お金の寺子屋

FP2級学科解説-2023年9月・問51~60

【問51】
民法上の贈与に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 書面によらない贈与は、その履行の終わった部分についても、各当事者が解除をすることができる。
2. 負担付贈与とは、贈与者が受贈者に対して一定の債務を負担させることを条件とする贈与をいい、その受贈者の負担により利益を受ける者は贈与者に限られる。
3. 死因贈与とは、贈与者の死亡によって効力が生じる贈与をいい、贈与者のみの意思表示により成立する。
4. 定期贈与とは、贈与者が受贈者に対して定期的に財産を給付することを目的とする贈与をいい、贈与者または受贈者の死亡によって、その効力を失う。
正解:
1. 履行が終わった贈与は、解除できません。
2. 負担付贈与で利益を受ける人は、贈与者に限りません(「私の父の介護をお願いする代わりに××万円を贈与します」というような契約が例に挙げられます)。
3. 死因贈与は、贈与の一種なので、贈与者と受贈者の合意が必要です。
4. 正しい記述です。
【問52】
贈与税の非課税財産等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち、通常必要と認められるものは、贈与税の課税対象とならない。
2. 個人から受ける社交上必要と認められる香典や見舞金等の金品で、贈与者と受贈者との関係等に照らして社会通念上相当と認められるものは、贈与税の課税対象とならない。
3. 離婚に伴う財産分与により取得した財産は、その価額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額等の事情を考慮して社会通念上相当な範囲内である場合、原則として、贈与税の課税対象とならない。
4. 父が所有する土地の名義を無償で子の名義に変更した場合、その名義変更により取得した土地は、原則として、贈与税の課税対象とならない。
正解:
1. 正しい記述です。扶養義務者から生活費または教育費に充てるために取得した財産のうち、通常必要と認められるものは、非課税です。
なお、贈与税が非課税となる財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます(生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかります)。
2. 正しい記述です。
3. 正しい記述です。離婚による財産分与で得た財産は、原則として、非課税です。但し、分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合や、離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合は課税されます。
4. 無償での名義変更は贈与税の課税対象(対価を伴わない使用貸借は非課税)
【問53】
贈与税の申告と納付に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 贈与税の申告書は、原則として、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
2. 国税電子申告・納税システム(e-Tax)は、贈与税の申告には対応していない。
3. 贈与税を納期限までに納付することが困難である場合、その納付を困難とする金額を限度として延納または物納を申請することができる。
4. 贈与税の納付について認められる延納期間は、最長10年である。
正解:
1. 正しい記述です。贈与税の申告・納税は、受贈者の納税地において、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに行わなければなりません。
2. 贈与税もe-Taxで申告・納付をすることが可能です。
3. 贈与税には、物納の制度はありません。
4. 贈与税の延納は、最長で5年まで認められています。
【問54】
法定後見制度に関する次の記述の空欄(ア)~(ウ)にあてはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

法定後見制度は、本人の判断能力が( ア )に、家庭裁判所によって選任された成年後見人等が本人を法律的に支援する制度である。
法定後見制度において、後見開始の審判がされたときは、その内容が( イ )される。
成年後見人は、成年被後見人が行った法律行為について、原則として、( ウ )。
1. (ア)不十分になる前  (イ)戸籍に記載 (ウ)取り消すことができる
2. (ア)不十分になった後 (イ)登記    (ウ)取り消すことができる
3. (ア)不十分になった後 (イ)戸籍に記載 (ウ)取り消すことはできない
4. (ア)不十分になる前  (イ)登記    (ウ)取り消すことはできない
正解:
(ア) 法定後見制度は、本人の判断能力が不十分になった後に、支援を開始する制度です。
なお、任意後見契約は、本人の判断能力が不十分になる前に行うものです。
(イ) 法定後見制度において、後見等の開始の審判がされたときは、成年後見人等の権限などが登記されます(成年後見登記制度)。
なお、任意後見契約についても同様の制度があります。
(ウ) 成年後見人は、成年被後見人が行った法律行為について、原則として、取り消すことができます。但し、成年被後見人等が行った日用品の購入その他の日常生活に関する行為については、取り消すことはできません。
【問55】
民法上の相続分に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
1. 被相続人は、遺言で、共同相続人の相続分を定めることができるが、これを定めることを第三者に委託することはできない。
2. 共同相続人の1人が遺産の分割前にその相続分を共同相続人以外の第三者に譲り渡した場合、他の共同相続人は、当該第三者に対して一定期間内にその価額および費用を支払うことで、その相続分を譲り受けることができる。
3. 父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の法定相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の法定相続分と同じである。
4. 養子の法定相続分は、実子の法定相続分の2分の1である。
正解:
1. 遺言で、共同相続人の相続分を定めることを第三者に委託することは可能です(民法902条)。
2. 正しい記述です(民法905条)。
3. 判決兄弟姉妹の法定相続分は、全血兄弟姉妹の法定相続分の2分の1です。
4. 養子と実子の法定相続分は等しいです。

【問56】
民法上の遺言に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 相続人が自筆証書遺言を発見し、家庭裁判所の検認を受ける前に開封した場合、その遺言は無効となる。
2. 遺言者が自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作成する場合、当該目録への署名および押印は不要である。
3. 公正証書遺言の作成において、遺言者の推定相続人とその配偶者は証人として立ち会うことができない。
4. 公正証書遺言は、自筆証書遺言によって撤回することはできず、公正証書遺言によってのみ撤回することができる。
正解:
1. 自筆証書遺言を検認を受ける前に開封した場合であっても、それを原因として直ちに無効になる訳ではありません。
2. 自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコンで作成する場合、当該目録の全ページに署名・押印をしなくてはなりません。
3. 正しい記述です。ちなみに、遺言者の推定相続人とその配偶者以外にも、未成年者、受遺者、推定相続人や受遺者の配偶者や直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記、使用人も証人になることはできません。
4. 遺言の種類に効力の違いはありませんから、内容が抵触する遺言が複数ある場合、日付が最も新しい遺言の内容が有効になります。よって、公正証書遺言の内容を自筆証書遺言によって撤回することができます。
【問57】
相続税の課税財産等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 契約者(=保険料負担者)および被保険者が夫、死亡保険金受取人が妻である生命保険契約において、夫の死亡により妻が受け取った死亡保険金は、原則として、遺産分割の対象とならない。
2. 契約者(=保険料負担者)および被保険者が父、死亡保険金受取人が子である生命保険契約において、子が相続の放棄をした場合は、当該死亡保険金について、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができない。
3. 老齢基礎年金の受給権者である被相続人が死亡し、その者に支給されるべき年金給付で死亡後に支給期の到来するものを相続人が受け取った場合、当該未支給の年金は、相続税の課税対象となる。
4. 被相続人の死亡により、当該被相続人に支給されるべきであった退職手当金で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものについて、相続人がその支給を受けた場合、当該退職手当金は、相続税の課税対象となる。
正解:
1. 正しい記述です。生命保険の死亡保険金は、生命保険契約に基づいて保険会社から保険金受取人に直接支払われるものであり、原則として、遺産分割の対象とはなりません。
但し、民法上は、原則として、相続財産として扱われませんが、相続税法上は、みなし相続財産となり相続税が課されます。
2. 正しい記述です。放棄をした人等、相続人以外の人が受け取った死亡保険金には、死亡保険金の非課税規定が適用されません。
3. 未支給年金の請求権は、それを受け取る人固有の権利であるため、未支給年金は相続財産とは解されません。よって、未支給年金は、所得税(一時所得)の課税対象となります。
4. 正しい記述です。なお、3年を超えて支給が確定したものは、相続税の課税対象とはならず、所得税(一時所得)の課税対象となります。
【問58】
相続税の計算に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 遺産に係る基礎控除額の計算上、法定相続人の数は、相続人が相続の放棄をした場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人の数である。
2. 遺産に係る基礎控除額の計算上、法定相続人の数に含めることができる養子の数は、被相続人に実子がなく、養子が2人以上いる場合には1人である。
3. 遺産に係る基礎控除額の計算上、被相続人の特別養子となった者は実子とみなされる。
4. 遺産に係る基礎控除額の計算上、被相続人の子がすでに死亡し、代襲して相続人となった被相続人の孫は実子とみなされる。
正解:
1. 正しい記述です。相続税の計算上、法定相続人の数を数える際には、基本的に、民法のルールと同様に数えますが、放棄を無かったものとする点と、養子の数に算入制限がある点が異なります。
2. 相続税の計算上、法定相続人の数には、被相続人に実子がいない場合、養子は2人まで算入できます。
3. 正しい記述です。
4. 正しい記述です。代襲相続人は、被代襲者の立場を引き継ぎます。
【問59】
Aさんの相続が開始した場合の相続税額の計算における下記<資料>の甲宅地の評価に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

<資料>

Aさんの相続人は、妻および長男の合計2名である。
甲宅地は、使用貸借契約により長男に貸し付けられており、長男が所有する乙建物の敷地の用に供されている。
乙建物は、相続開始時において、長男の居住の用に供されている。
1. 長男が相続により甲宅地を取得した場合、貸宅地として評価する。
2. 長男が相続により甲宅地を取得した場合、自用地として評価する。
3. 妻が相続により甲宅地を取得した場合、貸宅地として評価する。
4. 妻が相続により甲宅地を取得した場合、貸家建付地として評価する。
正解:
使用貸借により貸し付けている土地は、誰が相続した場合であっても、自用地として評価します。
【問60】
株式譲渡によるM&A等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問において、株式会社は非上場会社であるものとする。
1. M&Aにより、株式会社の取締役が保有する当該株式会社の株式を買収会社に譲渡した場合、原則として、当該株式の譲渡による所得に対して、申告分離課税により所得税および住民税が課される。
2. M&Aにより、株式会社の取締役が保有する当該株式会社の株式を買収会社に譲渡した場合、譲渡所得の金額の計算上、その収入金額は、原則として、取引当事者間の契約により決定された譲渡金額である。
3. 株式会社は、あらかじめ定款に定めておくことにより、相続により当該株式会社の株式(譲渡制限株式)を取得した者に対して、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる。
4. 株式譲渡制限会社である株式会社においては、株主でなければ取締役に就任することはできない。
正解:
1. 正しい記述です。
2. 正しい記述です。
3. 正しい記述です。相続により株式が分散することを防ぐため、会社法では、一定の要件を満たした場合、会社が株を相続した人に対して売渡請求を行い、その人の同意がなくても、その株式を会社が取得することができるものとしています。
ちなみに、売渡請求をするためには、その株式が譲渡制限株式であること、定款に売渡請求ができる旨の内容を定めていること、株主総会の特別決議の承認を得ること、という要件を満たす必要があり、相続人の死亡から1年以内に売渡請求の通知をすることで、剰余金の分配可能額の範囲内で買い取ることができます。
4. 株式を保有していない人であっても、取締役に就任することができます。
なお、株式公開会社である株式会社は、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができません。但し、公開会社でない株式会社では、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができます(会社法331条)。

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