お金の寺子屋

FP2級実技(生保)解説-2022年9月・問1~9

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、妻Bさん(59歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。Aさんは、X社の継続雇用制度を利用して65歳まで働く予定である。
Aさんは、今後の資金計画を検討するにあたり、公的年金制度から支給される老齢給付について知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさん夫妻に関する資料>
[Aさん(会社員)]

1963年6月11日生まれ・会社員
公的年金加入歴: 下図のとおり(65歳までの見込みを含む)
20歳から大学生であった期間(34月)は国民年金に任意加入していない。
公的年金加入歴: 全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中

[妻Bさん(専業主婦)]

1963年4月20日生まれ・専業主婦
公的年金加入歴: 18歳でX社に就職してからAさんと結婚するまでの10年間(120月)、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
Mさんは、Aさんに対して、Aさんが65歳以後に受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。《設例》の<Aさん夫妻に関する資料>および下記の<資料>に基づき、次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。なお、年金額は2022年度価額に基づいて計算し、年金額の端数処理は円未満を四捨五入すること。

原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の年金額
原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の年金額
<資料>
正解:722,706円、1,080,854円
老齢基礎年金の計算上、20歳以上60歳未満厚生年金保険の被保険者期間は年金額に反映されますが、国民年金未加入期間は年金額に反映されません。
よって、老齢基礎年金の額=777,900円×446/480=722,705.83…円=722,706円となります。
報酬比例部分の額=25万円×7.125/1,000×204+40万円×5.481/1,000×302=1,025,479.8≒1,025,480円
経過的加算額=1,621円×480-777,800円×446/480=55,374.16…≒55,374円
年上の配偶者がいる場合、加給年金は支給されません。
よって、1,025,480円+55,374円=1,080,854円となります。
【問2】
Mさんは、Aさんに対して、老齢基礎年金について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「老齢基礎年金の支給開始年齢は原則65歳ですが、Aさんが希望すれば、60歳以上65歳未満の間に老齢基礎年金の繰上げ支給を請求することができます。ただし、繰り上げた月数に応じて年金額は減額されます。Aさんが63歳0カ月で老齢基礎年金の繰上げ支給を請求した場合、年金の減額率は( ① )%となります。なお、Aさんが老齢基礎年金の繰上げ支給を請求する場合、その請求と同時に老齢厚生年金の繰上げ支給の請求を( ② )。
また、老齢基礎年金の支給開始を繰り下げることもできます。支給開始を繰り下げた場合は、繰り下げた月数に応じて年金額が増額されます。Aさんが75歳0カ月で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、年金の増額率は( ③ )%となります」
<語句群>
イ.9.6 ロ.12 ハ.14.4 
ニ.42 ホ.60 ヘ.84 
ト.しなければなりません 
チ.するかどうか選択できます
正解:イ、ト、ヘ
公的年金を繰り上げた場合、1ヵ月当たり0.4%年金額が減額されますから、2年(24月)繰上げて63歳0ヵ月から受給を始めた場合、減額率は、0.4%×24=9.6%となります。
公的年金を繰り上げる場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り上げなくてはいけません。なお、繰下げは、別々に行う事ができます。
公的年金を繰り下げた場合、1ヵ月当たり0.7%年金額が増額されますから、10年(120月)繰上げて75歳0ヵ月から受給を始めた場合、増額率は、0.7%×120=84%となります。
【問3】
Mさんは、Aさんに対して、公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんおよび妻Bさんには、特別支給の老齢厚生年金の支給はありません。原則として、65歳から老齢基礎年金および老齢厚生年金を受給することになります」
「妻Bさんは、60歳以後、国民年金に任意加入し、国民年金の保険料を納付することにより、老齢基礎年金の年金額を増やすことができます」
「Aさんが、 65歳以後も引き続き厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務し、かつ、65歳から老齢厚生年金を受給する場合、Aさんの老齢厚生年金の報酬比例部分の額に基づく基本月額と総報酬月額相当額との合計額が47万円(支給停止調整額、2022年度価額)以下のときは調整が行われず、老齢厚生年金は全額支給されます」
正解:×、×、○
特別支給の老齢厚生年金は、基本的に、1961年4月1日以前に生まれた男性と、1966年4月1日以前に生まれた女性のうち、老齢基礎年金の受給資格期間の要件を満たし、厚生年金保険の被保険者期間が1年以上ある人に支給されますから、妻Bさんには支給されます。
60歳以後、国民年金に任意加入し、老齢基礎年金の年金額を増やすことができるのは、未納期間がある人です。妻Bさんは、未納期間がありませんから、任意加入する事はできません。
正しい記述です。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員であるAさん(31歳)は、先日、職場で生命保険会社の営業担当者から生命保険の提案を受けた。Aさんは、これまで独身である自分に生命保険は必要ないと考えていたが、提案を受けたことを機に、病気になった場合の保障の必要性を感じ、加入を検討するようになった。なお、Aさんは全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんが提案を受けた終身医療保険に関する資料>
保険の種類:無配当終身医療保険
月払保険料:6,100円(全額が介護医療保険料控除の対象)
保険料払込期間:終身払込(注1)
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
(注1) 保険料払込期間は、契約時に有期払込を選択することができる。
(注2) 1日以上の入院の場合に支払われる。
(注3) がん(悪性新生物)と診断確定された場合、または急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態に該当した場合に一時金が支払われる(死亡保険金の支払はない)。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
Mさんは、Aさんに対して、全国健康保険協会管掌健康保険の高額療養費制度について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な数値を、下記の〈数値群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんに係る医療費の一部負担金の割合は、( ① )割となりますが、同一月内に、医療機関等に支払った医療費の一部負担金の額が自己負担限度額を超えた場合、所定の手続により、自己負担限度額を超えた額が高額療養費として支給されます。この一部負担金の合計には、差額ベッド代、食事代、保険適用となっていない医療行為等は含まれません。また、過去12カ月以内に複数回高額療養費が支給されると、( ② )回目から自己負担限度額が軽減される仕組みがあります。
なお、事前に保険者から健康保険限度額適用認定証の交付を受け、医療機関の窓口に当該認定証と健康保険被保険者証を提示すると、一医療機関の窓口で支払う同一月内の一部負担金を自己負担限度額までとすることができます。
仮に、Aさんが病気により下記の<条件>で入院し、事前に健康保険限度額適用認定証の交付を受け、所定の手続をした場合、Aさんは、医療機関に一部負担金のうち( ③ )円を支払えばよく、実際の一部負担金との差額( ④ )円が現物給付されることになります」
<条件>
Aさんの標準報酬月額は30万円である。
入院は1カ所の病院で、期間は2022年10月3日~12日までの10日間である。
総医療費(すべて全国健康保険協会管掌健康保険の保険給付の対象となるもの)は 60万円である。
他に医療費はない。
<資料:医療費の自己負担限度額(月額)>
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
<数値群>
イ.1 ロ.1.5 ハ.2 ニ.3 
ホ.4 ヘ.80,100 ト.83,430 
チ.96,570 リ.180,000 ヌ.516,570
正解:ニ、ホ、ト、チ
義務教育就学後、70歳未満の人の医療費の一部負担の割合は、3割です。
高額療養費制度には、過去12カ月以内に4回以上高額療養費が支給されると、4回目から自己負担限度額が軽減される仕組み(多数該当)があります。
自己負担限度額=80,100円+(600,000円-267,000円)×1%=83,430円です。
高額療養費制度により現物給付される額=本来の自己負担額-自己負担限度額より、600,000円×30%-83,430円=96,570円です。
【問5】
Mさんは、Aさんが提案を受けた終身医療保険の保障内容について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが生まれて初めてがん(悪性新生物)に罹患したと医師によって診断確定され、10日間入院(手術なし)した場合、提案を受けた終身医療保険から支払われる給付金および一時金の合計額は110万円です」
「先進医療の治療を受けた場合、診察料や投薬料等に係る費用は公的医療保険の対象となりますが、技術料に係る費用は全額自己負担となりますので、先進医療特約の付加をお勧めします」
「提案を受けた終身医療保険の保険料払込期間を有期払込にすることで、毎月の保険料負担は減少し、保険料の払込総額も少なくなります。保険料負担を軽減するために有期払込を選択することをお勧めします」
正解:×、○、×
入院給付金10,000円×10+入院一時金特約10万円+三大疾病一時金特約100万円=120万円です。
正しい記述です。
他の条件を同じとすると、終身払込よりも有期払込の方が、毎月の保険料負担は大きいです。
【問6】
「生命保険の契約の際には、傷病歴や現在の健康状態などについて、事実をありのままに正しく告知してください。 告知受領権は生命保険募集人が有していますので、当該募集人に対して口頭で告知してください」
「Aさんが提案を受けた終身医療保険の保険料は、介護医療保険料控除の対象となります。介護医療保険料控除の控除限度額は、所得税で50,000円、住民税で25,000円です」
「医療技術の進歩や社会保険制度の改正等に合わせ、今後も生命保険の商品改定が行われていくと思います。保険料が割安なうちに終身医療保険に加入し、一生の保障を確保することもよいですが、一度加入して終わりにするのではなく、ライフステージの変化等に伴い、定期的に保障内容を見直すことをお勧めします」
正解:×、×、○
生命保険募集人には告知受領権はありません(告知受領権を有するのは、生命保険会社か、生命保険会社が指定した医師です)。
介護医療保険料控除の限度額は、所得税で40,000、住民税で28,000円です。
正しい記述です。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(45歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、現在、従業員に対する退職金の準備と事業保障資金の確保の方法について検討している。
そこで、Aさんは、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんに相談したところ、退職金の準備を目的として中小企業退職金共済制度(X社は加入要件を満たしている)および<資料1>の生命保険(福利厚生プラン)、事業保障資金の確保を目的として<資料2>の生命保険の提案を受けた。

<資料1>
保険の種類:養老保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:全従業員(30名)
死亡保険金受取人:被保険者の遺族
満期保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:65歳満期
死亡・高度障害保険金額:300万円(1人当たり)
年払保険料:400万円(30名の合計)
<資料2>
保険の種類:無配当定期保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:95歳満了
死亡・高度障害保険金額:1億円
年払保険料:250万円
最高解約返戻率:83%
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金5,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金について、次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は万円単位とすること。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を30年3カ月とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。

退職所得控除額
退職所得の金額
正解:1,570、1,715
退職所得控除額の計算上、1年未満の勤続年数は切り上げますから、勤続年数は31年となります。
よって、退職所得控除額=800万円+70万円×(31-20)=1,570万円となります。
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(5,000万円-1,570万円)×1/2=1,715万円となります。
【問8】
Mさんは、Aさんに対して、中小企業退職金共済制度(以下、「中退共」という)および<資料1>の生命保険(福利厚生プラン)について説明した。Mさんが説明した次の記述①~④について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「中退共は、退職金を社外に積み立てる退職金準備の共済制度です。新しく中退共に加入する場合、加入後4カ月目から1年間、掛金月額の2分の1(従業員ごとに上限5,000円)について国の助成が受けられます」
「中退共に加入後、急な資金需要が生じた場合、中退共の契約者貸付制度を利用することにより、資金を調達することができます」
「従業員が中途退職(生存退職)した場合、その従業員に係る福利厚生プランの解約返戻金はX社が受け取ることになりますが、中退共の退職金は、X社を経由せず、その従業員に直接支給されます」
「福利厚生プランの保険料は、その2分の1相当額を福利厚生費として損金の額に算入することができます」
正解:○、×、○、○
正しい記述です。
中退共には、小規模企業共済にあるような貸付制度はありません。
正しい記述です。
正しい記述です。福利厚生プラン(ハーフタックスプラン)の要件を満たした場合、保険料の2分の1を資産計上し、残りの2分の1を福利厚生費として損金算入することができます。
【問9】
Mさんは、Aさんに対して、<資料2>の定期保険の支払保険料の経理処理について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を、下記の〈数値群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「法人を契約者(=保険料負担者)および死亡保険金受取人とし、役員または従業員を被保険者とする保険期間が3年以上の定期保険で、最高解約返戻率が50%を超えるものの支払保険料の経理処理については、最高解約返戻率が『50%超( ① )%以下』『( ① )%超85%以下』『85%超』である場合の3つの区分に応じて取り扱います。
<資料2>の定期保険の最高解約返戻率は『( ① )%超85%以下』であるため、保険期間開始日から保険期間の( ② )割に相当する期間を経過する日までは、当期分支払保険料の( ③ )%相当額を前払保険料として資産に計上し、残額は損金の額に算入します。( ② )割に相当する期間経過後は、当期分支払保険料の全額を損金の額に算入するとともに、資産に計上した金額については、保険期間の7.5割に相当する期間経過後から保険期間終了日までにおいて均等に取り崩し、損金の額に算入します」
<数値群>
イ.4 ロ.5 ハ.6 ニ.50 
ホ.55 ヘ.60 ト.65 チ.70
正解:チ、イ、ヘ
資産計上割合は、最高解約返戻率によって決まり、最高解約返戻率は、50%以下(資産計上なし、全額損金算入)、50%超70%以下、70%超85%以下、85%超に分かれています。
資産計上期間は、最高解約返戻率が85%以下である場合、保険期間の前半4割の期間です。
最高解約返戻率が、70%超85%以下である場合、資産計上割合は60%です。

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