お金の寺子屋

FP2級実技(個人)解説-2020年9月・問1~9

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(47歳)は、会社員の妻Bさん(48歳)および大学生の長女Cさん(19歳)との3人暮らしである。Aさんは、住宅ローンの返済や教育費の支払など、今後の資金計画を再検討するなかで、老後の生活資金等について、そろそろ準備をしておきたいと考えるようになった。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(会社員)]
1973年6月12日生まれ(47歳)
公的年金加入歴は下図のとおり(60歳定年時までの見込みを含む) 。
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。
X社が実施している確定給付企業年金の加入者である。

[妻Bさん(会社員)]
1972年7月10日生まれ(48歳)
公的年金加入歴:20歳から22歳の大学生であった期間(33月)は国民年金の第1号被保険者として保険料を納付し、22歳から現在に至るまでの期間(305月)は厚生年金保険に加入。妻Bさんは、65歳になるまでの間、厚生年金保険の被保険者として勤務する見込みである。
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。
勤務先は確定拠出年金の企業型年金および他の企業年金を実施していない。

[長男Cさん(大学生)]
2000年12月19日生まれ(19歳)
Aさんが加入する全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。

妻Bさんおよび長女Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。
家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
Aさんが、60歳でX社を定年退職し、その後再就職等をしない場合、原則として65歳から受給することができる老齢基礎年金および老齢厚生年金の年金額(2020年度価額)を計算した次の<計算の手順>の空欄①~④に入る最も適切な数値を解答用紙に記入しなさい。計算にあたっては、《設例》の<Aさんとその家族に関する資料>および下記の<資料>に基づくこと。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

<計算の手順>
1.老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入)
  ( ① )円

2.老齢厚生年金の年金額
(1)報酬比例部分の額
  ( ② )円(円未満四捨五入)
(2)経過的加算額
  ( ③ )円(円未満四捨五入)
(3)基本年金額(②+③)
   □□□円
(4)加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること)
(5)老齢厚生年金の年金額
  ( ④ )円

<資料>
正解:781,700、961,229、650、961,879
国民保険の保険料納付済期間と厚生年金保険の保険料納付済期間は、どちらも老齢厚生年金の受給額の計算期間に含まれます。
よって、老齢基礎年金の年金額=781,700円×480月/480月=781,700円となります。
28万円×7.125/1,000×84+40万円×5.481/1,000×362=961,228.8円≒961,229円となります。
1,630円×446-781,700円×446/480=650円です。
配偶者が年上であるため、加給年金は支給されません。
よって、老齢厚生年金の年金額=961,229円+650円=961,879円となります。
【問2】
Mさんは、Aさんに対して、老後の年金収入を増やす方法として確定拠出年金の個人型年金(以下、「個人型年金」という)について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんおよび妻Bさんは、老後の年金収入を増やす方法として、個人型年金に加入することができます。拠出できる掛金の限度額は、Aさんの場合は年額144,000円、妻Bさんの場合は年額( ① )円です。Aさんおよび妻Bさんが60歳到達時に老齢給付金を受給するためには、通算加入者等期間が( ② )年以上必要となります」
「個人型年金のメリットの1つとして、税制の優遇措置が挙げられます。拠出する掛金は全額( ③ )として所得控除の対象となります。また、老齢給付金を年金で受け取った場合、当該給付金は雑所得として総合課税の対象となりますが、老齢基礎年金および老齢厚生年金と同様に公的年金等控除の対象となります。なお、個人型年金は、Aさんの指図に基づく運用実績により、将来の年金受取額が増減する点に留意する必要があります」
<語句群>
イ.5 ロ.10 ハ.15 
ニ.240,000 ホ.276,000 
ヘ.816,000 
ト.生命保険料控除 
チ.小規模企業共済等掛金控除 
リ.社会保険料控除
正解:ホ、ロ、チ
企業年金がない会社に務める人が拠出することができる、個人型の確定拠出年金の掛金の限度額は、276,000円です。
確定拠出年金の老齢給付金を60歳から受給するためには、通算加入者等期間が10年以上必要です。
個人が拠出する確定拠出年金の掛金は、全額、小規模企業共済等掛金控除の対象になります。
【問3】
Mさんは、Aさんに対して、各種のアドバイスをした。Mさんがアドバイスした次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんおよび妻Bさんには、特別支給の老齢厚生年金の支給はありません。原則として、65歳から老齢基礎年金および老齢厚生年金を受給することになります」
「確定拠出年金の個人型年金は、Aさん自身の都合で任意に中途脱退することができます。脱退した場合に受け取る脱退一時金は、一時所得の収入金額として総合課税の対象となります」
「長女Cさんは、2020年12月から国民年金の保険料を納付する必要がありますが、Aさんおよび妻Bさんの前年所得が一定額以下の場合、長女Cさんは国民年金の学生納付特例制度を利用することができます」
正解:○、×、×
正しい記述です。1961年(昭和36年)4月2日以降に生まれた男性と、1966年(昭和41年)4月2日以降に生まれた女性は、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることはできません。
確定拠出年金は任意脱退することはできません。
学生納付特例制度は、学生本人の収入が一定額以下であれば適用を受けることができます。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
会社員のAさん(40歳)は、将来に向けた資産形成のため、上場株式に投資したいと考えている。Aさんは、X社株式(東京証券取引所市場第一部)の配当利回りに魅力を感じているが、購入する前に国内の株式市場にも影響を与える米国の経済指標や上場株式の購入方法等について理解を深めたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<X社株式の関連情報>
株価:3,800円
発行済株式数:8億株
決算期:2020年11月30日(月)(配当の権利が確定する決算期末)

<X社およびY社の財務データ>(単位:百万円)

純資産の金額と自己資本の金額は同じである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
<設例>の<X社株式の関連情報>および<X社の財務データ>に基づいて算出される次の①、②を求めなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は、%表示の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。

50期におけるROE(自己資本は49期と50期の平均を用いる)
50期における配当利回り
正解:13.01、3.16
ROE(%)=255,000百万円÷(1,920,000+2,000,000)百万円×100=13.010…(%)です。
1株あたり配当金=96,000百万円÷8億株=12円です。
よって、配当利回り(%)=120円÷3,800円×100=3.1578…(%)です。
【問5】
Mさんは、Aさんに対して、米国の経済指標等について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「米国のISM製造業景況感指数は、製造業の購買・供給管理責任者を調査対象にした企業の景況感を反映した指標です。通常、当該指数が100%を上回ると景気拡大、100%を下回ると景気後退と判断されます」
「米国の雇用統計は、米国の労働省から四半期ごとに発表される指標です。非農業部門雇用者数や失業率などの数値は、株式市場や為替市場などの市場参加者が注視する重要な経済指標です」
「米国の政策金利は、連邦準備制度理事会(FRB)が開催する連邦公開市場委員会(FOMC)により決定されます。2019年は、米国景気の堅調さを反映し、3回の利上げを行っています」
正解:×、×、×
米国のISM製造業景況感指数は、50%を上回るか下回るかが目安です。
米国の雇用統計は毎月発表されます。
FOMCは、2019年に3回利下げ(金融緩和)を行っています。
【問6】
Mさんは、Aさんに対して、X社株式の購入について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが特定口座(源泉徴収あり)においてX社株式を株価3,800円で100株購入し、同年中に株価4,000円で全株売却した場合、その他の取引や手数料等を考慮しなければ、売買益2万円に対して20.315%相当額が源泉徴収等されます」
「AさんがX社株式の次回の配当を受け取るためには、権利付き最終日までにX社株式を購入しておく必要があります。X社株式の権利付き最終日は、権利確定日の3営業日前である2020年11月25日(水)です」
「50期におけるX社株式のPBRは、1.52倍です。一般に、PBRが高いほうが株価は割安と判断されますが、何倍程度が妥当であるかは、同業他社との比較や過去のトレンドを確認するなど、相対的な数値として捉えることが大切です」
正解:○、×、×
正しい記述です。特定口座内で生じた譲渡益については、損益通算を含めて自動的に税額が計算され、源泉徴収が行われて納税が完了します。
株式の受渡日は約定日から起算して3営業日後ですから、11月30日(月)から起算して3営業日前の11月26日(木)が権利付き最終日です。
PBRは高いと割高と判断されます。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
会社員のAさんは、妻Bさんおよび長女Cさんとの3人家族である。Aさんは、2020年中に長女Cさんの入院・手術費用として医療費25万円を支払ったため、医療費控除の適用を受けたいと思っている。なお、不動産所得の金額の前の「▲」は赤字であることを表している。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(55歳)]
会社員

[妻Bさん(53歳)]
専業主婦。2020年中の収入はない。

[長女Cさん(20歳)]
大学生。2020年中の収入はない。

<Aさんの2020年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
800万円

[不動産所得の金額]
▲100万円(白色申告)
損失の金額100万円のうち、土地等の取得に係る負債の利子20万円を含む。

妻Bさんおよび長女Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2020年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
所得税における医療費控除に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を、下記の〈数値群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「通常の医療費控除は、その年分の総所得金額等の合計額が200万円以上である居住者の場合、その年中に支払った医療費の総額から保険金などで補填される金額を控除した金額が( ① )円を超えるときは、その超える部分の金額(最高200万円)をその居住者のその年分の総所得金額等から控除します。また、通常の医療費控除との選択適用となるセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)では、定期健康診断や予防接種などの一定の取組みを行っている者が自己または自己と生計を一にする配偶者等のために特定一般用医薬品等購入費を支払った場合、その額が( ② )円を超えるときは、その超える部分の金額(最高( ③ )円)を総所得金額等から控除することができます」
<数値群>
イ.12,000 ロ.24,000 ハ.38,000 
ニ.68,000 ホ.88,000 ヘ.100,000 
ト.120,000 チ.150,000 リ.200,000
正解:ヘ、イ、ホ
通常の医療費控除の金額=正味負担した医療費の額-10万円です。
セルフメディケーション税制に係る医療費控除の金額=正味負担した特定一般用医薬品等購入費-12,000円です。
セルフメディケーション税制に係る医療費控除の金額は、最高88,000円です。
【問8】
Aさんの2020年分の所得税の課税に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんは不動産所得の金額に損失が生じているため、確定申告をすることによって、純損失の繰越控除の適用を受けることができます」
「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、38万円です」
「医療費控除については、年末調整では適用を受けることができないため、医療費控除の適用を受けるためには、所得税の確定申告が必要となります」
正解:×、○、○
不動産所得の金額に損失が生じた場合、すぐに純損失の繰越控除をするのではなく、損益通算を行います。
正しい記述です。合計所得金額が900万円以下の人が受ける配偶者控除の額は38万円です。
正しい記述です。寄付金控除・医療費控除・雑損控除の適用を受けるためには確定申告をしなくてはいけません。
【問9】
Aさんの2020年分の所得税における課税総所得金額を計算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)総所得金額 ( ① )円
医療費控除 □□□円
社会保険料控除 □□□円
生命保険料控除 □□□円
地震保険料控除 □□□円
配偶者控除 □□□円
扶養控除 ( ② )円
基礎控除 ( ③ )円
(b)所得控除の額の合計額 2,900,000円
(c)課税総所得金額((a)-(b)) □□□円
(d)算出税額((c)に対する所得税額) □□□円
<資料>給与所得控除額
給与収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%-10万円 
(最低55万円)
180万円超
360万円以下
収入金額×30%+8万円
360万円超
660万円以下
収入金額×20%+44万円
660万円超
850万円以下
収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円
正解:5,300,000、630,000、480,000
給与所得金額=800万円-(800万円×10%+110万円)=610万円です。
また、不動産所得の計算上必要経費に算入された土地取得のための借入金の利子は損益通算の対象にはなりませんから、総所得金額=610万円-(100万円-20万円)=530万円です。
長女Cさんは、合計所得金額が48万円以下の19歳以上23歳未満の扶養親族ですから、特定扶養親族として63万円の控除対象になります。
合計所得金額が2,400万円以下の人が受ける基礎控除の額は48万円です。

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