お金の寺子屋

FP3級実技(FP協会)解説-2022年9月・後半

【問11】
山田さんは、別荘として利用していた土地および建物を売却する予定である。売却に係る状況が下記<資料>のとおりである場合、所得税における次の記述の空欄(ア)、(イ)にあてはまる数値または語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

<資料>
取得日:2012年1月10日
売却予定日:2022年9月30日
譲渡価額:3,000万円
購入価額:2,500万円
取得費:2,000万円
譲渡費用:200万円
特別控除額はないものとする。
所得控除は考慮しないものとする。
山田さんがこの土地および建物を売却した場合の譲渡所得の金額は( ア )万円となり、課税( イ )譲渡所得金額として扱われる。
1. (ア)300 (イ)短期
2. (ア)800 (イ)短期
3. (ア)800 (イ)長期
正解:
(ア) 譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)=3,000万円-(2,000万円+200万円)=800万円です。
なお、建物の取得費は、購入価額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額を使いますので、<資料>の購入価額はダミー資料です。
(イ) 不動産に係る譲渡所得については、取得日から売却日が属する年の1月1日までの期間が5年を超えると、長期譲渡所得に区分されます。
【問12】
杉山さんは2022年中に勤務先を退職し、個人事業主として美容室を始めた。杉山さんの2022年分の各種所得の金額が下記<資料>のとおりである場合、杉山さんの2022年分の所得税における総所得金額として正しいものはどれか。なお、杉山さんの2022年中の所得は<資料>に記載されている所得以外にはないものとする。

<資料>

[杉山さんの2022年分の所得の金額]
事業所得の金額 360万円
給与所得の金額 200万円 (退職した勤務先から受給したもので、給与所得控除後の金額である)
退職所得の金額 100万円 (退職した勤務先から受給したもので、退職所得控除後の残額の1/2相当額である)
1. 660万円
2. 560万円
3. 460万円
正解:
事業所得の額と給与所得の額は、全額総所得金額に算入されます。また、退職所得は申告分離課税されますから、総所得金額には算入されません。
よって、総所得金額は、360万円+200万円=560万円となります。
【問13】
2022年9月1日に相続が開始された宇野沙織さん(被相続人)の<親族関係図>が下記のとおりである場合、民法上の相続人および法定相続分の組み合わせとして、正しいものはどれか。なお、記載のない条件については一切考慮しないこととする。

<親族関係図>
1. 康史 1/2 昭雄 1/4 小百合 1/4
2. 康史 2/3 昭雄 1/6 小百合 1/6
3. 康史 2/3 明人 1/3
正解:
相続人の組み合わせが、配偶者相続人と第2順位の血族相続人である場合、配偶者相続人の法定相続分は2/3、血族相続人の法定相続分は1/3となり、血族相続人が複数いる場合には、これを按分します。
よって、康史さんの法定相続分は2/3、昭雄さんと小百合さんの法定相続分は、それぞれ、1/3×1/2=1/6となります。
【問14】
妹尾勇二さん(78歳)は、将来発生するであろう自身の相続について、遺産分割等でのトラブルを防ぐために公正証書遺言の作成を検討しており、FPの塩谷さんに相談をした。公正証書遺言に関する塩谷さんの次の説明のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「すでに作成した公正証書遺言を撤回したい場合、自筆証書遺言では撤回することはできません。」
2. 「公正証書遺言を作成する場合、証人の立会いは必要ありません。」
3. 「公正証書遺言を作成した場合、相続発生後、家庭裁判所に対してその検認を請求する必要はありません。」
正解:
1. 内容が抵触する複数の遺言は、日付が新しいものが有効であり、遺言の種類によって効力に差はないため、公正証書遺言の内容を自筆証書遺言によって撤回することができます。
2. 公正証書遺言を作成する場合には2人以上の証人が必要です。
3. 正しい記述です。
【問15】
細川亜実さん(32歳)が2022年中に贈与を受けた財産の価額と贈与者は以下のとおりである 亜実さんの2022年分の贈与税額として、正しいものはどれか。なお、2022年中において、亜実さんはこれ以外の財産の贈与を受けておらず、相続時精算課税制度は選択していないものとする。

亜実さんの父からの贈与 現金400万円
亜実さんの祖母からの贈与 現金60万円
上記の贈与は、住宅取得等資金や教育資金、結婚・子育てに係る資金の贈与ではない。
<贈与税の速算表>
[18歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産の場合]
基礎控除後の
課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超
400万円以下
15% 10万円
400万円超
600万円以下
20% 30万円
600万円超
1,000万円以下
30% 90万円
1,000万円超
1,500万円以下
40% 190万円
1,500万円超
3,000万円以下
45% 265万円
3,000万円超
4,500万円以下
50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
[上記以外の場合]
基礎控除後の
課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超
300万円以下
15% 10万円
300万円超
400万円以下
20% 25万円
400万円超
600万円以下
30% 65万円
600万円超
1,000万円以下
40% 125万円
1,000万円超
1,500万円以下
45% 175万円
1,500万円超
3,000万円以下
50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
1. 425,000円
2. 620,000円
3. 730,000円
正解:
(400万円+60万円-110万円)×15%-10万円=425,000円となります。

【問16】~【問20】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
藤原健吾さんは株式会社PEに勤務する会社員である。健吾さんは今後の生活設計について、FPで税理士でもある馬場さんに相談をした。なお、下記のデータはいずれも2022年9月1日現在のものである。

<家族構成(同居家族)>
[藤原 健吾(本人)]
1976年8月4日(46歳)
会社員

[藤原 恵子(妻)]
1977年6月19日(45歳)
専業主婦

[藤原 詩音(長女)]
2003年5月5日(19歳)
大学生

<保有財産(時価)>
[金融資産]
普通預金:280万円
定期預金:200万円
投資信託:240万円
個人向け国債:30万円
上場株式:430万円

[生命保険(解約返戻金相当額)]
40万円

[不動産(自宅マンション) ]
2,800万円

<負債残高>
住宅ローン(自宅マンション):2,100万円(債務者は健吾さん、団体信用生命保険付き)
<その他>
上記以外については、各設問において特に指定のない限り一切考慮しないものとする。
【問16】
FPの馬場さんは、藤原家の2022年9月1日現在のバランスシートを作成した。下表の空欄(ア)にあてはまる金額として、正しいものはどれか。なお、<設例>に記載のあるデータに基づいて解答することとする。

1. 1,220(万円)
2. 1,920(万円)
3. 1,960(万円)
正解:

<資産>
普通預金280万円
定期預金200万円
投資信託240万円
個人向け国債30万円
上場株式430万円
生命保険40万円
不動産2,800万円
の、計4,020万円

<負債>
住宅ローン2,100万円

よって、純資産=4,020万円-2,100万円=1,920万円となります。

【問17】
健吾さんは、60歳で定年を迎えた後、公的年金の支給が始まる65歳までの5年間の生活資金に退職一時金の一部を充てようと考えている。仮に、退職一時金のうち600万円を年利1.0%で複利運用しながら5年間で均等に取り崩すこととした場合、毎年の生活資金に充てることができる最大金額として、正しいものはどれか。なお、下記<資料>の3つの係数の中から最も適切な係数を選択して計算し、解答に当たっては万円未満を切り捨てること。また、税金や記載のない事項については一切考慮しないこととする。

<資料:係数早見表(年利1.0%、5年)>
現価係数:0.95147
資本回収係数:0.20604
減債基金係数:0.19604

記載されている数値は正しいものとする。
1. 114万円
2. 117万円
3. 123万円
正解:
取崩型運用における毎年の取崩額を計算する際に用いる係数は、資本回収係数です。
よって、600万円×0.20604=1,236,240円≒1,230,000円(千円未満切捨て)となります。
【問18】
健吾さんは、通常65歳から支給される老齢基礎年金および老齢厚生年金を繰り下げて受給できることを知り、FPの馬場さんに質問をした。老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰下げ受給に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給要件は満たしているものとする。
1. 老齢基礎年金および老齢厚生年金を繰り下げて受給した場合の年金額は、繰下げ年数1年当たり7%の割合で増額された額となる。
2. 老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらか一方のみを繰り下げて受給することができる。
3. 老齢基礎年金および老齢厚生年金を繰り下げて受給した場合には、一生涯増額された年金を受給することになる。
正解:
1. 年金を繰下げた場合の増額率は、繰下げ1ヵ月当たり0.7%(1年あたり8.4%)です。
2. 正しい記述です。なお、繰上げる場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰上げる必要があります。
3. 正しい記述です。年金の増減額率は、一生涯変わりません。
【問19】
健吾さんの公的年金加入歴は下記のとおりである。仮に、健吾さんが現時点(46歳)で死亡した場合、健吾さんの死亡時点において妻の恵子さんに支給される公的年金の遺族給付に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、健吾さんは、入社時(22歳)から死亡時まで厚生年金保険に加入しているものとし、遺族給付における生計維持要件は満たされているものとする。

1. 遺族基礎年金と中高齢寡婦加算額が加算された遺族厚生年金が支給される。
2. 遺族厚生年金と寡婦年金が支給される。
3. 中高齢寡婦加算額が加算された遺族厚生年金が支給される。
正解:
1. 子供が18歳到達年度の末日を経過しているため、年法上の子には該当せず、遺族基礎年金は支払われません。
2. 寡婦年金は、死亡日の前日において国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間および国民年金の保険料免除期間が10年以上ある夫が亡くなったときに、その夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻に対して、その妻が60歳から65歳になるまでの間支給されるものです。
3. 遺族厚生年金の支給要件(第2号被保険者に生計を維持されていた配偶者)と中高齢寡婦加算の加算要件(子のない40歳以上65歳未満の妻)を満たします。
【問20】
健吾さんは、今後の資産運用に、NISA(少額投資非課税制度)またはつみたてNISA(非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度)を取り入れたいと考えており、FPの馬場さんに質問をした。NISAおよびつみたてNISAに関するFPの馬場さんの次の説明のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「現在、取引のあるW証券にNISA口座を開設すれば、W証券で保有している投資信託については、そのまま移管することができます。」
2. 「NISAは、上場株式を投資対象とすることができます。」
3. 「つみたてNISAは、個人向け国債を投資対象とすることができます。」
正解:
1. 既に保有している有価証券をNISA口座に移管することはできません。
2. 正しい記述です。
3. NISAやつみたてNISAは、公社債や公社債投資信託に投資することはできません。

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