FP2級実技(生保)解説-2023年9月・問10~15
Aさんは、妻Bさんおよび長男Cさんとの3人家族である。Aさんは、個人で不動産賃貸業を営んでいる。また、Aさんは、2023年中に、終身保険の解約返戻金および一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金を受け取っている。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(50歳)]
個人事業主(青色申告者)
[妻Bさん(48歳)]
会社員。2023年分の給与収入は600万円である。
[長男Cさん(21歳)]
大学生。2023年中の収入はない。
<Aさんの2023年分の収入等に関する資料>
[不動産所得の金額]
900万円(青色申告特別控除後)
[上場株式の譲渡損失の金額]
20万円(証券会社を通じて譲渡したものである)
[終身保険の解約返戻金]
契約年月:2004年8月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:460万円
正味払込保険料:500万円
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2014年6月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:600万円
正味払込保険料:500万円
※ | 妻Bさんおよび長男Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
Ⅰ | 「不動産の貸付が事業的規模に該当する場合、不動産所得の金額の計算上、青色申告特別控除として最高( ① )万円を控除することができます。( ① )万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、不動産所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出することに加えて、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行う必要があります。なお、不動産の貸付が事業的規模でない場合、青色申告特別控除額は最高( ② )万円です」 |
Ⅱ | 「不動産所得の金額の計算上、不動産の貸付が事業的規模に該当するか否かについては、社会通念上、事業と称するに至る程度の規模かどうかにより実質的に判断しますが、形式基準によれば、独立した家屋の貸付についてはおおむね( ③ )棟以上、アパート等については貸与することができる独立した室数がおおむね□□□以上であれば、特に反証のない限り、事業的規模として取り扱われます」 |
Ⅲ | 「青色申告者が受けられる税務上の特典として、青色申告特別控除のほかに、純損失の( ④ )年間の繰越控除、純損失の繰戻還付などが挙げられます」 |
イ.1 ロ.2 ハ.3 ニ.5
ホ.7 ヘ.10 ト.26
チ.38 リ.55 ヌ.65
① | 電子申告要件等を満たした場合、青色申告特別控除額は、最大65万円になります。 |
② | 不動産の貸付が事業的規模でない場合、不動産所得の計算上控除することができる青色申告特別控除額は、最大10万円です。 |
③ | 不動産所得の金額の計算上、不動産の貸付が事業的規模に該当するか否かは、一般的に、5棟10室基準で判定します。 |
④ | 所得税の計算上、純損失の繰越控除は最大3年間認められています。 |
① | 「上場株式の譲渡損失の金額は、不動産所得の金額や一時所得の金額と損益通算することができます」 |
② | 「Aさんが長男Cさんの国民年金保険料を支払った場合、その支払った保険料は、Aさんの社会保険料控除の対象となります」 |
③ | 「Aさんが適用を受けることができる長男Cさんに係る扶養控除の額は、38万円です」 |
① | 上場株式の譲渡損失の金額は、総合課税する所得と損益通算することはできません。 |
② | 正しい記述です。社会保険料控除は、本人だけでなく、生計を一にする配偶者や親族のために払ったお金も控除の対象となります。 |
③ | 長男Cさんに係る扶養控除の額は、長男Cさんが特定扶養親族(19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族)に該当するため、63万円です。 |
(a)総所得金額 | ( ① )円 |
社会保険料控除 | □□□円 |
生命保険料控除 | □□□円 |
地震保険料控除 | □□□円 |
扶養控除 | □□□円 |
基礎控除 | ( ② )円 |
(b)所得控除の額の合計額 | □□□円 |
(c)課税総所得金額((a)-(b)) | 6,650,000円 |
(d)算出税額((c)に対する所得税額) | ( ③ )円 |
<資料>所得税の速算表 | ||
課税される 所得金額 |
税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | - |
195万円以上 330万円未満 |
10% | 97,500円 |
330万円以上 695万円未満 |
20% | 427,500円 |
695万円以上 900万円未満 |
23% | 636,000円 |
900万円以上 1,800万円未満 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上 4,000万円未満 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
① | 不動産所得の金額900万円は、全額総所得金額に算入される。 上場株式の譲渡損失の金額は、総所得金額の計算上、損益通算の対象外。 一時所得の額は、(460万円+600万円)-(500万円+500万円)-50万円=10万円であり、2分の1が総所得金額に算入される。 よって、総所得金額は、900万円+10万円×1/2=905万円となります。 |
② | 合計所得金額が2,400万円以下の人が適用を受けることができる基礎控除の額は、48万円です。 |
③ | 6,650,000円×20%-427,500円=902,500円です。 |
X株式会社(非上場会社・製造業、以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(68歳)は、自宅で妻Bさん(67歳)、長男Cさん(42歳)家族と同居している。二男Dさん(40歳)は、他県に所在する戸建て住宅(持家)で暮らしている。
Aさんは、妻Bさんに自宅および相応の現預金等を相続させ、X社の専務取締役である長男CさんにAさんが100%所有するX社株式とX社本社敷地・建物を承継する予定であり、遺言書を作成しておきたいと考えている。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額、下記の生命保険を除く)> | ||
現預金等 | : | 1億3,000万円 |
X社株式 | : | 2億5,000万円 |
自宅(敷地350㎡) | : | 5,000万円(注) |
自宅(建物) | : | 2,000万円 |
X社本社敷地(敷地500㎡) | : | 8,000万円(注) |
X社本社建物 | : | 4,000万円 |
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
死亡保険金額:2,000万円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
① | 「自筆証書遺言は、その遺言の全文および財産目録をパソコンで作成し、日付および氏名を自書して押印することで作成することができます」 |
② | 「自筆証書遺言は、所定の手続により、法務局(遺言書保管所)に保管することができます。法務局に保管された自筆証書遺言は、遺言者の相続開始時に、家庭裁判所の検認が不要となります」 |
③ | 「公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成しますが、推定相続人が証人になることはできません」 |
① | 自筆証書遺言は、財産目録以外は全て自書により作成しなくてはなりません。 |
② | 正しい記述です。自筆証書遺言は、基本的に検認を必要としますが、自筆証書遺言保管制度を利用した場合、内容の改ざん等の恐れがないため、検認は不要となります。 |
③ | 正しい記述です。未成年者、推定相続人、受遺者、推定相続人や受遺者の配偶者や直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人は、証人になることができません。 |
Ⅰ | 「遺言により、自宅および現預金等を妻Bさん、X社関連の資産を長男Cさんに相続させた場合、二男Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額が6億円の場合、二男Dさんの遺留分の金額は、( ① )となります」 |
Ⅱ | 「長男CさんがX社本社敷地を相続により取得し、当該敷地について、特定同族会社事業用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、当該敷地(相続税評価額8,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を( ② )とすることができます。なお、自宅敷地とX社本社敷地について、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けようとする場合、( ③ )」 |
Ⅲ | 「Aさんが加入している一時払終身保険の死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。Aさんの相続開始後、妻Bさんが受け取る死亡保険金2,000万円のうち、相続税の課税価格に算入される金額は、( ④ )となります」 |
イ.200万円 ロ.500万円 ハ.800万円
ニ.1,600万円 ホ.2,880万円
ヘ.4,800万円 ト.5,000万円
チ.7,500万円 リ.1億5,000万円
ヌ.適用対象面積は所定の算式により調整され、完全併用はできません
ル.それぞれの宅地の適用対象の限度面積まで適用を受けることができます
① | 抽象的遺留分の割合は、相続人が直系尊属のみである場合を除いて、遺留分算定基礎財産の1/2です。 また、各相続人の具体的遺留分は、抽象的遺留分を遺留分権利者が法定相続分通り按分した割合となります。 よって、二男Dさんの具体的遺留分の割合は、1/2×1/4=1/8です。 したがって、具体的遺留分の額は、6億円×1/8=7,500万円となります。 |
② |
X社本社の敷地は特定同族会社事業用宅地等として400㎡まで80%評価減されますから、相続税の課税価格に算入すべき金額は、8,000万円×400㎡/500㎡×(1-80%)+8,000万円×100㎡/500㎡=2,880万円となります。 <別解> |
③ | 特定居住用宅地等と特定同族会社事業用宅地等は、調整計算をすることなく、それぞれの宅地の適用対象の限度面積まで適用を受けることができます(「特定居住用宅地等」と「特定事業用(/特定同族会社事業用)宅地等」では、調整計算が不要、「貸付事業用宅地等」を含むと調整計算が必要)。 |
④ | 死亡保険金の非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」の式で計算されます。 よって、課税価格に算入される死亡保険金の額は、2,000万円-(500万円×3)=500万円となります。 |
(a)相続税の課税価格の合計額 | 5億円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長男Cさん | ( ② )万円 |
二男Dさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
30,000万円超 60,000万円以下 |
50% | 4,200万円 |
60,000万円超 | 55% | 7,200万円 |
① | 相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の式で計算されます。 よって、3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。 |
② | 課税遺産総額=5億万円-4,800万円=4億5,200万円です。 よって、長男Cさんの法定相続分に対応する取得金額は、4億5,200万円×1/4=11,300万円となります。 これに対応する相続税額は、11,300万円×40%-1,700万円=2,820万円です。 |
③ |
妻Bさんの法定相続分に対応する取得金額は、4億5,200万円×1/2=22,600万円となります。 また、二男Dさんの法定相続分に対応する取得金額に対応する相続税額は、長男Cさんと同じく2,820万円ですから、相続税の総額は、7,470万円+2,820万円+2,820万円=13,110万円となります。 |
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