FP3級実技(保険)解説-2021年1月・前半
【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさん(40歳)は、妻Bさん(40歳)、長女Cさん(9歳)、二女Dさん(6歳)および三女Eさん(4歳)との5人暮らしである。Aさんは、最近、公的年金制度の遺族給付について確認し、教育資金の準備や生命保険の見直しなど、今後の資金計画を検討したいと思っている。また、Aさんは、40歳となり、公的介護保険の保険料負担が生じたことから、当該制度についても理解を深めたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
会社員のAさん(40歳)は、妻Bさん(40歳)、長女Cさん(9歳)、二女Dさん(6歳)および三女Eさん(4歳)との5人暮らしである。Aさんは、最近、公的年金制度の遺族給付について確認し、教育資金の準備や生命保険の見直しなど、今後の資金計画を検討したいと思っている。また、Aさんは、40歳となり、公的介護保険の保険料負担が生じたことから、当該制度についても理解を深めたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんの家族構成>
[Aさん]
1980年4月11日生まれ
会社員(厚生年金保険・全国健康保険協会管掌健康保険に加入中)
[妻Bさん]
1980年4月22日生まれ
専業主婦(国民年金に第3号被保険者として加入している)
[長男Cさん]
2011年7月6日生まれ
[二女Dさん]
2014年10月10日生まれ
[三女Eさん]
2016年9月12日生まれ
<公的年金加入歴公的年金加入歴>
※ | 妻Bさん、長女Cさん、二女Dさんおよび三女Eさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。また、妻Bさんの就業の予定はないものとする。 |
※ | Aさんとその家族は、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問1】
はじめに、Mさんは、Aさんが現時点(2021年1月24日)において死亡した場合に妻Bさんが受給することができる遺族基礎年金の年金額(2020年度価額)を試算した。Mさんが試算した遺族基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 781,700円+224,900円+75,000円+75,000円=1,156,600円 |
2. | 781,700円+224,900円+224,900円+75,000円=1,306,500円 |
3. | 781,700円+224,900円+224,900円+224,900円=1,456,400円 |
正解:2(3点)
遺族基礎年金の額=781,700円+子の加算額です。
子の加算額は、子2人までは1人あたり224,900円、3人目以降は1人あたり75,000円/人で、年金法上の子とは、基本的に、18歳到達年度の末日を経過していない子を言います。
子の加算額は、子2人までは1人あたり224,900円、3人目以降は1人あたり75,000円/人で、年金法上の子とは、基本的に、18歳到達年度の末日を経過していない子を言います。
【問2】
次に、Mさんは、Aさんが現時点(2021年1月24日)において死亡した場合に妻Bさんが受給することができる遺族厚生年金について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「遺族厚生年金の額は、原則として、Aさんの厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の( ① )相当額となります。ただし、Aさんの場合、その計算の基礎となる被保険者期間の月数が( ② )月に満たないため、( ② )月とみなして年金額が計算されます。
また、三女Eさんの18歳到達年度の末日が終了し、妻Bさんの有する遺族基礎年金の受給権が消滅したときは、妻Bさんが65歳に達するまでの間、妻Bさんに支給される遺族厚生年金に( ③ )が加算されます」
また、三女Eさんの18歳到達年度の末日が終了し、妻Bさんの有する遺族基礎年金の受給権が消滅したときは、妻Bさんが65歳に達するまでの間、妻Bさんに支給される遺族厚生年金に( ③ )が加算されます」
1. | ①4分の3 ②300 ③中高齢寡婦加算 |
2. | ①3分の2 ②300 ③加給年金額 |
3. | ①3分の2 ②360 ③中高齢寡婦加算 |
正解:1(3点)
① | 遺族厚生年金の額は、原則として、亡くなった人がもらえるはずだった老齢厚生年金の3/4相当額です。 |
② | 厚生年金の被保険者であった人が死亡した場合などには、亡くなった人の厚生年金の被保険者期間が300ヵ月に満たない場合、300ヵ月被保険者期間があったものとして遺族厚生年金の額を計算します。 |
③ | 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受け取っていた人は、子が18歳到達年度の末尾に到達したことによって遺族基礎年金が支給停止された場合、65歳になるまで、遺族厚生年金に中高齢寡婦加算が加算されます。 |
【問3】
最後に、Mさんは、公的介護保険(以下、「介護保険」という)について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「介護保険の被保険者が保険給付を受けるためには( ① )から要介護認定または要支援認定を受ける必要があります。また、Aさんのような介護保険の第2号被保険者は、( ② )要介護状態または要支援状態となった場合に保険給付を受けることができます。
介護保険の第2号被保険者が保険給付を受けた場合、原則として実際にかかった費用(食費、居住費等を除く)の( ③ )割を自己負担する必要があります」
介護保険の第2号被保険者が保険給付を受けた場合、原則として実際にかかった費用(食費、居住費等を除く)の( ③ )割を自己負担する必要があります」
1. | ①市町村(特別区を含む) ②特定疾病が原因で ③1 |
2. | ①都道府県 ②原因を問わず ③1 |
3. | ①市町村(特別区を含む) ②原因を問わず ③3 |
正解:1(4点)
① | 公的介護保険の被保険者が介護給付を受けるためには、市町村(特別区を含む)から要介護認定又は要支援認定を受ける必要があります。 |
② | 公的介護保険の第2号被保険者は、16種類の特定疾病によって要介護者や要支援者になった場合にのみ、介護保険からの給付を受けることができます。 |
③ | 介護保険の第2号被保険者の利用者負担の割合は、1割です。 |
【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員であるAさん(33歳)は、先日、職場で生命保険会社の営業担当者から終身医療保険の提案を受けた。Aさんは、独身であるため生命保険は必要ないとこれまで考えていたが、最近、同年代の著名人ががんに罹患したというニュースを見て、がんに対する保障の必要性を感じ始め、提案を受けた終身医療保険に加入するかどうか迷っている。
また、Aさんは、全国健康保険協会管掌健康保険の高額療養費制度についてあまり理解できておらず、当該制度について詳しく知りたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
会社員であるAさん(33歳)は、先日、職場で生命保険会社の営業担当者から終身医療保険の提案を受けた。Aさんは、独身であるため生命保険は必要ないとこれまで考えていたが、最近、同年代の著名人ががんに罹患したというニュースを見て、がんに対する保障の必要性を感じ始め、提案を受けた終身医療保険に加入するかどうか迷っている。
また、Aさんは、全国健康保険協会管掌健康保険の高額療養費制度についてあまり理解できておらず、当該制度について詳しく知りたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんが提案を受けた終身医療保険に関する資料>
保険の種類:5年ごと配当付終身医療保険
月払保険料:7,600円(終身払込(注1))
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡給付金受取人:父Bさん
保険の種類:5年ごと配当付終身医療保険
月払保険料:7,600円(終身払込(注1))
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡給付金受取人:父Bさん
(注1) | 保険料払込期間は、契約時に有期払込を選択することができる。 |
(注2) | 1日以上の入院の場合に支払われる。 |
(注3) | がん(上皮内がんを含む)と診断確定されたときに支払われる。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問4】
はじめに、Mさんは、生命保険の加入等についてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「生命保険に加入する際には、Aさんの傷病歴や現在の健康状態などについて、事実をありのままに正しく告知する必要があります。なお、告知受領権は生命保険募集人が有していますので、当該募集人に対して、口頭で告知してください」 |
2. | 「提案を受けた終身医療保険の保険料払込期間を有期払込にすることで、毎月の保険料負担は減少し、保険料の払込総額も少なくなります。月々の保険料負担を軽減するために有期払込を選択することをお勧めします」 |
3. | 「生命保険は、契約にあたって保険会社指定の医師による診査を受けた場合などを除き、保険業法に定める保険契約の申込みの撤回等(クーリング・オフ)の対象となり、所定の期間内であれば、書面により申込みの撤回等をすることができます」 |
正解:3(3点)
1. | 保険募集人には告知受領権はありません。告知受領権を有しているのは、生命保険会社および生命保険会社が指定した医師です。 |
2. | 他の条件を同じとした場合、終身払込よりも有期払込の方が、毎月の保険料負担額は大きいです。 |
3. | 正しい記述です。 |
【問5】
次に、Mさんは、Aさんが提案を受けた終身医療保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「先進医療の治療を受けた場合、診察料や投薬料等に係る費用は公的医療保険の対象となりますが、技術料に係る費用は全額自己負担となりますので、先進医療特約の付加をご検討ください」 |
2. | 「Aさんががんに罹患した場合、がん一時金特約から100万円を受け取ることができます。ただし、通常、がんの保障については契約日から6カ月間の免責期間があります」 |
3. | 「Aさんががんと診断確定され、がん一時金特約から一時金を受け取った場合、当該一時金は一時所得として総合課税の対象となります」 |
正解:1(3点)
1. | 正しい記述です。 |
2. | 一般的に、がん保険には、契約日から3ヵ月程度の免責期間があります。 |
3. | 個人が、がん保険から受け取るがん診断一時金は、非課税です。 |
【問6】
最後に、Mさんは、全国健康保険協会管掌健康保険の高額療養費制度について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「Aさんに係る医療費の一部負担金の割合は、原則として( ① )割となりますが、( ② )内に、医療機関等に支払った医療費の一部負担金等の額が自己負担限度額を超えた場合、所定の手続により、自己負担限度額を超えた額が高額療養費として支給されます。
この一部負担金等の合計には、差額ベッド代、入院時の食事代、先進医療に係る費用等は含まれず、70歳未満の者の場合、原則として、医療機関ごとに、入院・外来、医科・歯科別に一部負担金等が( ③ )円以上のものが計算対象となります」
この一部負担金等の合計には、差額ベッド代、入院時の食事代、先進医療に係る費用等は含まれず、70歳未満の者の場合、原則として、医療機関ごとに、入院・外来、医科・歯科別に一部負担金等が( ③ )円以上のものが計算対象となります」
1. | ①1 ②同一月 ③12,000 |
2. | ①3 ②同一年 ③12,000 |
3. | ①3 ②同一月 ③21,000 |
正解:3(4点)
① | 小学校入学後から75歳未満の人に係る医療費の一部負担金の割合は、原則として、3割です。 |
② | 高額療養費は、同一月内に、医療機関等に支払った医療費の一部負担金の額が自己負担額を超えた場合に支払われます。 |
③ | 70歳未満の人の場合、高額療養費の計算上、一部負担金等の合計には、原則として、医療機関ごとに、入院・外来、医科・歯科別に、一部負担金が21,000円以上のものが計算対象となります。 |
【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(45歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、現在、自身の退職金準備を目的として、下記の<資料>の生命保険への加入を検討している。また、従業員の福利厚生の充実を図る目的として、総合福祉団体定期保険への加入も検討している。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさん(45歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、現在、自身の退職金準備を目的として、下記の<資料>の生命保険への加入を検討している。また、従業員の福利厚生の充実を図る目的として、総合福祉団体定期保険への加入も検討している。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<資料>Aさんが加入を検討している生命保険の内容
保険の種類:無配当低解約返戻金型終身保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
死亡保険金額:4,000万円
保険料払込期間:65歳満了
年払保険料:170万円
65歳までの払込保険料累計額(①):3,400万円
65歳時の解約返戻金額(②):3,500万円(低解約返戻金期間満了直後)
受取率(②÷①):102.9%(小数点第2位以下切捨て)
保険の種類:無配当低解約返戻金型終身保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
死亡保険金額:4,000万円
保険料払込期間:65歳満了
年払保険料:170万円
65歳までの払込保険料累計額(①):3,400万円
65歳時の解約返戻金額(②):3,500万円(低解約返戻金期間満了直後)
受取率(②÷①):102.9%(小数点第2位以下切捨て)
※ | 解約返戻金額の80%の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金4,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を40年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1. | 900万円 |
2. | 1,800万円 |
3. | 2,200万円 |
正解:1(3点)
退職所得控除額=70万円×(40-20)+800万円=2,200万円です。
よって、退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(4,000万円-2,200万円)×1/2=900万円となります。
よって、退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(4,000万円-2,200万円)×1/2=900万円となります。
【問8】
Mさんは、《設例》の終身保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんの退任時に、役員退職金の一部または全部として当該終身保険の契約者をAさん、死亡保険金受取人をAさんの相続人に名義変更することで、当該終身保険をAさんの個人の保険として継続することが可能です」 |
2. | 「X社が保険期間中に資金が必要となった場合に、契約者貸付制度を利用することにより、当該保険契約を解約することなく、資金を調達することができます」 |
3. | 「保険料払込期間満了時に当該終身保険を解約し、解約返戻金3,500万円を受け取った場合、X社はそれまで資産計上していた保険料積立金を取り崩し、解約返戻金額との差額を雑損失として経理処理します」 |
正解:3(4点)
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 法人が保険を解約して解約返戻金を受け取った場合、解約返戻金の額と資産計上額との差額が、雑収入(益金)又は雑損失(損金)となりますが、解約返戻金の額(本問では3,500万円)が資産計上額(同3,400万円)よりも多ければ、差額は雑収入(益金)として経理処理します。 |
【問9】
Mさんは、総合福祉団体定期保険の一般的な商品性について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「総合福祉団体定期保険は、一般に、従業員の遺族の生活保障を主たる目的として、法人が契約者となる保険です。従業員に加えて法人の役員を被保険者とすること( ① )。総合福祉団体定期保険の加入の申込みに際しては、被保険者になることについての加入予定者の同意および保険約款に基づく告知が必要となります。なお、法人が支払った保険料は、所定の条件を満たすことにより、その( ② )を損金の額に算入することができます。
また、従業員の死亡等による法人の経済的損失に備えるためのヒューマン・ヴァリュー特約を付加することができます。当該特約の死亡保険金等の受取人は、( ③ )に限定されています」
また、従業員の死亡等による法人の経済的損失に備えるためのヒューマン・ヴァリュー特約を付加することができます。当該特約の死亡保険金等の受取人は、( ③ )に限定されています」
1. | ①はできません ②2分の1 ③契約者である法人 |
2. | ①ができます ②全額 ③契約者である法人 |
3. | ①ができます ②2分の1 ③被保険者である従業員またはその遺族 |
正解:2(3点)
① | 総合福祉団体定期保険は、法人の役員も被保険者とすることができます。 |
② | 総合福祉団体保険の保険料は、全額が損金に算入されます。 |
③ | ヒューマンバリュー特約は、役員や従業員の死亡や高度障害による企業の経済的損失に備える特約ですから、当該特約の死亡保険金等の受取人は、契約者である法人に限定されています。 |
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