FP3級実技(保険)解説-2018年1月・問10~15
Aさんは、飲食店を営む個人事業主である。Aさんは、開業後直ちに青色申告承認申請と青色事業専従者給与に関する届出書を所轄税務署長に対して提出している。
Aさんは、過去に会社員をしていた期間があり、平成29年8月から特別支給の老齢厚生年金を受給している。
Aさんとその家族に関する資料等は、以下のとおりである。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(62歳)]
個人事業主(青色申告者)
[妻Bさん(59歳)]
Aさんが営む飲食店の事業に専ら従事し、青色事業専従者給与(平成29年分:84万円)の支払を受けている。
<Aさんの平成29年分の収入等に関する資料>
[事業所得の金額]
400万円(青色申告特別控除後)
[特別支給の老齢厚生年金の年金額]
30万円
[一時払変額個人年金保険(確定年金)の解約返戻金]
契約年月:平成20年5月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:750万円
一時払保険料:500万円
※ | 妻Bさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんの年齢は、いずれも平成29年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
・ | 「事業所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出することにより、事業所得の金額の計算上青色、申告特別控除として最高( ① )万円を控除することができます。なお、確定申告書を法定申告期限後に提出した場合、青色申告特別控除額は最高( ② )万円となります」(注)制度改正あり |
・ | 「青色申告者が受けられる税務上の特典として、青色申告特別控除のほかに、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の( ③ )年間の繰越控除、純損失の繰戻還付、棚卸資産の評価について低価法を選択できることなどが挙げられます」 |
1. | ①55 ②38 ③3 |
2. | ①65 ②10 ③3 |
3. | ①65 ②38 ③7 |
① | 事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除の額は最高65万円です。 正確に言えば、青色申告特別控除額は、基本的に最高55万円ですが、電子申告要件等を満たした場合、最高65万円になります。 |
② | 確定申告書を法定申告期限後に提出した場合、青色申告特別控除額は最高10万円となります。 |
③ | 青色申告者は、所得税の計算上、純損失を最大3年間繰越控除する事ができます。 |
1. | 「妻Bさんは青色事業専従者として給与の支払を受けているため、妻Bさんの合計所得金額の多寡にかかわらず、Aさんは、妻Bさんについて配偶者控除の適用を受けることができません」 |
2. | 「Aさんの場合、公的年金等の収入金額の合計額が70万円以下であるため、公的年金等に係る雑所得の金額は算出されません」 |
3. | 「Aさんが解約した一時払変額個人年金保険(確定年金)は、税務上、金融類似商品に該当するため、当該解約返戻金は源泉分離課税の対象となります」 |
1. | 正しい記述です。青色事業専従者として給与を受け取っている配偶者は、配偶者控除や配偶者特別控除の適用対象外となります。 |
2. |
正しい記述です。65歳未満の人の所得税の計算において、公的年金等の雑所得の公的年金等控除額は、70万円です。 <改正後> |
3. | 解約までの期間が5年を超える一時払変額個人年金保険(確定年金)は、一時所得の課税対象となります。 |
1. | 430万円 |
2. | 500万円 |
3. | 530万円 |
特別支給の老齢厚生年金の年金額は、公的年金等控除額を下回りますから、総所得金額には算入されません。
また、一時払変額個人年金保険(確定年金)の解約返戻金は、一時所得となりますから、一時所得=750万円-500万円-50万円=200万円で、この2分の1が総所得金額に算入されます。
したがって、総所得金額=400万円+200万円×1/2=500万円となります。
Aさん(70歳)の推定相続人は、妻Bさん(70歳)、長女Cさん(42歳)および長男Dさん(40歳)の3人である。
Aさんは、妻Bさんには現預金および自宅を、長女Cさんには自宅に隣接する賃貸アパートを相続させたいと考えており、遺言書の作成の準備を検討している。また、Aさんは、現在、生命保険に加入していないため、相続対策として一時払終身保険への加入を検討している。
<Aさんの家族構成>
[妻Bさん]
公務員。Aさん夫婦と同居している。
[長女Cさん]
アルバイト。平成29年分の給与収入は140万円である。
[長男Dさん]
会社員。妻と子2人で賃貸マンションに暮らしている。
現預金:6,000万円
自宅(敷地360㎡):5,000万円(注)
自宅(建物):1,000万円
賃貸アパート(敷地300㎡):3,500万円
賃貸アパート(建物):3,000万円(年間収入500万円)
注 | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:長女Cさん
死亡保険金額:2,000万円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
1. | 「公正証書遺言は公証役場で作成するため、その作成費用が税金で賄われており、遺言者が手数料を負担する必要はありません」 |
2. | 「公正証書遺言を作成する場合、証人2人以上の立会いが必要となりますが、遺言者の推定相続人は、この証人になることはできません」 |
3. | 「仮に、Aさんの相続が開始し、相続人がAさんの公正証書遺言を発見した場合、相続人は、遅滞なく、遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません」 |
1. | 公正証書遺言には、作成手数料がかかります。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 公正証書遺言は、検認が不要です。 |
・ | 「Aさんが加入を検討している一時払終身保険の死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。当該生命保険の加入後にAさんが亡くなった場合、長女Cさんが受け取る死亡保険金のうち、相続税の課税価格に算入される金額は( ① )万円となります」 |
・ | 「妻Bさんおよび長女Cさんが相続財産の大半を取得した場合、長男Dさんの遺留分を侵害する可能性があります。仮に、遺留分算定の基礎となる財産の価格が2億円である場合、長男Dさんの遺留分の金額は( ② )万円です」 |
・ | 「妻Bさんが自宅の敷地を相続により取得し、『特定居住用宅地等』として小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた場合、その敷地は( ③ )㎡までの部分について80%の減額が受けられます」 |
1. | ①500 ②5,000 ③240 |
2. | ①1,500 ②5,000 ③330 |
3. | ①500 ②2,500 ③330 |
① | 生命保険の死亡保険金は、500万円×法定相続人の数だけ非課税になり、法定相続人は3人ですから、1,500万円が非課税になります。 よって、相続税の課税価格に算入される金額は、500万円です。 |
② | 個人の遺留分(具体的遺留分)は、抽象的遺留分の金額に法定相続分をかけた金額です。 相続人が直系尊属のみである場合を除き、抽象的遺留分は、遺留分算定の基礎となる財産の2分の1ですから、法定相続分が1/4である長男Dさんの遺留分は、2億円×1/2×1/4=2,500万円です。 |
③ | 特定居住用宅地等として、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた場合、当該敷地のうち、330㎡までの部分の相続税評価額が80%減額されます。 |
1. | 1,450万円 |
2. | 2,300万円 |
3. | 4,800万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
そうすると、妻Bさんに係る相続税額は、5,000万円×20%-200万円=800万円となります。
残りの2人に係る相続税額は、1人当たり、2,500万円×15%-50万円=325万円となります。
したがって、相続税の総額は、800万円+325万円×2=1,450万円となります。
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