お金の寺子屋

FP2級実技(生保)解説-2019年1月・問10~15

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさんとの4人家族である。Aさんは、平成30年中に妻Bさんの入院・手術費用として医療費30万円を支払ったため、医療費控除の適用を受けようと思っている。
Aさんとその家族に関する資料および平成30年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(45歳)]
会社員

[妻Bさん(43歳)]
専業主婦。平成30年中の収入はない。

[長女Cさん(17歳)]
高校生。平成30年中の収入はない。

[二女Dさん(14歳)]
中学生。平成30年中の収入はない。

<Aさんの平成30年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
900万円

[不動産所得の金額]
40万円

[平準払養老保険(保険期間20年)の満期保険金]
契約年月:平成10年3月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
満期保険金受取人:Aさん
満期保険金額:220万円
正味払込済保険料:240万円

妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも平成30年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
所得税における所得控除に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のイ~リのなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「所得控除のうち、雑損控除、医療費控除および( ① )控除については、年末調整では適用を受けることができないため、これらの控除の適用を受けるためには所得税の確定申告が必要となります」
「通常の医療費控除は、その年分の総所得金額等の合計額が200万円以上である居住者の場合、その年中に支払った医療費の総額から保険金などで補填される金額を控除した金額が10万円を超えるときは、その超える部分の金額(最高200万円)をその居住者のその年分の総所得金額等から控除します。また、通常の医療費控除との選択適用となるセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)では、定期健康診断や予防接種などの一定の取組みを行っている者が自己または自己と生計を一にする配偶者等のために特定一般用医薬品等購入費を支払った場合、その額が( ② )円を超えるときは、その超える部分の金額(最高( ③ )円)を総所得金額等から控除することができます」
<語句群>
イ.12,000 ロ.24,000 ハ.38,000 
ニ.68,000 ホ.88,000 ヘ.120,000 
ト.住宅借入金等特別 
チ.配当 リ.寄附金
正解:リ、イ、ホ
事業主が把握していない所得控除(寄付金控除、医療費控除、雑損控除)を受けようとする場合には、確定申告をする必要があります。
セルフメディケーション税制は、1年間に支払ったOTC医薬品の購入額(保険金等で補填される金額を除く)が12,000円を超える場合に、適用を受ける事ができます。
セルフメディケーション税制に係る医療費控除額は、最高88,000円です。
【問11】
Aさんの平成30年分の所得税の課税に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。(注)制度改正あり (注)制度改正あり

「養老保険の満期保険金に係る保険差損の金額は、所得税の確定申告をすることにより、不動産所得の金額と損益通算することができます」
「Aさんの平成30年分の合計所得金額は900万円以下となりますので、Aさんは38万円の配偶者控除の適用を受けることができます」
「長女Cさんは特定扶養親族に該当しますので、Aさんが適用を受けることができる長女Cさんに係る扶養控除の額は63万円です」
正解:×、○、×
養老保険の満期保険金に係る保険差損の金額は、一時所得ですから、損失を損益通算する事はできません。
正しい記述です。配偶者控除を受ける場合、納税者本人の合計所得金額が900万円以下であれば、控除額は38万円となります。
ここでは、合計所得金額=給与所得+不動産所得です(一時所得のマイナスは損益通算不可)。給与所得の額は、問12の資料を見ると、900万円-(900万円×10%+120万円)=690万円と求める事が出来ますが、給与所得控除額が最低65万円(制度改正後の現在は55万円)保証されるという論点を理解していれば、給与所得の額が835万円(同845万円)以下になる(=不動産所得40万円を加えても合計所得金額は900万円以下になる)と分かり、正解を導く事ができます。
長女Cさんは、16歳以上19歳未満ですから、一般の控除対象扶養親族です。
【問12】
Aさんの平成30年分の所得税の算出税額を計算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)総所得金額 ( ① )円
医療費控除 □□□円
社会保険料控除 □□□円
生命保険料控除 50,000円
地震保険料控除 20,000円
配偶者控除 □□□円
扶養控除 ( ② )円
基礎控除 □□□円
(b)所得控除の額の合計額 3,000,000円
(c)課税総所得金額((a)-(b)) □□□円
(d)算出税額((c)に対する所得税額) ( ③ )円
<資料>給与所得控除額
給与収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40% 
(最低65万円)
180万円超
360万円以下
収入金額×30%+18万円
360万円超
660万円以下
収入金額×20%+54万円
660万円超
1,000万円以下
収入金額×10%+120万円
1,000万円超 220万円
<資料>所得税の速算表
課税される
所得金額
税率 控除額
195万円未満 5%
195万円以上
330万円未満
10% 97,500円
330万円以上
695万円未満
20% 427,500円
695万円以上
900万円未満
23% 636,000円
900万円以上
1,800万円未満
33% 1,536,000円
1,800万円以上
4,000万円未満
40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円
正解:7,300,000、380,000、432,500
一時所得のマイナスは損益通算する事ができませんから、Aさんの合計所得金額=給与所得+不動産所得となります。
速算表より、給与所得=900万円-(900万円×10%+120万円)=690万円ですから、Aさんの合計所得金額=690万円+40万円=730万円となります。

長女Cさんは、合計所得金額が38万円以下で、16歳以上19歳未満ですから、一般の控除対象扶養親族として、38万円の控除の対象となります。
また、二女Dさんさんは、16歳未満ですから、扶養控除の対象とはなりません。
よって、扶養控除の金額は、38万円です。

<参考>
現在は、扶養控除を受けるための親族の合計所得金額の要件は、48万円以下である事とされています。

①より、課税総所得金額=730万円-300万円=430万円ですから、速算表より、
算出税額=430万円×20%-427,500円=432,500円となります。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
Aさん(72歳)は、非上場企業のX株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。X社の技術力は高く、複数の大手メーカーとの取引を拡大することで、業績は順調に推移してきた。Aさんは、3年後をめどに、X社の専務取締役である長男Cさん(40歳)に事業を承継させたいと考えている。Aさんは、自社株式の移転方法として、平成30年度税制改正により創設された非上場株式等についての贈与税の納税猶予および免除の特例(事業承継税制の特例)の活用を検討している。
Aさんの推定相続人は、妻Bさん(70歳)、長男Cさんおよび長女Dさん(38歳)の3人である。長女Dさんは、結婚しており、他県で生活している。
X社の概要等は、以下のとおりである。

<X社の概要>
[業種]
電子部品製造業

[資本金等の額]
5,000万円
(発行済株式総数1,000,000株、すべて普通株式で1株につき1個の議決権を有している)

[株主構成]
Aさん:800,000株
妻Bさん:100,000株
長男Cさん:100,000株

[株式の譲渡制限]
あり
X社は、相続その他の一般承継によりX社株式を取得した者に対し、当該株式をX社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めている。

[その他]
年商:30億円
経常利益:8,000万円
従業員数:120人
X社株式の相続税評価額の計算上の規模区分は「大会社」であり、特定の評 価会社には該当しない。

<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
現預金等:1億円
X社株式:3億円
自宅敷地(330㎡):3,000万円(※)
自宅建物 :1,000万円
X社本社敷地(600㎡):3,000万円(※)
X社本社建物:5,000万円

合計:5億2,000万円

「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の金額
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問13】
現時点(平成31年1月27日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は5億2,000万円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)課税価格の合計額 5億2,000万円
(b)遺産に係る基礎控除額 ( ① )万円
課税遺産総額(a-b) □□□万円
相続税の総額の基となる税額
妻Bさん □□□万円
長男Cさん ( ② )万円
長女Dさん □□□万円
(c)相続税の総額 ( ③ )万円
<資料>相続税の速算表(一部抜粋)
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
20,000万円超
30,000万円以下
45% 2,700万円
30,000万円超
60,000万円以下
50% 4,200万円
正解:4,800、3,020、13,960
遺産に係る基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
法定相続人は、妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんの3人ですから、遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×3=4,800万円です。
課税遺産総額は5億2,000万円-4,800万円=4億7,200万円です。
相続税の総額の基となる税額を計算する際には、課税遺産総額を法定相続分に応じて按分したと仮定して計算しますから、長男Cさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億1,200万円×1/4=11,800万円です。
よって、長男Cさんの相続税の総額の基となる税額は、11,800万円×40%-1,700万円=3,020万円となります。
妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、(5億2,000万円-4,800万円)×1/2=23,600万円ですから、妻Bさんの相続税の総額の基となる税額は、23,600万円×45%-2,700万円=7,920万円です。
②より、長男Cさんの相続税の総額の基となる税額は3,020万円であり、長女Dさんの相続税の総額の基となる税額は、長男Cさんと同じ(3,020万円)ですから、相続税の総額=7,920万円+3,020万円+3,020万円=13,960万円になります。
【問14】
平成30年度税制改正により創設された非上場株式等についての贈与税の納税猶予および免除の特例(以下、「本特例」という)に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「本特例の適用を受けた場合、贈与者の死亡時まで本特例の対象となる非上場株式等の贈与に係る贈与税額の90%相当額の納税が猶予されます」
「本特例の対象となる贈与者は、代表権を有していた先代経営者のAさんに限られますので、後継者である長男Cさんが妻BさんからX社株式の贈与を受けた場合、当該株式は本特例の適用対象とはなりません」
「本特例の適用後、10年以内は平均8割の雇用を確保する必要があります。平均8割の雇用確保要件を満たさない場合、納税猶予税額を納付しなければなりません」
正解:×、×、×
非上場株式等についての贈与税の納税猶予および免除の特例の適用を受けると、贈与者の死亡時まで、本特例の対象となる非上場株式等の贈与に係る贈与税額の100%相当額の納税が猶予されます。
非上場株式等についての贈与税の納税猶予および免除の特例の適用対象となる贈与者は、代表権を有していた者(先代経営者)に限られません。
非上場株式等についての贈与税の納税猶予および免除の特例の適用を受ける為には、本特例の適用後5年以内は、平均8割の雇用を確保する必要があります。
【問15】
Aさんの相続等に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な数値を、下記の<数値群>のイ~ルのなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「遺産分割をめぐる争いを防ぐために、遺言により遺産の分割の方法を指定しておくことをお勧めします。遺言の普通方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言等がありますが、形式不備による無効や遺言書の紛失等を考えると、公正証書遺言が望ましいと思います。公正証書遺言とは、証人( ① )人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成するものです」
「X社関連の資産(X社株式、X社本社敷地・建物)を中心に相続財産の大半を長男Cさんに相続させた場合、妻Bさんおよび長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分算定の基礎となる財産が5億円の場合、長女Dさんの遺留分の金額は、( ② )万円となります」
「 納税資金の確保を目的として、契約者(=保険料負担者)および被保険者をAさん、死亡保険金受取人を長男Cさんとする終身保険に加入することも検討事項の1つとなります。終身保険に加入後、Aさんの相続が開始した場合、長男Cさんが受け取る死亡保険金は( ③ )万円を限度として、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができます」
「長男Cさんが相続により取得するX社本社敷地は、所定の要件を満たすことにより、特定同族会社事業用宅地等として、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けることができます。特定同族会社事業用宅地等に該当するX社本社敷地は、( ④ )㎡までの部分について、通常の価額から80%相当額を減額した金額を、相続税の課税価格に算入すべき価額とすることができます」
<数値群>
イ.1 ロ.2 ハ.3 ニ.200 
ホ.330 ヘ.400 ト.500 
チ.1,500 リ.6,250 
ヌ.10,000 ル.12,500
正解:ロ、リ、チ、ヘ
公正証書の作成には、証人が2人以上必要です。
具体的遺留分の金額は、相対的遺留分の金額×法定相続分です。
相続人が直系尊属のみである場合を除き、相対的遺留分の割合は、遺留分算定の基礎となる財産の1/2ですから、相対的遺留分の金額は、2億5,000万円です。
長女Dさんの法定相続分は1/4ですから、長女Dさんの遺留分の金額は、2億5,000万円×1/4=6,250万円です。
死亡保険金の非課税限度額は、500万円×法定相続人の数です。
よって、相続税の課税対象となる死亡保険金は、500万円×3=1,500万円まで非課税となります。
小規模宅地等の特例を受ける時、特定同族会社事業用宅地等に該当す土地は、400㎡までの部分について、評価額が8割減となります。

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