FP3級実技(保険)解説-2019年9月・後半
会社員のAさんは、妻Bさん、長男Cさんおよび母Dさんとの4人家族である。Aさんは、2019年中に下記の終身保険を解約している。また、Aさんは、妻Bさんの入院・手術・通院に係る医療費について、医療費控除の適用を受けたいと考えている。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(50歳)]
会社員
[妻Bさん(47歳)]
2019年中にパートタイマーとして給与収入80万円を得ている。
[長男Cさん(18歳)]
高校生。2019年中の収入はない。
[母Dさん(74歳)]
2019年中の収入は老齢基礎年金のみであり、その収入金 額は72万円である。
<Aさんの2019年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
900万円
[解約した終身保険(月払)の内容]
契約年月:1993年10月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:330万円
正味払込済保険料:300万円
※ | 妻Bさん、長男Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | 妻Bさん、長男Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2019年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
ⅰ) | 妻Bさんの合計所得金額は( ① )万円を超えないため、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができる。 |
ⅱ) | Aさんが適用を受けることができる長男Cさんに係る扶養控除の控除額は、( ② )万円である。 |
ⅲ) | Aさんが適用を受けることができる母Dさんに係る扶養控除の控除額は、( ③ )万円である。 |
1. | ①38 ②38 ③58 |
2. | ①103 ②63 ③58 |
3. | ①38 ②63 ③38 |
① |
配偶者控除の適用を受けるためには、配偶者の合計所得金額が38万円以下である必要があります。 <改正後> |
② | 長男Cさんは、16歳以上19歳未満ですから、一般の控除対象扶養親族として38万円の扶養控除の適用対象となります。 |
③ | 母Dさんは、70歳以上の生計同一親族ですから、老人扶養親族として養控除の適用対象となります。老人扶養親族に該当する人が、納税者と同居していた場合、その人に係る控除額は58万円となります(別居の場合は48万円です)。 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40% (最低65万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
660万円超 1,000万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 220万円 |
1. | 670万円 |
2. | 690万円 |
3. | 720万円 |
給与所得=900万円-(900万円×10%+120万円)=690万円です。
一時所得は、330万円-300万円<50万円(特別控除額)より、0円です。
よって、総所得金額は600万円となります。
<参考>
現在の給与所得控除額は、資料と異なります。
1. | 「医療費控除額は、『(その年中に支払った医療費の総額-保険金などで補填される金額)-20万円』の算式により算出します。したがって、Aさんが2019年中に支払った医療費の総額が20万円を超えていなければ、医療費控除額は算出されません」 |
2. | 「Aさんが通常の医療費控除の適用を受けた場合、セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の適用を受けることはできません」 |
3. | 「医療費控除は、Aさんの勤務先の年末調整で適用を受けることができますので、確定申告を行う必要はありません」 |
1. | 医療費控除の額は、正味負担した医療費-10万円です。 |
2. | 正しい記述です。通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか適用を受けることができません。 |
3. | 寄付金控除、医療費控除、雑損控除のいずれかの適用を受ける場合には、必ず確定申告をしなくてはいけません。 |
Aさんは、2019年8月25日に病気により死亡した。自宅は妻Bさんが相続により取得する予定である。
<Aさんの主な相続財産(みなし相続財産を含む)>
[預金等の金融資産]
6,000万円
[自宅(敷地330㎡)]
2,000万円(「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の相続税評価額)
[自宅(建物)]
2,000万円
[死亡保険金]
2,000万円(下記の生命保険契約によるもの)
保険の種類:終身保険
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
死亡保険金額:2,000万円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
ⅰ) | 相続税の申告書は、原則として、相続人が、相続の開始があったことを知った日の翌日から( ① )以内に提出しなければならない。申告書の提出先は、原則として、被相続人の死亡の時における住所地の所轄税務署長となる。 |
ⅱ) | Aさんの相続における遺産に係る基礎控除額は、( ② )である。 |
ⅲ) | 妻Bさんが受け取る終身保険の死亡保険金2,000万円のうち、相続税の課税価格に算入される金額は( ③ )である。 |
1. | ①10カ月 ②5,200万円 ③1,000万円 |
2. | ①10カ月 ②4,800万円 ③500万円 |
3. | ①1年 ②4,800万円 ③1,000万円 |
① | 相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
② | 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数です。 法定相続人の数は3人ですから、基礎控除額=3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。 |
③ | 相続人が相続税の課税対象となる生命保険の死亡保険金を受け取った場合、500万円×法定相続人の数まで非課税となります。 よって、500万円×3=1,500万円が非課税となり、相続税の課税価格に算入される金額は、2,000万円-1,500万円=500万円となります。 |
1. | 「妻Bさんが『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受けるためには、Aさんの相続開始時において、Aさんとの婚姻期間が20年以上でなければなりません」 |
2. | 「『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受けた場合、妻Bさんが相続により取得した財産の金額が、妻Bさんの法定相続分相当額と1億円とのいずれか多い金額までであれば、納付すべき相続税額は算出されません」 |
3. | 「自宅の敷地を妻Bさんが相続により取得した場合、当該敷地を相続税の申告期限前に売却した場合であっても『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができます」 |
1. | 配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けるための、婚姻期間の要件はありません。 |
2. | 配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けた場合、配偶者が相続により取得した財産の金額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円のいずれか多い金額までであれば、配偶者が納めるべき相続税額は0(ゼロ)になります。 |
3. | 正しい記述です。 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
1. | 840万円 |
2. | 855万円 |
3. | 1,280万円 |
よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、6,600万円×1/2=3,300万円となり、長女Cさんと長男Dさんの法定相続分に応ずる取得金額は、それぞれ、6,600万円×1/4=1,650万円となります。
したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、3,300万円×20%-200万円=460万円となり、妹Cさんと弟Dさんの法定相続分対応する相続税額は、それぞれ、1,650万円×15%-50万円=197.5万円となります。
ゆえに、相続税の総額は、460万円+197.5万円×2=855万円となります。
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