FP3級実技(個人)解説-2023年1月・前半
【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(48歳)は、小売店を営む個人事業主である。大学卒業後に10年勤めた会社を退職し、その後に小売店を開業した。
Aさんは、できる限り小売店を続けていきたいと思っているが、老後のことも考え、自分の公的年金がどのくらい支給されるのか、老後の収入を増やすために何かよい方法はないか知りたいと思うようになった。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさん(48歳)は、小売店を営む個人事業主である。大学卒業後に10年勤めた会社を退職し、その後に小売店を開業した。
Aさんは、できる限り小売店を続けていきたいと思っているが、老後のことも考え、自分の公的年金がどのくらい支給されるのか、老後の収入を増やすために何かよい方法はないか知りたいと思うようになった。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんに関する資料> | ||
生年月日 | : | 1974年8月11日 |
公的年金の加入歴 | : | 下図のとおり(60歳までの見込みを含む) |
※ | Aさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問1】
はじめに、Mさんは、《設例》の<Aさんに関する資料>に基づき、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、老齢基礎年金の年金額は、2022年度価額に基づいて計算するものとする。
1. | 777,800円×328月/480月 |
2. | 777,800円×448月/480月 |
3. | 777,800円×(448月+32月×1/3)/480月 |
正解:2(3点)
老齢基礎年金の計算上、国民年金保険料納付期間の他に、20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間なども年金額に反映されます。
よって、老齢基礎年金の額=老齢基礎年金の満額×(120+328)/480となります。
よって、老齢基礎年金の額=老齢基礎年金の満額×(120+328)/480となります。
【問2】
次に、Mさんは、国民年金基金について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者を対象とした、老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。加入は口数制となっており、1口目は2種類の( ① )年金(A型・B型)のうち、いずれかを選択します。掛金の額は、選択した給付の型や口数、加入時の年齢等によって決まり、掛金の拠出限度額は、月額( ② )です。また、支払った掛金は、所得税において( ③ )の対象となります」
1. | ① 確定 ② 68,000円 ③ 小規模企業共済等掛金控除 |
2. | ① 終身 ② 30,000円 ③ 小規模企業共済等掛金控除 |
3. | ① 終身 ② 68,000円 ③ 社会保険料控除 |
正解:3(3点)
① | 国民年金基金は口数単位で加入し、1口目は必ず終身年金を選択しなくてはいけません。 |
② | 国民年金基金の掛金の拠出限度額は月額68,000円です。 |
③ | 国民年金基金の掛金は、所得税の計算上、社会保険料控除として所得控除の対象となります。 |
【問3】
最後に、Mさんは、老後の年金収入を増やすことができる各種制度について説明し
た。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
た。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「国民年金の付加年金は、月額200円の付加保険料を納付することにより、老齢基礎年金と併せて受給することができる年金です」 |
2. | 「確定拠出年金の個人型年金は、加入者自身が掛金の運用方法を選択し、資産を形成する年金制度です。将来受け取ることができる年金額は、運用実績により増減します」 |
3. | 「小規模企業共済制度は、個人事業主が廃業等した場合に必要となる資金を準備しておくための制度です。毎月の掛金は、1,000円から70,000円の範囲内(500円単位)で選択することができます」 |
正解:1(4点)
1) | 付加保険料は月額400円です。 |
2) | 正しい記述です。 |
3) | 正しい記述です。 |
【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさん(32歳)は、株式投資による運用を始めたいと考えている。先日、会社の上司から「リスク分散のため、株式だけでなく債券も保有している」という話を聞いたことから、債券投資にも興味を持った。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Mさんは、Aさんに対して、X社株式(東京証券取引所上場)および国内の大手企業が発行しているY社債(特定公社債)を例として、説明を行うことにした。
会社員のAさん(32歳)は、株式投資による運用を始めたいと考えている。先日、会社の上司から「リスク分散のため、株式だけでなく債券も保有している」という話を聞いたことから、債券投資にも興味を持った。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Mさんは、Aさんに対して、X社株式(東京証券取引所上場)および国内の大手企業が発行しているY社債(特定公社債)を例として、説明を行うことにした。
<X社に関する資料> | |
総資産 | 4,000億円 |
自己資本(純資産) | 2,000億円 |
当期純利益 | 200億円 |
年間配当金総額 | 45億円 |
発行済株式数 | 5,000万株 |
株価 | 6,000円 |
決算期 | 3月31日 |
<Y社債に関する資料> | ||
発行会社 | : | 国内の大手企業 |
購入価格 | : | 102円(額面100円当たり) |
表面利率 | : | 0.8% |
利払日 | : | 年1回 |
残存期間 | : | 5年 |
償還価格 | : | 100円 |
格付 | : | A |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問4】
Mさんは、X社株式の投資指標について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「<X社に関する資料>から算出されるX社株式のPERは、15.0倍です。 一般に、PERが高いほうが株価は割高、低いほうが株価は割安と判断されます」 |
2. | 「<X社に関する資料>から算出されるX社のROEは、5.0%です。一般に、ROEが高い会社ほど、自己資本の効率的な活用がなされていると判断することができます」 |
3. | 「配当性向は、株主に対する利益還元の割合を示す指標です。<X社に関する資料>から算出されるX社の配当性向は、22.5%です」 |
正解:2(4点)
1) | 正しい記述です。X社のPER=株価÷1株当たり当期純利益=6,000円/株÷(200億円÷5,000万株)=15倍であり、PERは、一般的に、高いと株価が割高と判断されます。 |
2) | ROE=当期純利益÷自己資本=200億円÷2,000億円=0.1=10%です。 なお、後半部分の記述は正しいです。 |
3) | 正しい記述です。配当性向=年間配当金総額÷当期純利益=45億円÷200億円=0.225=22.5%です。 |
【問5】
Mさんは、Y社債に投資する場合の留意点等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「債券投資において、債券の格付は重要な投資指標です。一般に、BBB(トリプルB)格相当以上の格付が付与されている債券は、投資適格とされます」 |
2. | 「発行会社の財務状況の悪化等により、 利子の支払や償還に懸念が生じるリスクを、一般に、金利リスクといいます。債券投資においては、金利リスクだけでなく、そのほかのリスクについても検討したうえで投資判断をすることが重要です」 |
3. | 「Y社債の利子は、申告分離課税の対象となり、利子の支払時に所得税および復興特別所得税と住民税の合計で14.21%相当額が源泉徴収等されます」 |
正解:1(3点)
1) | 正しい記述です。債券の格付けは、BBB格相当以上が投資適格とされ、BB格相当以下が投資不適格とされます。 |
2) | 利子の支払や償還に懸念が生じるリスクは、デフォルトリスクです。 |
3) | 公社債の利子は、分離課税の対象となり、所得税と住民税と復興特別所得税を合わせて、20.315%相当額が源泉徴収されます。 |
【問6】
Y社債を《設例》の条件で購入した場合の最終利回り(年率・単利)は、次のうちどれか。なお、計算にあたっては税金等を考慮せず、答は%表示における小数点以下第3位を四捨五入している。
1. | 0.39% |
2. | 0.40% |
3. | 0.78% |
正解:1(3点)
配当利回り(%)={0.8+(100-102)÷5}÷102×100=0.3921…%≒0.39%です
【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび長男Dさんとの4人家族である。Aさんは、2022年8月、国内銀行に預け入れていた外貨定期預金を満期時に円貨で払い戻しており、その際に為替差損が生じている。なお、雑所得の金額の前の「▲」は赤字であることを表している。
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび長男Dさんとの4人家族である。Aさんは、2022年8月、国内銀行に預け入れていた外貨定期預金を満期時に円貨で払い戻しており、その際に為替差損が生じている。なお、雑所得の金額の前の「▲」は赤字であることを表している。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(52歳)]
会社員
[妻Bさん(50歳)]
2022年中に、パートタイマーとして給与収入80万円を得ている。
[長女Cさん(24歳)]
大学院生。2022年中の収入はない。
[長男Dさん(20歳)]
大学生。2022年中の収入はない。
<Aさんの2022年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
820万円
[不動産所得の金額]
30万円
[雑所得の金額]
▲5万円(外貨定期預金に係る為替差損)
(注) | Aさんは、外貨定期預金の預入時および預入期間中に為替予約を締結していない。 |
※ | 妻Bさん、長女Cさんおよび長男Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2022年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問7】
Aさんの2022年分の所得税の確定申告に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 「所得税の確定申告書は、原則として、2023年2月16日から3月31日までの間に、Aさんの住所地を所轄する税務署長に提出してください」 |
2. | 「Aさんは、不動産所得の金額が20万円を超えていますので、所得税の確定申告をしなければなりません」 |
3. | 「Aさんは、所得税の確定申告をすることにより、外貨定期預金の為替差損の金額を、不動産所得の金額と損益通算することができます」 |
正解:2(3点)
1) | 所得税の確定申告書の提出期限は、翌年の2月16日から3月15日までの間です。 「自分で申告に挑む(21ど6)、さぁいこう(3ぁ15う)確定申告会場へ」という語呂合わせで覚えてください。 |
2) | 正しい記述です。給与所得と退職所得以外の所得の金額が20万円を超える給与所得者は、確定申告をしなくてはいけません。 |
3) | 外貨預金の為替差損益は雑所得ですから、赤字の場合に他の所得と損益通算することはできません。 |
【問8】
Aさんの2022年分の所得税における総所得金額は、次のうちどれか。
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
1. | 653万円 |
2. | 658万円 |
3. | 663万円 |
正解:2(4点)
給与所得=820万円-(820万円×10%+110万円)=628万円です。
給与所得と不動産所得は、どちらも全額総所得金額に算入されますから、総所得金額=628万円+30万円=658万円となります。
給与所得と不動産所得は、どちらも全額総所得金額に算入されますから、総所得金額=628万円+30万円=658万円となります。
【問9】
Aさんの2022年分の所得税における所得控除に関する以下の文章の空欄①~③に入る数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
ⅰ) | 「妻Bさんの合計所得金額は( ① )万円以下となりますので、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます。Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の額は、( ② )万円です」 |
ⅱ) | 「Aさんが適用を受けることができる扶養控除の額は、( ③ )万円です」 |
1. | ①38 ②48 ③38 |
2. | ①48 ②48 ③76 |
3. | ①48 ②38 ③101 |
正解:3(3点)
① | 配偶者控除の適用を受けるための配偶者の合計所得金額の要件は、48万円以下とされています。 |
② | 合計所得金額が900万円以下の人が適用を受けることができる配偶者控除の額は、38万円です。 |
③ | 長女Cさんと長男Dさんは、16歳以上で合計所得金額が48万円以下であるなどの要件を満たしますから、いずれも扶養控除の対象となります。 控除対象扶養親族のうち、19歳以上23歳未満の人は、特定扶養親族として63万円の控除対象になり、23歳以上70歳未満の人は、一般の控除対象扶養親族として38万円の控除対象になります。 よって、Aさんが適用を受けることができる扶養控除の額は、63万円+38万円=101万円となります。 |
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