FP3級実技(保険)解説-2021年5月・後半
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんとの4人家族である。Aさんは、2020年中に購入した医薬品の費用について、セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の適用を受けたいと考えている。また、Aさんは、2020年中に養老保険の満期保険金および個人年金保険(10年確定年金)の年金を受け取っている。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(60歳)]
会社員
[妻Bさん(52歳)]
専業主婦。2020年中の収入はない。
[長女Cさん(20歳)]
大学生。2020年中に、アルバイトとして給与収入50万円を得ている。また、長女Cさんが負担すべき国民年金の保険料はAさんが支払っている。
[母Dさん(80歳)]
2020年中に老齢基礎年金50万円および遺族厚生年金50万円を受け取っている。
<Aさんの2020年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
800万円
[養老保険(月払)の満期保険金]
契約年月:1990年7月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
満期保険金受取人:Aさん
満期保険金額:500万円
正味払込保険料:400万円
[個人年金保険(10年確定年金)の年金収入]
100万円(必要経費は70万円)
※ | 契約者(=保険料負担者)・被保険者・年金受取人はAさんである。 |
※ | 配当金については考慮しないものとする。 |
※ | 妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2020年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
1. | 「セルフメディケーション税制の適用を受ける場合、特定一般用医薬品等購入費の総額(保険金などで補填される金額を除く)が12,000円を超えるときに、その超える部分の金額(最高88,000円)を総所得金額等から控除することができます」 |
2. | 「会社員であるAさんは、勤務先の年末調整においてセルフメディケーション税制の適用を受けることができます」 |
3. | 「Aさんが支払っている長女Cさんの国民年金の保険料は、その全額がAさんの社会保険料控除の対象となります」 |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 医療費控除は年末調整の対象外であるため、医療費控除の適用を受けるためには確定申告をしなくてはいけません。 |
3. | 正しい記述です。生計を一にする親族の社会保険料を払った場合には、社会保険料控除の適用を受けることができます。 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
1. | 650万円 |
2. | 665万円 |
3. | 690万円 |
給与所得=800万円-(800万円×10%+110万円)=610万円です。
養老保険の満期保険金は一時所得となり、一時所得=収入金額-収入を得るために要した支出-特別控除額(最高50万円)=500万円-400万円-50万円=50万円です。
個人年金保険の年金収入は雑所得となり、雑所得=収入金額-必要経費=100万円-70万円=30万円です。
給与所得と雑所得は全額が総所得金額に算入されますが、一時所得はその2分の1だけが総所得金額に算入されます。
よって、総所得金額=610万円+50万円×1/2+30万円=665万円となります。
ⅰ) | 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、( ① )万円です」 |
ⅱ) | 「長女Cさんは特定扶養親族に該当するため、Aさんが適用を受けることができる長女Cさんに係る扶養控除の控除額は、( ② )万円です」 |
ⅲ) | 「母Dさんは老人扶養親族の同居老親等に該当するため、Aさんが適用を受けることができる母Dさんに係る扶養控除の控除額は、( ③ )万円です」 |
1. | ① 26 ② 58 ③ 38 |
2. | ① 38 ② 58 ③ 48 |
3. | ① 38 ② 63 ③ 58 |
① | 合計所得金額が900万円以下の人が受ることができる配偶者控除の額は、38万円です。 |
② | 特定扶養親族は63万円の控除対象となります。 |
③ | 老人扶養親族は、同居していれば58万円、同居していなければ48万円の控除対象となります。 |
Aさん(72歳)は、妻Bさん(68歳)および長女Cさん(38歳)とX市内の自宅で同居している。長女Cさんは、X市役所に公務員として勤務している。また、長男Dさん(37歳)は、県外で会社員として働いており、X市に戻る予定はない。
Aさんは、普段から身の回りの世話をしてくれる長女Cさんに対して、現金の贈与をしたいと考えている。
また、長女Cさんと長男Dさんの関係は悪くないものの、Aさんは、自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと心配している。
<Aさんの推定相続人>
[妻Bさん]
Aさんおよび長女Cさんと同居している。
[長女Cさん]
公務員。Aさん夫妻と同居している。
[長男Dさん]
会社員。妻と子2人で戸建て住宅(持家)に住んでいる。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)> | ||
現預金 | : | 8,000万円 |
自宅(敷地300㎡) | : | 7,000万円(注) |
自宅(建物) | : | 3,000万円 |
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
1. | 「Aさんが長女Cさんに現金を贈与し、長女Cさんが暦年課税を選択した場合、その年にAさんから長女Cさんへ贈与した財産の価額が贈与税の基礎控除額を超えるときは、贈与したAさんが贈与税の申告書を提出しなければなりません」 |
2. | 「Aさんが長女Cさんに現金を贈与し、長女Cさんが相続時精算課税制度を選択した場合、累計で3,000万円までの贈与について贈与税は課されません」 |
3. | 「Aさんが長女Cさんに現金を贈与し、長女Cさんが相続時精算課税制度を選択した場合、その選択をした年分以降にAさんから長女Cさんへ贈与する財産について、暦年課税へ変更することはできません」 |
1. | 贈与税の申告をするのは利益を得ている受贈者です。 |
2. | 相続時精算課税制度の適用を受けた場合、累計で2,500万円までの贈与については、贈与税は課されません。 |
3. | 正しい記述です。一旦相続時精算課税制度の適用を受けた場合、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻すことはできません。 |
1. | 「妻Bさんが自宅の敷地を相続により取得し、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、自宅の敷地について相続税の課税価格に算入すべき価額は5,600万円となります」 |
2. | 「円滑な遺産分割のための手段として遺言書の作成をお勧めします。自筆証書遺言は、その遺言の全文および財産目録をパソコンで作成し、日付および氏名を自書して押印することで作成することができます」 |
3. | 「契約者(=保険料負担者)および被保険者をAさん、死亡保険金受取人を推定相続人とする終身保険に加入することをお勧めします。死亡保険金受取人が受け取る死亡保険金は、『500万円×法定相続人の数』を限度として、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができます」 |
1. | 自宅の敷地について小規模宅地等の評価減の適用を受けた場合、特定居住用宅地等として、330㎡部分について80%評価減を受けることができます。 資料より、敷地の面積は300㎡ですから、敷地のすべてについて評価減の適用を受けることができますから、相続税の課税価格への算入額は、7,000万円×(1-80%)=1,400万円となります。 |
2. | 自筆証書遺言は、財産目録については自書以外の方法で作成することができますが、財産目録以外についてはすべて自書しなくてはいけません。 |
3. | 正しい記述です。 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
1. | 1,200万円 |
2. | 1,275万円 |
3. | 2,000万円 |
相続人は配偶者相続人と第一順位の血族相続の組み合わせですから、妻Bさんの法定相続分は1/2になります。
また、長女Cさんと長男Dさんの法定相続分は、それぞれ1/4となります。
よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、9,000万円×1/2=4,500万円、長女Cさんと長男Dさんの法定相続分に応ずる取得金額はそれぞれ、9,000万円×1/4=2,250万円となります。
したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、4,500万円×20%-200万円=700万円となり、長女Cさんと長男Dさんの法定相続分対応する相続税額はそれぞれ、2,250万円×15%-50万円=287.5万円となります。
ゆえに、相続税の総額は、700万円+287.5万円+287.5万円=1,275万円となります。
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