FP3級実技(個人)解説-2018年5月・問1~9
X社に勤務するAさん(59歳)は、妻Bさん(56歳)との2人暮らしである。Aさんは、来年、満60歳を迎え、X社を定年退職するか、X社の継続雇用制度を利用して同社に65歳まで勤務するか悩んでいる。そこで、Aさんは、60歳で定年退職した場合と60歳以後もX社に継続勤務した場合の社会保険等の取扱いについて知りたいと考え、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさんおよび妻Bさんに関する資料は、以下のとおりである。
<Aさんおよび妻Bさんに関する資料>
(1)Aさん(会社員)
生年月日:昭和34年4月11日
厚生年金保険、全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。
〔公的年金の加入歴(見込みを含む)〕
(2)Bさん(専業主婦)
生年月日:昭和36年8月29日
20歳から30歳でAさんと結婚するまでは厚生年金保険に加入し、結婚後は、第3号被保険者として国民年金に加入している。また、Aさんが加入している健康保険の被扶養者である。
※ | 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
「Aさんの退職後の公的医療保険制度への加入方法の1つとして、現在加入している健康保険に任意継続被保険者として加入する方法があります。任意継続被保険者の資格取得の手続は、原則として退職日の翌日から( ① )以内に行う必要があります。任意継続被保険者として健康保険に加入できる期間は、最長で( ② )です。また、任意継続被保険者として健康保険に加入する期間の保険料は( ③ )となります。なお、国民健康保険に加入する方法もありますので、事前に検討されることをお勧めします」
1. | ①14日 ②1年 ③全額自己負担 |
2. | ①14日 ②2年 ③労使折半 |
3. | ①20日 ②2年 ③全額自己負担 |
任意継続被保険者になると、最大2年間、退職前の健康保険の被保険者となる事ができますが、保険料は全額自己負担となります。
1. | 「Aさんが60歳でX社を定年退職した後、雇用保険から基本手当を受給する場合、基本手当の所定給付日数は300日となります」 |
2. | 「Aさんが60歳以後も雇用保険の一般被保険者としてX社に勤務し、60歳以後の賃金月額が60歳到達時点の賃金月額の75%未満になった場合は、所定の手続により、原則として雇用保険から高年齢雇用継続基本給付金を受給することができます」 |
3. | 「Aさんが60歳以後も雇用保険の一般被保険者としてX社に勤務し、65歳で退職した場合は、所定の手続により、雇用保険から高年齢求職者給付金を受給することができます」 |
1. | 定年退職した場合は、自己都合退職扱いとなり、基本手当の所定給付日数は、雇用保険の被保険者期間が20年以上あれば、最大150日となります。 |
2. | 正しい記述です。高年齢雇用継続基本給付金は、60歳以後の賃金月額が60歳到達時点の賃金月額の75%未満になった場合に受給することができます。 |
3. | 正しい記述です。一定要件を満たした65歳以上の失業者には、高年齢求職者給付金が支給されます。 高年齢求職者給付金は、65歳以上の人のための基本手当という位置づけで、離職前に雇用保険の被保険者期間が6ヵ月以上あると、30日分または50日分の一時金が支給されます。 |
1. | 「Aさんには特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)は支給されず、原則として65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給することになります」 |
2. | 「Aさんが老齢基礎年金の繰上げ支給の請求をした場合、老齢基礎年金の年金額は繰上げ1カ月当たり0.7%減額されます」 |
3. | 「Aさんが65歳以後に受給する老齢厚生年金には、妻Bさんが65歳に達するまでの間、加給年金額が加算されます」 |
1. | 特別支給の老齢厚生年金は、男性は昭和36年4月2日以降生まれ、女性のは昭和41年4月2日以降生まれの人には支給されません。 Aさんの生年月日は、昭和34年4月11日とありますから、65歳以前に、特別支給の老齢厚生年金が支給されます。 |
2. | 公的年金の繰上げを請求すると、年金額が、繰上げ1ヵ月あたり0.5%減額されます。 |
3. | 正しい記述です。加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人に、一定要件(厚生年金保険の被保険者期間が20年未満であるなど)を満たす配偶者がいる場合に、配偶者が65歳になるまで支給されます。 本問では、妻Bさんの年齢が、Aさんよりも若いので、加給年金が支給されると判断する事ができます。 |
会社員のAさん(43歳)は、余裕資金を活用して、以前から興味を持っていた外貨預金による運用を始めてみたいと考えている。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさんが国内金融機関で預入れを検討している米ドル建て定期預金に関する資料は、以下のとおりである。
<米ドル建て定期預金に関する資料>
預入金額:10,000米ドル
預入期間:1年
利率(年率):0.5%(満期時一括支払)
為替予約:なし
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
1. | 「国内金融機関に預け入れた外貨預金は、元本1,000万円までとその利息が預金保険制度による保護の対象となります」 |
2. | 「米ドル建て定期預金の満期時の為替レートが、預入時の為替レートに比べて円高・米ドル安となった場合、円換算の運用利回りは向上します」 |
3. | 「米国の金利が上昇した場合、一般的に米ドルによる投資需要が高まることから、円を売却して米ドルを購入する動きが進み、その結果、為替レートが円安・米ドル高となる可能性があります」 |
1. | 外貨預金は、預金保険制度による保護の対象とはなりません。 |
2. | 外貨建て資産に投資した場合、満期時の為替レートが、預入時の為替レートに比べて円高になると、円換算の運用利回りは低下します。 |
3. | 正しい記述です。金利の上昇はその国の通貨を高くする要因ですから、海外の金利が上昇した場合、相対的に、円はその国の通貨に対して安くなります。 |
・ | 「Aさんが外貨預金に預入れをした場合、外貨預金の利子に係る利子所得は、所得税および復興特別所得税と住民税を合わせて20.315%の税率による( ① )の対象となります」 |
・ | 「外貨預金による運用では、外国為替相場の変動により、為替差損益が生じることがあります。為替差益は( ② )として、所得税および復興特別所得税と住民税の課税対象となります。なお、為替差損による損失の金額は、外貨預金の利子に係る利子所得の金額と損益通算することが( ③ )」 |
1. | ①申告分離課税 ②雑所得 ③できます |
2. | ①源泉分離課税 ②雑所得 ③できません |
3. | ①源泉分離課税 ②一時所得 ③できます |
① | 外貨預金の利子に対する利子所得は、源泉分離課税されます。 |
② | 外貨預金の為替差益は、為替予約をしない場合、雑所得となります。 |
③ | 雑所得は、他の所得と損益通算する事ができません。 |
<資料>満期時における適用為替レート(円/米ドル)
TTS:113円
TTM:112円
TTB:111円
1. | 1,115,550円 |
2. | 1,125,600円 |
3. | 1,135,650円 |
外貨を円に換える際の為替レートは、TTBを使いますから、これを円転すると、10,050米ドル×111円/米ドル=1,115,550円となります。
<設例>
Aさん(52歳)は、X社に勤務する会社員である。Aさんは、平成29年10月に生命保険を解約し、解約返戻金を受け取っている。
Aさんの家族構成および平成29年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。
<Aさんの家族構成>
[Aさん]
52歳
会社員
[妻Bさん]
49歳
専業主婦
平成29年中にパートタイマーとして給与収入 80万円を得ている。
[長女Cさん]
21歳
大学生
平成29年中の収入はない。
[長男Dさん]
15歳
中学生
平成29年中の収入はない。
[給与収入の金額]
700万円
[解約した生命保険に関する資料]
保険の種類:一時払変額個人年金保険(10年確定年金)
契約年月日:平成25年6月1日
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
解約返戻金額:530万円
一時払保険料:500万円
※ | 妻Bさん、長女Cさんおよび長男Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | 家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | 家族の年齢は、いずれも平成29年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
・ | 給与所得者であるAさんは、X社での年末調整により給与から源泉徴収された所得税が精算されて納税が完了するため、所得税の確定申告は不要である。ただし、「給与所得および退職所得以外の所得金額」が( ① )万円を超える場合は、所得税の確定申告をしなければならない。 なお、所得税の確定申告を要しない場合であっても、年末調整で控除されない( ② )などの適用を受ける場合には、所得税の還付を受けるために確定申告書を提出することができる。 |
・ | Aさんは、一時払変額個人年金保険(10年確定年金)を、保険期間の初日から5年以内に解約しているため、その解約差益は、20.315%(所得税および復興特別所得税と住民税の合算)の税率による( ③ )の対象となる。 |
1. | ①10 ②寄附金控除 ③源泉分離課税 |
2. | ①20 ②医療費控除 ③源泉分離課税 |
3. | ①10 ②地震保険料控除 ③申告分離課税 |
① | 給与所得および退職所得以外の所得金額が20万円を超える給与所得者は、確定申告をしなくてはいけません。 |
② | 適用を受けるためには確定申告をする必要がある所得控除は、寄付金控除、医療費控除、雑損控除の3つです。 |
③ | 一時払いの養老保険や個人年金保険、変額個人年金などを、契約から5年以内に換金(満期・解約)した場合、所得の20.315%が源泉分離課税されます。 |
1. | 妻Bさんは給与収入の金額が38万円を超えており、控除対象配偶者に該当しないため、Aさんは、妻Bさんについて配偶者控除(控除額38万円)の適用を受けることができない。 |
2. | 長女Cさんは特定扶養親族に該当するため、Aさんは、長女Cさんについて扶養控除(控除額63万円)の適用を受けることができる。 |
3. | 長男Dさんは控除対象扶養親族に該当しないため、Aさんは、長男Dさんについて扶養控除の適用を受けることができない。 |
1. | 控除対象配偶者に該当するか否かは、総所得金額が38万円(制度改正後の現在は48万円)を超えるか否かです。 妻Bさんの給与収入は80万円であり、給与所得控除額が65万円(同55万円)ありますから、総所得金額は15万円(同25万円)となり、配偶者控除の適用対象となります。 |
2. | 正しい記述です。長女Cさんは、19歳以上23歳未満ですから、特定扶養親族に該当し、63万円の扶養控除の適用対象となります。 |
3. | 正しい記述です。長男Dさんは、16歳未満ですから、扶養控除の適用対象外です。 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40% (最低65万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
660万円超 1,000万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 220万円 |
1. | 510万円 |
2. | 540万円 |
3. | 700万円 |
給与所得=収入金額-給与所得控除額より、
700万円-(700万円×10%+120万円)=510万円です。
生命保険の解約返戻金は、源泉分離課税される為、総所得金額に算入されません(問7を参照してください)。
<参考>
現在の給与所得控除額は、資料と異なります。
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