FP3級実技(保険)解説-2021年1月・後半
会社員のAさんは、妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんとの4人家族である。Aさんは、2020年中に終身保険の解約返戻金480万円および一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金600万円を受け取っている。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(50歳)]
会社員
[妻Bさん(50歳)]
専業主婦。2020年中の収入はない。
[長男Cさん(21歳)]
大学生。2020年中に、アルバイトにより給与収入120万円を得ている。
[二男Dさん(20歳)]
大学生。2020年中の収入はない。
<Aさんの2020年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
800万円
[終身保険の解約返戻金]
契約年月:1992年7月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:480万円
正味払込保険料:410万円
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2012年10月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡給付金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:600万円
正味払込保険料:500万円
※ | 妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2020年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
1. | 「Aさんが受け取った一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、契約から10年以内の解約のため、源泉分離課税の対象となります」 |
2. | 「Aさんの場合、総所得金額に算入される一時所得の金額の合計額が20万円を超えるため、Aさんは所得税の確定申告をしなければなりません」 |
3. | 「会社員であるAさんが所得税の確定申告をする場合、確定申告書は、Aさんの勤務先を経由して勤務先の住所地の所轄税務署長に提出することになります」 |
1. | 一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、契約から解約までの期間に関わらず、一時所得として所得税の課税対象となります。 |
2. | 正しい記述です。給与所得者の総所得金額に算入される一時所得の金額の合計額が20万円を超えると、所得税の確定申告をしなくてはいけません。 なお、Aさんの一時所得=(480+600)万円-(410+500)万円-50万円=120万円で、総所得金額に算入される一時所得の額は、120万円×1/2=60万円となります。 |
3. | Aさんが所得税の確定申告をする場合には、勤務先を経由せず行い、確定申告書の提出先は、納税者の住所地を所轄する税務署となります。 ちなみに、確定申告をしない場合(会社員が年末調整を受ける場合)は、勤務先を経由して勤務先の住所地の所轄税務署に申告書類が提出されます。 |
ⅰ) | 「Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます。Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、( ① )万円となります」 |
ⅱ) | 「長男Cさんの合計所得金額は( ② )万円を超えるため、Aさんは長男Cさんに係る扶養控除の適用を受けることはできません」 |
ⅲ) | 「二男Dさんは特定扶養親族に該当するため、Aさんが適用を受けることができる二男Dさんに係る扶養控除の控除額は、( ③ )万円となります」 |
1. | ①26 ②48 ③58 |
2. | ①38 ②38 ③58 |
3. | ①38 ②48 ③63 |
① | Aさんの給与所得=800万円-(800万円×10%+110万円)=610万円で、この全額が総所得金額に算入されます。 また、総所得金額に算入される一時所得の額は、60万円です(問10の選択肢2の解説を参照)。 よって、Aさんの合計所得金額=610万円+60万円=670万円となります。 合計所得金額が900万円以下である場合、配偶者控除の額は38万円です(老人控除対象配偶者を除く)。 |
② | 扶養控除は、合計所得金額が48万円を超える親族については適用を受けることはできません。 |
③ | 扶養控除の額の計算上、19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族は、特定扶養親族として、63万円の控除対象となります。 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
1. | 610万円 |
2. | 670万円 |
3. | 730万円 |
また、一時所得=(480+600)万円-(410+500)万円-50万円=120万円で、この2分の1に当たる60万円が総所得金額に算入されます。
したがって、総所得金額=610万円+60万円=670万円となります。
Aさん(74歳)は、妻Bさん(70歳)、長女Cさん(42歳)および長男Dさん(40歳)との4人暮らしである。Aさんは、妻Bさんには自宅を、長女Cさんには賃貸アパートを相続させたいと考えており、遺言の作成を検討している。また、Aさんは、現在、一時払終身保険への加入を検討している。
<Aさんの家族構成(推定相続人)>
[妻Bさん]
Aさんと自宅で同居している。
[長女Cさん]
会社員。Aさん夫妻と同居している。
[長男Dさん]
会社員。Aさん夫妻と同居している。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
[現預金]
1億3,000万円
[自宅]
①敷地(300㎡);3,000万円(注)
②建物:1,0000万円
[賃貸アパート]
①敷地(300㎡):3,000万円(注)
②建物:2,000万円
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
死亡保険金額:2,500万円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
1. | 「公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成するものです。相続開始後に円滑に手続を進めるために、妻Bさんや長女Cさんを証人にすることをお勧めします」 |
2. | 「自筆証書遺言は、遺言者が、その遺言の全文、日付および氏名を自書し、これに押印して作成するものですが、自筆証書遺言に添付する財産目録については、パソコン等で作成することも認められています」 |
3. | 「自筆証書遺言は、所定の手続により、法務局(遺言書保管所)に保管することができます。法務局(遺言書保管所)に保管された自筆証書遺言は、相続開始時、家庭裁判所での検認が不要となります」 |
1. | 未成年者や、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族、4親等内の親族、書記及び使用人など、利害関係が絡む人は、公正証書遺言の証人になることはできません。 |
2. | 正しい記述です。自筆証書遺言は基本的に全て手書きで作成する必要がありますが、財産目録に限っては、自筆以外の方法で作成することができます。 |
3. | 正しい記述です。自筆証書遺言は基本的に検認が必要ですが、遺言保管制度を利用した自筆証書遺言については、改ざんなどの恐れがないため検認は不要です。 |
ⅰ) | 「妻Bさんおよび長女Cさんが相続財産の大半を取得した場合、長男Dさんの遺留分を侵害する可能性があります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額が2億円である場合、長男Dさんの遺留分の金額は( ① )万円です」 |
ⅱ) | 「Aさんが加入を検討している一時払終身保険の死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。Aさんの相続開始後、妻Bさんが受け取る死亡保険金2,500万円のうち、相続税の課税価格に算入される金額は、( ② )万円となります」 |
ⅲ) | 「Aさんの相続が開始し、妻Bさんが特定居住用宅地等に該当する自宅の敷地を相続により取得し、その敷地の全部について『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、自宅の敷地(相続税評価額3,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を( ③ )万円とすることができます」 |
1. | ①2,500 ②500 ③2,400 |
2. | ①5,000 ②1,000 ③2,400 |
3. | ①2,500 ②1,000 ③600 |
① | 相続人が被相続人の直系尊属のみであるという条件には該当しませんから、抽象的遺留分は、遺留分算定基礎財産の2分の1です。 また、具体的遺留分は抽象的遺留分に法定相続人をかけたものですから、長男Dさんの遺留分は、2億円×1/2×1/4=2,500万円となります。 |
② | 相続人が受け取る相続税の課税対象となる死亡保険金は500万円×法定相続人の数まで非課税になります。 このケースでは、法定相続人の数は3人ですから、相続税の課税価格に算入される死亡保険金の額は、2,500万円-500万円×3=1,000万円となります。 |
③ | 自宅の用に供する土地について小規模宅地等の特例の適用を受けた場合、330㎡までにかかる相続税評価額が、80%減額されます。 また、このケースでは、自宅の敷地は300㎡ですから、敷地全体に対して特例の適用を受けることができます。 よって、自宅の敷地について、相続税の課税価格に算入すべき価額は、3,000万円×(1-80%)=600万円となります。 |
<資料>相続税の速算表 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
30,000万円超 60,000万円以下 |
50% | 4,200万円 |
60,000万円超 | 55% | 7,200万円 |
1. | 3,300万円 |
2. | 3,400万円 |
3. | 5,500万円 |
相続人は、配偶者相続人と第一順位の血族相続の組み合わせですから、妻Bさんの法定相続分は1/2になります。
また、長女Cさんと長男Dさんの法定相続分は、それぞれ1/4となります。
よって、1億8,000万円を法定相続分で按分すると、各人の法定相続分に応ずる取得金額は、
妻Bさん:9,000万円
長女Cさん:4,500万円
長男Dさん:4,500万円
です。
ゆえに、各人の法定相続分に応ずる取得金額に対応する相続税額は、
妻Bさん:9,000万円×30%-700万円=2,000万円
長女Cさん:4,500万円×20%-200万円=700万円
長男Dさん:4,500万円×20%-200万円=700万円
です。
したがって、相続税の総額=2,000万円+700万円+700万円=3,400万円となります。
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