お金の寺子屋

FP2級実技(生保)解説-2020年1月・問10~15

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
個人で飲食店を営むAさんは、妻Bさん、長男Cさんおよび母Dさんとの4人家族である。Aさんは、2019年中に一時払変額個人年金保険(10年確定年金)および一時払終身保険の解約返戻金を受け取っている。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(44歳)]
個人事業主(青色申告者)

[妻Bさん(42歳)]
専業主婦。2019年中の収入はない。

[長男Cさん(16歳)]
高校生。2019年中の収入はない。

[母Dさん(67歳)]
2019年中の収入は、老齢基礎年金のみであり、その収入金額は70万円である。

<Aさんの2019年分の収入等に関する資料>
[事業所得の金額]
600万円(青色申告特別控除後)

[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2011年5月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:700万円
一時払保険料:500万円

[一時払終身保険の解約返戻金]
契約年月:2015年4月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:490万円
一時払保険料:500万円

妻Bさん、長男Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2019年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
所得税における青色申告制度に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。(注)制度改正あり

「事業所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出することにより、事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除として最高( ① )万円を控除することができます。なお、2020年分以後、( ① )万円を控除するためには、その年分の事業に係る帳簿等について電子帳簿保存法で定められた電磁的記録の備付けおよび保存をすることまたはその年分の所得税の確定申告書等の提出をe-Taxを使用して行うことが要件として追加されました。
青色申告者が適用を受けられる税務上の特典として、青色申告特別控除のほかに、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の3年間の繰越控除、棚卸資産の評価について( ② )を選択できることなどが挙げられます。なお、青色申告者が備え付けるべき決算関係書類などの帳簿書類は、原則として( ③ )年間保存しなければなりません」
<語句群>
イ.2 ロ.5 ハ.
7 ニ.10 ホ.55 へ.65 
ト.原価法 チ.低価法
正解:ヘ、チ、ハ
事業所得の計算上控除することができる青色申告特別控除額は、最高65万円です(青色申告特別控除額は、基本的に最高55万円ですが、電子申告要件等を満たした場合、最高65万円になります)。
青色申告者は、事業所得の計算上、棚卸資産の評価について低価法を選択することができる特典があります。
青色申告者は。原則として、帳簿を7年間保存しなくてはいけません。
【問11】
Aさんおよび母Dさんの2019年分の所得税の課税に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが受け取った一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、契約から10年以内の解約のため金融類似商品に該当し、源泉分離課税の対象となります」
「母Dさんの公的年金の収入金額は70万円であるため、公的年金等に係る雑所得の金額は算出されません」(注)制度改正あり
「母Dさんは65歳以上であるため、老人扶養親族に該当します。Aさんが適用を受けることができる母Dさんに係る扶養控除の額は58万円となります」
正解:×、○、×
一時払い変額個人年金の解約返戻金は、契約から5年以内に解約すると、金融類似商品に該当して源泉分離課税の対象となりますが、5年を超えて解約した場合は、一時所得として所得税の課税対象になります。

正しい記述です。公的年金等控除額は、65歳未満であれば70万円、65歳以上であれば120万円が最低保証されます。

制度改正があり、公的年金等控除額は、65歳未満であれば60万円、65歳以上であれば110万円が最低保証されるようになりました。
扶養控除の計算上、老人扶養親族として58万円の控除対象となるのは、70歳以上の扶養親族です。
【問12】
Aさんの2019年分の所得税の算出税額を計算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

事業所得の金額 6,000,000円
一時所得の金額 □□□円
(a)総所得金額 ( ① )円
社会保険料控除 □□□円
生命保険料控除 □□□円
配偶者控除 380,000円
扶養控除 ( ② )円
基礎控除 380,000円
(b)所得控除の額の合計額 2,000,000円
(c)課税総所得金額((a)-(b)) □□□円
(d)算出税額((c)に対する所得税額) ( ③ )円
<資料>所得税の速算表
課税される
所得金額
税率 控除額
195万円未満 5%
195万円以上
330万円未満
10% 97,500円
330万円以上
695万円未満
20% 427,500円
695万円以上
900万円未満
23% 636,000円
900万円以上
1,800万円未満
33% 1,536,000円
1,800万円以上
4,000万円未満
40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円
正解:6,700,000、760,000、512,500
一時所得の金額=700万円-500万円+490万円-500万円-50万円(特別控除額)=140万円です。
この2分の1が総所得金額に算入されますから、総所得金額=600万円+140万円×1/2=670万円となります。

母Dさんの雑所得は、公的年金等控除額の最低額(65歳以上は120万円)に満たないため0となり、合計所得金額は38万円以下となるため、母Dさんは扶養控除の対象となります。
また、扶養控除の計算上、16歳以上70歳未満の扶養親族は、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)を除き、一般の控除対象扶養親族として一人当たり38万円の控除対象となります。
よって、扶養控除の額=38万円×2=76万円となります。

<参考>
現在は、65歳以上の人に対する公的年金等控除額の最低額は110万円です。また、扶養控除を受けるための親族の合計所得金額の要件は、48万円以下である事とされています。

課税総所得金額=670万円-200万円=470万円ですから、算出税額=470万円×20%-427,500円=512,500円です。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
個人で不動産賃貸業を営んでいるAさん(75歳)は、妻Bさん(74歳)とX市内で暮らしている。長女Cさん(43歳)は、現在、会社員の夫と小学生の長男との3人で自宅(実家)付近の賃貸アパートに住んでいる。Aさんは、長女Cさん、長男Dさん(41歳)および孫の生活や学費等について面倒を見てやりたいと思っており、現金の贈与を検討している。また、Aさんは、自身の相続が開始した際には家族に財産を円満に承継してもらいたいと考えており、遺言書の作成を検討している。

<Aさんの家族構成(推定相続人)>
[妻Bさん(74歳)]
Aさんと自宅で同居している。

[長女Cさん(43歳)]
会社員。夫と子の3人で賃貸アパートに住んでいる。

[長男Dさん(41歳)]
会社員。妻と2人で県外の持家に住んでいる。

<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
[現預金]
7,000万円

[自宅]
①敷地(330㎡):1億円(注)
②建物:2,000万円

[賃貸マンション]
①敷地(400㎡):1億1,000万円(注)
②建物:7,000万円

合計:3億7,000万円

(注)「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額

【問13】
現時点(2020年1月26日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は2億9,000万円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)相続税の課税価格の合計額 2億9,000万円
(b)遺産に係る基礎控除額 ( ① )万円
課税遺産総額(a-b) □□□万円
相続税の総額の基となる税額
妻Bさん □□□万円
長女Cさん ( ② )万円
長男Dさん □□□万円
(c)相続税の総額 ( ③ )万円
<資料>相続税の速算表(一部抜粋)
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
20,000万円超
30,000万円以下
45% 2,700万円
正解:4,800、1,115、5,370
遺産に係る基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
法定相続人は、妻Bさん、長女Cさん、長男Dさんの3人ですから、遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×3=4,800万円です。
課税遺産総額は2億9,000万円-4,800万円=2億4,200万円です。
相続税の総額の基となる税額を計算する際には、課税遺産総額を法定相続分に応じて按分したと仮定して計算しますから、長女Cさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億4,200万円×1/4=6,050万円です。
よって、長女Cさんの相続税の総額の基となる税額は、6,050万円×30%-700万円=1,115万円となります。
妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、(2億9,000万円-4,800万円)×1/2=1億2,100万円ですから、妻Bさんの相続税の総額の基となる税額は、1億2,100万円×40%-1,700万円=3,140万円です。
②より、長女Cさんの相続税の総額の基となる税額は1,115万円であり、長男Dさんの相続税の総額の基となる税額は、長女Cさんと同じ(1,115万円)ですから、相続税の総額=3,140万円+1,115万円+1,115万円=5,370万円になります。
【問14】
Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「相続人間で争いが起こり、相続税の申告期限までに遺産分割協議が調わなかった場合、相続税の申告時において、未分割の財産に対して『配偶者に対する相続税額の軽減』や『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができません」
「契約者(=保険料負担者)および被保険者をAさん、死亡保険金受取人を法定相続人とする終身保険に加入されることをお勧めします。終身保険に加入後、Aさんの相続が開始した場合、相続人が受け取る死亡保険金は1,500万円を限度として、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができます」
「円滑な遺産分割のための手段として遺言書の作成をお勧めします。自筆証書遺言は、その遺言の全文および財産目録をパソコンで作成し、日付および氏名を自書して押印することで作成することができます」
正解:○、○、×
正しい記述です。
正しい記述です。相続税の課税対象となる死亡保険金は500万円×法定相続人の数まで非課税になります。
自筆証書遺言に添付する財産目録は、自書以外の方法で作成することができますが、それ以外の自筆証書遺言の全文については、必ず自書により作成しなくてはいけません。
【問15】
生前贈与に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な数値を、下記の〈数値群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが生前贈与を実行するにあたっては、暦年課税制度による贈与、相続時精算課税制度による贈与、教育資金の非課税制度を活用した贈与などが考えられます。暦年贈与の場合、その年分の贈与税の課税価格から基礎控除額として最高( ① )万円を控除することができます。相続時精算課税制度を選択した場合、累計で( ② )万円までの贈与について贈与税は課されませんが、その額を超える部分については、一律( ③ )%の税率により贈与税が課されます」
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用を受けた場合、受贈者1人につき( ④ )万円までは贈与税が非課税となります」
<数値群>
イ.15 ロ.20 ハ.25 
ニ.100 ホ.110 へ.150 
ト.1,000 チ.1,500 
リ.2,000 
ヌ.2,500 ル.3,000
正解:ホ、ヌ、ロ、チ
暦年贈与における基礎控除額は、最高110万円です。
相続時精算課税制度における特別控除は、累計2,500万円です。
相続時精算課税制度の適用を受けた贈与財産に適用される税率は、一律20%です。
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用を受けた場合、受贈者一人につき1,500万円まで贈与税が非課税となります。

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