お金の寺子屋

FP2級実技(生保)解説-2024年5月・問1~9

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(41歳)は、妻Bさん(39歳)との2人暮らしである。Aさんは、X株式会社を2021年7月末日に退職し、個人事業主として独立した。独立から3年近くが経過した現在、事業は軌道に乗り、収入は安定している。
Aさんは、公的年金制度を理解したうえで、老後の収入を増やすことができる各種制度を利用したいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんとその家族に関する資料>

[Aさん(1982年9月22日生まれ・42歳、個人事業主)]
公的年金加入歴 下図のとおり(60歳までの見込みを含む)
20歳から大学生であった期間(31月)は学生納付特例制度の適用を受けた(その期間の保険料は追納していない)
全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。

[妻Bさん(1984年6月14日生まれ・39歳、会社員)]

公的年金加入歴 20歳から大学生であった期間(34月)は国民年金の第1号被保険者として保険料を納付し、22歳から現在に至るまでの期間(205月)は厚生年金保険に加入している。また、65歳になるまでの間、厚生年金保険の被保険者として勤務する見込みである。
妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
Mさんは、Aさんに対して、Aさんが受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。年金額の計算にあたっては、《設例》の〈Aさん
とその家族に関する資料〉および下記の〈資料〉に基づくこと。なお、年金額は2023年度価額に基づいて計算し、年金額の端数処理は円未満を四捨五入すること。

「Aさんが65歳に達すると、老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権が発生します。Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の額は、( ① )円となります」 
「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額は、( ② )円となります。なお、Aさんの厚生年金保険の被保険者期間は( ③ )年以上ありませんので、老齢厚生年金の額に配偶者に係る加給年金額の加算はありません」
<資料>
正解:743,656、322,430、20
老齢基礎年金の計算上、20歳以上60歳未満の期間における、国民年金保険料納付期間や厚生年金保険の被保険者期間などは、年金額に反映されますが、学生納付特例の適用を受け追納していない期間などは、年金額に反映されません。
よって、老齢基礎年金の額=795,000円×(196+253)/480=743,656.25円≒743,656円となります。
報酬比例部分の額=300,000円×5.481/1,000×196=322,282.8円≒322,283円。
経過的加算額=1,657円×196/480-795,000円×196/480=147円。
よって、322,283円+147円=322,430円となります。
配偶者に係る加給年金額が加算されるためには、受給者の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上である等の要件を満たす必要があります。
【問2】
Mさんは、Aさんに対して、小規模企業共済制度について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「小規模企業共済制度は、Aさんのような個人事業主が廃業等した場合に必要となる資金を準備しておくための共済制度です。毎月の掛金は、1,000円から( ① )円までの範囲内で、500円単位で選択することができます。支払った掛金は、税法上、( ② )
の対象となります。 
共済金は、加入者に廃業等の事由が生じた場合に、掛金納付月数等に応じて支払われます。共済金の受取方法には、『一括受取り』『分割受取り』『一括受取りと分割受取りの併用』があります。『一括受取り』の共済金(死亡事由以外)は、税法上、( ③ )
として課税対象となります。 
なお、掛金納付月数が240カ月未満で任意解約した場合は、解約手当金の額が掛金合計額を下回りますので、早期の解約はお勧めできません」
イ.55,000 ロ.70,000 ハ.88,000 
ニ.事業所得の必要経費 ホ.所得控除 
ヘ.税額控除 ト.事業所得 
チ.一時所得 リ.退職所得
正解:ロ、ホ、リ
小規模企業共済制度の毎月の掛金の上限は7万円です。
小規模企業共済制度の掛金は、全額、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。
小規模企業共済制度の共済金を一括で受け取ると、死亡事由で受け取る場合を除いて、退職所得として課税されます。
【問3】
Mさんは、Aさんに対して、老後の収入を増やすことができる各種制度について説明した。Mさんが説明した次の記述①~④について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんは、国民年金の定額保険料に上乗せして、付加保険料を納付することができます。仮に、Aさんが付加保険料を200月納付し、65歳から老齢基礎年金を受給する場合、老齢基礎年金の額に付加年金として年額80,000円が上乗せされます」
「国民年金基金は、老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。加入は口数制となっており、1口目は2種類の終身年金(A型・B型)のいずれかを選択します」
「国民年金基金の1口目の給付には、国民年金の付加年金相当が含まれているため、Aさんが国民年金基金に加入した場合、国民年金の付加保険料を納付することはできません」
「国民年金の定額保険料や付加保険料を前納した場合、前納期間に応じて保険料の割引がありますが、国民年金基金の掛金については、前納による割引制度はありません」
正解:×、○、○、×
付加年金の額=200円×付加保険料納付月数より、付加保険料納付月数が200月の場合、付加年金の額は200円×200=40,000円となります。
正しい記述です。国民年金基金の1口目は、必ず終身年金を選択しなくてはなりません。
正しい記述です。
国民年金保険料と国民年金基金の掛金は、どちらも、前納による割引制度があります。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(62歳)は、専業主婦である妻Bさん(60歳)との2人暮らしである。Aさん夫妻には2人の子がいるが、いずれも結婚して独立している。
Aさんは、これまで健康には自信があったが、昨年の健康診断で高血圧と診断された。現在は、血圧を抑える薬を服用しており、数値は安定している。また、先日、同世代の友人が、がんに罹患し治療中であることを知ったこともあり、現在加入している生命保険を、医療保障を充実させたプランに見直したいと考えるようになった。
Aさんは、生命保険の見直しにあたって、公的医療保険制度(Aさんは全国健康保険協会管掌健康保険に加入)についても理解を深めたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんが現在加入している生命保険に関する資料>
保険の種類:定期保険特約付終身保険
契約年月日:2006年6月1日
月払保険料:24,200円(75歳払込満了)
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん

更新型の特約は、2016年6月1日に記載の保障金額で更新している。
入院特約、先進医療特約の更新限度は80歳である。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
Mさんは、Aさんに対して、健康保険の高額療養費について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

「Aさんのような70歳未満の健康保険の被保険者が、病気やケガで医師の診察を受けた場合、原則として、医療費の( ① )割を一部負担金として保険医療機関等の窓口で支払います。Aさんが、( ② )に医療機関等に支払った医療費の一部負担金等の合計が自己負担限度額を超えた場合、所定の手続により、自己負担限度額を超えた額が高額療養費として支給されます。この一部負担金等の合計には、差額ベッド代、食事代、保険適用となっていない医療行為等に係る費用は含まれず、70歳未満の者の場合、原則として、医療機関ごとに、入院・外来、医科・歯科別に一部負担金等が( ③ )円以上のものが計算対象となります。また、過去□□□以内に複数回、高額療養費が支給されると、( ④ )回目から自己負担限度額が軽減される仕組みがあります」
イ.1 ロ.2 ハ.3 ニ.4 ホ.5 
へ.9,000 ト.12,000 チ.21,000 
ル.過去2年以内
正解:ハ、リ、チ、ニ
70歳未満の健康保険の被保険者が病気やケガで医師の診察を受けた場合の自己負担割合は、原則として、3割です。
高額療養費の計算は、1ヵ月単位で行います。
高額療養費の計算は、70歳未満の人については、原則として、医療機関ごとに、入院・外来、医科・歯科別に一部負担金等が21,000円以上のものが対象となります。
健康保険には、直近12カ月の間に3回以上高額療養費の対象になった場合、4回目以降の自己負担限度額が引き下げられる制度(多数該当)があります。
【問5】
Mさんは、Aさんに対して、医療保険等の一般的な商品性について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「先進医療特約では、契約日時点において先進医療に該当した治療が先進医療給付金の対象となります。医療技術の進歩により、契約日以後、新たに先進医療の対象となっている治療もありますので、先進医療特約については、新規で加入したほうがよいでしょう」
「がん保障については、がんの再発時に一時金が支払われるものや、先進医療特約では保障の対象とならない自由診療を受けた場合を保障する商品も販売されています。Aさんのニーズに合わせて、保障内容を検討することをお勧めします」
「引受基準緩和型の医療保険は、引受基準緩和型ではない通常の医療保険と比べて、他の契約条件が同一であれば、保険料が高く設定されています。Aさんは高血圧とのことですが、健康状態によっては、通常の医療保険であっても加入できる場合がありますので、まずは通常の医療保険への申込みを検討してみるとよいと思います」
正解:×、○、○
先進医療給付金の対象となるのは、療養を受けた時点において、先進医療に該当した治療です。
適切な記述です。
適切な記述です。引受基準緩和型の医療保険は、リスクの高い人が加入しやすい分、他の契約条件が同一であれば、引受基準緩和型ではない通常の医療保険と比べて保険料が高く設定されています。
【問6】
Mさんは、Aさんに対して、Aさんが現在加入している生命保険の見直しについてアドバイスした。Mさんがアドバイスした次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「現時点のAさんの必要保障額を算出し、適正な死亡保険金額を把握することから保障内容の見直しを始めてください。仮に、必要保障額を算出した結果、死亡保険金額が過大であれば、現在加入している定期保険特約付終身保険の死亡保険金額を減額して、医療保険やがん保険に新規加入する方法も考えられます」
「現在加入している定期保険特約付終身保険の入院特約は、80歳まで告知や医師の診査なしで更新することができます。医療保障に係る更新後の特約保険料は、保険金額が同額であれば、更新前と同一となりますので、入院特約については解約せずに残しておくことも検討事項の1つです」
「現在加入している定期保険特約付終身保険を見直す方法として、契約転換制度の活用が考えられます。契約転換時の告知や医師の診査は不要で、健康状態にかかわらず、保障内容を見直すことができます」
正解:○、×、×
適切な記述です。
更新後の保険料は、更新時点の条件(年齢など)で再計算されるため、通常、更新後の保険料は更新前の保険料よりも高くなります。
契約転換制度(実質的には保険を再契約する仕組み)を利用する場合、告知や医師の診査が必要となり、健康状態によっては転換することができない場合があります。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)は、Aさん(45歳)が10年前に設立した会社である。設立当初は経営状況が厳しかったが、ここ数年は順調に業績を伸ばし、従業員も定着するようになった。Aさんは、現在、従業員の退職金準備の方法について検討している。
そこで、Aさんは、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんに相談したところ、中小企業退職金共済制度(X社は加入要件を満たしている)および〈資料〉の養老保険(福利厚生プラン)の提案を受けた。

<資料>Aさんが提案を受けた生命保険に関する資料
保険の種類 養老保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者) X社
被保険者 全役員・全従業員(45名)
死亡保険金受取人 被保険者の遺族
満期保険金受取人 X社
保険期間・保険料払込期間 65歳満期
死亡・高度障害保険金額 300万円(1人当たり)
年払保険料 540万円(45名の合計)
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金5,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金について、次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は万円単位とすること。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を29年6カ月とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。

退職所得控除額
退職所得の金額
正解:1,500、1,750
勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の式で計算されます。
また、退職所得控除額の計算上勤続年数の1年未満の端数は切り上げますから勤続年数は30年となります。
よって、退職所得控除額=800万円+70万円×(30-20)=1,500万円となります。
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(5,000万円-1,500万円)×1/2=1,750万円となります。
【問8】
Mさんは、Aさんに対して、中小企業退職金共済制度(以下、「中退共」という)について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「中退共は、中小企業の事業主が勤労者退職金共済機構と雇用者(従業員)を被共済者とする退職金共済契約を締結して、退職金を社外に積み立てる共済制度です。
掛金は、被共済者1人につき、月額5,000円から3万円までの範囲内から選択し、( ① )負担します。なお、短時間労働者(パートタイマー等)は、月額2,000円から加入することができ、役員は原則として加入することができません。
また、中退共に新たに加入する事業主に対して、原則として、掛金月額の( ② )(被共済者1人ごとに5,000円が上限)を加入後4カ月目から( ③ )、国が助成する制度があります。
被共済者が中途(生存)退職したときの退職金は、勤労者退職金共済機構から( ④ )支給されます」
<語句群>
イ.事業主が全額を 
ロ.事業主と被共済者が折半して 
ハ.被共済者が全額を 
ニ.2分の1 ホ.3分の1 ヘ.4分の1 
ト.半年間 チ.1年間 リ.2年間 
ヌ.事業主を経由して被共済者に 
ル.被共済者に直接
正解:イ、ニ、チ、ル
中退共の掛金は全額事業主負担です。
中退共の新規加入助成の額は、原則として、掛金月額の2分の1(従業員ごとに上限5,000円)相当額とされています。
中退共の新規加入助成を受けることができる期間は、加入後4ヵ月目から1年間です。
中退共の生存退職金は、勤労者退職金共済機構から被共済者に直接支払われます。
【問9】

Mさんは、Aさんに対して、〈資料〉の養老保険(福利厚生プラン)について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「福利厚生プランの保険料は、その全額を福利厚生費として損金の額に算入します」
「福利厚生プランは、原則として、役員・従業員全員を被保険者とする等の普遍的加入でなければなりませんので、制度導入後に入社した従業員について加入漏れがないように注意してください」
「死亡保険金が被保険者の遺族に支払われた場合、X社は当該保険契約に係る資産計上額を取り崩し、当該金額を雑損失として損金の額に算入します」
正解:×、○、○
福利厚生プランの保険料は、その2分の1相当額を福利厚生費として損金算入し、残りは資産計上します。
適切な記述です。
正しい記述です。資産計上額がある保険契約が消滅した場合、受け取った金額(死亡保険金や解約返戻金など)と資産計上額との差額が、雑収入(益金)または雑損失(損金)として処理されます。契約者である法人がお金を受け取らなかった場合、資産計上額=雑損失の金額となります。

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