FP2級実技(個人)解説-2019年5月・問1~9
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(45歳)は、高校卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。Aさんは、高校の同級生であった妻Bさん(45歳)と結婚し、現在は妻Bさんと長女Cさん(22歳)との3人暮らしである。
Aさんは、長女Cさんが今年4月に就職したことを機に、老後の生活資金等について、そろそろ準備をしておきたいと考えるようになった。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(56歳)]
1973年8月12日生まれ
会社員
公的年金加入歴は下図のとおり(60歳定年時までの見込みを含む) 。
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。
X社が実施している確定給付企業年金の加入者である。
[妻Bさん]
1973年6月20日生まれ
専業主婦
公的年金加入歴:18歳からAさんと結婚するまでの3年間(36月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
※ | 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
<計算の手順>
1.老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入)
( ① )円
2.老齢厚生年金の年金額
(1)報酬比例部分の額(円未満四捨五入)
( ② )円
(2)経過的加算額(円未満四捨五入)
( ③ )円
(3)基本年金額(上記「(1)+(2)」の額)
□□□円
(4)加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること)
(5)老齢厚生年金の年金額
( ④ )円
① | 老齢基礎年金の額=779,300円×保険料納付済月数/480です。 なお、ここでいう保険料納付済月数は、20歳~60歳の期間のものを言い、厚生年金の被保険者期間を満額納付とみなして数えます。 したがって、老齢基礎年金の額=779,300円×480/480=779,300円となります。 |
② | 28万円×7.125/1,000×132+40万円×5.481/1,000×364=263,340円+798,033.6円≒1,061,374円(円未満四捨五入)となります。 |
③ |
経過的加算額の計算式は資料の通りですが、計算式における「被保険者期間の月数」は、上限が480ヵ月として数えます。 したがって、経過的加算額=1,625円×480-779,300円×480/480=700円となります。 |
④ | 加給年金は、配偶者が65歳未満である事が支給条件であり、配偶者が年上の場合には、65から支払われる老齢厚生年金に加算されませんので、老齢厚生年金の年金額=1,061,374円+700円=1,062,074円となります。 |
Ⅰ | 「Aさんのような確定給付企業年金の加入者で60歳未満の厚生年金保険の被保険者や妻Bさんのような国民年金の第3号被保険者は、個人型年金に加入することができます。ただし、拠出することができる掛金の限度額は加入者の区分に応じて異なります。拠出できる掛金の限度額は、Aさんの場合は年額( ① )円、妻Bさんの場合は年額( ② )円です。加入者が拠出する掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象となります」 |
Ⅱ | 「Aさんが60歳到達時に老齢給付金を受給するためには、通算加入者等期間が( ③ )年以上必要となります。なお、個人型年金は、Aさんの指図に基づく運用実績により、将来の年金受取額が増減する点に留意する必要があります」 |
イ.5 ロ.10 ハ.15
ニ.144,000 ホ.240,000
ヘ.276,000 ト.816,000
① | 確定拠出年金の拠出限度額(年額)は、確定給付企業年金がある会社の会社員の場合は、144,000円です。 |
② | 確定拠出年金の拠出限度額(年額)は、国民年金の第3号被保険者の場合は、276,000円です。 |
③ | 確定拠出年金の老齢給付金は、通算加入者等期間が10年以上あれば、60歳から引き出すことが可能です。 |
① | 「仮に、Aさんが65歳になるまで厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務した場合、65歳から支給される老齢厚生年金は、65歳到達時における厚生年金保険の被保険者記録を基に計算されます」 |
② | 「妻Bさんは、Aさんと同様、報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の支給はなく、原則として、65歳から老齢基礎年金および老齢厚生年金を受給することになります」 |
③ | 「妻Bさんが確定拠出年金の個人型年金に加入し、Aさんが生計を一にする妻Bさんの掛金を拠出した場合、Aさんはその全額を小規模企業共済等掛金控除の対象とすることができます」 |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。特別支給の老齢厚生年金は、昭和36年(1961年)4月2日以降に生まれた男性と、昭和41年(1966年)4月2日以降に生まれた女性には支給されません。 |
3. | 小規模企業共済等掛金控除の対象となるものは、自分の為に払ったお金のみです。社会保険料控除と異なり、配偶者や親族の為に支払ったお金は控除の対象となりません。 |
会社員のAさん(39歳)は、預貯金を1,000万円保有しているが、その一部を活用して、X社株式またはY社株式(2社は同業種、東京証券取引所市場第一部上場)のいずれかを購入したいと考えている。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<X社株式およびY社株式の情報>
[X社]
株価4,000円
発行済株式総数8億株
1株当たり配当金150円(年間)
[Y社]
株価1,500円
発行済株式総数3億株
1株当たり配当金50円(年間)
※ | 次回の決算期は、X社およびY社ともに、2019年6月30日(日)である。 |
<X社およびY社の財務データ>(単位:百万円)
※ | 純資産の金額と自己資本の金額は同じである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
① | X社およびY社のROE |
② | X社およびY社のPER |
1. | ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100です。 自己資本=純資産である条件がある事より、 X社のROE=290,000百万円÷2,400,000百万円×100=12.083…≒12.08%、 Y社のROE=46,500百万円÷480,000百万円×100=9.6875≒9.69%となります。 |
2. | PER=株価÷1株当たり純利益です。 X社は、発行済株式総数が8億株ですから、X社の1株当たり純利益=290,000百万円÷8億=362.5円です。 よって、X社のPER=4,000円÷362.5円=11.034…≒11.03倍となります。 Y社は、発行済株式総数が3億株ですから、Y社の1株当たり純利益=46,500百万円÷3億=155円です。 よって、Y社のPER=1,500円÷155円=9.6774…≒9.68倍となります。 |
① | 「一般に、PERが高い銘柄ほど、株価は割安で今後の高い利益成長が期待されていると考えることができます」 |
② | 「 一般に、ROEが高い会社ほど、資産の効率的な活用がなされていると考えることができます」 |
③ | 「一般に、配当性向が高いほど、株主に対する利益還元の度合いが高いと考えることができます。配当性向は、Y社の数値がX社の数値を上回っています」 |
1. | 一般に、PERが高い銘柄ほど、株価は割高で、今後の高い利益成長が期待されていると考えることができます。 |
2. | 正しい記述です。ROEは、自己資本に対してどれだけの利益をあげたかを測る指標です。 |
3. | 配当性向(%)=配当金総額÷当期純利益×100ですから、前半部分は正しい記述です。 X社の配当性向=120,000百万円÷290,000百万円×100≒41.38%、Y社の配当性向=15,000百万円÷46,500百万円×100≒32.26%より、配当性向は、Y社の数値がX社の数値を下回っています。 |
Ⅰ | 「Aさんが特定口座(源泉徴収あり)において、X社株式を購入し、その配当金を特定口座に受け入れた場合、所得税および復興特別所得税と住民税の合計で、配当金額の( ① )%相当額が源泉徴収等されます。AさんがX社株式の次回の配当金を受け取るためには、権利付き最終日である6月( ② )までにX社株式を購入する必要があります」(注)制度改正あり |
Ⅱ | 「Aさんが特定口座(源泉徴収あり)において、仮にX社株式を株価4,000円で100株購入し、同年中に株価4,400円で全株売却した場合、所得税および復興特別所得税と住民税の合計で、譲渡益に対して( ① )%相当額が源泉徴収等されます。他方、譲渡損失が生じ、同年中にX社株式の配当金を特定口座に受け入れた場合、譲渡損失の金額と配当金額は特定口座内で損益通算されます。なお、控除しきれない上場株式等の譲渡損失の金額については、確定申告をすることにより、翌年以降( ③ )年間の繰越控除が可能です」 |
イ.1 ロ.3 ハ.5
ニ.15.315 ホ.20.315
ヘ.20.42
ト.25日(火)
チ.27日(木) リ.28日(金)
① | 特定口座に受け入れた配当金に対しては、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%が源泉徴収されます。 |
② |
株式の受け渡しは、約定日から起算して、4営業日後です。 【改正後】株式の受け渡しは、約定日から起算して、3営業日後です。 |
③ | 上場株式等の譲渡損失の金額は、翌年以降3年間にわたって繰越控除する事が可能です。 |
会社員のAさんは、妻Bさんおよび母Cさんとの3人家族である。なお、不動産所得の金額の前の「▲」は赤字であることを表している。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(63歳)]
会社員
[妻Bさん(61歳)]
2018年中に、パートタイマーとして給与収入100万円と特別支給の老齢厚生年金30万円を得ている。
[母Cさん(88歳)]
2018年中に、老齢基礎年金50万円を受け取っている。
<Aさんの2018年分の収入等に関する資料>
[給与所得の金額]
192万円
[不動産所得の金額]
▲120万円(白色申告)
(土地等の取得に係る負債の利子20万円を含む)
[報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の年金額]
80万円
[確定拠出年金の老齢給付の年金額]
30万円
[個人年金保険契約に基づく年金収入]
100万円(必要経費は60万円)
<妻Bさんの2018年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
100万円
[報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の年金額]
30万円
※ | 妻Bさんおよび母Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2018年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
イ.山林 ロ.退職 ハ.一時
ニ.事業 ホ.雑
① | 損益通算の対象となる所得は、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つです。 |
② | 損益通算の第一次通算で、経常所得と通算する所得は、同じく経常的な所得である不動産所得と事業所得のマイナスです。 |
③ | 損益通算の第一次通算では、非経常的な所得である譲渡所得のマイナスは、同じく非経常的な所得である一時所得と通算します。 |
1. | 正しい記述です。
配偶者控除は、納税者の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が38万円以下である等の要件を満たすと適用を受ける事が出来ます。 【改正後】 |
2. | 母Cさんの雑所得は公的年金等控除額の最低額に満たないため、母Cさんの合計所得金額は0になります。また、母Cさんは70歳以上の扶養親族であるため、老人扶養親族に該当します。 老人扶養親族は、同居していると58万円の控除を受けることができます(同居していなければ48万円)。 |
3. | 純損失の繰越控除は、青色申告者にのみ与えられた権利です。 |
① | 総所得金額に算入される雑所得の金額 |
② | 総所得金額 |
<公的年金等控除額(65歳未満の者)>(注)制度改正あり | |
収入金額 | 公的年金等控除額 |
330万円未満 | 120万円 |
330万円以上 410万円未満 |
収入金額×25%+37.5万円 |
410万円以上 770万円未満 |
収入金額×15%+78.5万円 |
770万円以上 | 収入金額×5%+155.5万円 |
1. | 雑所得=公的年金等に係る雑所得+公的年金等以外の雑所得です。 公的年金等に係る雑所得=80万円+30万円-70万円=40万円です。 また、公的年金等以外の雑所得=100万円-60万円=40万円です。 よって、雑所得=40万円+40万円=80万円となります。 なお、雑所得はその全額が総所得金額に算入される為、総所得金額に算入される雑所得は、80万円です。 |
2. | 不動産所得の計算上生じた赤字120万円の内、土地等の取得に係る負債の利子20万円を除く100万円は損益通算の対象となります。 よって、総所得金額=192万円-100万円+80万円=172万円となります。 |
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