FP2級学科解説-2023年1月・問21~30
【問21】
銀行等の金融機関で取り扱う預金商品の一般的な商品性に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 貯蓄預金は、給与、年金等の自動受取口座や公共料金等の自動振替口座に指定することができる。 |
2. | 決済用預金のうち、当座預金は、個人、法人のいずれも利用することができるが、無利息型普通預金は、法人が利用することはできない。 |
3. | 期日指定定期預金は、据置期間経過後から最長預入期日までの間で、任意の日を満期日として指定することができる。 |
4. | 総合口座において、紙の通帳の代わりにオンライン上で入出金の明細や残高を確認することができるサービスを提供しているのは、ネット専業銀行に限られる。 |
正解:3 | |
1. | 貯蓄預金は決済用口座として利用することはできません(自動受け取りや自動引き落としの為の口座として利用することはできません)。 |
2. | 当座預金と無利息型普通預金は、何も預金保険法における決済用預金に該当し、法人と個人のいずれも利用することができます。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 総合口座の入出金の明細や残高は、どの銀行でも、紙の通帳に代えてオンライン上で確認することができます。 |
【問22】
上場投資信託(ETF)の一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | レバレッジ型ETFは、日経平均株価などの指標の日々の変動率に一定の正の倍数を乗じて算出される指数に連動した運用成果を目指して運用されるETFである。 |
2. | インバース型ETFは、日経平均株価などの指標の日々の変動率に一定の負の倍数を乗じて算出される指数に連動した運用成果を目指して運用されるETFである。 |
3. | リンク債型ETFは、所定の指標に連動した投資成果を目的とする債券(リンク債)に投資することにより、ETFの一口当たり純資産額の変動率を対象指標の変動率に一致させる運用手法を採用するETFである。 |
4. | ETFの分配金には、普通分配金と元本払戻金(特別分配金)があり、税法上、普通分配金は課税対象となり、元本払戻金(特別分配金)は非課税となる。 |
正解:4 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | ETFの分配金は、上場株式の配当金と全く同じように課税されるため、普通分配金と元本払戻金(特別分配金)の区別はありません。普通分配金と元本払戻金(特別分配金)の区別があるのは、上場していない株式投資信託の分配金の課税における話です。 |
【問23】
市場金利の変動と固定利付債券の利回り(単利・年率)および価格との関係に関する次の記述の空欄(ア)~(ウ)にあてはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。なお、手数料、経過利子、税金等については考慮しないものとし、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入するものとする。
表面利率が0.50%、償還年限が10年の固定利付債券が額面100円当たり100円で新規に発行された。5年後、市場金利が当該債券の発行時に比べて上昇した結果、債券の価格は( ア )して、( イ )となり、当該債券の現時点(発行から5年後)における最終利回りは0.70%(単利・年率)となった。また、当該債券を発行時に購入し、発行から5年後に( イ )で売却した場合の所有期間利回りは( ウ )となる。
1. | (ア)下落 (イ) 99.03円 (ウ)0.31% |
2. | (ア)下落 (イ) 99.03円 (ウ)0.69% |
3. | (ア)上昇 (イ)100.98円 (ウ)0.69% |
4. | (ア)上昇 (イ)100.98円 (ウ)0.31% |
正解:1 | |
(ア) | 市場金利の上昇は、債券価格の下落要因です。 |
(イ) | 債券価格をaとすると、{0.5+(100-a)÷5}÷a×100=0.7より、102.5=1.035aの式が成り立ち、a=99.0338…円≒99.03円となります。 |
(ウ) | 所有期間利回り(%)={0.5+(99.03-100)÷5}÷100×100=0.306%≒0.31%となります。 |
【問24】
東京証券取引所の市場区分等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 東証株価指数(TOPIX)は、東京証券取引所市場第一部に上場している全銘柄を対象として算出されていたが、東京証券取引所の市場区分見直しが実施された2022年4月4日以降、新たな市場区分であるプライム市場の全銘柄を対象として算出されている。 |
2. | プライム市場のコンセプトは、「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」である。 |
3. | スタンダード市場のコンセプトは、「高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場」である。 |
4. | グロース市場のコンセプトは、「公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」である。 |
正解:2 | |
1. | 東証株価指数(TOPIX)は、現在、スタンダード市場に上場している旧東証1部上場銘柄も算出対象に含まれています。 ちなみに、東証株価指数(TOPIX)は、かつて、旧東証1部上場の全銘柄を対象に算出されていましたが、2022年4月に、市場区分と切り離し、市場代表性に加え投資対象としての機能性の更なる向上を目指すよう見直しが行われ、2025年1月まで段階的に移行することとされました。移行完了後におけるTOPIXの構成銘柄の選定方法は、今後、市場関係者の意見を募ったうえで策定される予定です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | グロース市場のコンセプトの説明です。 |
4. | スタンダード市場のコンセプトの説明です。 |
【問25】
下記<X社のデータ>に基づき算出される投資指標に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
<X社のデータ> | |
株価 | 12,000円 |
発行済株式数 | 12億株 |
時価総額 | 144,000億円 |
自己資本(=純資産) | 60,000億円 |
配当金総額 | 720億円 |
PER | 20倍 |
1. | 1株当たり当期純利益は、500円である。 |
2. | ROEは、15.0%である。 |
3. | PBRは、3.0倍である。 |
4. | 配当利回りは、0.5%である。 |
正解:4 | |
1. | PER=株価÷1株当たり当期純利益=12,000円÷1株当たり当期純利益=20(倍)より、1株あたり当期純利益=12,000円÷20=600円となります。 |
2. | ROE=1株当たり当期純利益÷1株当たり自己資本=600円÷(60,000億円÷12億)=0.12=12%です。 |
3. | PBR=株価÷1株当たり純資産=12,000円÷(60,000億円÷12億)=2.4倍です。 |
4. | 配当利回り(%)=1株当たり年間配当金÷株価×100=(720億円÷12億)円÷12,000円×100=0.5%です。 |
【問26】
個人が保有する外貨建て債券に関する次の記述の空欄(ア)~(ウ)にあてはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
米ドル建て債券(為替ヘッジなし)を保有しているとき、米ドルに対する円の為替レートが円安に変動することは、当該債券の円換算の投資利回りの( ア )要因となる。一方、為替レートが円高に変動したときは、当該債券の円換算の投資利回りの( イ )要因となる。このように、外国通貨と自国通貨間の相対的な価値の変動により、外貨建て債券の自国通貨換算額が変動して利益や損失が生じる不確実性のことを( ウ )変動リスクという。
1. | (ア)上昇 (イ)低下 (ウ)金利 |
2. | (ア)上昇 (イ)低下 (ウ)為替 |
3. | (ア)低下 (イ)上昇 (ウ)金利 |
4. | (ア)低下 (イ)上昇 (ウ)為替 |
正解:2 | |
(ア) | 為替レートが円安に振れる(=外貨高となり保有している外貨建て資産の価値が高くなる)ことは、外貨投資における円換算利回りの上昇要因となります。 |
(イ) | 為替レートが円高に振れることは、外貨投資における円換算利回りの低下要因となります。 |
(ウ) | 為替の変動により外貨建て資産の円ベースの換算額が変動するリスクを、為替変動リスクと言います。 |
【問27】
下記<資料>に基づくファンドAとファンドBの過去5年間の運用パフォーマンスの比較評価に関する次の記述の空欄(ア)、(イ)にあてはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
<資料>ファンドAとファンドBの過去5年間の運用パフォーマンス
ファンド名 | 実績収益率の平均値 | 実績収益率の標準偏差 |
ファンドA | 3.2% | 1.0% |
ファンドB | 12.0% | 5.0% |
ファンド名 | 実績収益率の 平均値 |
実績収益率の 標準偏差 |
ファンドA | 3.2% | 1.0% |
ファンドB | 12.0% | 5.0% |
ファンドの運用パフォーマンスに係る評価指標の1つとして、シャープレシオがある。無リスク金利を全期間にわたり1.0%とし、<資料>の数値により、ファンドAのシャープレシオの値を算出すると( ア )となる。同様にファンドBのシャープレシオの値を算出したうえで、両ファンドの運用パフォーマンスを比較する場合、シャープレシオの比較においては、過去5年間は( イ )であったと判断される。
1. | (ア)2.2 (イ)ファンドAとファンドBの運用効率は同等 |
2. | (ア)2.2 (イ)ファンドAの方が効率的な運用 |
3. | (ア)3.2 (イ)ファンドAとファンドBの運用効率は同等 |
4. | (ア)3.2 (イ)ファンドAの方が効率的な運用 |
正解:1 | |
(ア) | シャープレシオ=(ファンドの収益率-無リスク利子率)÷標準偏差ですから、ファンドAのシャープレシオは、(3.2%-1.0%)÷1.0%=2.2となります。 |
(イ) | ファンドBのシャープレシオは、(12.0%-1.0%)÷5.0%=2.2となります。 よって、ファンドAとファンドBの運用効率は、同等であると言えます。 |
【問28】
上場株式の譲渡および配当(一定の大口株主等が受けるものを除く)に係る税金に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、NISA(少額投資非課税制度)により投資収益が非課税となる口座をNISA口座という。
1. | 上場株式の配当について、総合課税を選択して確定申告をした場合、上場株式の譲渡損失の金額と損益通算することができる。 |
2. | 上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算してもなお控除しきれない上場株式の譲渡損失の金額は、確定申告をすることにより、翌年以後5年間にわたって繰り越すことができる。 |
3. | NISA口座で保有する上場株式の配当金を非課税扱いにするためには、配当金の受取方法として株式数比例配分方式を選択しなければならない。 |
4. | NISA口座で保有する上場株式を売却したことで生じた譲渡損失の金額は、確定申告をすることにより、特定口座内の上場株式の譲渡益の金額と通算することができる。 |
正解:3 | |
1. | 上場株式の配当を上場株式の譲渡損失の金額と損益通算するためには、当該配当について申告分離課税を選択する必要があります。 |
2. | 上場株式の譲渡損失の金額は、確定申告をすることにより、翌年以後3年間にわたって繰り越すことができます。なお、2年以上繰り越す場合は毎年確定申告をする必要があります。 |
3. | 正しい記述です。株式数比例配分方式以外の配当金の受け取り方法は、NISA口座以外の口座でNISA口座で保有している銘柄と同じ銘柄を保有している場合、NISA口座で保有している有価証券に係る配当金とNISA口座以外の口座で保有している有価証券に係る配当金を区別しないからです。 |
4. | NISA口座で保有している有価証券に係る利益または損失は、NISA口座で保有している別の銘柄、および、NISA口座以外の口座で保有している有価証券に係る利益または損失と損益通算することができません。 |
【問29】
わが国における個人による金融商品取引に係るセーフティネットに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 確定拠出年金の加入者が運用の方法として選択した定期預金は、加入者の預金として、預金保険制度による保護の対象となる。 |
2. | 日本国内で事業を行う生命保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構による補償の対象となる保険契約については、高予定利率契約を除き、原則として、破綻時点の責任準備金等の80%まで補償される。 |
3. | 証券会社が破綻し、分別管理が適切に行われていなかったために、一般顧客の資産の一部または全部が返還されない事態が生じた場合、日本投資者保護基金により、補償対象債権に係る顧客資産について一般顧客1人当たり2,000万円を上限として補償される。 |
4. | 銀行で購入した投資信託は、日本投資者保護基金による保護の対象となる。 |
正解:1 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 生命保険契約者保護機構により保護される金額は、原則として、破綻時点の責任準備金の90%です。 |
3. | 日本投資者保護基金により保護される金額は、顧客一人当たり、最高1,000万円までです。 |
4. | 投資信託は、販売会社・委託者・受託者のいずれかが破綻した場合であっても、信託財産が毀損される心配がありませんから、日本投資者保護基金による保護の対象ではありません。 |
【問30】
金融商品の取引等に係る各種法令に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、「金融サービスの提供に関する法律」を金融サービス提供法、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」を犯罪収益移転防止法という。
1. | 金融商品取引法では、金融商品取引契約を締結しようとする金融商品取引業者等は、あらかじめ顧客(特定投資家を除く)に契約締結前交付書面を交付しなければならないとされているが、顧客から交付を要しない旨の意思表示があった場合、その交付義務は免除される。 |
2. | 金融サービス提供法では、金融サービス仲介業の登録を受けた事業者は、銀行、証券、保険、貸金業の分野のサービスを仲介することができるが、特定の金融機関に所属し、その指導および監督を受けなければならないとされている。 |
3. | 消費者契約法では、事業者の不適切な行為によって、消費者が誤認や困惑をし、それによって消費者契約の申込みまたはその承諾の意思表示をした場合、消費者は、当該契約によって生じた損害について賠償を請求することができるとされている。 |
4. | 犯罪収益移転防止法では、金融機関等の特定事業者が顧客と特定業務に係る取引を行った場合、特定事業者は、原則として、直ちに当該取引に関する記録を作成し、当該取引の行われた日から7年間保存しなければならないとされている。 |
正解:4 | |
1. | 契約締結前交付書面の交付義務は、一般投資家に対しては、顧客から交付を要しない旨の意思表示があった場合でも、免除されません。 |
2. | 旧法(金融商品販売法)では、金融商品販売業者は特定の金融機関に所属し、その指導及び監督を受ける必要がありましたが、改正法(金融サービス提供法)では、金融サービス仲介業の登録を受けた事業者は、その必要がなくなりました。 |
3. | 消費者契約法には、損害賠償責任の規定がありません。損害賠償については、別の法律を適用する必要があります。 |
4. | 正しい記述です。 |
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