お金の寺子屋

FP2級学科解説-2024年1月・問51~60

【問51】
民法上の贈与に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 贈与は、当事者の一方が、ある財産を無償で相手方に与える意思表示をすることにより効力が生じ、相手方が受諾する必要はない。
2. 定期贈与は、贈与者または受贈者のいずれか一方が生存している限り、その効力を失うことはない。
3. 死因贈与は、民法の遺贈に関する規定が準用されるため、書面によってしなければならない。
4. 書面によらない贈与は、その履行の終わった部分を除き、各当事者が解除をすることができる。
正解:
1. 贈与は契約ですから、それが効果を持つためには、両者の合意が必要です。
2. 定期贈与は、当事者の一方が死亡すると効力が消滅します。
3. 死因贈与は、贈与契約の一種ですから、口頭ですることも可能です。
4. 正しい記述です。なお、書面による贈与は、その履行の終わっていない部分も、各当事者が一方的に解除をすることはできません。
【問52】
みなし贈与財産等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 負担付贈与があった場合において、受贈者の負担額が贈与者以外の第三者の利益に帰すときは、原則として、当該第三者が受贈者の負担額に相当する金額を贈与によって取得したこととなり、贈与税の課税対象となる。
2. 子が父から著しく低い価額の対価で土地を譲り受けた場合には、原則として、その相続税評価額と支払った対価の額との差額を、子が父から贈与により取得したものとみなされ、贈与税の課税対象となる。
3. 債務者である個人が資力を喪失して債務を弁済することが困難になり、債権者である個人から当該債務の免除を受けた場合、当該免除を受けた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額は、贈与税の課税対象とならない。
4. 離婚による財産分与により取得した財産は、その価額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して社会通念上相当な範囲内である場合、原則として、贈与税の課税対象とならない。
正解:
1. 正しい記述です。受贈者の負担により利益を得た第三者は、その負担額相当額の経済的利益を贈与により得ていると考えられるからです。
例えば、父Aが兄Bに対して、弟Cの生活を援助するために、現金300万円を払うことを条件に、実家の土地建物1,000万円を兄Bに贈与する契約をした場合、弟Cは兄Bから300万円の贈与を受けたものとして、贈与税が課されます。
2. 資産の低額譲渡があった場合、時価と対価の差額が贈与税の課税対象となります。
3. 正しい記述です。個人が個人の債権者から受けた債務免除益は、原則として、贈与税の課税対象となりますが、そのうち債務を弁済することが困難である部分の金額は、贈与税の課税対象となりません。
4. 正しい記述です。離婚による財産分与により取得した財産は、原則として、婚姻期間中の貢献分が自己に戻って来ているだけだと考えられるため、贈与税の課税対象とはなりません。但し、分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合や、離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合には、贈与税が課税されます。
【問53】
贈与税の配偶者控除(以下「本控除」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 本控除は、贈与を受けた年の1月1日時点において婚姻期間が20年以上である配偶者から受けた贈与でなければ、適用を受けることができない。
2. 配偶者から受けた贈与について本控除の適用を受けたことがある場合、その後、同一の配偶者から贈与を受けても、再び本控除の適用を受けることはできない。
3. 本控除の適用を受けた場合、贈与税額の計算上、贈与税の課税価格から、基礎控除額のほかに最高2,000万円を控除することができる。
4. 本控除の適用を受け、その翌年に贈与者の相続が開始した場合、本控除の適用を受けた財産のうち、その控除額に相当する金額は、相続税の課税価格に加算されない。
正解:
1. 贈与税の配偶者控除の適用要件の一つである婚姻期間は、贈与の時点において判定します。
2. 正しい記述です。贈与税の配偶者控除は、同一の配偶者から1回しか適用を受けることができません(未利用の枠を翌年以降に利用することは出来ません)。
3. 正しい記述です。贈与税の配偶者控除の非課税枠は、基礎控除額とは別枠で、これらは併用することが出来ます(合わせて最高2,110万円まで控除を受けることができます)。
4. 贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産は、生前贈与加算の対象外とされます。婚姻期間中に貢献したものが配偶者に戻される分には課税しないと考える制度だからです。
【問54】
民法上の相続人等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
1. 離婚した元配偶者との間に出生した被相続人の子が当該元配偶者の親権に服している場合、その子は相続人とならない。
2. 特別養子縁組による養子は、実方の父母および養親の相続人となる。
3. 被相続人の子が廃除により相続権を失った場合、その者に被相続人の直系卑属である子がいるときは、その子(被相続人の孫)は代襲相続人となる。
4. 被相続人と婚姻の届出をしていないが、被相続人といわゆる内縁関係にあった者は、被相続人の配偶者とみなされて相続人となる。
正解:
1. 離婚した元配偶者との間に出生した被相続人の子は、被相続人の子であることには変わりありませんから、第1順位の血族相続人として、相続人になります。
2. 特別養子縁組による養子は、実父母との親族関係が終了するため、実父母の相続人にはなりません。
3. 正しい記述です。放棄は代襲原因ではありませんが、死亡・欠格・廃除は代襲原因です。
4. 民法上、内縁の配偶者には、配偶者としての地位は認められません。
【問55】
相続税の非課税財産に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 被相続人の死亡により、相続人が被相続人に支給されるべきであった退職手当金の支給を受けた場合、当該退職手当金の支給が被相続人の死亡後5年以内に確定したものであれば、相続人は、当該退職手当金について死亡退職金の非課税金額の規定の適用を受けることができる。
2. 死亡退職金の非課税金額の規定による非課税限度額は、被相続人の死亡が業務上の死亡である場合、被相続人の死亡時における賞与以外の普通給与の3年分に相当する金額である。
3. 契約者(=保険料負担者)および被保険者を被相続人とする生命保険契約に基づき、相続の放棄をした者が受け取った死亡保険金については、死亡保険金の非課税金額の規定は適用されない。
4. 死亡保険金の非課税金額の規定による非課税限度額の計算上の相続人の数には、相続の放棄をした者は含まれない。
正解:
1. 死亡退職金の非課税金額の規定の適用を受けることができるのは、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定した退職金です。
2. 死亡退職金の非課税金額の規定による非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」の算式により計算された金額です。
なお、問題文は弔慰金の非課税限度額の説明です。
3. 正しい記述です。死亡保険金の非課税金額の規定が適用されるのは、相続人が受け取った死亡保険金です。
4. 相続税法上、法定相続人の数は、放棄を無かったものとして数えます。よって、相続の放棄をした人は、相続税の計算において、法定相続人の数に含まれます。

【問56】
下記<親族関係図>において、Aさんの相続が開始した場合の相続税額の計算における遺産に係る基礎控除額として、最も適切なものはどれか。なお、CさんはAさんの相続開始前に死亡している。また、Eさんは、Aさんの普通養子(特別養子縁組以外の縁組による養子)であり、相続の放棄をしている。

<親族関係図>
1. 4,200万円
2. 4,800万円
3. 5,400万円
4. 6,000万円
正解:
相続税額の計算における遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数です。
法定相続人の数は、放棄を無かったものとして数え、実子がいる場合には普通養子は1人までカウントしますから、妻Bさん、実子Dさん、養子Eさん、孫Fさん、孫Gさんの5人です。
よって、3,000万円+600万円×5=6,000万円となります。
【問57】
相続税における取引相場のない株式の評価等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、評価の対象となる株式は、特定の評価会社の株式には該当しないものとする。
1. 株式を取得した株主が同族株主に該当するかどうかは、その株主およびその同族関係者が有する議決権割合により判定する。
2. 会社規模が小会社である会社において、中心的な同族株主が取得した株式の価額は、原則として、類似業種比準方式によって評価する。
3. 同族株主のいる会社において、同族株主以外の株主が取得した株式の価額は、その会社規模にかかわらず、原則として、純資産価額方式によって評価する。
4. 配当還元方式では、株式の1株当たりの年配当金額を5%の割合で還元して元本である株式の価額を評価する。
正解:
1. 正しい記述です。
2. 会社規模が小会社である会社において、中心的な同族株主が取得した株式の価額は、純資産価額方式または、Lの割合を0.5とした類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式によって評価します。
3. 同族株主のいる会社において、同族株主以外の株主が取得した株式の価額は、その会社規模にかかわらず、原則として、配当還元方式によって評価します。
4. 配当還元方式における還元割合は10%です。なお、配当還元方式は、配当利回りを10%と仮定して株価を簡便的に評価する方法です。
【問58】
宅地の相続税評価額の算定方法等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 宅地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があり、どちらの方式を採用するかについては、納税者が任意に選択することができる。
2. 倍率方式は、固定資産税評価額に国税局長が一定の地域ごとに定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する方式である。
3. 正面と側方に路線がある宅地(角地)を路線価方式によって評価する場合、原則として、それぞれの路線価に奥行価格補正率を乗じた価額を比較し、低い方の路線価が正面路線価となる。
4. 路線価は、路線に面する標準的な宅地の1坪当たりの価額であり、千円単位で表示される。
正解:
1. 路線価方式と倍率方式のどちらを採用するかは、国税局長が決めるものであり、納税者が任意に選択するものではありません。
2. 正しい記述です。
3. 路線価方式による宅地の評価において、宅地が複数の路線に面する場合、正面路線は、それぞれの路線価に奥行価格補正率を乗じた価額を比較し最も高い路線となります。
4. 路線価は、路線に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額であり、千円単位で表示されます。
【問59】
非上場企業の事業承継のための自社株移転等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」の適用を受けるためには、特例承継計画を策定し、所定の期限までに都道府県知事に提出して、その確認を受ける必要がある。
2. 「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」と相続時精算課税は、重複して適用を受けることができない。
3. 経営者が保有している自社株式を後継者である子に譲渡した場合、当該株式の譲渡による所得に対して、申告分離課税により所得税および住民税が課される。
4. 株式の発行会社が、経営者の親族以外の少数株主が保有する自社株式を買い取ることにより、当該会社の株式の分散を防止または抑制することができる。
正解:
1. 正しい記述です。
2. 「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」と相続時精算課税は、重複して適用を受けることができます。
3. 正しい記述です。自社株式を譲渡した場合、その所得の20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)が申告分離課税されます。
4. 正しい記述です。株式の発行会社が、経営者の親族以外の少数株主が保有する自社株式を買い取ると、相続などによる株式の分散を防止または抑制することができます。
【問60】
会社法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. すべての株式会社は、取締役会を置かなければならない。
2. 株式会社において株主は、その有する株式の引受価額を限度として責任を負う。
3. 定時株主総会は、毎事業年度終了後一定の時期に招集しなければならないが、臨時株主総会は、必要がある場合にいつでも招集することができる。
4. 取締役は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。
正解:
1. 取締役会の設置は任意なので、取締役会を置かない株式会社も存在します(公開会社など一定の会社では設置が義務付けられています)。
なお、取締役会とは、3人以上の取締役で構成される会社の意思決定機関です。代表取締役1人のみの株式会社が存在することを考えれば、取締役会を置かない株式会社も存在することが分かります。
2. 正しい記述です。株主は、会社の債務について、各人が出資した金額を上限として責任を負います。つまり、会社が多額の債務を抱えて倒産しても、最悪出資した金額が返ってこないだけで、それ以上の責任を追及されることはありません。
3. 正しい記述です。株主総会には、毎事業年度終了後一定の時期に招集することが義務付けられている定時株主総会と、必要に応じていつでも招集することができる臨時株主総会があります。
4. 正しい記述です。

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