お金の寺子屋

FP3級実技(個人)解説-2020年9月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
Aさん(51歳)は、個人事業主である。Aさんは、これまで国民年金のみに加入しているが、最近、老後の年金収入を増やすための方策を考えている。
そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんに関する資料>
1969年7月17日生まれ
公的年金の加入歴は下記のとおりである(60歳までの見込みを含む)。

Aさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
はじめに、Mさんは、国民年金の制度について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「老齢基礎年金を受給するためには、原則として、国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した期間が( ① )年必要です。Aさんは、( ① )年の受給資格期間を満たしていますので、原則として65歳から老齢基礎年金を受給することができます。
Aさんは老後の年金収入を増やすために、所定の手続により、国民年金の定額保険料に加えて、月額( ② )円の付加保険料を納付することができます。仮に、Aさんが付加保険料を60月納付し、65歳から老齢基礎年金を受給する場合は、年額( ③ )円の付加年金を受給することができます」
1. ①10 ②400 ③12,000
2. ①10 ②200 ③24,000
3. ①25 ②400 ③24,000
正解:(3点)
老齢基礎年金を受給するための要件は受給資格期間が10年以上あることです。
付加保険料の額は月額400円です。
付加年金の額=200円×付加保険料納付済月数=200円×60=12,000円です。
【問2】
次に、Mさんは、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、老齢基礎年金の年金額は、2020年度価額に基づいて計算するものとする。
1. 781,700円×420月/480月
2. 781,700円×(420月+60月×1/2)/480月
3. 781,700円×(420月+60月×1/3)/480
正解:(3点)
2009年3月以前(国庫負担割合が3分の1だった時代)に全額免除を受けた期間については、その月数の3分の1を受給額の計算期間にカウントします。
【問3】
最後に、Mさんは、老後の年金収入を増やす方法について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者の老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。国民年金基金に加入した場合は、国民年金の付加保険料を納付することはできません」
2. 「Aさんは、老後の年金収入を増やすために、確定拠出年金の個人型年金に加入することができます。将来の年金額は、Aさんの指図に基づく運用実績により左右されますので、年金の受取総額が拠出した掛金の合計額を下回る可能性がある点に留意する必要があります」
3. 「中小企業退職金共済制度は、個人事業主が廃業等した場合に必要となる資金を準備しておくための共済制度です。毎月の掛金は、1,000円から70,000円の範囲内で選択することができます」
正解:(4点)
1. 正しい記述です。国民年金基金の掛金と付加保険料は同時に納めることはできません。
2. 正しい記述です。確定拠出年金の運用リスクは加入者が負います。
3. 中退共の掛金は、最高3万円です。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
会社員のAさん(33歳)は、将来に向けた資産形成のため、上場株式等に投資したいと考えている。会社の同僚からは、「今は、X社株式(東京証券取引所市場第一部)と上場不動産投資信託(J-REIT)を保有している。今年は株価が大きく下落する局面もあったが、短期的な売買ではなく、長期投資を前提とした資産運用を心がけている」と聞かされた。
そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<X社の財務データ>
売上高:3兆6,000億円
営業利益:3,800億円
経常利益:3,500億円
当期純利益:2,900億円
配当金(年間):1株当たり150円
配当金総額:1,200億円
<X社株式の関連情報>
PER:11.03倍
PBR:1.33倍
ROE:12.08%
配当利回り:3.75%
株価:4,000円
発行済株式数:8億株
決算期:2020年11月30日(月)(配当の権利が確定する決算期末)
各問において、以下の名称を使用している。
非課税上場株式等管理契約に係る少額投資非課税制度=「一般NISA」
NISA口座内に設定される非課税管理勘定=「一般NISA勘定」
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
Mさんは、X社株式の投資指標について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「X社株式のPBRは、1.33倍です。これは、株価が1株当たり当期純利益の何倍であるかを示す指標です。一般に、PBRが高いほうが株価は割高、低いほうが株価は割安と判断されます」
2. 「X社のROEは、12.08%です。これは、自己資本に対する当期純利益の割合を示す指標です。一般に、ROEが高い会社ほど、資産の効率的な活用がなされていると考えることができます」
3. 「X社株式の配当利回りは、3.75%です。これは、株価に対する1株当たりの年間配当金の割合を示す指標です。配当利回りの高さを基準に銘柄を選択する際には、過去の配当の状況、配当方針、収益の安定性などを考慮することが大切です」
正解:(4点)
1. PBRは、株価が一株当たり純資産の何倍であるかを示す指標です。
2. 正しい記述です。
3. 正しい記述です。
【問5】
Mさんは、X社株式の購入等についてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「X社株式の次回の配当を受け取るためには、2020年11月30日(月)の4営業日前である2020年11月24日(火)までにX社株式を購入してください。2020年11月25日(水)以後にX社株式を購入した場合、次回の配当を受け取ることはできません」
2. 「Aさんが特定口座(源泉徴収あり)でX社株式を株価4,000円で100株購入し、同年中に株価4,500円で全株売却した場合、その他の取引や手数料等を考慮しなければ、売買益5万円に対して20.315%相当額が源泉徴収等されます」
3. 「X社株式を購入する場合、配当金や売買益等が非課税となる一般NISAを利用することが考えられます。一般NISA勘定に受け入れることができる限度額(非課税投資枠)は年間120万円、非課税期間は20年です」
正解:
1. 株式の受渡日は約定日から起算して3営業日後ですから、11月30日(月)から起算して3営業日前は、11月26日(木)です。
2. 正しい記述です。特定口座内で生じた譲渡益については、損益通算を含めて自動的に税額が計算され、源泉徴収が行われて納税が完了します。
3. 一般NISA勘定に受け入れた資産の非課税期間は、最長5年です。
【問6】
Mさんは、上場不動産投資信託(J-REIT)についてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「上場不動産投資信託(J-REIT)は、実物不動産等に投資し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する投資信託です。上場不動産投資信託(J-REIT)の投資対象の不動産は、オフィスビルに限られています」
2. 「上場不動産投資信託(J-REIT)は、一般NISAを利用して、上場株式と同様に証券取引所を通じて購入することができます」
3. 「上場不動産投資信託(J-REIT)は、毎年の分配金の最低額が保証されており、比較的安定した配当が期待できる金融商品です」
正解:(3点)
1. J-REITの投資対象は、現物の不動産で、オフィスビルに限られず、ホテル、商業施設、倉庫など、様々な種類があります。
2. 正しい記述です。
3. J-REITの分配金に最低保証額はなく、配当金の変動は比較的大きいです。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
個人事業主であるAさんは、開業後直ちに青色申告承認申請書と青色事業専従者給与に関する届出書を所轄税務署長に対して提出している青色申告者である。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(63歳)]
個人事業主(青色申告者)

[妻Bさん(57歳)]
Aさんの事業に専ら従事し、青色事業専従者給与(2020年分:84万円)の支払を受けている。

<Aさんの2020年分の収入等に関する資料>
[事業所得の金額]
400万円(青色申告特別控除後)

[特別支給の老齢厚生年金の年金額]
50万円

[上場株式の譲渡損失の金額(証券会社を通じて譲渡したものである)]
30万円

妻Bさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんおよび妻Bさんは、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんおよび妻Bさんの年齢は、いずれも2020年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
所得税における青色申告制度に関する以下の文章の空欄①~③に入る数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

ⅰ) 「2019年分の所得税では、事業所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出することにより、事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除として最高( ① )万円を控除することができました。2020年分以後の所得税からは、従前の要件に加えて、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行うことで、引き続き( ① )万円の青色申告特別控除の適用を受けることができます。従前の要件のみを満たす場合、控除額は( ② )万円に引き下げられます」
ⅱ) 「青色申告者が受けられる税務上の特典として、青色申告特別控除のほかに、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の( ③ )年間の繰越控除、純損失の繰戻還付、棚卸資産の評価について低価法を選択することができることなどが挙げられます」
1. ①65 ②10 ③7
2. ①65 ②55 ③3
3. ①55 ②10 ③3
正解:(3点)
青色申告特別控除額は、2019年分の所得税までは65万円でしたが、2020年以降引き続き65万円の控除を受けるためには、一定の電子申告要件等を満たす必要があります。
青色申告特別控除額は、一定の電子申告要件等を満たさない場合、55万円になります。
青色申告者は、純損失を最大3年間繰越控除することができます。
【問8】
Aさんの2020年分の所得税の課税に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 「妻Bさんは青色事業専従者として給与の支払を受けているため、Aさんは、妻Bさんについて配偶者控除の適用を受けることはできません」
2. 「Aさんの場合、公的年金等の収入金額の合計額が60万円以下であるため、公的年金等に係る雑所得の金額は算出されません」
3. 「Aさんの場合、上場株式の譲渡損失の金額を事業所得の金額と損益通算することができます」
正解:(3点)
1. 正しい記述です。青色事業専従者は配偶者控除や配偶者特別控除の対象外です。
2. 正しい記述です。65歳未満の人の公的年金等控除額は、公的年金等以外の所得が1,000万円を超えない場合、60万円が保証されます。
3. 上場株式等に係る譲渡損失は申告分離課税を選択した上場株式等に係るインカムゲイン(上場株式に係る配当所得や特定公社債に係る利子所得等)以外と損益通算することはできません。
【問9】
Aさんの2020年分の所得税における総所得金額は、次のうちどれか。
1. 400万円
2. 420万円
3. 450万円
正解:(4点)
総所得金額=事業所得の額400万円+雑所得の額0円=400万円です。

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