お金の寺子屋

FP3級実技(保険)解説-2024年1月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(41歳)は、飲食店を営んでいる個人事業主である。Aさんは、大学卒業後に入社した食品メーカーを退職した後、現在の飲食店を開業した。店の業績は、堅調に推移している。
最近、Aさんは、老後の収入を増やすことができる各種制度を活用したいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

〈Aさんに関する資料〉

(1)生年月日 1982年7月19日
(2)公的年金の加入歴 下図のとおり(60歳までの見込みを含む)
大学卒業後から10年間(120月)、厚生年金保険に加入。その後は国民年金の保険料を納付している。
Aさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
はじめに、Mさんは、〈Aさんに関する資料〉に基づき、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額(2023年度価額)を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 795,000円×327月/480月
2. 795,000円×447月/480月
3. 795,000円×(447月+33月×1/3)/480月
正解:(3点)
老齢基礎年金の計算上、20歳以上60歳未満の期間における、国民年金保険料納付期間や厚生年金保険の被保険者期間などは、年金額に反映されますが、未納期間は年金額に反映されません。
よって、老齢基礎年金の額=795,000円×(228+221)/480となります。
【問2】
次に、Mさんは、老後の収入を増やすための各種制度について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「Aさんが国民年金の付加保険料を納付して、65歳から老齢基礎年金を受け取る場合、『400円×付加保険料納付済期間の月数』の算式で計算した額を付加年金として受け取ることができます」
2. 「国民年金基金は、老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。国民年金基金の老齢年金は、終身年金ではなく、5年もしくは10年の確定年金となります」
3. 「国民年金の第1号被保険者は、国民年金基金に加入することができますが、国民年金基金に加入した場合は、国民年金の付加保険料を納付することができません」
正解:(4点)
1) 付加年金の額=200円×付加保険料納付済期間の月数です。
2) 国民年金基金の老齢年金は、終身年金または確定年金の中から任意で選択して口数単位で加入します。なお、1口目は必ず終身年金を選択しなくてはなりません。
3) 正しい記述です。国民年金基金の1口目の給付には、国民年金の付加年金相当が含まれているため、国民年金基金の加入者は付加保険料を納めることができません。
【問3】
最後に、Mさんは、確定拠出年金の個人型年金(以下、「個人型年金」という)について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「Aさんが個人型年金に加入した場合、拠出することができる掛金の限度額は、年額( ① )円となります。拠出した掛金は、所得控除の対象となり、運用益は課税されません。個人型年金の老齢給付金は、60歳到達時点で通算加入者等期間が( ② )年以上ある場合、60歳から受け取ることができます。
個人型年金は、Aさんの指図に基づく運用実績により、将来の年金受取額が増減する点に留意する必要があります。また、個人型年金の実施機関である( ③ )に対して、加入時に2,829円、掛金拠出時に収納1回当たり105円の手数料を支払うほか、運営管理機関等が定める手数料を負担する必要があります」
1. ①816,000 ②10 ③国民年金基金連合会
2. ①276,000 ②5 ③国民年金基金連合会
3. ①276,000 ②10 ③企業年金連合会
正解:(3点)
自営業者(国民年金の第1号被保険者)の個人型確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度額は、年額816,000円です。
確定拠出年金の老齢給付金は、最も早くから受け取る場合、60歳から受け取ることができますが、そのためには、60歳到達時点で通算加入者等期間が10年以上なくてはなりません。
個人型確定拠出年金(iDeCo)の実施期間は、国民年金基金連合会です。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(54歳)は、会社員の妻Bさん(53歳)との2人暮らしである。Aさん夫妻には子が1人いるが、既に結婚して独立している。
Aさんは、先日、生命保険会社の営業担当者から終身介護保険の提案を受けたことを機に、要介護状態になった場合の保障を充実させたいと思うようになった。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

〈Aさんが提案を受けた生命保険に関する資料〉
保険の種類:無配当終身介護保険
月払保険料:6,700円(全額が介護医療保険料控除の対象)
保険料払込期間:終身払込(注1)
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
受取人:Aさん
指定代理請求人:妻Bさん

(注1) 保険料払込期間は、契約時に有期払込を選択することができる。
(注2) 公的介護保険制度の要介護3以上と認定された場合、または保険会社所定の要介護状態になった場合に支払われる(死亡保険金の支払はない)。
(注3) 介護一時金が支払われた場合、介護一時金特約は消滅する。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
はじめに、Mさんは、公的介護保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「公的介護保険の保険給付を受けるためには、市町村(特別区を含む)から、要介護認定または要支援認定を受ける必要があります」
2. 「公的介護保険の第2号被保険者は、要介護状態または要支援状態となった原因が特定疾病によって生じたものでなければ、公的介護保険の保険給付は受けられません」
3. 「公的介護保険の第2号被保険者が、公的介護保険の保険給付を受けた場合、原則として、実際にかかった費用の3割を自己負担する必要があります」
正解:(4点)
1) 正しい記述です。
2) 正しい記述です。なお、公的介護保険の第1号被保険者は、要介護状態または要支援状態となった原因を問わず、公的介護保険の保険給付を受けることができます。
3) 公的介護保険の第2号被保険者が、公的介護保険の保険給付を受けた場合の利用者負担の割合は、1割です。
【問5】
次に、Mさんは、Aさんが提案を受けた生命保険の保障内容等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「保険料払込期間を終身払込から有期払込にした場合、毎月の保険料負担は減少し、保険料の払込総額も少なくなります。保険料払込期間は有期払込を選択することを検討してはいかがでしょうか」
2. 「介護保障を準備するうえでは、目的に応じて保障内容を組み立てることが大切です。例えば、自宅の増改築費用は一時金タイプで準備し、毎月の介護費用は年金タイプで準備することなどが考えられます」
3. 「保険会社所定の認知症の状態に該当した場合や、身体障害者福祉法に連動して保険金・給付金が支払われる保険商品もあります。複数(他社)の保険商品の保障内容や保険料水準を確認することをお勧めします」
正解:(3点)
1) 他の条件を同じとした場合、終身払込よりも有期払込の方が毎月の保険料は高くなります。
2) 適切な記述です。
3) 適切な記述です。
【問6】
最後に、Mさんは、Aさんが提案を受けた生命保険の課税関係について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「当該生命保険の保険料は介護医療保険料控除の対象となります。適用限度額は、所得税で40,000円、住民税で28,000円となります」
2. 「Aさんが終身介護年金を受け取る場合、当該年金は非課税所得として扱われます」
3. 「指定代理請求特約により、妻BさんがAさんに代わって受け取る介護一時金特約の一時金は、一時所得として総合課税の対象となります」
正解:(3点)
1) 正しい記述です。2012年1月1日以降に契約した介護保険の保険料は、生命保険料控除の計算上、介護保険料控除の対象となり、所得税では最高40,000円、住民税では最高28,000円の控除を受けることができます。
2) 正しい記述です。身体の疾病や傷害に基因して支払われる給付金は、被保険者本人や生計を一にする親族などが受け取る場合、非課税となります。
3) 介護保険の保険金は、非課税となります。指定代理請求特約により受け取った場合も同様です。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(48歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。X社は、現在、役員退職金の準備を目的として、下記の〈資料1〉の生命保険に加入している。
Aさんは先日、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんから、下記の〈資料2〉の生命保険の提案を受けた。

〈資料1〉X社が現在加入している生命保険に関する資料
保険の種類:5年ごと利差配当付長期平準定期保険(特約付加なし)
契約年月日:2015年6月1日
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
死亡・高度障害保険金額:1億円
保険期間・保険料払込期間:98歳満了
年払保険料:230万円
65歳時の解約返戻金額:4,950万円
65歳時の払込保険料累計額:5,750万円

解約返戻金額の80%の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。
保険料の払込みを中止し、払済終身保険に変更することができる。
〈資料2〉Aさんが提案を受けた生命保険に関する資料
保険の種類:無配当特定疾病保障定期保険(無解約返戻金型・特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
死亡・高度障害・特定疾病保険金額:5,000万円
保険期間:10年(自動更新タイプ)
年払保険料:50万円

死亡・所定の高度障害状態に該当した場合に加え、がん(悪性新生物)と診断確定された場合、または急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態に該当した場合に保険金が契約者に支払われる。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金4,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を25年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1. 1,425万円
2. 1,500万円
3. 2,850万円
正解:(3点)
勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の式で計算されます。
また、退職所得控除額の計算上勤続年数の1年未満の端数は切り上げますから勤続年数は○○年となります。
よって、退職所得控除額=800万円+70万円×(25-20)=1,150万円となります。
したがって、退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(4,000万円-1,150万円)×1/2=1,425万円となります。
【問8】
Mさんは、〈資料1〉および〈資料2〉の定期保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「〈資料1〉の定期保険の単純返戻率(解約返戻金額÷払込保険料累計額)は、保険始期から上昇し、保険期間満了直前にピークを迎えます」
2. 「〈資料1〉の定期保険をAさんが65歳のときに解約した場合、解約時点における払込保険料累計額と解約返戻金額との差額を雑損失として経理処理します」
3. 「〈資料2〉の定期保険は、〈資料1〉の定期保険のようなキャッシュバリューは期待できませんが、X社が受け取る特定疾病保険金は、Aさんががん等の治療で不在の間、事業を継続させるための資金として活用することができます」
正解:(3点)
1) 長期平準定期保険は、定期保険の一種であるため、保険期間中のある時点で解約返戻金の額がピークを迎えた後減少し、満期時点の解約返戻金は0となります。
2) 2019年7月7日以前に契約した長期平準定期保険の保険料は、支払額の2分の1を資産計上しますから、X社が解約時までに支払った保険料の累計額が5,750万円であるのなら、解約時に取り崩す資産計上額(貸方に記載する前払保険料の額)は、2,875円であると推定されます。
したがって、受け取った解約返戻金4,950万円と資産計上額との差額の2,075万円を、雑収入として処理します。
3) 正しい記述です。なお、キャッシュバリューは解約返戻金と同義です。
【問9】
〈資料2〉の定期保険の第1回保険料払込時の経理処理(仕訳)として、次のうち最も適切なものはどれか。
1.
2.
3.
正解:(4点)
法人が支払った、解約返戻金の無い定期保険の保険料は、全額損金算入します。

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