FP3級実技(個人)解説-2022年1月・後半
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(50歳)は、5年前に父親の相続によりX市内にある甲土地(900㎡)を取得している。甲土地は、父親の代からアスファルト敷きの月極駐車場として賃貸しているが、その収益性は高くない。
Aさんは、先日、地元の不動産会社の社長から「自己建設方式による賃貸マンションの建築を検討してみませんか。甲土地は、最寄駅から徒歩5分の好立地にあり、相応の需要が見込めます」との提案を受けた。
Aさん(50歳)は、5年前に父親の相続によりX市内にある甲土地(900㎡)を取得している。甲土地は、父親の代からアスファルト敷きの月極駐車場として賃貸しているが、その収益性は高くない。
Aさんは、先日、地元の不動産会社の社長から「自己建設方式による賃貸マンションの建築を検討してみませんか。甲土地は、最寄駅から徒歩5分の好立地にあり、相応の需要が見込めます」との提案を受けた。
<甲土地の概要>
・ | 甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。 |
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
甲土地に賃貸マンション(耐火建築物)を建築する場合の①建蔽率の上限となる建築面積と②容積率の上限となる延べ面積の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | ① 630㎡ ② 2,700㎡ |
2. | ① 720㎡ ② 2,700㎡ |
3. | ① 720㎡ ② 2,880㎡ |
正解:2(4点)
① | 準防火地域に耐火建築物を建てる場合、建蔽率の上限が10%緩和されます。 また、特定行政庁が指定する角地に建物を建てる場合も、建蔽率の上限が10%緩和されますから、甲土地の建蔽率の上限は、60%+10%+10%=80%となります。 よって、建蔽率の上限となる建築面積は、900㎡×80%=720㎡となります。 |
② | 前面道路の幅員によって定まる容積率の上限は、8m×4/10=3.2(320%)です。 前面道路の幅員が12m未満である場合、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率 のうち、どちらか小さい方を適用しますから甲土地の容積率の上限は、300%となります。 よって、容積率の上限となる延べ床面積は、900㎡×300%=2,700㎡となります。 |
【問11】
甲土地に関する以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
ⅰ) | 「甲土地の面する道路に付された『250D』『200D』の数値は、1㎡当たりの価額を( ① )単位で表示した相続税路線価です。数値の後に |
ⅱ) | 表示されている『D』の記号(アルファベット)は、借地権割合が( ② )%であることを示しています」 ⅱ)「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、相続税額の計算上、甲土地は貸家建付地として評価されます。貸家建付地の価額は、『自用地価額×( ③ )』の算式により評価されます」 |
1. | ① 千円 ② 70 ③ 借地権割合×賃貸割合 |
2. | ① 万円 ② 70 ③(1-借地権割合×賃貸割合) |
3. | ① 千円 ② 60 ③(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合) |
正解:3(3点)
① | 路線価図の数字は、1㎡当たりの千円単位の路線価です。 |
② | 路線価図の英字で表示される借地権割合は、A(90%)からG(30%)まで10%刻みで設定されます。よって、Dは60%を意味します。 |
③ | 貸家建付地の相続税評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)です。 |
【問12】
甲土地の有効活用等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 「自己建設方式とは、Aさんが所有する土地の上に、事業者が建設資金を負担してマンション等を建設し、完成した建物の住戸等をAさんと事業者がそれぞれの出資割合に応じて取得する手法です」 |
2. | 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、甲土地に係る固定資産税の課税標準を、住宅1戸につき200㎡までの部分(小規模住宅用地)について課税標準となるべき価格の2分の1の額とする特例の適用を受けることができます」 |
3. | 「Aさんが金融機関から融資を受けて賃貸マンションを建築した場合、Aさんの相続における相続税額の計算上、当該借入金の残高は債務控除の対象となります」 |
正解:3(3点)
1) | 自己建設方式とは、不動産賃貸事業に係る一切の業務を自分で行う方式です。なお、問題文は、等価交換方式の説明です。 |
2) | 固定資産税の小規模宅地の特例は、居住用の用に供する土地の200㎡までの部分について、課税標準を6分の1にするものです。 |
3) | 正しい記述です。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(74歳)は、妻Bさん(72歳)とX市内で暮らしている。長男Cさん(44歳)は、妻と小学生の長女との3人で隣県にある賃貸マンションに住んでいる。Aさんは、長男Cさん家族の生活資金や孫の学費等について面倒を見てやりたいと思っており、現金の贈与を検討している。
Aさん(74歳)は、妻Bさん(72歳)とX市内で暮らしている。長男Cさん(44歳)は、妻と小学生の長女との3人で隣県にある賃貸マンションに住んでいる。Aさんは、長男Cさん家族の生活資金や孫の学費等について面倒を見てやりたいと思っており、現金の贈与を検討している。
<Aさんの家族構成(推定相続人)>
[妻Bさん(72歳)]
Aさんと自宅で同居している。
[長男Cさん(44歳)]
会社員。妻と子の3人で賃貸マンションに住んでいる。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
現預金 | : | 1億円 |
上場株式 | : | 2,000万円 |
自宅(敷地300㎡) | : | 8,000万円(注) |
自宅(建物) | : | 500万円 |
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
生前贈与に関する以下の文章の空欄①~③に入る数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
ⅰ) | 「Aさんが生前贈与を実行するにあたっては、暦年課税制度による贈与、相続時精算課税制度による贈与、教育資金の非課税制度を活用した贈与などが考えられます。仮に、Aさんからの贈与について、長男Cさんが相続時精算課税制度を選択した場合、累計で( ① )万円までの贈与について贈与税は課されませんが、その額を超える部分については、一律( ② )%の税率により贈与税が課されます」 |
ⅱ) | 「『直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』の適用を受けた場合、受贈者1人につき( ③ )万円までは贈与税が非課税となります。ただし、学習塾などの学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については、500万円が限度となります」 |
1. | ① 2,000 ② 25 ③ 1,500 |
2. | ① 2,500 ② 20 ③ 1,500 |
3. | ① 2,500 ② 25 ③ 1,000 |
正解:2(3点)
① | 相続時精算課税制度の適用を受けた場合の特別控除額は、贈与者一人当たり2,500万円です。 |
② | 相続時精算課税制度の適用を受けた場合、贈与税の税率は一律20%になります。 |
③ | 教育資金の一括贈与の特例の非課税限度枠は、受贈者一人につき1,500万円です。 |
【問14】
仮に、長男Cさんが暦年課税(各種非課税制度の適用はない)により、2022年中にAさんから現金900万円の贈与を受けた場合の贈与税額は、次のうちどれか。
<贈与税の速算表(一部抜粋)> | ||
[特例贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 400万円以下 |
15% | 10万円 |
400万円超 600万円以下 |
20% | 30万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
30% | 90万円 |
[一般贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 |
15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 |
20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 |
30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
40% | 125万円 |
1. | 147万円 |
2. | 180万円 |
3. | 191万円 |
正解:1(4点)
贈与税の課税価格=900万円-110万円=790万円です。
20歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた財産は特例贈与財産に該当しますから、贈与税の額は、790万円×30%-90万円=147万円となります。
20歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた財産は特例贈与財産に該当しますから、贈与税の額は、790万円×30%-90万円=147万円となります。
【問15】
現時点(2022年1月23日)において、Aさんの相続が開始した場合に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんの相続における相続税額の計算上、遺産に係る基礎控除額は、4,200万円となります」 |
2. | 「妻Bさんが自宅の敷地と建物を相続し、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、自宅の敷地(相続税評価額8,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額は、1,600万円となります」 |
3. | 「妻Bさんが配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けた場合、妻Bさんが相続により取得した財産の額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか少ない金額までであれば、妻Bさんが納付すべき相続税額は算出されません」 |
正解:3(3点)
1) | 正しい記述です。相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×2=4,200万円となります。 |
2) | 正しい記述です。相続税の課税価格の計算において、自宅の敷地について小規模宅地の特例の適用を受けた場合、特定居住用宅地等として、330㎡までにかかる相続税評価額が80%減額されます。 よって、相続税の課税価格へ算入される額は、8,000万円×(1-20%)=1,600万円となります。 |
3) | 配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けた場合、被相続人の配偶者が相続によって取得した財産のうち、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか多い金額までに係る相続税額が0になります。 |
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