お金の寺子屋

FP2級実技(生保)解説-2024年5月・問10~15

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(61歳)は、妻Bさん(56歳)および長男Cさん(24歳)との3人家族である。Aさんは、2023年中に一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金を受け取っている。なお、下記の〈Aさんの2023年分の収入等に関する資料〉において、不動産所得の金額の前の「▲」は赤字であることを表している。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(61歳)]
会社員

[妻Bさん(56歳)]
パートタイマー。2023年中に給与収入100万円を得ている。

[長男Cさん(24歳)]
大学院生。2023年中にアルバイトとして給与収入80万円を得ている。

<Aさんの2023年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
780万円

[不動産所得の金額]
▲15万円(白色申告)

損失の金額150万円のうち、当該不動産所得を生ずべき土地の取得に係る負債の利子の額10万円を含む。

[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]

契約年月 2016年7月
契約者(=保険料負担者) Aさん
被保険者 Aさん
死亡給付金受取人 妻Bさん
解約返戻金額 620万円
正味払込保険料 500万円
妻Bさんおよび長男Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
所得税における損益通算に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「損益通算の対象となる不動産所得、( ① )所得、譲渡所得、( ② )所得の4つの所得金額の計算上生じた損失の金額がある場合には、一定の順序に従ってこれを他の各種所得の金額から控除します。
損益通算は、第一次通算、第二次通算、第三次通算の順に行われます。第一次通算では、不動産所得または( ① )所得の金額の計算上生じた損失の金額を、給与所得などの経常所得の金額から控除します。また、譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、( ③ )所得の金額から控除します。第一次通算によってもなお控除しきれない損失の金額がある場合は、第二次通算および第三次通算を行うことになります」
<語句群>
イ.配当 ロ.事業 ハ.一時 ニ.雑 
ホ.山林
正解:ロ、ホ、ハ
第一次通算では、不動産所得と事業所得(総合課税される所得)の赤字を、経常所得(不動産所得、事業所得、利子所得、配当所得、給与所得、雑所得)の黒字と通算します。
損失が出た場合に損益通算の対象となる所得は、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の4つです。
第一次通算では、経常所得のグループと、譲渡所得・一時所得のグループに分けて損益通算を行いますから、総合課税される譲渡所得の赤字は、一時所得の黒字と通算します。
【問11】
Aさんの2023年分の所得税の課税に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが受け取った確定拠出年金の老齢給付金の年金額は、雑所得として総合課税の対象となりますが、公的年金等控除額が控除されるため、雑所得の金額は算出されません」
「Aさんが受け取った一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、契約から10年以内の解約のため、金融類似商品に該当し、源泉分離課税の対象となります」
「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の額は、38万円です」
正解:○、×、○
正しい記述です。確定拠出年金の老齢給付金の年金額は、公的年金等の雑所得となるため、収入金額から公的年金等控除額を引いて所得の額を計算します。
公的年金等控除額は、最低でも40万円が保証されますから、公的年金等の雑所得の収入金額が30万円である場合、公的年金等に係る雑所得の金額は0円となります。
一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、契約から5年以内に解約した場合には、金融類似商品に該当し、源泉分離課税の対象となりますが、5年を超えて解約した場合には、一時所得として総合課税の対象となります。
妻Bさんは70歳以下であり、給与所得の額は、100万円-65万円=35万円ですから、一般の控除対象配偶者として配偶者控除の適用を受けるための合計所得金額の要件(48万円以下)を満たします。
Aさんの合計所得金額は900万円以下ですから、配偶者控除の額は38万円となります。
【問12】
Aさんの2023年分の所得税の算出税額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)総所得金額 ( ① )円
社会保険料控除 □□□円
生命保険料控除 □□□円
地震保険料控除 □□□円
配偶者控除 □□□円
扶養控除 ( ② )円
基礎控除 ( ③ )円
(b)所得控除の額の合計額 2,300,000円
(c)課税総所得金額((a)-(b)) □□□円
(d)算出税額((c)に対する所得税額) ( ④ )
<資料>給与所得控除額
給与収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%-10万円 
(最低55万円)
180万円超
360万円以下
収入金額×30%+8万円
360万円超
660万円以下
収入金額×20%+44万円
660万円超
850万円以下
収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円
<資料>所得税の速算表表
課税される
所得金額
税率 控除額
195万円未満 5%
195万円以上
330万円未満
10% 97,500円
330万円以上
695万円未満
20% 427,500円
695万円以上
900万円未満
23% 636,000円
900万円以上
1,800万円未満
33% 1,536,000円
1,800万円以上
4,000万円未満
40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円
正解:4,870,000、380,000、480,000、132,500
給与所得の額780万円-(780万円×10%+110万円)=592万円は、全額総所得金額に算入されます。
不動産所得の赤字150万円のうち、土地取得のための借入金の利子相当額10万円を除いた、140万円が損益通算の対象となります。
確定拠出年金の老齢給付金の年金額に係る雑所得の額は、0円(問11①の解説の通り)です。
解約返戻金に係る一時所得の額=総収入金額-収入を得るために直接支出した金額-特別控除額(最高50万円)=620万円-500万円-50万円=70万円であり、2分の1が総所得金額に算入されます。
よって、総所得金額=592万円-140万円+70万円×1/2=487万円となります。
長男Cさんは、23歳以上70歳未満であり、給与所得の額は、80万円-65万円=15万円ですから、一般の控除対象扶養親族として38万円の控除を受けることができます。
合計所得金額が2,400万円以下である人が受けることができる基礎控除の額は、48万円です。
2,300,000円×10%-97,500円=132,500円です。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
個人で不動産賃貸業を営んでいるAさん(66歳)は、X市内の自宅で妻Bさん(62歳)との2人暮らしである。Aさんの推定相続人は、妻Bさん、長男Cさん(35歳)および二男Dさん(31歳)の3人である。
長男Cさんは、X市内の企業に勤務しており、Aさんの自宅から比較的近い場所に住んでいる。一方、二男Dさんは他県に所在する戸建て住宅(持家)に住んでおり、X市に戻ってくる予定はないようである。
Aさんは、自身の相続に関し、普段から不動産賃貸業を手伝ってくれている長男Cさんに賃貸マンションを相続させたいと考えている。長男Cさんと二男Dさんの関係は良好であり、2人の子が遺産分割で揉めることはないと思っているが、Aさんは兄弟間で相続財産の偏りが生じることに一抹の不安を感じている。

<Aさんの推定相続人>
[妻Bさん(62歳)]
Aさんと自宅で同居している。

[長男Cさん(35歳)]
会社員。妻と子の3人でX市内に暮らしている。

[二男Dさん(31歳)]
会社員。妻と2人で他県に暮らしている。

<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
現預金 8,000万円
自宅敷地(300㎡) 4,500万円(注)
自宅建物 00万円
賃貸マンション敷地(500㎡) 1億2,000万円(注)
賃貸マンション建物 6,000万円
(注) 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問13】
Aさんの相続に関する次の記述①~④について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「ご家族の仲が良好であっても、相続開始後に遺産分割で揉めることがないように備えておくことが大切です。相続税の申告期限までに遺産分割協議が調わなかった場合、分割されていない財産について、相続税の申告時において『配偶者に対する相続税額の軽減』や『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができません」
「円滑な遺産分割のため、遺言書の作成をお勧めします。公正証書遺言は、作成された遺言書の原本が家庭裁判所に保管されるため、紛失や改ざんのおそれがなく、安全性が高い遺言といえます」
「遺言書を作成する際は、各相続人の遺留分に留意する必要があります。仮に、Aさんの相続に係る遺留分を算定するための財産の価額を3億4,000万円とした場合、二男Dさんの遺留分の金額は、8,500万円となります」
「二男Dさんに対する代償交付金を準備する方法として、契約者(=保険料負担者)および被保険者をAさん、死亡保険金受取人を長男Cさんとする一時払終身保険に加入する方法があります。ただし、死亡保険金は、特段の事情がない限り、遺留分を算定するための財産に含まれますので、保険金額について十分に検討する必要があります」
正解:○、×、×、×
正しい記述です。『配偶者に対する相続税額の軽減』や『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができるのは、原則として、相続税の申告期限までに遺産分割が完了している財産に限られます。
但し、相続税の申告書または更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割した場合や、相続税の申告期限から3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4ヵ月以内に分割された場合には、更正の請求をして適用を受けることができます。
公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。
抽象的遺留分の割合は、相続人が直系尊属のみである場合を除いて、遺留分算定基礎財産の1/2です。
また、各相続人の具体的遺留分は、抽象的遺留分を遺留分権利者が法定相続分通り按分した割合となります。
よって、二男Dさん(法定相続分:1/2×1/2=1/4)の具体的遺留分の割合は、1/2×1/4=1/8です。
したがって、具体的遺留分の額は、3億4,000万円×1/=4,250万円となります。
死亡保険金は、みなし相続財産ですから、原則として、遺産分割の対象外となるため、遺留分算定の基礎となる財産の額には含まれません。
【問14】
Aさんの相続に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「妻Bさんが自宅の敷地および建物を相続により取得し、自宅の敷地の全部について、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、自宅の敷地(相続税評価額4,500万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を( ① )万円とすることができます。なお、自宅の敷地と賃貸マンションの敷地について、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けようとする場合、( ② )」
「『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受けた場合、妻Bさんが相続により取得した財産の金額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか( ③ )金額までであれば、原則として、妻Bさんが納付すべき相続税額は算出されません」 
<語句群>
イ.900 ロ.2,250 ハ.3,000 
ニ.適用対象面積は所定の算式により調整され、完全併用はできません 
ホ.それぞれの宅地の適用対象の限度面積まで適用を受けることができます 
へ.多い  ト.少ない
正解:イ、二、ヘ
自宅の敷地は特定居住用宅地等として330㎡まで80%評価減されますから、相続税の課税価格に算入すべき金額は、4,500万円×(1-80%)=900万円となります。
小規模宅地の特例の適用を受ける場合、賃貸マンションの敷地は、貸付事業用宅地等に区分されます。貸付事業用宅地等と、特定居住用宅地等など他の区分の宅地の両方について特例の適用を受ける場合、適用対象面積は所定の算式により調整されます。
配偶者に対する相続税額の軽減は、配偶者が相続または遺贈により取得した財産のうち、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか多い金額までに係る相続税額を0にする制度です。
【問15】
現時点(2024年5月26日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は2億8,000万円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)相続税の課税価格の合計額 2億8,000万円
(b)遺産に係る基礎控除額 ( ① )万円
課税遺産総額(a-b) □□□万円
相続税の総額の基となる税額
妻Bさん □□□万円
長男Cさん ( ② )万円
二男Dさん □□□万円
(c)相続税の総額 ( ③ )万円
<資料>相続税の速算表
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
20,000万円超
30,000万円以下
45% 2,700万円
30,000万円超
60,000万円以下
50% 4,200万円
60,000万円超 55% 7,200万円
正解:4,800、1,040、5,020
相続税の基礎控額除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の式で計算されます。
よって、3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。
課税遺産総額=2億8,000万円-4,800万円=2億3,200万円です。
よって、長男Cさんの法定相続分(1/2×1/2=1/4)に対応する取得金額は、2億3,200万円×1/4=5,800万円となります。
これに対応する相続税額は、5,800万円×30%-700万円=1,040万円です。
妻Bさんの法定相続分(1/2)に対応する取得金額は、2億3,200万円×1/2=1億1,600万円となります。
これに対応する相続税額は、1億1,600万円×40%-1,700万円=2,940万円です。
また、二男Dさんの法定相続分に対応する相続税額は、長男Cさんと等しく、1,040万円です。
よって、相続税の総額は、2,940万円+1,040万円+1,040万円=5,020万円となります。

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