FP3級実技(個人)解説-2024年1月・前半
【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(45歳)は、X株式会社を2020年3月末日に退職し、個人事業主として独立した。独立から3年以上が経過した現在、収入は安定している。
Aさんは、最近、公的年金制度について理解したうえで、老後の収入を増やすことができる各種制度を利用したいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさん(45歳)は、X株式会社を2020年3月末日に退職し、個人事業主として独立した。独立から3年以上が経過した現在、収入は安定している。
Aさんは、最近、公的年金制度について理解したうえで、老後の収入を増やすことができる各種制度を利用したいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
〈Aさんに関する資料〉
(1)生年月日 | : | 1978年9月3日 |
(2)公的年金の加入歴 | : | 下図のとおり(60歳までの見込みを含む) |
※ | Aさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問1】
はじめに、Mさんは、《設例》の〈Aさんに関する資料〉に基づき、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、老齢基礎年金の年金額は、2023年度価額に基づいて計算するものとする。
1. | 795,000円×221月/480月 |
2. | 795,000円×449月/480月 |
3. | 795,000円×480月/480月 |
正解:2(3点)
老齢基礎年金の計算上、20歳以上60歳未満の期間における、国民年金保険料納付期間や厚生年金保険の被保険者期間などは、年金額に反映されますが、未納期間は年金額に反映されません。
よって、老齢基礎年金の額=795,000円×(120+327)/480となります。
よって、老齢基礎年金の額=795,000円×(120+327)/480となります。
【問2】
次に、Mさんは、小規模企業共済制度について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「小規模企業共済制度は、個人事業主が廃業等した場合に必要となる資金を準備しておくための制度です。毎月の掛金は、1,000円から( ① )までの範囲内(500円単位)で選択でき、支払った掛金は( ② )の対象となります。共済金(死亡事由以外)の受取方法には『一括受取り』『分割受取り』『一括受取りと分割受取りの併用』があり、『一括受取り』の共済金は、( ③ )として所得税の課税対象となります」
1. | ①68,000円 ②所得控除 ③一時所得 |
2. | ①70,000円 ②所得控除 ③退職所得 |
3. | ①70,000円 ②税額控除 ③一時所得 |
正解:2(3点)
① | 小規模企業共済の掛金の拠出限度額は、月額70,000円です。 |
② | 小規模企業共済の掛金は、全額が、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。 |
③ | 小規模企業共済の共済金(死亡 事由以外)は、一括で受け取った分は退職所得となり、分割で受け取った分は雑所得となります。 |
【問3】
最後に、Mさんは、老後の年金収入を増やすことができる各種制度について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「確定拠出年金の個人型年金は、加入者自身が掛金の運用方法を選択し、資産を形成する年金制度です。将来受け取ることができる年金額は、運用実績により増減します」 |
2. | 「国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者の老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。加入は口数制となっており、1口目は2種類の終身年金(A型・B型)のいずれかを選択します」 |
3. | 「国民年金の付加年金は、月額200円の付加保険料を納付することにより、老齢基礎年金と併せて受給することができる年金です。なお、国民年金基金に加入している間は、付加保険料を納付することができません」 |
正解:3(4点)
1) | 正しい記述です。 |
2) | 正しい記述です。国民年金基金は口数単位で加入し、1口目は必ず終身年金を選択する必要があります。 |
3) | 国民年金の付加保険料は、月額400円です。なお、これ以外の記述は正しいです。 |
【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさん(29歳)は、将来に向けた資産形成のため、株式や債券による運用を始めたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Mさんは、Aさんに対して、X社株式(東京証券取引所プライム市場上場銘柄)および国内の大手企業が発行しているY社債(特定公社債)を例として、説明を行うことにした。
会社員のAさん(29歳)は、将来に向けた資産形成のため、株式や債券による運用を始めたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Mさんは、Aさんに対して、X社株式(東京証券取引所プライム市場上場銘柄)および国内の大手企業が発行しているY社債(特定公社債)を例として、説明を行うことにした。
〈X社に関する資料〉 | |
総資産 | 1,000億円 |
自己資本(純資産) | 600億円 |
当期純利益 | 60億円 |
年間配当金総額 | 15億円 |
発行済株式数 | 5,000万株 |
株価 | 1,500円 |
〈Y社債に関する資料〉 | ||
・発行会社 | : | 国内の大手企業 |
・購入価格 | : | 103円(額面100円当たり) |
・表面利率 | : | 1.2% |
・利払日 | : | 年2回 |
・残存期間 | : | 5年 |
・償還価格 | : | 100円(額面100円当たり) |
・格付 | : | BBB |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問4】
Mさんは、〈X社に関する資料〉から算出されるX社株式の投資指標について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「株価の相対的な割高・割安の度合いを判断する指標として、PERやPBRがあります。X社株式のPERは12.5倍、PBRは1.25倍です」 |
2. | 「会社の収益性や経営効率を測る指標として、ROEがあります。X社のROEは10%です。一般に、ROEが高い会社ほど、資本の効率的な活用がなされていると判断することができます」 |
3. | 「株価に対する1株当たりの年間配当金の割合を示す指標を配当性向といいます。X社株式の配当性向は25%です」 |
正解:3(4点)
1) | PER=株価÷1株当たり当期純利益ですから、X社のPER=1,500円÷(60億円÷5,000万)=12.5倍です。 PBR=株価÷1株当たり純資産ですから、X社のPBR=1,500円÷(600億円÷5,000万)=1.25倍です。 |
2) | 正しい記述です。ROE=当期純利益÷自己資本ですから、X社のROE=60億円÷600億円=0.1=10%です。 |
3) | 配当性向は、税引後当期純利益に対する配当金総額の割合を示す指標です。X社の配当性向=15億円÷60億円=0.25=25%です。 なお、株価に対する1株当たりの年間配当金の割合を示す指標は、配当利回りです。X社の配当利回り=(15億円÷5,000万)÷1,500円=0.02=2%です。 |
【問5】
Mさんは、Y社債に投資する場合の留意点等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「一般に、BBB(トリプルビー)格相当以下の格付は、投機的格付と呼ばれています。Y社債は、投資適格債に比べて信用度は劣りますが、相対的に高い利回りを期待することができます」 |
2. | 「毎年受け取る利子は、購入価格に表面利率を乗じることで求められます。表面利率は、発行時の金利水準や発行会社の信用力などに応じて決められます」 |
3. | 「Y社債の利子は、原則として、支払時に所得税および復興特別所得税と住民税の合計で20.315%相当額が源泉徴収等され、申告分離課税の対象となりますが、確定申告不要制度を選択することもできます」 |
正解:3(3点)
① | 一般に、投機的格付とされるのは、BB(ダブルビー)格相当以下の格付がされた債券です。 |
② | 毎年受け取る債券の利子は、額面金額に表面利率を乗じることで求められます。 |
③ | 正しい記述です。特定公社債の利子は、概ね株式の配当金と同様に課税されます(総合課税はできません)。 |
【問6】
Y社債を〈Y社債に関する資料〉の条件で購入した場合の最終利回り(年率・単利)は、次のうちどれか。なお、計算にあたっては税金や手数料等を考慮せず、答は%表示における小数点以下第3位を四捨五入している。
1. | 0.58% |
2. | 0.60% |
3. | 1.17% |
正解:1(3点)
最終利回り(%)={1.2+(100-103)÷5}÷103×100=0.5825…%≒0.58%
【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさんは、妻Bさん、長男Cさんおよび長女Dさんとの4人家族である。2023年5月に20歳になった長男Cさんの国民年金保険料は、Aさんが毎月支払っている。
会社員のAさんは、妻Bさん、長男Cさんおよび長女Dさんとの4人家族である。2023年5月に20歳になった長男Cさんの国民年金保険料は、Aさんが毎月支払っている。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(45歳)]
会社員
[妻Bさん(44歳)]
パートタイマー。2023年中に、給与収入80万円を得ている。
[長男Cさん(20歳)]
大学生。2023年中の収入はない。
[長女Dさん(17歳)]
高校生。2023年中の収入はない。
<Aさんの2023年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
750万円
[不動産所得の金額]
30万円
[一時払養老保険(10年満期)の満期保険金]
契約年月:2013年8月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
満期保険金受取人:Aさん
満期保険金額:350万円
正味払込保険料:330万円
※ | 妻Bさん、長男Cさんおよび長女Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問7】
Aさんの2023年分の所得税における総所得金額は、次のうちどれか。
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
1. | 595万円 |
2. | 605万円 |
3. | 615万円 |
正解:1(4点)
給与所得=750万円-(750万円×10%+110万円)=565万円です。
また、一時払養老保険の満期保険金は、契約から5年を超えて受け取った場合は、一時所得となりますが、総収入金額から収入を得るために直接支出した金額が特別控除額(最高50万円)以下である場合、一時所得の額は0となります。
給与所得と不動産所得は、全額総所得金額に算入されますから、総所得金額=565万円+30万円=595万円となります。
また、一時払養老保険の満期保険金は、契約から5年を超えて受け取った場合は、一時所得となりますが、総収入金額から収入を得るために直接支出した金額が特別控除額(最高50万円)以下である場合、一時所得の額は0となります。
給与所得と不動産所得は、全額総所得金額に算入されますから、総所得金額=565万円+30万円=595万円となります。
【問8】
Aさんの2023年分の所得税における所得控除に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが適用を受けることができる基礎控除の控除額は、38万円です」 |
2. | 「Aさんが適用を受けることができる扶養控除の控除額は、101万円です」 |
3. | 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、48万円です」 |
正解:2(3点)
1) | 合計所得金額が2,400万円以下の人が適用を受けることができる基礎控除の額は、48万円です。 |
2) | 長男Cさんは、19歳以上23歳未満ですから、特定扶養親族として63万円の控除を受けることができます。 また、長女Dさんは、16歳以上19歳未満ですから、一般の控除対象扶養親族として38万円の控除を受けることができます。 よって、扶養控除の額は、63万円+38万円=101万円となります。 |
3) | 妻Bさんは、配偶者控除の対象となりますが、合計所得金額が900万円以下の人が適用を受けることができる配偶者控除の額は、38万円です。 |
【問9】
Aさんの2023年分の所得税の課税に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが2023年中に支払った長男Cさんの国民年金保険料は、その全額を社会保険料控除として総所得金額等から控除することができます」 |
2. | 「Aさんが受け取った一時払養老保険の満期保険金に係る差益は、源泉分離課税の対象となります」 |
3. | 「Aさんは、不動産所得の金額が20万円を超えるため、所得税の確定申告をしなければなりません」 |
正解:2(3点)
1) | 正しい記述です。社会保険料控除の計算においては、生計を一にする親族のために支払った金額も対象になります。 |
2) | 一時払養老保険の満期保険金に係る差益が源泉分離課税の対象となるのは、満期までの期間が5年以下である場合です。 |
3) | 正しい記述です。給与所得と退職所得以外の所得の額が20万円を超える場合、所得税の確定申告をする必要があります。 |
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