FP3級実技(個人)解説-2021年5月・前半
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、妻Bさん(60歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学卒業後から現在に至るまでX社に勤務しており、2021年10月に定年を迎えるが、X社の継続雇用制度を利用しない予定としている。定年退職後は仕事をせず、趣味を楽しみながら暮らしたいと考えている。 Aさんは、老後の生活設計を考えるために、公的年金等の社会保険制度の仕組みについて、理解を深めたいと思っている。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさん夫妻に関する資料>
[Aさん(1961年10月11日生まれ)]
公的年金加入歴:下図のとおり(60歳でX社を退職した場合の見込みを含む)20歳から大学生であった期間(30月)は国民年金に任意加入していない。
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中
[妻Bさん(1961年4月17日生まれ・専業主婦)]
公的年金加入歴: 18歳からAさんと結婚するまでの期間(182月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
※ | 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
ただし、Aさんのように1961年4月2日以後生まれの男性の場合、特別支給の老齢厚生年金の支給はありません。他方、1961年4月17日生まれの妻Bさんは、原則として、( ③ )歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます」
1. | ① 10 ② 1 ③ 62 |
2. | ① 10 ② 10 ③ 64 |
3. | ① 25 ② 1 ③ 64 |
① | 老齢厚生年金は2階部分の年金ですから、一階部分の年金(老齢基礎年金)の受給資格期間を満たさなければ受給することができません。老齢基礎年金を受け取るためには、受給資格期間が10年以上ある必要があります。 |
② | 通常の老齢厚生年金を受給するための厚生年金保険の被保険者期間の要件は、1ヵ月以上あることです。 |
③ | 女性の場合、1966年4月1日以前に生まれた人は、一定要件を満たした場合には、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができ、1960年4月2日~1962年4月1日までの間に生まれた人は、62歳から受け取ることができます。 |
1. | Aさん :781,700円×450月/480月 妻Bさん:781,700円×492月/480月 |
2. | Aさん :781,700円×450月/480月 妻Bさん:781,700円×480月/480月 |
3. | Aさん :781,700円×480月/480月 妻Bさん:781,700円×492月/480月 |
老齢基礎年金の年金額は、「老齢基礎年金の満額×保険料納付期間÷480」という式により求めます。
<Aさん>
厚生年金保険の被保険者期間は保険料納付期間に算入されますが国民年金の未加入期間は保険料納付期間に算入されません。よって、Aさんの保険料納付期間は450月です。
<妻Bさん>
保険料納付期間は、原則として、20歳以上60歳未満の480月の保険料納付記録をもとに計算しますから、19歳未満の期間については考慮しません。よって、妻Bさんの保険料納付期間は480月です。
1. | 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額には、配偶者の加給年金額が加算されます」 |
2. | 「Aさんは、定年退職後、介護保険の第2号被保険者から第1号被保険者に種別を変更する届出書を住所地の市町村(特別区を含む)に提出する必要があります」 |
3. | 「Aさんは、退職日の翌日から最長2年間、全国健康保険協会管掌健康保険に任意継続被保険者として加入することができますが、保険料はAさんが全額負担します」 |
1. | 年上の配偶者がいる場合には加給年金は支給されません。 |
2. | 公的介護保険の被保険者区分が第2号被保険者から第1号被保険者に変わった場合、特に手続きは必要はありません。 |
3. | 正しい記述です。 |
会社員のAさん(55歳)は、X銀行の米ドル建定期預金のキャンペーン広告を見て、その金利の高さに興味を抱いており、満期を迎えるX銀行の円建ての定期預金500万円の一部を活用して、米ドル建定期預金での運用を検討している。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
・預入金額:10,000米ドル
・預入期間:3カ月
・利率(年率):2.0%(満期時一括支払)
・為替予約なし
・適用為替レート(米ドル/円)
TTS | TTM | TTB | |
預入時 | 102.00円 | 101.50円 | 101.00円 |
満期時 | 104.00円 | 103.50円 | 103.00円 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
1. | 「TTMとTTS(TTB)の差分は為替スプレッドと呼ばれるもので、取引金融機関による差異はありません」 |
2. | 「Aさんが預入時に円を米ドルに換える際に適用される為替レートは、1米ドル=102.00円になります」 |
3. | 「X銀行の米ドル建定期預金の場合、Aさんが満期時に受け取ることができる利息額は200米ドル(税引前)になります」 |
1. | 為替スプレッド(両替時の手数料のようなもの)は金融機関ごとに差異があります。 |
2. | 正しい記述です。円をドルに変える際に適用されるレートはTTSです。 |
3. | Aさんが満期時に受け取ることができる利息額 (税引前)は、10,000米ドル×2.0%×3/12=50米ドルです。 |
1. | 1,035,150円 |
2. | 1,045,200円 |
3. | 1,050,600円 |
円転時に使う為替レートはTTBですから、円転額は、10,050米ドル×103.00円×1,035,150 円となります。
1. | 「Aさんが受け取る利子は、利子所得として源泉分離課税の対象となり、20.315%相当額が源泉徴収等されます」 |
2. | 「仮に、満期時に為替差益が生じた場合、当該金額は雑所得として総合課税の対象となります」 |
3. | 「仮に、満期時に為替差損が生じた場合、所得税の確定申告をすることにより、当該損失の金額をAさんの給与所得の金額と損益通算することができます」 |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 為替差損益は雑所得ですから、マイナスが出ても損益通算の対象とはなりません。 |
会社役員のAさんは、妻Bさんおよび長女Cさんとの3人暮らしである。Aさんは、2020年8月から老齢基礎年金を受給している。なお、不動産所得の金額の前の「▲」は赤字であることを表している。
また、Aさんは、2020年中にAさん自身に係る入院・手術・通院に係る医療費を支払ったため、医療費控除の適用を検討している。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(65歳)]
会社役員
[妻Bさん(60歳)]
2020年中に、パートタイマーとして給与収入100万円を得ている。
[長女Cさん(25歳)]
大学院生。2020年中の収入はない。
<Aさんの2020年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
1,000万円
[老齢基礎年金の年金額]
35万円
[不動産所得の金額]
▲100万円(注)
(注):土地等の取得に係る負債の利子はない
※ | 妻Bさんおよび長女Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2020年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
1. | 705万円 |
2. | 740万円 |
3. | 840万円 |
また、65歳以上の人が受け取る公的年金に係る雑所得については、最低90万円以上の公的年金等控除が適用されますから、老齢基礎年金の年金額35万円についての雑所得は0円になります。
そして、不動産所得の赤字は損益通算の対象になります。
よって、総所得金額=805万円-100万円=705万円となります。
ⅰ) | 「妻Bさんの合計所得金額は( ① )万円以下であるため、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます。Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、( ② )万円です」 |
ⅱ) | 「Aさんが適用を受けることができる長女Cさんに係る扶養控除の控除額は、( ③ )万円です」 |
<資料>配偶者控除額の金額 | ||
控除を受ける納税者 本人の合計所得金額 |
控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 | |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超 950万円以下 |
26万円 | 32万円 |
950万円超 1,000万円以下 |
13万円 | 16万円 |
<資料>配偶者控除額の金額 | ||
控除を受ける納税者 本人の合計所得金額 |
控除額 | |
一般の控除 対象配偶者 |
老人控除 対象配偶者 |
|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超 950万円以下 |
26万円 | 32万円 |
950万円超 1,000万円以下 |
13万円 | 16万円 |
1. | ① 38 ② 48 ③ 63 |
2. | ① 48 ② 38 ③ 38 |
3. | ① 103 ② 48 ③ 38 |
① | 配偶者控除を受けるための配偶者の合計所得金額の用件は48万円以下であることです。 |
② | 問7より、Aさんの合計所得金額は900万円以下で、妻Bさんは老人控除対象配偶者に該当しませんから、配偶者控除の額は38万円になります。 |
③ | 16歳以上70歳未満でかつ19歳以上23歳未満ではない控除対象配偶者は、一般の控除対象扶養親族として38万円の控除の対象となります。 |
1. | 「Aさんが2020年中に支払った医療費の金額の合計額が20万円を超えていない場合、医療費控除額は算出されません」 |
2. | 「生命保険契約から支払われた入院給付金や健康保険から支給を受けた高額療養費がある場合は、支払った医療費の総額からそれらの金額を控除する必要があります」 |
3. | 「Aさんは、2020年中に支払った医療費の領収書を勤務先に提出することで、年末調整において医療費控除の適用を受けることができます」 |
1. | 医療費控除は、正味支払った医療費の額が10万円を超えていれば、適用を受けることができます。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 医療費控除は年末調整の対象ではないため、適用を受けるためには確定申告をする必要があります。 |
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