お金の寺子屋

FP3級実技(個人)解説-2023年1月・後半

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(51歳)は、3年前に父親の相続により取得した甲土地を所有している。相続開始前から現在に至るまで月極駐車場として賃貸しているが、収益性は低い。甲土地は、最寄駅から徒歩3分に位置し、周辺では戸建て住宅や低層マンションが建ち並んでいる。
Aさんは、先日、知人の不動産会社の社長から「大手ドラッグストアのX社が駅周辺での新規出店にあたり、甲土地に興味を示している。X社は建設協力金方式を望んでいるが、契約形態は事業用定期借地権方式でもよいと言っている。この機会に、甲土地の有効活用について考えてみてはどうか」との提案を受けた。

<甲土地の概要>
指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
甲土地に耐火建築物を建築する場合の①建蔽率の上限となる建築面積と②容積率の上限となる延べ面積の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. ①300㎡ ②1,000㎡
2. ①350㎡ ②1,000㎡
3. ①350㎡ ②1,600㎡
正解:(4点)
準防火地域に耐火建築物を建てる場合には、建ぺい率の上限が10%緩和されます。
よって、建ぺい率の上限となる建築面積は、500㎡×(60%+10%)=350㎡となります。
前面道路の幅員が12m未満である場合、容積率の上限は、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、いずれか小さい方となります。
前面道路の幅員によって定まる容積率=8×4/10 =3.2=320%ですから、容積率の上限は、200%となります。
よって、容積率の上限となる延床面積は、500㎡×200%=1,000㎡となります。
【問11】
X社が提案する建設協力金方式に関する次の記述のうち、 最も不適切なものはどれか。
1. 「建設協力金方式とは、X社が建設資金をAさんに貸し付け、この資金を利用してAさんが建設した店舗をX社に賃貸する手法です。建設資金は、契約期間中に賃料と相殺する形で返済するのが一般的です」
2. 「建設協力金方式により建設した店舗は、相続税額の計算上、貸家として評価されます。また、甲土地は貸家建付地として評価されます」
3. 「建設協力金方式により建設した店舗は、契約期間満了後にX社が撤去し、Aさんに甲土地を更地で返還するのが一般的です。Aさんは、甲土地を手放さずに安定した賃料収入を得ることができます」
正解:(3点)
1) 正しい記述です。
2) 正しい記述です。
3) 建設協力金方式においては、設定する借地権が事業用定期借地権等に特定される訳ではありません(普通借地権なども設定可能です)。よって、普通借地権を設定した場合には、借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないとき、借地権者は、借地権設定者に対し、建物などを時価で買い取るよう請求することができます。
【問12】
X社が提案する事業用定期借地権方式に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「事業用定期借地権方式とは、X社が甲土地を一定期間賃借し、X社が店舗を建設する手法です。Aさんは、店舗の建設資金を負担することなく、安定した地代収入を得ることができます」
2. 「事業用定期借地権について、契約期間満了時にX社から契約の更新の請求があった場合、Aさんは、正当な事由がない限り、この請求を拒絶することができません。甲土地の利用状況が長期間にわたり固定化されるというデメリットがあります」
3. 「地代の改定方法や契約期間中に中途解約する場合の取扱いなど、契約内容を事前に精査しておく必要があります。事業用定期借地権の設定契約は、必ずしも公正証書による必要はありませんが、書面により作成する必要があります」
正解:(3点)
1) 正しい記述です。事業用定期借地権においては、地主は土地を貸すだけで、借地人が借地人のお金で、借地上に借地人名義の建物を建てます。
2) 事業用定期借地権は契約の更新がない借地権ですから、更新することはできません(再契約は可能です)。
3) 事業用定期借地権の設定契約は、必ず公正証書で行わなくてはなりません。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさんは、妻Bさん(70歳)と自宅で暮らしていたが、2023年1月に病気により死亡した。Aさんの葬儀が終わり、自宅の書斎で遺品を整理していた妻Bさんは、Aさんが残した自筆証書遺言を発見した。

<Aさんの親族関係図>
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
現預金:5,000万円
上場株式:8,000万円
自宅(敷地220㎡):4,500万円(注)
自宅(建物):1,000万円

(注) 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問13】
遺言に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「自宅に保管されていたAさんの自筆証書遺言については、遅滞なく、家庭裁判所に提出して、その検認を請求する必要があります」
2. 「Aさんの遺言による相続分の指定や遺贈によって相続人の遺留分が侵害された場合、その遺言は無効となります」
3. 「Aさんの遺言が、その方式の不備により無効となった場合、相続人は法定相続分どおりに遺産を分割しなければなりません」
正解:(3点)
1) 正しい記述です。
2) 遺留分を侵害している遺言は直ちに無効になる訳ではありません。遺留分権利者は、遺留分侵害額を金銭で請求する事ができます。
3) 遺言が無効である場合には協議分割を行うことになりますが、協議分割においては相続人が自由に分割割合を決めることができ、必ずしも法定相続分通りに分割する必要はありません。
【問14】
Aさんの相続に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 「相続税額の計算上、遺産に係る基礎控除額は、『3,000万円+600万円×法定相続人の数』の算式により算出されます」
2. 「妻Bさんが自宅の敷地と建物を相続し、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、自宅の敷地(相続税評価額4,500万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を900万円とすることができます」
3. 「相続税の申告書は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から3カ月以内に被相続人であるAさんの死亡時の住所地を所轄する税務署長に提出しなければなりません」
正解:(3点)
1) 正しい記述です。
2) 正しい記述です。自宅の敷地について小規模宅地の特例の適用を受けた場合、330㎡までの部分について、相続税評価額が80%減額されます(20%相当額を相続税の課税価格に算入します)。
よって、相続税の課税価格に算入するべき価額は、4,500万円×20%=900万円となります。
3) 相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。
【問15】
Aさんの相続に係る課税遺産総額(課税価格の合計額-遺産に係る基礎控除額)が1億円であった場合の相続税の総額は、次のうちどれか。

<資料>相続税の速算表(一部抜粋)
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
1. 1,400万円
2. 1,450万円
3. 1,600万円
正解:(4点)

各相続人の法定相続分は、妻Bさんが1/2、長男Cさんと長女Dさんがそれぞれ1/4です。

よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億円×1/2=5,000万円、長男Cさんと長女Dさんの法定相続分に応ずる取得金額は、それぞれ1億円×1/4=2,500万円となります。

したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、5,000万円×20%-200万円=800万円となり、長男Cさんと長女Dの法定相続分対応する相続税額は、それぞれ2,500万円×15%-50万円=325万円となります。

ゆえに、相続税の総額は、800万円+325万円+325万円=1,450万円となります。

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