FP3級実技(保険)解説-2019年1月・問1~9
【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、今年5月に満60歳を迎える。Aさんは、大学卒業後、X社に入社し、以後、現在に至るまで勤務しており、60歳以後、X社の継続雇用制度を利用し、下記の【雇用条件】で65歳になるまで勤務する予定である。
Aさんは、定年を迎えるにあたり、60歳以後の社会保険制度について理解を深めたいと思っている。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさん夫婦に関する資料は、以下のとおりである。
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、今年5月に満60歳を迎える。Aさんは、大学卒業後、X社に入社し、以後、現在に至るまで勤務しており、60歳以後、X社の継続雇用制度を利用し、下記の【雇用条件】で65歳になるまで勤務する予定である。
Aさんは、定年を迎えるにあたり、60歳以後の社会保険制度について理解を深めたいと思っている。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさん夫婦に関する資料は、以下のとおりである。
【雇用条件】 | |
・ | 週5日、1日7時間(週35時間)勤務 |
・ | 社会保険・雇用保険に加入 |
・ | 賃金月額は60歳到達時の80%で賞与なし |
<Aさん夫婦に関する資料>
[Aさん]
昭和34年5月11日生まれ・59歳・会社員
[Aさん]
昭和34年5月11日生まれ・59歳・会社員
・ | 公的年金加入歴は下図のとおり(60歳定年時までの見込みを含む) |
・ | 全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中 |
[妻Bさん]
昭和41年7月20日生まれ・52歳・専業主婦
昭和41年7月20日生まれ・52歳・専業主婦
・ | 公的年金加入歴:18歳で就職してからAさんと結婚するまでの8年間(96月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。 |
・ | 全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。 |
※ | 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問1】
はじめに、Mさんは、Aさんが65歳になるまでに受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「老齢基礎年金の受給資格期間である( ① )年を満たし、かつ、厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あることなどの要件を満たしている方は、65歳到達前に特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。昭和34年5月生まれのAさんは、原則として、( ② )歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。
なお、Aさんが( ② )歳以後も引き続き厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務し、総報酬月額相当額と基本月額との合計額が( ③ )万円(平成30年度の支給停止調整開始額)を超えるときは、特別支給の老齢厚生年金の年金額の一部または全部が支給停止となります」
なお、Aさんが( ② )歳以後も引き続き厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務し、総報酬月額相当額と基本月額との合計額が( ③ )万円(平成30年度の支給停止調整開始額)を超えるときは、特別支給の老齢厚生年金の年金額の一部または全部が支給停止となります」
1. | ①10 ②61 ③46 |
2. | ①10 ②64 ③28 |
3. | ①25 ②64 ③46 |
正解:2
① | 老齢基礎年金の受給資格期間は10年です。 |
② | 男性の場合、昭和34年4月2日から昭和36年4月1日生まれまでの人は、一定要件を満たしすと、64歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金が支給されます。 |
③ | 60歳以上65歳未満の人が受け取る在職老齢年金は、年金月額と総報酬月額相当額の合計が28万円を超えると、減額調整されます。 |
【問2】
次に、Mさんは、Aさんが65歳以後に受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額は、65歳到達時における厚生年金保険の被保険者記録を基に計算されます」 |
2. | 「Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の額は、満額の779,300円(平成30年度価額)となります」 |
3. | 「 Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額には、妻Bさんが60歳になるまでの間、配偶者の加給年金額が加算されます」 |
正解:1
1. | 正しい記述です。 |
2. | 免除を受けて追納していない期間がない場合、老齢厚生年金の支給額の計算式は、779,300円×保険料納付済月数/480月です。 よって、支給される年金額は、779,300円×445/480=722,476円となります。 |
3. | 加給年金は、配偶者が65歳になるまで受け取ることができます。 |
【問3】
最後に、Mさんは、継続雇用制度利用後の社会保険に関する各種取扱いについて説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんは、60歳以後も厚生年金保険の被保険者となりますので、妻Bさんは、引き続き、国民年金に第3号被保険者として加入することになります」 |
2. | 「Aさんは、60歳以後も全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者となりますので、引き続き、妻Bさんを全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者とすることができます」 |
3. | 「60歳以後に支払われる賃金額が、60歳到達時の賃金月額の85%相当額を下回りますので、Aさんには雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金が支給されます」 |
正解:3
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金は、60歳以後に支払われる賃金額が、60歳到達時の賃金月額の75%相当額を下回った場合に支給されます。 |
【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
個人事業主であるAさん(49歳)は、妻Bさん(47歳)、長男Cさん(22歳・大学4年生)および長女Dさん(20歳・大学2年生)の4人で自宅兼オフィスに居住している。Aさんは、子どもの教育費にめどがついたこともあり、老後の生活資金の準備を始めたいと考えている。
そこで、Aさんは懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。なお、Aさんの現在の収入および資産状況に関する資料等は、以下のとおりである。
※平成22年6月1日、特約を更新している。
個人事業主であるAさん(49歳)は、妻Bさん(47歳)、長男Cさん(22歳・大学4年生)および長女Dさん(20歳・大学2年生)の4人で自宅兼オフィスに居住している。Aさんは、子どもの教育費にめどがついたこともあり、老後の生活資金の準備を始めたいと考えている。
そこで、Aさんは懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。なお、Aさんの現在の収入および資産状況に関する資料等は、以下のとおりである。
<Aさんの現在の収入および資産状況に関する資料>
収入金額:800万円(Aさんは70歳まで働きたいと考えている)
在の貯蓄額:1,000万円
収入金額:800万円(Aさんは70歳まで働きたいと考えている)
在の貯蓄額:1,000万円
※ | Aさんおよび妻Bさんともに、20歳から現在まで国民年金に第1号被保険者とし て加入し、保険料の未納期間や免除期間はない。 |
<Aさんが現在加入している生命保険の契約内容>
[①終身保険]
60歳払込満了、特約付加なし
契約年月日:平成2年5月1日
月払保険料(口座振替):11,340円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
[①終身保険]
60歳払込満了、特約付加なし
契約年月日:平成2年5月1日
月払保険料(口座振替):11,340円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
[②定期保険特約付終身保険]
60歳払込満了
契約年月日:平成12年6月1日
月払保険料(口座振替):23,740円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
60歳払込満了
契約年月日:平成12年6月1日
月払保険料(口座振替):23,740円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
※平成22年6月1日、特約を更新している。
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問4】
はじめに、Mさんは、Aさんが老後の生活資金の準備を検討する前に、現在加入している生命保険の保障内容を確認するようにアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「現時点および長女Dさんが社会人として独立した時点の必要保障額(遺族に必要な生活資金等の総額-遺族の収入見込金額)を計算してみましょう。最低限必要な死亡保障を確保しつつ、保障内容を医療保障や介護保障等、自分のための保障にシフトさせることを検討してください」 |
2. | 「平成2年に加入した終身保険の予定利率は、現在よりも高いことが推察されます。終身保険は老後の生活資金として活用することもできますので、終身保険は解約せず、継続されることが望ましいと思います」 |
3. | 「個人事業主が加入する国民健康保険では高額療養費制度が設けられていないため、会社員に比べて医療費の自己負担額が多くなる傾向があります。医療保険に新規加入するなど、医療保障の充実を図ることをお勧めします」 |
正解:3
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 国民健康保険にも高額療養費制度はあります(給料の補てんの性質を持つ、出産手当金と傷病手当金はありません)。 |
【問5】
次に、Mさんは、老後の生活資金を準備するための諸制度について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
・ | 「国民年金基金は、国民年金の第1号被保険者を対象に、老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。なお、国民年金基金の加入員は、( ① )を納付することができません」 |
・ | 「確定拠出年金の個人型年金は、将来の年金受取額が加入者の指図に基づく運用実績により左右される年金制度です。通算加入者等期間が( ② )年以上ある場合は、60歳から老齢給付金を受給することができます」 |
・ | 「小規模企業共済制度は、個人事業主が廃業をした場合に必要となる資金を準備しておくための共済制度です。共済金(死亡事由以外)の受取方法には『一括受取り』『分割受取り』『一括受取り・分割受取りの併用』がありますが、税法上、『一括受取り』の共済金(死亡事由以外)は( ③ )所得として課税されます」 |
1. | ①国民年金の付加保険料 ②5 ③一時 |
2. | ①国民年金の付加保険料 ②10 ③退職 |
3. | ①確定拠出年金の個人型年金の掛金 ②10 ③一時 |
正解:2
① | 国民年金基金の加入者は、国民年金の付加保険料を納付することができません。 |
② | 確定拠出年金の個人型年金は、通算加入者等期間が10年以上ある場合、60歳から老齢給付金を受給することができます。 |
③ | 小規模企業共済制度の共済金(死亡事由以外)を 『一括受取り』とすると、退職所得として課税されます。 |
【問6】
最後に、Mさんは、個人年金保険についてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「個人年金保険は、定額個人年金保険と変額個人年金保険の2種類に大別することができます。変額個人年金保険は、払込保険料が特別勘定(ファンド)で運用され、その運用実績により、受け取る年金額が増減する仕組みとなっています」 |
2. | 「個人年金保険の受取方法には、確定年金や保証期間付終身年金などの種類がありますが、保証期間付終身年金は、被保険者が死亡した時期によっては、年金の受取総額が既払込保険料を下回る場合があります」 |
3. | 「個人年金保険の保険料は、個人年金保険料税制適格特約を付加することで、個人年金保険料控除の対象となりますが、受取方法を保証期間付終身年金とする個人年金保険の保険料は、個人年金保険料控除の対象にはなりません」 |
正解:3
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 終身年金の場合、税制適格特約をつけるための要件は、年金受取人が契約者またはその配偶者のいずれかであり、かつ、被保険者と同一人である事と、保険料払込期間が10年以上である事とされています。 *消去法で解きたい問題です。 |
【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長であるAさん(72歳)は、35年前にX社を設立した。Aさんは、体調を崩し、入退院を繰り返したこともあり、今期限りで勇退することにした。後任として、X社の専務取締役である長男Bさん(43歳)が社長に就任する予定である。
Aさんは、現在、長男Bさんの退職金準備を目的とする生命保険への加入を検討している。そこで、Aさんは、生命保険会社の営業担当者であるMさんに相談したところ、下記<資料>の生命保険の提案を受けた。
X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長であるAさん(72歳)は、35年前にX社を設立した。Aさんは、体調を崩し、入退院を繰り返したこともあり、今期限りで勇退することにした。後任として、X社の専務取締役である長男Bさん(43歳)が社長に就任する予定である。
Aさんは、現在、長男Bさんの退職金準備を目的とする生命保険への加入を検討している。そこで、Aさんは、生命保険会社の営業担当者であるMさんに相談したところ、下記<資料>の生命保険の提案を受けた。
<資料>Mさんが提案した生命保険の内容
保険の種類:長期平準定期保険(無配当・特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:長男Bさん
死亡保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:99歳満了
死亡保険金額:1億円
年払保険料:240万円
65歳時の解約返戻金額:4,900万円(単純返戻率92.8%)
※ | 単純返戻率(%)=解約返戻金額÷払込保険料累計額×100 |
※ | 解約返戻金額の80%の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問7】
X社は、勇退するAさんに対して、役員退職金を支給する予定である。X社がAさんに役員退職金5,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続期間)を35年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1. | 1,275万円 |
2. | 1,575万円 |
3. | 1,800万円 |
正解:2
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2です。
勤続年数が35年の場合、退職所得控除額=800万円+70万円×(35-20)=1,850万円ですから、退職所得=(5,000万円-1,850万円)×1/2=1,575万円となります。
勤続年数が35年の場合、退職所得控除額=800万円+70万円×(35-20)=1,850万円ですから、退職所得=(5,000万円-1,850万円)×1/2=1,575万円となります。
【問8】
Mさんは、《設例》の生命保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「当該生命保険は、保険期間開始のときから当該保険期間の6割に相当する期間においては、支払保険料の2分の1を資産計上し、残りの支払保険料は期間の経過に応じて損金の額に算入します」 |
2. | 「当該生命保険の単純返戻率は、保険期間の途中でピーク時期を迎え、その後は低下し、保険期間満了時には0(ゼロ)になります」 |
3. | 「X社が当該生命保険契約を長男Bさんが65歳のときに解約した場合、解約時点における資産計上額を取り崩し、解約返戻金額との差額を雑損失として、その事業年度の損金の額に算入します」 |
正解:3
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 長期平準定期保険の保険料を支払うと、保険期間の前半6割まで(長男Bさんが76歳半ばまで)は、その半額が資産計上されます。 よって、65歳まで保険料を支払うと、240万円×(65-43)×1/2=2,640万円が資産計上されます。 したがって、保険の解約時には、解約返戻金の4,900万円と資産計上額2,640万円の差額の2,260万円が、雑収入としてその事業年度の益金の額に算入されます。 |
【問9】
Mさんは、生命保険の活用方法について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「長期平準定期保険の解約返戻金は、役員退職金の原資として活用することができます。また、借入金の返済や運転資金等の事業資金として活用することもできます」 |
2. | 「長男Bさんが重い病気等で一定期間働けなくなった場合の業績悪化の可能性を考え、長男Bさんが重い病気等になった場合にX社が一時金を受け取ることができる生前給付タイプの生命保険に加入されることも検討事項の1つとなります」 |
3. | 「緊急の資金需要が生じた場合、契約者貸付制度を活用することができます。解約返戻金額の80%の範囲内で借り入れることができ、利息はかかりません」 |
正解:3
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 契約者貸付制度を利用して借り入れたお金には、所定の利息がかかります。 |
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