FP2級実技(FP協会)解説-2024年1月・問11~21
【問11】
井上隆也さん(38歳)が加入の提案を受けた生命保険の保障内容は下記<資料>のとおりである。この生命保険に加入した場合、次の記述の空欄(ア)~(ウ)にあてはまる数値を解答欄に記入しなさい。なお、各々の記述はそれぞれ独立した問題であり、相互に影響を与えないものとする。
<資料/生命保険提案書>
・ | 井上さんが骨折により8日間継続して入院し、その間に約款所定の公的医療保険の対象となる手術を受け、退院から1ヵ月後に肺炎で5日間継続して入院した場合、保険会社から支払われる保険金・給付金の合計は( ア )万円である。 |
・ | 井上さんが初めて上皮内がん(上皮内新生物)と診断され、治療のため5日間継続して入院し、その間に約款所定の公的医療保険の対象となる手術を1回受けた場合、保険会社から支払われる保険金・給付金の合計は( イ )万円である。 |
・ | 井上さんがケガにより医師の指示に基づき自宅で40日間療養し、当該期間について公的医療保険の在宅患者診療・指導料が算定されている場合、保険会社から支払われる保険金・給付金の合計は( ウ )万円である。 |
正解:22(万円)、72(万円)、30(万円)
(ア) | 総合入院給付金20万円+手術給付金2万円=22万円です。 |
(イ) | 軽度3大疾病保険金50万円+総合入院給付金20万円+手術給付金2万円=72万円です。 |
(ウ) | 就業不能給付金30万円のみ支払われます。 |
【問12】
少額短期保険に関する次の記述の空欄(ア)~(エ)にあてはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
・ | 少額短期保険業者が、1人の被保険者について引き受ける死亡保険金額および疾病を原因とする重度障害保険の保険金額の上限はそれぞれ( ア )で、低発生率保険を除いたすべての保険契約の保険金額を合計して1,000万円を超えてはならない。 |
・ | 保険期間の上限は、生命保険・医療保険が( イ )、損害保険は( ウ )である。 |
・ | 保険料は、生命保険料控除・地震保険料控除の対象と( エ )。 |
1. | (ア)300万円 (イ)1年 (ウ)2年 (エ)ならない |
2. | (ア)500万円 (イ)1年 (ウ)1年 (エ)なる |
3. | (ア)300万円 (イ)2年 (ウ)1年 (エ)ならない |
4. | (ア)300万円 (イ)2年 (ウ)1年 (エ)ならない |
正解:1
(ア) | 少額短期保険業者が、1人の被保険者について引き受ける死亡保険金額、および、疾病を原因とする重度障害保険の保険金額の上限は、それぞれ300万円です。 |
(イ) | 少額短期保険の保険期間の上限は、生命保険と医療保険では1年とされています。 |
(ウ) | 少額短期保険の保険期間の上限は、損害保険では2年とされています。 |
(エ) | 少額短期保険の保険料は、生命保険料控除・地震保険料控除の対象となりません。 |
【問13】
加瀬さん(45歳)は、下記<資料>の自動車保険に加入している。下記<資料>に基づく次の(ア)~(エ)の記述のうち、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。なお、<資料>に記載のない特約については考慮しないものとする。
<資料>
(ア) | 加瀬さんの友人(50歳)が被保険自動車を運転中、他人にケガをさせ法律上の損害賠償責任を負った場合、補償の対象となる。 |
(イ) | 加瀬さんが被保険自動車を運転中、飛び石により窓ガラスが破損し、車両保険金のみが支払われた場合、当該事故はノンフリート等級別料率制度における「1等級ダウン事故」に該当する。 |
(ウ) | 加瀬さんが被保険自動車を運転中、他人が運転する自動車と衝突し、加瀬さんがケガをした場合、過失割合にかかわらず治療費用の補償を受けることができる。 |
(エ) | 加瀬さんが所有する原動機付自転車を加瀬さんの妻(40歳)が運転中、他人にケガをさせ法律上の損害賠償責任を負った場合、補償の対象とならない。 |
正解:×、○、○、×
(ア) | 運転者家族限定割引が適用されているため、本人・配偶者・同居の親族・別居の未婚の子以外の人が起こした事故は補償しません。 |
(イ) | 正しい記述です。飛び石による窓ガラスの破損で車両保険の保険金を受け取った場合、ノンフリート等級が1等級下がります。 |
(ウ) | 正しい記述です。人身傷害補償保険は、運転中の事故による被保険者のケガを、その過失割合に関係なく補償します。 |
(エ) | 資料より、ファミリーバイク特約が付帯されており、対人事故を補償の対象としていることが分かります。 ちなみに、ファミリーバイク特約には、年齢条件や運転者を限定する特約が適用されません。 |
【問14】
羽田涼介さんが2023年中に支払った終身保険と終身医療保険の保険料は下記<資料>のとおりである。涼介さんの2023年分の所得税の計算における生命保険料控除額として、正しいものはどれか。なお、下記<資料>の保険について、これまでに契約内容の変更はないものとする。また、2023年分の生命保険料控除額が最も多くなるように計算すること。
<資料>
[終身保険(無配当)]
契約日:2010年5月1日
保険契約者:羽田 涼介
被保険者:羽田 涼介
死亡保険金受取人:羽田 絵梨花(妻)
2023年の年間支払保険料:129,600円
[終身医療保険(無配当)]
契約日:2019年3月1日
保険契約者:羽田 涼介
被保険者:羽田 涼介
死亡保険金受取人:羽田 絵梨花(妻)
2023年の年間支払保険料:75,120円
<所得税の生命保険料控除額の速算表>
1. | 78,780円 |
2. | 83,780円 |
3. | 88,780円 |
4. | 93,780円 |
正解:3
終身保険の保険料は、旧契約の一般の生命保険料控除に区分されるため、50,000円の控除を受けることができます。
終身医療保険の保険料は、新契約の介護医療保険料控除に区分されるため、75,120円×1/4+20,000円=38,780円の控除を受けることができます。
よって、生命保険料控除の額は、50,000円+38,780円=88,780円となります。
終身医療保険の保険料は、新契約の介護医療保険料控除に区分されるため、75,120円×1/4+20,000円=38,780円の控除を受けることができます。
よって、生命保険料控除の額は、50,000円+38,780円=88,780円となります。
【問15】
西山さん(67歳)の2023年分の収入等が下記<資料>のとおりである場合、西山さんの2023年分の所得税における総所得金額として、正しいものはどれか。なお、記載のない事項については一切考慮しないものとする。
<資料> | |
内容 | 金額 |
老齢基礎年金 | 70万円 |
遺族厚生年金 | 110万円 |
生命保険の満期保険金(一時金) | 250万円 |
※ | 生命保険は、養老保険(保険期間20年、保険契約者および満期保険金受取人は西山さん)の満期保険金であり、既払込保険料(西山さんが全額負担している)は160万円である。 |
<65歳以上の者の公的年金等控除額の速算表> | |
収入金額 | 公的年金等控除額 |
330万円以下 | 110万円 |
330万円超 410万円以下 |
A×25%+27.5万円 |
410万円超 770万円以下 |
A×15%+68.5万円 |
770万円超 1,000万円以下 |
A×5%+145.5万円 |
1,000万円超 | 195.5万円 |
※ | 公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合 |
1. | 20万円 |
2. | 40万円 |
3. | 45万円 |
4. | 90万円 |
正解:1
老齢基礎年金に係る雑所得の額は、収入金額が公的年金等控除額(最低110万円)以下ですから、0です。
遺族厚生年金は非課税です。
生命保険の満期保険金は一時所得に区分され、その所得の額は、収入金額-収入を得る為の支出額-特別控除額=250万円-160万円-50万円=40万円となります。
一時所得の額は、その2分の1相当額が総所得金額に算入されますから、総所得金額への算入額は、40万円×1/2=20万円となります。
よって、総所得金額は、20万円となります。
遺族厚生年金は非課税です。
生命保険の満期保険金は一時所得に区分され、その所得の額は、収入金額-収入を得る為の支出額-特別控除額=250万円-160万円-50万円=40万円となります。
一時所得の額は、その2分の1相当額が総所得金額に算入されますから、総所得金額への算入額は、40万円×1/2=20万円となります。
よって、総所得金額は、20万円となります。
【問16】
個人事業主の大久保さんが事業開始に当たり取得した建物の状況等は下記<資料>のとおりである。下記<資料>に基づく大久保さんの2023年分の所得税における事業所得の計算上、必要経費に算入すべき減価償却費を計算しなさい。なお、建物は事業にのみ使用しているものとする。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと。
<資料>
[建物の状況]
取得価額:7,500万円
法定耐用年数:25年
取得年月日:2023年4月1日
※ | 事業開始の遅延により、同年10月1日から事業の用に供している。 |
[耐用年数表(抜粋)] | ||
法定耐用年数 | 定額法の償却率 | 定率法の償却率 |
25年 | 0.040 | 0.080 |
正解:75(万円)
建物の減価償却費は、定額法により計算しますから、1年間の減価償却費は、7,500万円×0.04=300万円です。
また、減価償却費として必要経費に計上できるのは、業務の用に供した期間分ですから、必要経費に算入すべき減価償却費の額は、300万円×3/12=75万円となります。
また、減価償却費として必要経費に計上できるのは、業務の用に供した期間分ですから、必要経費に算入すべき減価償却費の額は、300万円×3/12=75万円となります。
【問17】
役員等以外の者の所得税における退職所得に関する次の(ア)~(エ)の記述のうち、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。なお、復興特別所得税および記載のない事項については一切考慮しないものとする。
(ア) | 退職所得控除額の計算に当たり、勤続年数に1年未満の端数がある場合、その端数は切り捨てて勤続年数を計算する。 |
(イ) | 勤続年数30年で退職した場合の退職所得控除額は、「70万円×勤続年数」により計算する。 |
(ウ) | 退職所得の金額は、勤続年数にかかわらず、すべて退職一時金等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する額となる。 |
(エ) | 退職一時金を受け取った場合、原則として確定申告をしなければならない。 |
正解:×、×、×、×
(ア) | 退職所得控除額の計算に当たり、勤続年数に1年未満の端数がある場合、その端数は切り上げて勤続年数を計算します。 |
(イ) | 勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の式で計算されます。 |
(ウ) | 短期退職手当等に該当する場合、退職金の額から退職所得控除額を差し引いた額のうち300万円を超える部分については、2分の1計算の適用はありません。 |
(エ) | 退職一時金を受け取った場合、通常、「退職所得の受給に関する申告書」を提出するため、確定申告は不要です。 |
【問18】
下記<親族関係図>の場合において、民法の規定に基づく法定相続分および遺留分に関する次の記述の空欄(ア)~(ウ)にあてはまる適切な語句または数値を語群の中から選び、その番号のみを解答欄に記入しなさい。なお、同じ番号を何度選んでもよいものとする。
<親族関係図>
[相続人の法定相続分および遺留分] | |
・ | 被相続人の孫Aおよび孫Bの各法定相続分は( ア )である。 |
・ | 被相続人の配偶者の遺留分は( イ )、被相続人の孫Cの遺留分は( ウ )である。 |
<語群>
1.ゼロ 2.1/2 3.1/3
4.1/4 5.1/6 6.1/8
7.2/3
8.1/12 9.1/16
1.ゼロ 2.1/2 3.1/3
4.1/4 5.1/6 6.1/8
7.2/3
8.1/12 9.1/16
正解:1、4、6
(ア) | 放棄をした人の子は代襲相続人になれませんから、孫Aと孫Bの法定相続分はありません。 |
(イ) | 相続人が直系尊属のみである場合を除いて、遺留分の割合は、法定相続分の1/2です。 法定相続人の組み合わせが、配偶者相続人と第1順位の血族相続人である場合、配偶者の法定相続分は1/2ですから、配偶者の遺留分は、1/2×1/2=1/4となります。 |
(ウ) | 相続人の組み合わせが、配偶者相続人と第1順位の血族相続人である場合、血族相続人全体の法定相続分は1/2です。 孫Cの法定相続分は二男の本来の法定相続分と等しいため、孫C(と三男)の法定相続分は、1/2×1/2=1/4となることから、孫Cの遺留分は、1/4×1/2=1/8となります。 |
【問19】
下記<資料>の宅地(貸家建付地)に係る路線価方式による相続税評価額の計算式として、正しいものはどれか。なお、記載のない事項については一切考慮しないものとする。
<資料>
注1 | : | 奥行価格補正率(20m以上24m未満) 1.00 |
注2 | : | 借地権割合 60% |
注3 | : | 借家権割合 30% |
注4 | : | この宅地には宅地所有者の所有する賃貸アパートが建っており、現在すべて賃貸中となっている。 |
1. | 290,000円×1.00×308㎡ |
2. | 290,000円×1.00×308㎡×60% |
3. | 290,000円×1.00×308㎡×(1-60%) |
4. | 290,000円×1.00×308㎡×(1-60%×30%×100%) |
正解:4
路線価図の数字は、その路線が面する土地の1㎡当たりの相続税評価額を千円単位で表しており、英字のDは借地権割合が60%であることを意味します。
また、貸家建付地の相続税評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)です。
路線価方式による自用地評価額は、路線価×各種補正率×地積=290千円/㎡×1.00×308㎡となることから、貸家建付地の相続税評価額=290,000円×1.00×308×(1-60%×30%×100%)となります。
また、貸家建付地の相続税評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)です。
路線価方式による自用地評価額は、路線価×各種補正率×地積=290千円/㎡×1.00×308㎡となることから、貸家建付地の相続税評価額=290,000円×1.00×308×(1-60%×30%×100%)となります。
【問20】
下記の相続事例(2023年12月10日相続開始)における相続税の課税価格の合計額として、正しいものはどれか。なお、記載のない事項については一切考慮しないものとする。
[課税価格の合計額を算出するための財産等の相続税評価額]
土地:7,000万円(小規模宅地等の特例適用後:1,400万円)
建物:1,000万円
現預金:3,200万円
死亡保険金:1,800万円(生命保険金等の非課税限度額控除前)
債務および葬式費用:1,200万円
土地:7,000万円(小規模宅地等の特例適用後:1,400万円)
建物:1,000万円
現預金:3,200万円
死亡保険金:1,800万円(生命保険金等の非課税限度額控除前)
債務および葬式費用:1,200万円
[親族関係図]
※ | 小規模宅地等の特例の適用対象となる要件はすべて満たしており、その適用を受けるものとする。 |
※ | 死亡保険金はすべて被相続人の配偶者が受け取っている。 |
※ | すべての相続人は、相続により財産を取得している。 |
※ | 相続開始前3年以内に被相続人からの贈与により財産を取得した相続人はおらず、相続時精算課税制度を選択した相続人もいない。また、相続を放棄した者もいない。 |
※ | 債務および葬式費用はすべて長男が負担している。 |
1. | 4,700万円 |
2. | 5,900万円 |
3. | 6,200万円 |
4. | 10,300万円 |
正解:1
相続人が受け取った、相続税の課税対象となる死亡保険金は、500万円×法定相続人の数まで非課税となります。
よって、死亡保険金1,800万円のうち、相続税の課税価格に算入される額は、1,800万円-500万円×3=300万円です。
したがって、相続税の課税価格の合計額は、1,400万円+1,000万円+3,200万円+300万円-1,200万円=4,700万円となります。
【問21】
住吉さんは、FPの宮本さんに配偶者居住権について質問をした。配偶者居住権に関する次の記述の空欄(ア)~(エ)にあてはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については、配偶者居住権の要件を満たしているものとする。
・ | 配偶者居住権は、遺贈により、配偶者に取得させること( ア )。また、配偶者居住権を有する者が死亡した場合、配偶者居住権は、その者の相続に係る相続財産と( イ )。 |
・ | 配偶者居住権の存続期間は、原則として( ウ )までとされ、配偶者居住権を取得した者はその建物の所有者に対して、配偶者居住権の設定の登記を請求すること( エ )。 |
1. | (ア)ができる (イ)なる (ウ)相続開始時から6ヵ月後 (エ)はできない |
2. | (ア)ができる (イ)ならない (ウ)配偶者の死亡時 (エ)ができる |
3. | (ア)はできない (イ)なる (ウ)配偶者の死亡時 (エ)はできない |
4. | (ア)はできない (イ)ならない (ウ)相続開始時から6ヵ月後 (エ)ができる |
正解:2
(ア) | 配偶者居住権は、遺贈により、配偶者に取得させることができます。 |
(イ) | 配偶者居住権を有する者が死亡した場合、配偶者居住権は消滅するため、その者の相続に係る相続財産とはなりません。 |
(ウ) | 配偶者居住権の存続期間は、原則として、終身とされます。 なお、配偶者短期居住権の存続期間は、配偶者短期居住権を消滅させる旨の申し入れを受けた日から6ヵ月間です。 |
(エ) | 配偶者居住権を取得した者はその建物の所有者に対して、配偶者居住権の設定の登記を請求することができます。 |
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