お金の寺子屋

FP2級学科解説-2023年9月・問41~50

【問41】
不動産の登記や調査に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 抵当権の登記の登記事項は、権利部乙区に記録される。
2. 区分建物を除く建物に係る登記記録において、床面積は、壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積(壁芯面積)により記録される。
3. 新築した建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から1ヵ月以内に、所有権保存登記を申請しなければならない。
4. 登記情報提供サービスでは、登記所が保有する登記情報を、インターネットを使用してパソコン等で確認することができるが、取得した登記情報に係る電子データには登記官の認証文は付されない。
正解:
1. 正しい記述です。抵当権のような、所有権以外の権利に関する事項は、権利部の甲区に記録されます。
2. 正しい記述です。区分建物を除く建物の登記簿面積は、壁芯面積です。
3. 新築した建物の所有権を取得した人が、その所有権の取得の日から1ヵ月以内に行わなくてはならないのは、表題登記です。なお、所有権保存登記は任意です。
4. 正しい記述です。登記情報提供サービスは、インターネットを通して、不動産登記や法人登記をパソコンなどの画面上確認することができるサービスです。これは、調査や確認のためにりようするものですから、提供された登記情報には登記官の認証文や公印がありません(法的な証明力はありません)
【問42】
不動産の鑑定評価の手法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の価格を求める手法である。
2. 取引事例比較法では、取引事例の取引時点が価格時点と異なり、その間に価格水準の変動があると認められる場合、当該取引事例の価格を価格時点の価格に修正する必要がある。
3. 収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより、対象不動産の価格を求める手法である。
4. 収益還元法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産や賃貸の用に供されていない自用の不動産の価格を求める際には、基本的に適用してはならないとされる。
正解:
1. 正しい記述です。
2. 正しい記述です。
3. 正しい記述です。なお、収益還元法には、年間の純収益を還元利回りで割り戻す直接還元法と、連続する複数の期間に発生する総収入および復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引くDCF法があります。
4. 収益還元法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産には適用しませんが、自用の不動産には、賃貸を想定して適用するものとされています。
【問43】
不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
1. 同一の不動産について二重に売買契約が締結された場合、譲受人相互間においては、売買契約の締結の先後にかかわらず、原則として、所有権移転登記を先にした者が、当該不動産の所有権の取得を他方に対抗することができる。
2. 不動産の売買契約において買主が売主に手付金を交付した場合、売主が契約の履行に着手する前であれば、買主はその手付金を放棄することで契約を解除することができる。
3. 不動産が共有されている場合に、各共有者が、自己の有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者の同意を得る必要がある。
4. 売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震によって全壊した場合、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことができる。
正解:
1. 正しい記述です。不動産の権利の対抗要件は登記ですから、二重売買があった場合にどちらが権利を得るかは、原則として、登記が先か後かで判断し、売買契約の先後は関係ありません。
2. 正しい記述です。買主が売主に手付金を交付した場合、相手が取引の履行に着手するまでであれば、手付金相当額の賠償を行う(買主は手付の放棄、売主は倍額の償還)ことで、契約を解除することができます。
3. 共有持分の譲渡にあたり、共有者の同意は不要です。
4. 正しい記述です。危険負担は、原則として、売主負担とされていますから、売買契約の締結から引渡しまでの間に、売主・買主の双方の責に帰すことができない理由で建物が損害を受けた場合、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことができます。
【問44】
借地借家法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問においては、同法第22条の借地権を一般定期借地権といい、第22条から第24条の定期借地権等以外の借地権を普通借地権という。
1. 普通借地権の設定契約において、期間の定めがないときは、存続期間は30年とされる。
2. 普通借地権の存続期間が満了した時点で借地上に建物が存在しない場合は、借地権者が契約の更新を請求しても、従前の契約と同一の条件で契約が更新されたものとはみなされない。
3. 一般定期借地権の設定契約において、存続期間は30年とすることができる。
4. 一般定期借地権の設定契約は、公正証書による等書面(電磁的記録による場合を含む)によってしなければならない。
正解:
1. 正しい記述です。普通借地権の存続期間は、設定時は最低30年とされています。
2. 正しい記述です。借地人からの請求により更新するためには、借地上に建物が存在することが要件とされています。
3. 一般定期借地権の存続期間は、50年以上の期間を設定しなくてはなりません。
4. 正しい記述です。更新の無い借家契約や借地契約をする場合は、書面で行う必要があります。なお、必ず公正証書で設定しなくてはならないのは、事業用定期借地権だけです。
【問45】
借地借家法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、同法第38条による定期建物賃貸借契約を定期借家契約といい、それ以外の建物賃貸借契約を普通借家契約という。
1. 普通借家契約において存続期間を6ヵ月と定めた場合、その存続期間は1年とみなされる。
2. 期間の定めのない普通借家契約において、建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをし、正当の事由があると認められる場合、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6ヵ月を経過することによって終了する。
3. もっぱら事業の用に供する建物について定期借家契約を締結する場合、その契約は公正証書によってしなければならない。
4. 定期借家契約は、契約当事者間の合意があっても、存続期間を3ヵ月未満とすることはできない。
正解:
1. 普通借家契約において1年未満の存続期間を定めた場合、期間の定めがなかったものとみなされます。
2. 正しい記述です。なお、賃借人が解約の申し入れをする場合は、正当事由は不要で、、解約の申入れの日から3ヵ月を経過することによって終了します。
3. 定期借家契約は、書面で設定する必要がありますが、必ずしも公正証書である必要はありません(必ず公正証書で設定しなくてはならないのは、事業用定期借地権だけです)。
4. 定期借家契約は、1年未満の期間を含めて、任意の期間を定めることができます。

【問46】
都市計画区域および準都市計画区域内における建築基準法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 商業地域、工業地域および工業専用地域においては、地方公共団体の条例で日影規制(日影による中高層の建築物の高さの制限)の対象区域として指定することができない。
2. 建築物の高さに係る隣地斜線制限は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域および田園住居地域には適用されない。
3. 第一種低層住居専用地域内には、原則として、老人ホームを建築することはできるが、病院を建築することはできない。
4. 道路斜線制限(前面道路との関係についての建築物の各部分の高さの制限)は、原則として、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域における建築物にのみ適用され、商業地域における建築物には適用されない。
正解:
1. 正しい記述です。
2. 正しい記述です。隣地斜線制限は、絶対高さ制限が適用される用途地域以外の用途地域に適用されます。
3. 正しい記述です。
4. 道路斜線制限は、全ての用途地域に適用されます。
【問47】
建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 建物ならびにその敷地および附属施設の管理を行うための団体は、区分所有者によって構成されるが、その構成員になるかどうかの選択についてはそれぞれの区分所有者の任意である。
2. 一棟の建物のうち、構造上の独立性と利用上の独立性を備えた建物の部分は、区分所有権の目的となる専有部分の対象となるが、規約により共用部分とすることができる。
3. 区分所有者が建物および建物が所在する土地と一体として管理または使用する庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
4. 集会においては、区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数により、建替え決議をすることができる。
正解:
1. 区分所有者は、強制的に>建物ならびにその敷地および附属施設の管理を行うための団体(管理組合)の構成員になります。
2. 正しい記述です。専有部分となる部分は、規約により共用部分とすることができます。
なお、集会室や共用の応接室など区分所有権の対象となる建物部分について、規約により共用部分と定めた場合であっても、その旨の登記をしなければ第三者に対抗することができません。
3. 正しい記述です。
4. 正しい記述です。「四の五の言わずに建て替えて」という語呂合わせで覚えることができます。
【問48】
不動産の取得に係る税金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 不動産取得税は、相続により不動産を取得した場合には課されないが、贈与により不動産を取得した場合には課される。
2. 不動産取得税は、土地の取得について所有権移転登記が未登記であっても、当該取得に対して課される。
3. 登録免許税は、建物を新築した場合の建物表題登記に対して課される。
4. 登録免許税は、贈与により不動産を取得した場合の所有権移転登記に対して課される。
正解:
1. 正しい記述です。不動産取得税は、相続を原因とする取得では課されませんが、贈与を原因とする取得では課されます。
2. 正しい記述です。不動産取得税は、未登記の不動産に対しても課されます。
3. 表題登記には、登録免許税はかかりません。
4. 正しい記述です。登録免許税は、贈与を原因とする所有権移転登記に対して課されます。
ちなみに、不動産取得税とは異なり、相続を原因とする所有権移転登記に対しても課されます。
【問49】
個人が土地を譲渡した場合の譲渡所得に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 相続により取得した土地を譲渡した場合、その土地の所有期間を判定する際の取得の日は、相続人が当該相続を登記原因として所有権移転登記をした日である。
2. 土地の譲渡に係る所得が長期譲渡所得に区分される場合、課税長期譲渡所得金額に対し、原則として、所得税(復興特別所得税を含む)が15.315%、住民税が5%の税率で課される。
3. 土地の譲渡に係る所得については、その土地を譲渡した日の属する年の1月1日における所有期間が5年以下の場合、短期譲渡所得に区分される。
4. 譲渡所得の金額の計算上、譲渡した土地の取得費が不明な場合には、譲渡収入金額の5%相当額を取得費とすることができる。
正解:
1. 相続により取得した土地を譲渡した場合、その土地の所有期間を判定する際の取得の日は、被相続人の取得日を引き継ぎます。
2. 正しい記述です。
3. 正しい記述です。
4. 正しい記述です。概算取得費は、収入金額の5%相当額です。
収入金額の95%に対して課税されるので、「概算取得費を使うと5っそり税金が取られる」と覚えることができます。
【問50】
不動産の投資判断の手法等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. DCF法は、対象不動産の一期間の純収益を還元利回りで還元して対象不動産の収益価格を求める手法である。
2. NPV法(正味現在価値法)による投資判断においては、対象不動産から得られる収益の現在価値の合計額が投資額を上回っている場合、その投資は有利であると判定することができる。
3. NOI利回り(純利回り)は、対象不動産から得られる年間の総収入額を総投資額で除して算出される利回りであり、不動産の収益性を測る指標である。
4. DSCR(借入金償還余裕率)は、対象不動産から得られる収益による借入金の返済余裕度を評価する指標であり、対象不動産に係る当該指標の数値が1.0を下回っている場合は、対象不動産から得られる収益だけで借入金を返済することができる。
正解:
1. 対象不動産の一期間の純収益を還元利回りで還元して対象不動産の収益価格を求める手法は、直接還元法です。
2. 正しい記述です。対象不動産から得られる収益の現在価値の合計額(理論的な不動産の価値)が現在価値の合計額(不動産が売られている価格)を上回っている場合、その投資は有利であると判定することができます。
3. NOI利回り(純利回り)は、年間の純収益(総収入金額-費用の総額)を総投資額で割って計算します。
4. DSCR=各年毎の元利金返済前のキャッシュフロー÷返済総額です。よって、1.0を上回っている場合、対象不動産から得られる収益だけで借入金を返済することができると判断されます。
ちなみに、DSCRは、Debt Service Coverage Ratioの略で、Debt Service(1年間に返済する元利合計)を、対象不動産から得られる収益がどの程度Coverage(カバー)しているのかを表すRatio(比率)という意味です。

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