お金の寺子屋

FP3級実技(保険)解説-2022年1月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(58歳)は、妻Bさん(56歳)および長女Cさん(19歳)との3人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、X株式会社(以下、「X社」という)に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。X社では、65歳定年制を導入しており、Aさんは、65歳までX社で働く予定である。
Aさんは、今後の資金計画を検討するにあたり、公的年金制度から支給される老齢給付について知りたいと思っている。また、今年20歳になる大学生の長女Cさんの国民年金の保険料の納付について、学生納付特例制度の利用を検討している。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさん夫妻に関する資料>
[Aさん(1963年10月20日生まれ・会社員)]

公的年金加入歴: 下図のとおり(65歳定年時までの見込みを含む)
20歳から大学生であった期間(30月)は国民年金に任意加入していない。
国民健康保険に加入中

[妻Bさん(1965年3月10日生まれ・専業主婦)]

公的年金加入歴: 18歳からAさんと結婚するまでの15年間(180月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。

[長女Cさん(2002年6月19日生まれ・大学生)]
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。

妻Bさんおよび長女Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
はじめに、Mさんは、《設例》の<Aさんとその家族に関する資料>に基づき、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額(2021年度価額)を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 780,900円×450月/480月
2. 780,900円×480月/480月
3. 780,900円×510月/480月
正解:(3点)
老齢基礎年金の計算上、20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間は年金額に反映されますが、60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間や国民年金未加入期間は年金額に反映されません。
よって、老齢基礎年金の額=老齢基礎年金の満額×(204+306-60)/480となります。
【問2】
次に、Mさんは、Aさんおよび妻Bさんが受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんおよび妻Bさんには、特別支給の老齢厚生年金の支給はありません。原則として、65歳から老齢基礎年金および老齢厚生年金を受給することになります」
2. 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額には、配偶者の加給年金額が加算されます」
3. 「妻Bさんが65歳から老齢基礎年金を受給する場合、老齢基礎年金の額に振替加算額が加算されます」
正解:(4点)
1) 1961年4月2日以降に生まれた男性には、特別支給の老齢厚生年金は支給されませんが、1966年4月1日以前に生まれた女性には、特別支給の老齢厚生年金が支給されます。
2) 正しい記述です。厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある事、年下の配偶者がいる事など、加給年金の支給要件を満たします。
3) 正しい記述です。妻が65歳になり夫の加給年金が支給停止されると、妻の老齢基礎年金に振替加算額が加算されます。
【問3】
最後に、Mさんは、国民年金の学生納付特例制度(以下、「本制度」という)について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「本制度は、国民年金の第1号被保険者で大学等の所定の学校に在籍する学生について、( ① )の前年所得が一定額以下の場合、所定の申請に基づき、国民年金保険料の納付を猶予する制度です。なお、本制度の適用を受けた期間は、老齢基礎年金の( ② )されます。
本制度の適用を受けた期間の保険料は、( ③ )年以内であれば、追納することができます。ただし、本制度の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます」
1. ① 世帯主  ② 受給資格期間に算入 ③ 5
2. ① 学生本人 ② 受給資格期間に算入 ③ 10
3. ① 世帯主  ② 年金額に反映    ③ 10
正解:(3点)
学生納付特例の適用を受けるためには、学生本人の前年所得が一定金額以下である必要があります。
学生納付特例の適用を受けた期間は、受給資格期間に算入されます。但し、追納しない場合は年金額には反映されません。
学生納付特例の適用を受けた期間については、10年間遡って追納することができます。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(40歳)は、妻Bさん(35歳)および長男Cさん(0歳)との3人暮らしである。Aさんは、長男Cさんの誕生を機に、生命保険の加入を検討していたところ、先日、Aさんの職域を担当する生命保険会社の営業担当者から下記の生命保険の提案を受けた。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんが提案を受けた生命保険に関する資料>
保険の種類:5年ごと配当付特約組立型総合保険(注1)
月払保険料:20,100円
保険料払込期間:70歳満了
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
指定代理請求人:妻Bさん

(注1) 複数の特約を自由に組み合わせて加入することができる保険
(注2) がん(上皮内がんを含む)と診断確定された場合、または急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態に該当した場合に一時金が支払われる(死亡保険金の支払はない)。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
はじめに、Mさんは、現時点の必要保障額を試算することにした。下記の<算式>および<条件>に基づき、Aさんが現時点で死亡した場合の必要保障額は、次のうちどれか。

<算式>
必要保障額=遺族に必要な生活資金等の総額-遺族の収入見込金額
<条件>
1. 長男Cさんが独立する年齢は、22歳(大学卒業時)とする。
2. Aさんの死亡後から長男Cさんが独立するまで(22年間)の生活費は、現在の日常生活費(月額30万円)の70%とし、長男Cさんが独立した後の妻Bさんの生活費は、現在の日常生活費(月額30万円)の50%とする。
3. 長男Cさん独立時の妻Bさんの平均余命は、32年とする。
4. Aさんの死亡整理資金(葬儀費用等)、緊急予備資金は、500万円とする。
5. 長男Cさんの教育資金の総額は、1,300万円とする。
6. 長男Cさんの結婚援助資金の総額は、200万円とする。
7. 住宅ローン(団体信用生命保険に加入)の残高は、2,000万円とする。
8. 死亡退職金見込額とその他金融資産の合計額は、1,800万円とする。
9. Aさん死亡後に妻Bさんが受け取る公的年金等の総額は、7,500万円とする。
1. 4,004万円
2. 6,004万円
3. 1億3,504万円
正解:(4点)
<遺族に必要な生活資金等>
30万円/月×70%×12ヵ月×22年=5,544万円
30万円/月×50%×12ヵ月×32年=5,760万円
死亡整理資金:500万円
教育資金:1,300万円
結婚援助資金:200万円
住宅ローン:団信加入の為0円
の、計13,304万円

<遺族の収入見込額>
死亡退職金と金融資産:1,800万円
公的年金等:7,500万円
の、計9,300万円

よって、必要保証額=13,304万円-9,300万円=4,004万円となります。

【問5】
次に、Mさんは、生命保険の加入について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんが提案を受けた生命保険の死亡保障の金額は、現時点での必要保障額をカバーしていません。どの程度の死亡保障を準備するか、支出可能な保険料を把握したうえでご検討ください」
2. 「生命保険は、一度加入したら終わりではありません。必要保障額は、通常、お子さまの成長とともに逓増していきますので、ライフイベントに合わせて、保障内容を定期的に見直すことが大切です」
3. 「保障金額や保障内容を準備するうえでは、目的に応じた加入をされることをお勧めします。例えば、Aさんの葬儀費用やお子さまの教育資金は終身保険や定期保険特約等の一時金タイプで準備し、残されたご家族の生活費は収入保障特約等の年金タイプで準備することなどが考えられます」
正解:(3点)
1) 正しい記述です。問4より、必要保証額は4,004万円で、現在加入している死亡保障の額は3,200万円です。
2) 通常、必要保障額は、子供の成長とともに逓減します。
3) 正しい記述です。
【問6】
最後に、Mさんは、Aさんが提案を受けた生命保険の保障内容について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんが、がんに罹患した場合、三大疾病一時金特約から200万円を受け取ることができます。ただし、通常、がんの保障については契約日から4カ月間の免責期間があります」
2. 「Aさんが提案を受けた生命保険には、総合医療特約が付加されていますが、がん保障に特化したものや、入院1日目(日帰り入院)から相応の一時金が支払われるものなど、Aさんのニーズに合わせて医療保障を充実させることも検討事項の1つになります」
3. 「Aさんが、厚生労働大臣が定めた先進医療による療養を受けた場合、先進医療特約から先進医療給付金を受け取ることができます。また、所定の先進医療については、一部の医療機関において、保険会社から医療機関へ直接技術料を支払う制度もありますので、特約に関する内容をご確認ください」
正解:(3点)
1) 通常、がんの保障については、契約日から3ヵ月間の免責期間があります。
2) 正しい記述です。
3) 正しい記述です。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(45歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、先日、生命保険会社の営業担当者から、自身の退職金準備を目的とした下記の<資料>の生命保険の提案を受けた。また、従業員の退職金準備を目的として、中小企業退職金共済制度(X社は加入要件を満たしている)の説明を受けた。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<資料>Aさんが提案を受けた生命保険の内容
保険の種類:無配当低解約返戻金型終身保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
死亡保険金額:6,000万円
保険料払込期間・低解約返戻金期間:65歳満了
年払保険料:270万円
65歳までの払込保険料累計額(①):5,400万円
70歳時の解約返戻金額(②):5,600万円
受取率(②÷①):103.7%(小数点第2位以下切捨て)

解約返戻金額の80%の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金5,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を38年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1. 1,170万円
2. 1,470万円
3. 2,940万円
正解:(3点)
退職所得控除額=800万円+70万円×(38-20)=2,060万円です。
よって、退職所得=(5,000万円-2,060万円)×1/2=1,470万円となります。
【問8】
Mさんは《設例》の終身保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「当該終身保険の支払保険料は、その全額を損金の額に算入することができます」
2. 「X社が保険期間中に資金が必要となった場合に、契約者貸付制度を利用することにより、当該終身保険契約を解約することなく、資金を調達することができます」
3. 「Aさんの勇退時に、契約者をAさん、死亡保険金受取人をAさんの相続人に名義変更して、当該終身保険契約を役員退職金の一部として現物支給した場合、契約は継続しているため、X社での経理処理は必要ありません」
正解:(4点)
1) 法人が死亡保険金受取人である終身保険の保険料は、全額資産計上します。
2) 正しい記述です。
3) 終身保険契約を名義変更して役員退職金の一部として現物支給した場合、法人が保有する資産(生命保険契約)が消滅し、費用(退職金の支払い)が発生しますから、経理処理を行う必要があります。
【問9】
Mさんは、中小企業退職金共済制度(以下、「中退共」という)の特徴について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「中退共は、中小企業の事業主が退職金を社外に積み立てる退職金準備の共済制度です。毎月の掛金は、原則として、被共済者(従業員)1人につき月額5,000円から30,000円のなかから任意に選択することができ、その( ① )を損金の額に算入することができます。また、新しく中退共に加入する事業主に対して、原則として、掛金月額の( ② )(従業員ごと上限5,000円)を加入後4カ月目から1年間、国が助成する制度があります。被共済者(従業員)が中途(生存)退職したときは、退職金が( ③ )支給されます」
1. ①全額   ②3分の1 
③法人を経由して従業員に
2. ①2分の1 ②3分の1 
③従業員本人に直接
3. ①全額   ②2分の1 
③従業員本人に直接
正解:(3点)
中退共の掛け金は、全額損金算入します。
新しく中退共に加入する事業主に対して、加入後4ヵ月目から1年間、掛金月額の2分の1を国が助成する制度があります。
中退共の退職金は、従業員本人に直接支給されます。

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