最低120万円(制度改正後の現在は110万円)母Dさんは、合計所得金額が48万円以下である等、扶養控除の対象となる要件を満たします。
70歳以上の扶養親族は、老人扶養親族として、同居している場合、一人当たり58万円の扶養控除を受けることができます。
【問9】
Aさんの2019年分の所得税の確定申告に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「給与所得者であっても、総所得金額に算入される一時所得の金額が10万円を超える場合は、所得税の確定申告をしなければなりません」
2. 「所得税の確定申告書は、原則として、2020年2月16日から3月31日までの間にAさんの住所地を所轄する税務署長に提出してください」
3. 「確定申告書を税務署に持参または送付して提出する方法のほかに、e-Taxを利用する方法があります」
正解:
1. 給与所得者一時所得がある場合、総所得金額に算入される一時所得の額が20万円を超えると、確定申告をしなくてはいけません。
2. 所得税の確定申告期限は翌年の2月16日から3月15日までです。
3. 正しい記述です。

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