FP2級実技(生保)解説-2022年9月・問10~15
個人事業主であるAさんは、開業後直ちに青色申告承認申請書と青色事業専従者給与に関する届出書を所轄税務署長に対して提出している青色申告者である。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(60歳)]
個人事業主(青色申告者)
[妻Bさん(56歳)]
Aさんが営む事業に専ら従事している。青色事業専従者として、2022年中に100万円の給与を受け取っている。
[母Cさん(81歳)]
2022年中の収入は、公的年金の老齢給付のみであり、その収入金額は60万円である。
<Aさんの2022年分の収入等に関する資料>
[事業所得の金額]
500万円(青色申告特別控除後)
[個人年金保険に係る確定年金の年金額]
100万円(必要経費は80万円)
[養老保険(平準払)の満期保険金]
契約年月:1992年2月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
満期保険金受取人:Aさん
満期保険金額:440万円
正味払込保険料:360万円
※ | 妻Bさんおよび母Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2022年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
Ⅰ | 「事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除として最高( ① )万円を控除することができます。( ① )万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、事業所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出することに加えて、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行う必要があります。なお、確定申告書を法定申告期限後に提出した場合、青色申告特別控除額は最高( ② )万円となります」 |
Ⅱ | 「青色申告者が受けられる税務上の特典として、青色申告特別控除のほかに、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の( ③ )年間の繰越控除、純損失の繰戻還付、棚卸資産の評価について( ④ )を選択できることなどが挙げられます」 |
イ.3 ロ.5 ハ.7 ニ.10
ホ.38 ヘ.55 ト.65
チ.低価法 リ.原価法 ヌ.定額法
① | 事業所得の金額の計算上控除することができる青色申告特別控除の額は、基本的に、最高55万円ですが、一定の電子申告要件等を満たす場合、最高65万円になります。 |
② | 期限後申告をした場合、青色申告特別控除の額は、最高10万円になります。 |
③ | 青色申告者は、純損失を最大3年間繰越控除する事ができます。 |
④ | 青色申告者は、低価法により棚卸資産の評価をする事ができます。 |
① | 「妻Bさんは、青色事業専従者として給与の支払を受けていますので、妻Bさんの合計所得金額の多寡にかかわらず、控除対象配偶者には該当せず、Aさんは配偶者控除の適用を受けることはできません」 |
② | 「Aさんは母Cさんに係る扶養控除の適用を受けることができます。母Cさんに係る扶養控除の額は58万円です」 |
③ | 「契約者(=保険料負担者)および死亡保険金受取人をAさん、被保険者を妻Bさんとする定期保険(10年更新)に加入した場合、Aさんが支払う保険料は、事業所得の金額の計算上、必要経費として認められます」 |
① | 正しい記述です。青色事業専従者は、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除の対象になりません。 |
② | 70歳以上の同居している控除対象扶養親族が居る場合、老人扶養親族(同居老親等)として、1人当たり58万円の扶養控除を受ける事ができます。 |
③ | 事業所得の計算上、支払った生命保険の保険料が必要経費になる事はありません(生命保険料控除の対象となります)。 |
(a)総所得金額 | ( ① )円 |
社会保険料控除 | □□□円 |
生命保険料控除 | □□□円 |
地震保険料控除 | □□□円 |
扶養控除 | □□□円 |
基礎控除 | ( ② )円 |
(b)所得控除の額の合計額 | 2,000,000円 |
(c)課税総所得金額((a)-(b)) | □□□円 |
(d)算出税額((c)に対する所得税額) | ( ③ )円 |
<資料>所得税の速算表 | ||
課税される 所得金額 |
税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | - |
195万円以上 330万円未満 |
10% | 97,500円 |
330万円以上 695万円未満 |
20% | 427,500円 |
695万円以上 900万円未満 |
23% | 636,000円 |
900万円以上 1,800万円未満 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上 4,000万円未満 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
① | 事業所得の金額500万円は、全額総所得金額に算入されます。 個人年金保険の年金は、雑所得となり、100万円-80万円=20万円が全額総所得金額に算入されます。 平準払いの養老保険の満期保険金は、一時所得となり、440万円-360万円-50万円=30万円の2分の1相当額が総所得金額に算入されます。 よって、総所得金額=500万円+20万円+30万円×1/2=535万円となります。 |
② | 合計所得金額が2,400万円以下の人は、48万円の基礎控除の適用を受けることができます。 |
③ | 課税総所得金額=5,350,000円-2,000,000円=3,350,000円より、算出税額=3,350,000円×20%-427,500円=242,500円となります。 |
会社員のAさん(57歳)は、妻と子の3人で首都圏にあるM市に住んでいる。2022年7月19日に、故郷であるX市内の自宅(実家)で1人暮らしをしていた父Cさんが死亡した。父Cさんの相続に係る相続人は、Aさんおよび姉Bさん(62歳)の2人である。
父Cさんは、生前に遺言書を作成していなかった。Aさんは、姉Bさんと相談して、遺産分割を行う予定であるが、相続税の申告等、わからないことが多い。
また、Aさんおよび姉Bさんは、それぞれが所有する自宅に居住しており、X市に戻る予定はない。 築46年の実家の建物は老朽化が激しく、管理にも手間がかかるため、実家(敷地および建物)については、相続手続の終了後、売却したいと思っている。また、賃貸アパート(敷地および建物)については、Aさんが相続により取得し、貸付事業を承継する予定である。父Cさんの相続財産は、以下のとおりである。
<父Cさんの主な相続財産(相続税評価額)>
[現預金]
4,000万円
[自宅(実家)]
敷地(350㎡):7,000万円
建物(1976年築):300万円
[賃貸アパート(全室、賃貸中)]
敷地(300㎡):5,400万円
建物(6室):2,000万円
[死亡保険金]
1,000万円(契約者(=保険料負担者):父Cさん、被保険者:父Cさん、死亡保険金受取人:Aさん)
※ | 賃貸アパートの敷地は、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額である。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
(a)相続税の課税価格の合計額 | 1億7,000万円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
Aさん | ( ② )万円 |
姉Bさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
① | 基礎控除の額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×2=4,200万円です。 |
② | 課税遺産総額=1億7,000万円-4,200万円=1億2,800万円です。 よって、Aさんの法定相続分に対応する相続金額は、1億2,800万円×1/2=6,400万円となります。 これに対応する相続税額は、6,400万円×30%-700万円=1,220万円です。 |
③ | 姉Bさんの法定相続分に対応する相続税額は、Aさんと同じですから、相続税の総額は、1,220万円+1,220万円=2,440万円となります。 |
Ⅰ | 「父Cさんが2022年分の所得税について確定申告書を提出しなければならない場合に該当するとき、相続人は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から( ① )カ月以内に準確定申告書を提出しなければなりません」 |
Ⅱ | 「相続税の申告書の提出期限は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から( ② )カ月以内です。申告書の提出先は、父Cさんの死亡時の住所地を所轄する税務署長です」 |
Ⅲ | 「Aさんが父Cさんの貸付事業を相続税の申告期限までに承継する等の所定の要件を満たせば、賃貸アパートの敷地は、貸付事業用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができます。Aさんが当該敷地(相続税評価額5,400万円)について本特例の適用を受けた場合に減額される金額は、( ③ )万円となります」 |
① | 準確定申告の申告期限は、相続の開始があった事を知った日の翌日から4ヵ月以内です。 |
② | 相続税の申告期限は、相続の開始があった事を知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
③ |
貸付事業用宅地等は、対象となる宅地の200㎡までの部分に係る相続税評価額を50%減額します。 <別解> |
① | 「仮に、実家の敷地および建物をAさんと姉Bさんが共有名義で取得し、本特例の適用を受けた場合、 各人がそれぞれ最高3,000万円の特別控除の適用を受けることができます」 |
② | 「Aさんが老朽化した実家の建物を取り壊して更地で譲渡した場合、本特例の適用を受けることができません。 本特例の適用を受けることを検討しているのであれば、建物は現況の空き家のままにしておいてください」 |
③ | 「本特例の適用を受けるためには、相続税の申告期限までに譲渡を行う必要があります」 |
④ | 「本特例と『相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続税の取得費加算の特例)』は、重複して適用を受けることができますので、適用を受けるための要件を確認し、適用漏れがないようにしてください」 |
① | 正しい記述です。「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、対象となる居住用財産を相続人が共有名義で取得した場合、各相続人がそれぞれ3,000万円の控除を受ける事ができます。 |
② | 空き家を取り壊して更地で譲渡した場合も、適用を受けることができます(耐震基準を満たした、または、取壊しをした後に、その家屋または敷地を譲渡した場合に適用を受けることができる制度です)。 |
③ | 本特例の適用を受けるためには、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。 |
④ | 本特例と、相続税の取得費加算の特例は、重複して適用を受けることができません。 |
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