お金の寺子屋

FP3級実技(個人)解説-2020年1月・後半

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
会社員のAさん(58歳)の母親Bさん(82歳)は、15年前に夫(Aさんの父親)の相続により取得したM市内の自宅(甲土地400㎡、建物(木造2階建て)160㎡)において1人で生活をしている。自宅は7年前にリフォームをしており、キッチン・バス等の水回りの設備は比較的新しい。
先日、Aさんは、母親Bさんから「大きな家で生活するのは大変なので、自宅を売却して、元気なうちに有料老人ホームに入居したい。ただ、夫方の祖父の代から所有する甲土地を売却することに後ろめたさを感じる」と相談を受けた。
Aさんが知人の不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地は最寄駅に近く、戸建住宅・分譲マンション等の需要は高い。数年先に売却しても、価格が大幅に下がることはないだろう。当面は売却せず、定期借家契約で賃貸することを検討してみてはどうか」とアドバイスを受けた。

<甲土地の概要>

指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
甲土地に耐火建築物を建築する場合の①建蔽率の上限となる建築面積と②容積率の上限となる延べ面積の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. ①240㎡ ②576㎡
2. ①280㎡ ②960㎡
3. ①400㎡ ②1,200㎡
正解:
準防火地域に耐火建築物を建てる場合、建蔽率の上限が10%緩和されますから、建蔽率の上限は70%になります。
よって建蔽率の上限となる建築面積=400㎡×70%=280㎡となります
前面道路の幅員が12m未満であるため、容積率の上限は、前面道路の幅員によって定まる容積率の上限、もしくは、指定容積率(300%)のどちらか小さい方になります。
前面道路の幅員によって定まる容積率の上限は、6×4/10=240%です。
よって、延べ床面積の上限は、400㎡×240%=960㎡となります。
【問11】
定期借家契約に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「定期借家契約は、契約の更新がなく、期間満了により賃貸借契約が終了し、確実に建物の明渡しを受けることができます。なお、期間満了後に、当事者間で再度定期借家契約を締結することはさしつかえありません」
2. 「定期借家契約では2年未満の契約期間の設定はできませんが、最長期間の制限はありません。自宅の売却予定時期に応じて、契約期間を設定することができます」
3. 「定期借家契約を締結する際は、公正証書により行わなければなりません」
正解:
1. 正しい記述です。
2. 定期借家契約の存続期間は、自由に定めることができます。
3. 定期借家契約は公正証書などの書面で行う必要がありますが必ずしも公正証書によらなくてはいけない訳ではありません。
【問12】
現時点(2020年1月26日)において母親Bさんが自宅(甲土地および建物)を売却した場合の課税関係に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 「所定の要件を満たせば、その所有期間の長短を問わず、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例の適用を受けることができます」
2. 「取得費が不明な場合には、概算取得費として収入金額の5%相当額を取得費とすることができます」
3. 「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合、課税長期譲渡所得金額の6,000万円以下の部分については、所得税および復興特別所得税15.315%、住民税5%の軽減税率が適用されます」
正解:
1. 正しい記述です。
2. 正しい記述です。
3. 居住用不動産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合、長期譲渡所得の6,000万円以下の部分については、所得税と復興特別所得税が合わせて10.21%と住民税4%が課されます。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
Aさん(70歳)は、妻Bさん(68歳)および長女Cさん(42歳)とX市内の自宅で同居している。長女Cさんは、X市内の建設会社に勤務している。二女Dさん(38歳)は、会社員の夫と子の3人で他県に所在する戸建て住宅(持家)に住んでおり、将来 的にX市に戻る予定はない。
Aさんは、自宅および自宅に隣接する賃貸アパート等の財産を同居する長女Cさんに承継してもらいたいと考えているが、自身の相続が起こった際に遺産分割で2人の娘が争うことがないようにしたいと思っている。

<Aさんの親族関係図>
<Aさんの親族関係図>

<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
[現預金]
5,000万円

[自宅]
①敷地(330㎡);6,000万円(注)
②建物:1,500万円

[賃貸アパート(現在、全室賃貸中)]
①敷地(300㎡):6,000万円(注)
②建物(6室):4,000万円

(注) 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問13】
仮に、Aさんの相続が現時点(2020年1月26日)で開始し、Aさんの相続に係る課税遺産総額(課税価格の合計額-遺産に係る基礎控除額)が1億3,000万円であった場合の相続税の総額は、次のうちどれか。

<資料>相続税の速算表(一部抜粋)
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
1. 900万円
2. 2,150万円
3. 3,500万円
正解:

1億3,000万円を法定相続分で按分すると、各人の法定相続分に応ずる取得金額は、
妻Bさん:6,500万円
長女Cさん:3,250万円
二女Dさん:3,250万円
です。

よって、各人の法定相続分に応ずる取得金額に対応する相続税額は、
妻Bさん:6,500万円×30%-700万円=1,250万円
長女Cさん:3,250万円×20%-200万円=450万円
二女Dさん:3,250万円×20%-200万円=450万円
ですから、相続税の総額=1,250万円+450万円+450万円=2,150万円となります。

【問14】
遺言に関する以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

ⅰ) 「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言の作成をお勧めします。公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成します。推定相続人である妻Bさんや長女Cさんを証人にすること( ① )」
ⅱ) 「自筆証書遺言は、遺言者が、その遺言の全文、日付および氏名を自書し、これに押印して作成するものです。自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコン等で作成すること( ② )」
ⅲ) 「公正証書遺言は、原本が( ③ )に保管されるため、紛失のおそれがなく、遺言書の形式不備等の心配のない、安全な遺言の方式といえます。なお、自筆証書遺言は、自宅で保管されることが多く、遺言書が発見されないことや破棄されるおそれがある等の心配がありましたが、2020年7月から法務局における自筆証書遺言の保管制度がスタートする予定です」
1. ①ができます  ②はできません 
③家庭裁判所
2. ①はできません ②はできません 
③公証役場
3. ①はできません ②ができます  
③公証役場
正解:
推定相続人は、遺言の証人になることはできません。
自筆証書遺言に添付する財産目録は、自署以外の方法で作成することができます。
公正証書遺言は原本が公証役場に保管されます。
【問15】
Aさんに対するアドバイスとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「遺言により、相続財産の大半を妻Bさんおよび長女Cさんが相続した場合、二女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分算定の基礎となる財産を3億円とした場合、二女Dさんの遺留分の金額は7,500万円となります」
2. 「契約者(=保険料負担者)および被保険者をAさん、死亡保険金受取人を長女Cさんとする一時払終身保険に加入することにより、二女Dさんに対する代償交付金を準備することができます」
3. 「自宅の敷地と賃貸アパートの敷地について、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けようとする場合、適用対象面積の調整はせず、それぞれの宅地等の適用対象の限度面積まで適用を受けることができます」
正解:
1. 二女Dさんの法定相続分は1/4ですから、具体的遺留分は、遺留文の算定基礎財産の1/8です。
よって、二女Dさんの遺留分の金額は、 3億円×1/8=3,750万円です。
2. 正しい記述です。
3. 小規模宅地等の特例の適用を受ける場合、特定居住用宅地等と特定事業用宅地等は調整計算をする事なく、それぞれの宅地等の適用対象の限度面積まで適用を受ける事ができますが、 特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等の両方について適用を受けようとする場合、調整計算をする必要があります。

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