お金の寺子屋

FP3級実技(個人)解説-2023年9月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(36歳)は、妻Bさん(35歳)、長男Cさん(3歳)および二男Dさん(0歳)との4人暮らしである。Aさんは、今年4月に二男Dさんが誕生したことを機に、今後の資金計画を改めて検討したいと考えている。Aさんは、その前提として、病気やケガで入院等した場合の健康保険の保険給付や自分が死亡した場合の公的年金制度からの遺族給付の支給など、社会保険制度の概要について理解しておきたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんの家族構成>
[Aさん]
1986年12月3日生まれ
会社員(厚生年金保険・全国健康保険協会管掌健康保険に加入している)

[妻Bさん]
1988年5月14日生まれ
国民年金に第3号被保険者として加入している。

[長男Cさん]
2020年8月20日生まれ

[二男Dさん]
2023年4月1日生まれ

<公的年金加入歴(2023年8月分まで)>
妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
現時点(2023年9月10日)においてAさんが死亡した場合、妻Bさんに支給される遺族基礎年金の年金額(2023年度価額)は、次のうちどれか。
1. 795,000円+228,700円=1,023,700円
2. 795,000円+228,700円+76,200円=1,099,900円
3. 795,000円+228,700円+228,700円=1,252,400円
正解:(3点)
遺族基礎年金の年金額(2023年度価額)は、795,000円+子の加算額(第2子までは1人当たり228,700円、第3子以降は1人当たり76,200円)です。
なお、ここでいう「子」には、原則として、18歳到達年度の末日を経過している子供は含みません。
よって、795,000円+228,700円+228,700円=1,252,400円となります。
【問2】
Mさんは、現時点(2023年9月10日)においてAさんが死亡した場合に妻Bさんに支給される遺族厚生年金について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「遺族厚生年金の額は、原則として、死亡した者の厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の( ① )に相当する額になります。ただし、Aさんの場合、その計算の基礎となる被保険者期間の月数が( ② )に満たないため、( ② )とみなして年金額が計算されます。
また、二男Dさんの18歳到達年度の末日が終了し、妻Bさんの有する遺族基礎年金の受給権が消滅したときは、妻Bさんが( ③ )に達するまでの間、妻Bさんに支給される遺族厚生年金の額に中高齢寡婦加算が加算されます」
1. ①3分の2 ②240月 ③65歳
2. ①4分の3 ②240月 ③60歳
3. ①4分の3 ②300月 ③65歳
正解:(4点)
遺族厚生年金の額は、原則として、亡くなった人さんの厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の4分の3相当額です。
厚生年金保険の被保険者が死亡した場合などに支給される遺族厚生年金の額は、その計算上、被保険者期間が300ヵ月最低保証されます。
中高齢寡婦加算は、基本的に、夫の死亡当時40歳以上65歳未満の子のない妻に対して、妻が65歳に達するまで支給されます。
また、40歳に達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けていた妻が、年金法上の子が居なくなることにより遺族基礎年金を受け取ることができなくなった場合にも、妻が65歳に達するまで支給されます。
【問3】
Mさんは、健康保険の保険給付について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「Aさんが業務外の事由による病気やケガの療養のために、連続して3日間休業し、4日目以降の休業した日について事業主から賃金が支払われなかった場合は、所定の手続により、傷病手当金が支給されます」
2. 「Aさんに係る医療費の一部負担金の割合は、原則として、入院・外来を問わず、実際にかかった費用の1割です」
3. 「医療機関等に支払った医療費の一部負担金の額が自己負担限度額を超えた場合、所定の手続により、自己負担限度額を超えた額が高額療養費として支給されます。この一部負担金には、差額ベッド代や入院時の食事代も含まれます」
正解:(3点)
1) 正しい記述です。傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガの療養のために、連続して3日間休業した場合に、4日目以降の休業した日について事業主から賃金が支払われなかった場合に支給されます。
2) 健康保険の被保険者が療養の給付を受けた場合、一部負担金の額は、原則として、実際にかかった費用の3割です。
3) 差額ベッド代や入院時の食事代は、高額療養費の対象外です。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(58歳)は、国内の銀行であるX銀行の米ドル建定期預金のキャンペーン広告を見て、その金利の高さに魅力を感じているが、これまで外貨建金融商品を利用した経験がなく、留意点や課税関係について知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<X銀行の米ドル建定期預金に関する資料>
・預入金額:10,000米ドル
・預入期間:6カ月
・利率(年率):4.0%(満期時一括支払)
・為替予約なし
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
Mさんは、《設例》の米ドル建定期預金について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「米ドル建定期預金の満期時の為替レートが、預入時の為替レートに比べて円高・米ドル安となった場合、円換算の運用利回りは向上します」
2. 「X銀行に預け入れた米ドル建定期預金は、金額の多寡にかかわらず、預金保険制度の保護の対象となりません」
3. 「X銀行の米ドル建定期預金に10,000米ドルを預け入れた場合、Aさんが満期時に受け取ることができる利息額は400米ドル(税引前)になります」
正解:(3点)
1) 為替が円高に振れることは、保有している外貨建て商品の円換算の受取額や運用利回りの低下要因です。
2) 正しい記述です。外貨預金は預金保険制度の保護の対象外です。
3) X銀行の米ドル建定期預金に10,000米ドルを預け入れた場合、Aさんが満期時に受け取ることができる利息額(税引前)は、10,000米ドル×4%×6/12=200米ドルです。
【問5】
Aさんが、《設例》および下記の<資料>の条件で、10,000米ドルを預け入れ、満期時に円貨で受け取った場合における元利金の合計額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、計算にあたっては税金等を考慮せず、預入期間6カ月は0.5年として計算すること。

<資料>適用為替レート(円/米ドル)
[預入時]
TTS:129.00円
TTM:128.50円
TTB:128.00円

[満期時]
TTS:131.00円
TTM:130.50円
TTB:130.00円

1. 1,326,000円
2. 1,331,100円
3. 1,336,200円
正解:(4点)
満期時の元利合計額=10,000米ドル×(1+0.04×6/12)=10,200円です。
よって、円転額は、10,200円×130円/米ドル=1,326,000円となります。
【問6】
Mさんは、Aさんに対して、《設例》の米ドル建定期預金に係る課税関係について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄1~3に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

ⅰ) 「AさんがX銀行の米ドル建定期預金に預け入れをした場合、当該預金の利子に係る利子所得は、所得税および復興特別所得税と住民税を合わせて20.315%の税率による( ① )の対象となります」
ⅱ) 「外貨預金による運用では、外国為替相場の変動により、為替差損益が生じることがあります。為替差益は( ② )として、所得税および復興特別所得税と住民税の課税対象となります。なお、為替差損による損失の金額は、外貨預金の利子に係る利子所得の金額と損益通算することが( ③ )」
1. ①源泉分離課税 ②雑所得  ③できません
2. ①源泉分離課税 ②一時所得 ③できます
3. ①申告分離課税 ②雑所得  ③できます
正解:(3点)
外貨預金の利子は、利子所得として源泉分離課税されます。
外貨預金の為替差益は、為替予約をしていない場合、雑所得となります。
雑所得の損失は、損益通算の対象外です。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
小売店を営む個人事業主であるAさんは、開業後直ちに青色申告承認申請書と青色事業専従者給与に関する届出書を所轄税務署長に対して提出している青色申告者である。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(45歳)]
個人事業主(青色申告者)

[妻Bさん(40歳)]
Aさんが営む事業に専ら従事している。2023年中に、青色事業専従者として、給与収入90万円を得ている。

[長男Cさん(15歳)]
中学生。2023年中の収入はない。

[母Dさん(73歳)]
2023年中の収入は、公的年金の老齢給付のみであり、その収入金額は120万円である。

<Aさんの2023年分の収入等に関する資料>
[事業所得の金額]
580万円(青色申告特別控除後)

[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2015年10月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:480万円
正味払込保険料:400万円

妻Bさん、長男Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
所得税における青色申告制度に関する以下の文章の空欄1~3に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

ⅰ) 「事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除として最高( ① )万円を控除することができます。( ① )万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、事業所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出することに加えて、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行う必要があります。なお、確定申告書を法定申告期限後に提出した場合、青色申告特別控除額は最高( ② )万円となります」
ⅱ) 「青色申告者が受けられる税務上の特典として、青色申告特別控除のほかに、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の3年間の繰越控除、純損失の繰戻還付、棚卸資産の評価について( ③ )を選択することができることなどが挙げられます」
1. ①55 ②10 ③低価法
2. ①65 ②10 ③低価法
3. ①65 ②55 ③定額法
正解:(3点)
電子申告要件等を満たした場合、青色申告特別控除額は、最大65万円になります。
期限後申告をした場合、青色申告特別控除額は、最大10万円になります。
青色申告者は、棚卸資産の評価について、低価法を選択する事ができます。
これは、棚卸資産の額を本来の評価額である取得価格と時価のいずれか低い方の価額で評価する(本来の評価額よりも低く評価する事ができる可能性がある)方法で、売上原価を増やし、所得の額を減らす事で、税負担が低くなる効果があります。
【問8】
Aさんの2023年分の所得税の課税に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「Aさんが受け取った一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、源泉分離課税の対象となります」
2. 「Aさんは、妻Bさんに係る配偶者控除の適用を受けることができ、その控除額は38万円です」
3. 「AAさんは、母Dさんに係る扶養控除の適用を受けることができ、その控除額は58万円です」
正解:(3点)
1) 一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、契約から5年を超えて解約した場合は、一時所得となります。
2) 青色事業専従者給与を受け取っている親族は、その額に関わらず(合計所得金額が48万円以下であったとしても)、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除の対象外です。
3) 65歳の人が適用を受けることができる公的年金等控除額は、最低90万円(本問のように他に所得が無い場合110万円)が保証されていますから、母Dさんの合計所得金額は48万円以下となり、母Dさんは控除対象扶養親族に該当します。
70歳以上の控除対象扶養親族は、老人扶養親族として、同居していれば58万円の控除を受けることができます。
【問9】
Aさんの2023年分の所得税における総所得金額は、次のうちどれか。
1. 580万円
2. 595万円
3. 610万円
正解:(4点)
事業所得の額は、全額総所得金額に算入されます。
一時所得の額=総収入金額-収入を得るために直接支出した金額-特別控除額(最高50万円)=480万円-400万円-50万円=30万円であり、この2分の1相当額が総所得金額に算入されます。
よって、総所得金額=580万円+30万円×1/2=595万円となります。

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