FP3級実技(保険)解説-2018年5月・問10~15
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび長男Dさんの4人家族である。Aさんは、妻Bさんの入院・手術・通院に係る医療費について、医療費控除の適用を受けたいと考えている。
Aさんとその家族に関する資料等は、以下のとおりである。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(60歳)]
会社員
[Bさん(58歳)]
専業主婦。平成29年中の収入はない。
[長女Cさん(25歳)]
アルバイト。平成29年分の給与収入は140万円である。
[長男Dさん(20歳)]
大学生。平成29年中の収入はない。
<Aさんの平成29年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
900万円
[養老保険(月払・60歳満期)の満期保険金]
契約年月:昭和62年6月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
満期保険金受取人:Aさん
満期保険金額:500万円
正味払込済保険料:380万円
※ | 妻Bさん、長女Cさんおよび長男Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも平成29年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
・ | Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、( ① )である。 |
・ | 長女Cさんの合計所得金額は( ① )を超えるため、Aさんは長女Cさんに係る扶養控除の適用を受けることができない。Aさんが適用を受けることができる扶養控除の控除額は、( ② )である。 |
・ | 所得控除のうち、雑損控除、医療費控除および( ③ )の3種類の所得控除については、年末調整では適用を受けることができないため、これらの控除の適用を受けるためには所得税の確定申告が必要となる。 |
1. | ①38万円 ②63万円 ③寄付金控除 |
2. | ①38万円 ②38万円 ③小規模企業共済等掛金控除 |
3. | ①65万円 ②38万円 ③配当控除 |
① | 配偶者控除の控除額は、38万円です。 合計所得金額が38万円(制度改正後の現在は48万円)を超えると、扶養控除の適用対象外となります。 |
② | 長女Cさんについては扶養控除を受ける事はできませんが、長男Dさんは、扶養控除の適用対象となります。長男Cさんは、19歳以上23歳未満の特定扶養親族ですから、特定扶養親族として63万円の控除を受けることができます。 |
③ | 所得控除のうち、寄付金控除、医療費控除、雑損控除の適用を受けるためには、確定申告をする必要があります。 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40% (最低65万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
660万円超 1,000万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 220万円 |
1. | 690万円 |
2. | 725万円 |
3. | 760万円 |
給与所得の金額は、900万円-(900万円×10%+120万円)=690万円です。
また、保険期間が5年を超える養老保険の満期保険金は、一時所得となりますから、一時所得=500万円-380万円-50万円=70万円となります。
一時所得の金額は、その半額が総所得金額に算入されますから、総所得金額=690万円+70万円×1/2=725万円となります。
<参考>
現在の給与所得控除額は、資料と異なります。
1. | 「通常の医療費控除額は、『(その年中に支払った医療費の総額-保険金などで補てんされる金額)-20万円』の算式により算出します。Aさんが平成29年中に支払った医療費の総額が20万円を超えていない場合、医療費控除額は算出されません」 |
2. | 「仮に、Aさんがセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)の適用を受ける場合であっても、通常の医療費控除と重複して適用を受けることができます」 |
3. | 「Aさんが医療費控除の適用を受けない場合であっても、総所得金額に算入される一時所得の金額が20万円を超えるため、確定申告を行わなければなりません」 |
1. | 通常の医療費控除額は、「(その年中に支払った医療費の総額-保険金などで補て んされる金額)-10万円」の算式により算出します。 |
2. | セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、通常の医療費控除と重複して適用を受けることができません。 |
3. | 正しい記述です。給与所得者の給与所得と退職所得以外の所得が20万円を超える場合、確定申告をしなくてはいけません。 |
Aさん(70歳)は、X市内の自宅で妻Bさん(70歳)および長男Cさん(44歳)家族と同居している。長男Cさんは、X市内の地元企業に勤務している。他方、二男Dさん(41歳)は医学部を卒業後、県外で勤務医として働いており、X市に戻る予定はない。
Aさんは、所有する自宅や自宅に隣接する賃貸アパートについて、長男Cさんに相続させたいと考えているが、妻Bさんの話によれば、二男Dさんは長男Cさんが自宅を相続することに異論はないが、相続財産の分割は均等にしてもらいたいと言っているようである。二男Dさんは、日頃から長男Cさんとの折り合いが悪く、Aさんは遺産分割で揉めることになりはしないか、心配している。
<Aさんの家族構成>
[妻Bさん]
Aさんおよび長男Cさん家族と同居している。
[長男Cさん]
会社員。妻と子2人でAさん夫妻と同居している。
[次男Dさん]
勤務医。妻と子2人で戸建て住宅(持家)に住んでいる。
預貯金等:4,000万円
自宅(敷地330㎡):1,000万円(注)
自宅(建物):1,000万円
賃貸アパート(敷地300㎡):5,000万円
賃貸アパート(建物):2,000万円(年間収入450万円)
注 | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の金額 |
* | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
1. | 1,200万円 |
2. | 1,275万円 |
3. | 2,000万円 |
そうすると、妻Bさんに係る相続税額は、4,500万円×20%-200万円=700万円となります。
残りの2人に係る相続税額は、1人当たり、2,250万円×15%-50万円=287.5万円となります。
したがって、相続税の総額は、700万円+287.5万円×2=1,275万円となります。
1. | 「遺産分割での争いを未然に防ぐために、遺言書の作成を検討してください。民法で定められている普通の方式による遺言のうち、公正証書遺言は作成された遺言書の原本が家庭裁判所に保管されるため、安全性が高い遺言といえます」 |
2. | 「遺言書を作成する際には、二男Dさんの遺留分を侵害しないように配慮してください。仮に、遺留分算定の基礎となる財産の価額が2億円である場合、二男Dさんの遺留分の金額は5,000万円となります」 |
3. | 「自筆証書遺言は、秘密が保持できること、手続が簡便であること等のメリットがあります。一方、紛失や偽造の可能性があること、遺言の内容が不明瞭である場合、相続人間で無用なトラブルを生じさせる可能性があること等のデメリットがあります」(注)制度改正あり |
1. | 公正証書遺言の原本は、公証役場に保管されます。 |
2. | 個人の遺留分(具体的遺留分)は、抽象的遺留分の金額に法定相続分をかけた金額です。 相続人が直系尊属のみである場合を除き、抽象的遺留分は、遺留分算定の基礎となる財産の2分の1ですから、法定相続分が1/4である次男Dさんの遺留分は、2億円×1/2×1/4=2,500万円です。 |
3. |
正しい記述です。 【改正後】但し、遺言保管制度を利用した自筆証書遺言であれば、紛失や偽造の恐れはありません。 |
1. | 「契約者(=保険料負担者)および被保険者をAさん、死亡保険金受取人を推定相続人とする終身保険に加入されることをお勧めします。死亡保険金受取人が受け取る死亡保険金は『500万円×法定相続人の数』を限度として、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができます」 |
2. | 「相続財産の大半が不動産であり、現物分割が難しい場合、自宅および賃貸アパートを取得する長男Cさんが、その代償として二男Dさんに金銭を支払うという分割の方法が考えられます」 |
3. | 「自宅の敷地を妻Bさんではなく、同居する長男Cさんが相続した場合、当該敷地について小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けることはできませんので、注意してください」 |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 自宅の敷地を、被相続人と同居していた子が取得した場合、一定要件を満たすと、小規模宅地等の評価減の特例を受ける事ができます。 |
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