お金の寺子屋

FP3級実技(個人)解説-2022年5月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(49歳)は、妻Bさん(47歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学卒業後から現在に至るまでX社に勤務しており、60歳の定年後も継続雇用制度を利用して、65歳まで勤務する予定である。先日、同世代の友人が確定拠出年金の個人型年金に加入していることを知り、老後の生活を見据え、公的年金制度から支給される老齢給付や確定拠出年金の個人型年金について理解を深めたいと思うようになった。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(1972年11月15日生まれ・49歳・会社員)]

公的年金加入歴:下図のとおり(65歳までの見込みを含む)
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。
X社が実施する確定給付企業年金の加入者である。なお、X社が実施する企業年金は、確定給付企業年金のみである。

[妻Bさん(1974年7月4日生まれ・47歳・専業主婦) ]

公的年金加入歴 18歳からAさんと結婚するまでの12年間(144月)は厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
はじめに、Mさんは、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、老齢基礎年金の年金額は、2021年度価額に基づいて計算するものとする。
1. 780,900円×451月/480月
2. 780,900円×480月/480月
3. 780,900円×540月/480月
正解:(3点)
老齢基礎年金の年金額は、「老齢基礎年金の満額×保険料納付期間÷480」という式により求めます。
厚生年金保険の被保険者期間は保険料納付期間に算入されますが、国民年金保険料未納期間は保険料納付期間に算入されません。
よって、Aさんの保険料納付期間は451月となります。
【問2】
次に、Mさんは、老齢厚生年金について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんおよび妻Bさんには、特別支給の老齢厚生年金は支給されません。原則として、65歳から老齢厚生年金を受給することになります」
2. 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額には、妻Bさんが65歳になるまでの間、配偶者の加給年金額が加算されます」
3. 「Aさんが老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をする場合、老齢基礎年金の繰下げ支給の申出も同時に行わなければなりません」
正解:(3点)
1. 正しい記述です。特別支給の老齢厚生年金は、昭和36年(1961年)4月2日以後に生まれた男性や、昭和41年(1966年)4月2日以後に生まれた女性には支給されません。
2. 正しい記述です。加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある一定要件を満たす人に対して、配偶者が65歳になるまで支給されます。
3. 公的年金を繰上げる場合には、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰上げる必要がありますが、繰下げる場合には別々に繰下げることができます。
【問3】
最後に、Mさんは、確定拠出年金の個人型年金について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんが確定拠出年金の個人型年金に加入し、60歳到達時に通算加入者等期間が10年以上となる場合、60歳から老齢給付金を受給することができます」
2. 「国民年金の第3号被保険者である妻Bさんは、確定拠出年金の個人型年金に加入することができます」
3. 「Aさんが確定拠出年金の個人型年金の掛金を支払った場合、所得税において、その支払った掛金の2分の1に相当する額を、小規模企業共済等掛金控除として総所得金額等から控除することができます」
正解:(4点)
1. 正しい記述です。確定拠出年金の老齢給付金は、通算加入者等期間が10年以上あれば、60歳から受け取ることができます。
2. 正しい記述です。国民年金の第3号被保険者も、確定拠出年金に加入することができます。
3. 個人が支払った確定拠出年金の掛金は、その全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になります。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(28歳)は、株式や投資信託による資産運用を始めたいと考えているが、これまでに投資経験がなく、株式や投資信託の銘柄を選ぶ際の判断材料や留意点について知りたいと思っている。また、つみたてNISAにも関心があり、その仕組みについて理解を深めておきたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Mさんは、Aさんに対して、X社株式(東京証券取引所上場銘柄)およびY投資信託を例として、株式や投資信託に投資する際の留意点等について説明を行うことにした。

<X社に関する資料>
総資産 9,000億円
自己資本(純資産) 3,000億円
当期純利益 300億円
年間配当金総額 90億円
発行済株式数 1億2,000万株
株価 3,000円
決算期 12月31日
<Y投資信託(公募株式投資信託)に関する資料>
銘柄名:TOPIXインデックス(つみたてNISA対象商品)
投資対象地域/資産:国内/株式
信託期間:無期限
基準価額:11,500円(1万口当たり)
決算日:年1回(10月20日)
購入時手数料:なし
運用管理費用(信託報酬):0.187%(税込)
信託財産留保額:なし
《設例》および各問において、以下の名称を使用している。
非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度を「つみたてNISA」という。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
はじめに、Mさんは、X社株式の投資指標について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「株価の相対的な割高・割安の度合いを判断する指標に、PERやPBRがあります。<X社に関する資料>から算出されるX社株式のPERは1.2倍、PBRは12倍です」
2. 「PERとPBRは、一般に、どちらも数値が高いほうが株価は割安と判断されますが、何倍程度が妥当であるかを検討する際は、同業他社の数値や過去の傾向と比較するなど、相対的な数値として捉えることが重要です」
3. 「株価に対する1株当たりの年間配当金の割合を示す指標を配当利回りといいます。<X社に関する資料>から算出されるX社株式の配当利回りは2.5%です」
正解:(4点)
1. 1株当たりの純利益は、300億円÷1.2億株=250円です。また、1株当たりの純資産は、3,000億円÷1.2億株=2,500円です。
よって、PER=株価÷1株当たりの純利益=3,000円÷250円=12倍となり、PBR=株価÷1株当たりの純資産=3,000円÷2,500円=1.2倍となります。
2. PERとPBRは、どちらも低い方が割安と判断されます。
3. 1株当たりの配当金は、90億円÷1.2億株=75円です。
よって、配当利回り=1株当たりの配当金÷株価= 75円÷3,000円=0.025=2.5%となります。
【問5】
次に、Mさんは、Y投資信託の購入に係る費用等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Y投資信託の購入時に手数料はかかりません。つみたてNISAの対象となる公募株式投資信託は、購入時手数料がゼロであることが要件の1つとなっています」
2. 「運用管理費用(信託報酬)は、投資信託を保有する投資家が間接的に負担する費用です。一般に、Y投資信託のようなインデックス型投資信託は、アクティブ型投資信託よりも運用管理費用(信託報酬)が高い傾向があります」
3. 「信託財産留保額は、投資信託の組入資産を売却する際に発生する手数料等を、投資信託を換金する投資家に負担してもらうことを目的として設けられているものですが、Y投資信託では、この費用はかかりません」
正解:(3点)
1. 正しい記述です。
2. インデックス型の投資信託は、アクティブ型の投資信託に比べて、特別なノウハウが必要ないため信託報酬が低い傾向があります。
3. 正しい記述です。
【問6】
最後に、Mさんは、「つみたてNISA」についてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「つみたてNISAの対象となる金融商品は、長期の積立・分散投資に適した一定の商品性を有する公募株式投資信託やETFとされ、上場株式は対象となっていません」
2. 「つみたてNISAの年間の非課税投資枠は40万円です。購入は累積投資契約に基づく定期かつ継続的な買付けを行う方法に限られており、非課税期間は10年間です」
3. 「つみたてNISAを利用して購入した公募株式投資信託を解約した際に損失が生じた場合、その損失の金額は、特定口座で保有する上場株式等の譲渡益と通算することができます」
正解:(3点)
1. 正しい記述です。
2. つみたてNISAの年間の非課税投資枠は40万円で、非課税期間は20年間です。
3. 一般NISAやつみたてNISAを利用して購入した有価証券に係る損失については、損益通算や繰越控除をすることはできません。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさんは、妻Bさんおよび長男Cさんとの3人家族である。Aさんは、2021年中にAさん自身の入院・手術・通院に係る医療費を支払ったため、医療費控除の適用を受けたいと思っている。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(49歳)]
会社員

[妻Bさん(48歳)]
2021年中に、パートタイマーとして給与収入70万円を得ている。

[長男Cさん(19歳)]
大学生。2021年中の収入はない。

<Aさんの2021年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
700万円

[不動産所得の金額]
15万円

[上場株式の譲渡損失の金額(証券会社を通じて譲渡したもの)]
30万円

妻Bさんおよび長男Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2021年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
Aさんの2021年分の所得税における総所得金額は、次のうちどれか。

<資料>給与所得控除額
給与収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%-10万円 
(最低55万円)
180万円超
360万円以下
収入金額×30%+8万円
360万円超
660万円以下
収入金額×20%+44万円
660万円超
850万円以下
収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円
1. 505万円
2. 520万円
3. 535万円
正解:(4点)
給与所得=700万円-(700万円×10%+110万円)=520万円です。
給与所得と不動産所得は全額総所得金額に算入され、上場上場株式に係る譲渡損失は総合課税される所得と損益通算することができませんから、総所得金額は、520万円+15万円=535万円となります。
【問8】
Aさんの2021年分の所得税における所得控除に関する以下の文章の空欄①~③に入る数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

ⅰ) 「妻Bさんの合計所得金額は( ① )万円以下となりますので、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます。Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の額は、( ② )万円です」
ⅱ) 「Aさんが適用を受けることができる扶養控除の額は、( ③ )万円です」
1. ① 38 ② 48 ③ 38
2. ① 38 ② 38 ③ 48
3. ① 48 ② 38 ③ 63
正解:(3点)
配偶者控除を受けるための配偶者の合計所得金額の要件は、48万円以下であることとされています。
合計所得金額が900万円以下の人が受けることができる配偶者控除の金額は、38万円です。
19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族は、特定扶養親族として、1人当たり63万円の控除を受けることができます。
【問9】
Aさんの2021年分の所得税における医療費控除および確定申告に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「医療費控除額は、Aさんが2021年中に支払った医療費の総額から20万円を差し引いて算出します」
2. 「年末調整では医療費控除の適用を受けることができません。Aさんが医療費控除の適用を受けるためには、確定申告をする必要があります」
3. 「Aさんは、確定申告をすることにより、上場株式の譲渡損失の金額を不動産所得の金額と損益通算することができます」
正解:(3点)
1. その年の総所得金額等が200万円以上の人が受けることができる医療費控除の額は、正味負担した医療費の金額(実際に支払った医療費の合計額から保険金などで補てんされる金額を引いたもの)から10万円を差し引いた額です。
2. 正しい記述です。所得控除のうち、寄付金控除と医療費控除と雑損控除は、年末調整の対象外とされています。
3. 上場株式に係る譲渡損失は、不動産所得などの総合課税される所得と損益通算することができません。

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