お金の寺子屋

FP3級実技(保険)解説-2022年5月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(35歳)は、妻Bさん(32歳)および長男Cさん(0歳)との3人暮らしである。
Aさんは、今年4月に長男Cさんが誕生したことを機に、生命保険の見直しを考えている。Aさんは、その前提として、自分が死亡した場合の公的年金制度からの遺族給付の支給について理解しておきたいと思っている。
そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんの家族構成>
[Aさん(1986年8月16日生まれ)]
会社員(厚生年金保険・全国健康保険協会管掌健康保険に加入)

[妻Bさん(1989年6月14日生まれ)]
国民年金に第3号被保険者として加入している。

[長男Cさん(2022年4月20日生まれ)]

<公的年金加入歴(2022年4月分まで)>
妻Bさんおよび長男Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
現時点(2022年5月22日)においてAさんが死亡した場合、妻Bさんに支給される遺族基礎年金の年金額(2021年度価額)は、次のうちどれか。
1. 780,900円
2. 780,900円+224,700円=1,005,600円
3. 780,900円+224,700円+74,900円=1,080,500円
正解:(3点)
遺族基礎年金の額=780,900円+子の加算額です。
子の加算額は、子2人までは1人あたり224,700円、3人目以降は1人あたり74,900円/人で、年金法上の子とは、基本的に、18歳到達年度の末日を経過していない子を言います。
【問2】
Mさんは、現時点(2022年5月22日)においてAさんが死亡した場合に妻Bさんに支給される遺族厚生年金の金額等について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「現時点においてAさんが死亡した場合、妻Bさんに対して遺族厚生年金と遺族基礎年金が支給されます。
遺族厚生年金の額は、原則として、Aさんの厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の( ① )に相当する額になります。ただし、その計算の基礎となる被保険者期間の月数が( ② )に満たないときは、( ② )とみなして年金額が計算されます。
また、長男Cさんの( ③ )到達年度の末日が終了すると、妻Bさんの有する遺族基礎年金の受給権は消滅します。その後、妻Bさんが65歳に達するまでの間、妻Bさんに支給される遺族厚生年金には、中高齢寡婦加算が加算されます」
1. ① 3分の2 ② 480月 ③ 18歳
2. ① 4分の3 ② 480月 ③ 20歳
3. ① 4分の3 ② 300月 ③ 18歳
正解:(4点)
遺族厚生年金の額は、原則として、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3相当額です。
厚生年金保険の被保険者が死亡した場合に支払われる遺族厚生年金は、その計算上、被保険者期間が300ヵ月保証されます。
遺族基礎年金は、亡くなった人に生計を維持されていた「子」または「子のある配偶者」に対して支給されるものです。年金法上、子とは18歳到達年度の末日を経過するまでの子を指しますから、子が18歳到達年度の末日を経過すると、遺族基礎年金は支給停止されます。
【問3】
Mさんは、Aさんに対して、現時点(2022年5月22日)においてAさんが死亡した場合の妻Bさんに係る遺族給付の各種取扱い等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「遺族基礎年金および遺族厚生年金は、原則として、偶数月に2カ月分が支給されます」
2. 「遺族基礎年金および遺族厚生年金は、雑所得として総合課税の対象となります」
3. 「Aさんの死亡後に妻Bさんが厚生年金保険の被保険者として勤務した場合、妻Bさんの給与収入に応じて、遺族厚生年金の年金額の一部または全部が支給停止となる場合があります」
正解:(3点)
1. 正しい記述です。
2. 遺族基礎年金や遺族厚生年金は非課税です。
3. 遺族厚生年金は、給与等の支払額に応じて減額されるものではありません。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(55歳)は、専業主婦である妻Bさん(53歳)との2人暮らしである。Aさん夫妻には2人の子がいるが、いずれも結婚して独立している。
Aさんは、X社が実施する早期退職制度を利用して2022年9月末日付でX社を退職し、飲食店を開業する予定である。Aさんは、退職後の健康保険や公的年金がどのように変わるのか、個人事業主としてどのようなリスクに備える必要があるのかなど、理解を深めたいと思っている。なお、Aさんは、現在、全国健康保険協会管掌健康保険および厚生年金保険の被保険者である。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんが現在加入している生命保険の内容>
保険の種類:定期保険特約付終身保険
契約年月日:2007年6月1日
月払保険料:26,300円(保険料払込期間:70歳満了)
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん

上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
はじめに、Mさんは、Aさんが個人事業主となった場合の社会保険の取扱いについて説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「Aさんは、退職日の翌日から60歳になるまでの間、健康保険に任意継続被保険者として加入することができます」
2. 「Aさんが国民健康保険に加入した場合、妻Bさんを国民健康保険の被扶養者とすることができます」
3. 「AさんがX社を退職し、厚生年金保険の被保険者でなくなった場合、妻Bさんは、国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者への種別変更の届出を行い、国民年金の保険料を納付することになります」
正解:(3点)
1. 健康保険の任意加入被保険者になれるのは、最長2年間です。
2. 国民健康保険には扶養の制度はありません。
3. 正しい記述です。
【問5】
次に、Mさんは、Aさんに想定されるリスクについて説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんのような公的介護保険の第2号被保険者は、要介護状態または要支援状態となった原因が特定疾病によって生じたものでなければ、公的介護保険からの保険給付は受けられません」
2. 「個人事業主が加入する国民健康保険には、高額療養費制度が設けられていないため、会社員に比べて医療費の自己負担額が多くなる傾向があります。そのため、ケガや病気の場合の治療費の準備を充実させることをご検討ください」
3. 「個人事業主となったAさんが生活習慣病等で働けなくなった場合、会社員のときよりも収入が減少するリスクが高くなると思われます。そのため、治療費の準備に加えて、働けなくなった場合の所得補償の準備もご検討ください」
正解:(3点)
1. 正しい記述です。
2. 国民健康保険にも高額療養費の制度は存在します(傷病手当金と出産手当金以外は、概ね同じ給付が用意されています)。
3. 正しい記述です。
【問6】
最後に、Mさんは、生命保険の見直しについてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「会社員と個人事業主とでは、妻Bさんが受け取る公的年金等の総額や、死亡退職金の有無など、必要保障額を計算する際の条件が異なります。Aさんが個人事業主となった場合の必要保障額を計算することをお勧めします」
2. 「最近では、入院1日目から相応の一時金が支払われるタイプや、退院後の通院治療のために給付金が支払われるタイプの保険(特約)が販売されています。保険会社各社の保障内容をよく比較して、見直しを検討しましょう」
3. 「現在加入している生命保険を払済終身保険に変更した場合、死亡保険金額は減少しますが、現在付加されている入院特約は残り、月々の保険料負担は軽減されます」
正解:(4点)
1. 正しい記述です。
2. 正しい記述です。
3. 払済保険や延長保険にすると、元の契約に付帯していた特約は全て消滅します。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(45歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、先日、生命保険会社の営業担当者から、下記の<資料1>および<資料2>の生命保険の提案を受けた。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<資料1>
保険の種類:無配当総合医療保険(無解約返戻金型)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
給付金受取人:X社
入院給付金(日額):15,000円
保険期間・保険料払込期間:10年(自動更新タイプ)
年払保険料:12万円

入院中に公的医療保険制度の手術料の算定対象となる所定の手術を受けた場合は入院日額の20倍、所定の外来手術を受けた場合は入院日額の5倍が手術給付金として支払われる。
所定の放射線治療を受けた場合は入院日額の10倍が放射線治療給付金として支払われる。
<資料2>
保険の種類:無配当定期保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
死亡保険金額:1億円
保険期間・保険料払込期間:70歳満了
年払保険料:100万円
最高解約返戻率:48%

保険料の払込みを中止し、払済終身保険に変更することができる。
所定の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金4,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を35年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1. 775万円
2. 1,075万円
3. 2,150万円
正解:(3点)
退職所得控除額=70万円×(35-20)+800万円=1,850万円です。
よって、退職所得=(4,000万円-1,850万円)×1/2=1,075万円となります。
【問8】
Mさんは<資料1>の医療保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「当該生命保険の支払保険料は、その全額を資産に計上します」
2. 「Aさんが入院し、X社が受け取った入院給付金は、その全額を雑収入として益金の額に算入します」
3. 「Aさんが入院中に公的医療保険制度の手術料の算定対象となる所定の手術を受けた場合は30万円、所定の外来手術を受けた場合は7万5,000円が手術給付金として支払われます」
正解:(3点)
1. 法人が支払った解約返戻金のない医療保険の保険料は、一時払いのものを除いて、全額損金算入されます。
2. 正しい記述です。法人が受け取った入院給付金には、個人に適用されるような非課税措置はなく、全額益金に算入されます。
3. 正しい記述です。<資料>より、公的医療保険制度の手術料の算定対象となる所定の手術を受けた場合には、15,000円×20=30万円が支払われ、所定の外来手術を受けた場合は、15,000円×5=75,000円が支払われることが分かります。
【問9】
Mさんは<資料2>の定期保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「当該生命保険の単純返戻率(解約返戻金額÷払込保険料累計額)は、保険始期から上昇し、保険期間満了直前にピークを迎えます」
2. 「当該生命保険の支払保険料は、その全額を損金の額に算入することができます」
3. 「急な資金需要の発生により、X社が当該生命保険から契約者貸付制度を利用した場合、契約者貸付金の全額を雑収入として益金の額に算入します」
正解:(4点)
1. 定期保険には、解約返戻金がありません。よって、解約返戻金は、ある時期にピークを迎えた後は、満期まで減少します。
2. 正しい記述です。法人が支払う最高解約返戻率が50%以下の定期保険の保険料は、一時払いのものを除いて、全額損金算入されます。
3. 契約者貸付制度を利用して借りた金額は、益金とはなりません(負債として計上されます)。

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