FP2級実技(FP協会)解説-2024年1月・問1~10
【問1】
ファイナンシャル・プランナー(以下「FP」という)は、ファイナンシャル・プランニング業務を行ううえで関連業法等を順守することが重要である。FPの行為に関する次の(ア)~(エ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。
(ア) | 弁護士または司法書士の登録を受けていないFPが、顧客から報酬を受け取り、相続財産である不動産の登記申請を代行した。 |
(イ) | 税理士の登録を受けていないFPが、参加費有料の相続セミナーを開催し、一般的な相続税の計算方法の説明と仮定の事例に基づく相続税の計算手順について解説した。 |
(ウ) | 社会保険労務士の登録を受けていないFPが、参加費無料の年金セミナーを開催し、一般的な社会保障制度に関する説明と年金相談に応じた。 |
(エ) | 金融サービス仲介業または生命保険募集人、保険仲立人の登録を受けていないFPが、保険募集を目的として生命保険商品の説明を行い、具体的な保険設計書を用いて顧客に保険の加入を促した。 |
正解:×、○、○、×
(ア) | 司法書士や弁護士の資格を有しない人が、不動産の登記申請を代行してはいけません。 |
(イ) | 一般的な相続税の計算方法の説明や、仮定の事例に基づく相続税の計算手順についての解説は、一般的な説明ですから、誰でもすることができます。 |
(ウ) | 一般的な社会保障制度に関する説明は、誰でもすることができます。また、年金相談も、誰でもすることができます。 |
(エ) | 保険の募集・勧誘は、金融サービス仲介業または生命保険募集人、保険仲立人の登録を受けている者でなければすることができません。 |
【問2】
「金融サービスの提供に関する法律(金融サービス提供法)」に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 金融サービス仲介業を行う場合、内閣総理大臣の登録を受けなければならない。 |
2. | 金融商品販売業者等が重要事項の説明義務を怠ったことにより顧客に損害が生じた場合、金融商品販売業者等が損害賠償責任を負う。 |
3. | デリバティブ取引や外国為替証拠金取引(FX)は、金融サービス提供法が適用される。 |
4. | 金融サービス提供法による保護の対象は個人に限られ、原則として、事業者は保護の対象とならない。 |
正解:4
(ア) | 正しい記述です。 |
(イ) | 正しい記述です。金融サービス提供法により、金融商品販売業者等は、金融商品の販売を行う際、顧客に対して元本が欠損する可能性があること等の重要事項を説明する義務が課されており、金融商品販売業者等が重要事項の説明義務を怠ったことにより顧客に損害が生じた場合、金融商品販売業者等が損害賠償責任を負います。 なお、この損害賠償責任は、金融商品販売業者等の無過失責任とされています(説明義務を怠ったことについて故意・過失がなくても、責任を負います)。 |
(ウ) | 正しい記述です。金融サービス提供法の適用対象は、預貯金、債券、株式のほか、デリバティブ取引や外国為替証拠金取引(FX)を含みます。 なお、商品先物取引は適用対象外とされています。 |
(エ) | 金融サービス提供法による保護の対象には、個人だけでなく事業者も含まれます。 なお、消費者契約法による保護の対象は個人に限られ、原則として、事業者は保護の対象となりません。 |
【問3】
経済統計等に関する下表の空欄(ア)~(エ)にあてはまる語句を語群の中から選び、その番号のみを解答欄に記入しなさい。
名称 | 発表機関 | 概要 |
国内総生産 (GDP) |
内閣府 | 一定期間中に国内で生み出された財およびサービスなどの付加価値の合計である。ここから物価の変動による影響を取り除いたものを( ア )GDPという。 |
マネーストック 統計 |
( イ ) | 金融機関・中央政府を除く経済主体(一般法人、個人、地方公共団体など)が保有する通貨量の残高を集計したものである。 |
全国企業短期 経済観測調査 (日銀短観) |
日本銀行 | 全国の企業動向を的確に把握し金融政策の適切な運営のために統計法に基づいて行われる調査であり、全国の約1万社の企業を対象に、( ウ )実施される。 |
( エ ) | 内閣府 | 生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって作成された指標であり、コンポジット・インデックス(CI)を中心として公表される。 |
<語句群>
1.名目 2. 実質 3.金融庁
4.財務省 5.日本銀行 6.毎月
7.四半期ごとに
8.半期ごとに
9.景気ウォッチャー調査 10.景気動向指数
11.業況判断指数・DI
1.名目 2. 実質 3.金融庁
4.財務省 5.日本銀行 6.毎月
7.四半期ごとに
8.半期ごとに
9.景気ウォッチャー調査 10.景気動向指数
11.業況判断指数・DI
正解:2、5、7、10
(ア) | GDPには、物価の変動による影響を加味しない名目GDPと、物価の変動による影響を取り除いた実質GDPがあります。 |
(イ) | マネーストック統計の公表機関は、日本銀行です。 |
(ウ) | 全国企業短期経済観測調査(日銀短観)は、四半期ごとに調査・公表されます。 |
(エ) | (景気の現状把握及び将来予測を行うため)生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって作成された指標は、景気動向指数です。 |
【問4】
安藤さんは、2019年からNISA(少額投資非課税制度)を活用して投資を始め、2023年まで毎年、年間の限度額まで金融商品を購入してきた。そして、2024年以降も新しいNISAを活用して投資を継続することを検討しており、FPの皆川さんに質問をした。NISAに関する次の(ア)~(エ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。
(ア) | 「2023年に購入し、NISA口座で保有している金融商品を値下がり後に売却したことによる損失は、ほかの一般口座や特定口座で保有している金融商品の配当金や売却によって得た利益と損益通算できます。」 |
(イ) | 「2019年から2023年の間に購入してNISA口座で保有している金融商品については、非課税期間内に売却するか、非課税期間終了時に保有を継続する場合は一般口座や特定口座に移管するかのどちらかになります。」 |
(ウ) | 「2024年以降のNISAの成長投資枠は、年間投資額で240万円まで、かつ、非課税保有限度額1,800万円のうち1,200万円までです。」 |
(エ) | 「2024年以降のNISAのつみたて投資枠および成長投資枠の投資対象商品は、つみたてNISAおよび一般NISAの投資対象商品と同じです。」 |
正解:×、○、○、×
(ア) | NISA口座で保有している金融商品に係る譲渡損失は、損益通算の対象外です。 |
(イ) | 正しい記述です。旧NISAは2023年までで、2024年から新NISAに移行したため、旧NISAで保有している銘柄は、非課税期間の満了時にロールオーバーすることができなくなりました。 |
(ウ) | 正しい記述です。なお、つみたて投資枠には限度額が無いため、つみたて投資枠で1,800万円投資することも可能です。 |
(エ) | 新NISAのつみたて投資枠の投資対象商品は、つみたてNISAの投資対象商品と同じですが、新NISAの成長投資枠の投資対象商品は、一般NISAの投資対象商品よりも範囲が狭いです(一定条件に該当する商品が除外されました)。 |
【問5】
下記<資料>の債券を取得日から5年後に売却した場合における所有期間利回り(単利・年率)を計算しなさい。なお、手数料や税金等については考慮しないものとし、計算結果については小数点以下第4位を切り捨てること。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと(解答用紙に記載されているマス目に数値を記入すること)。
<資料>
表面利率:年0.8%
額面:100万円
購入価格:額面100円につき98.00円
売却価格:額面100円につき98.85円
所有期間:5年
表面利率:年0.8%
額面:100万円
購入価格:額面100円につき98.00円
売却価格:額面100円につき98.85円
所有期間:5年
正解:0.989
所有期間利回り(%)={0.8+(98.85-98)÷5}÷98×100=0.98979%…≒0.989%(小数点以下第4位切り捨て)です。
【問6】
柴田さんは、下記<資料>の投資信託の購入を検討しており、FPの唐沢さんに質問をした。投資信託の手数料等に関する次の(ア)~(ウ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。
<資料>
(ア) | 「このファンドを10万円購入する場合の購入時手数料は、税込3,300円です。」 |
(イ) | 「運用管理費用(信託報酬)は、日々の基準価額には影響せず、計算期末と信託終了時のみ基準価額にマイナスに影響します。」 |
(ウ) | 「その他の費用・手数料は、ファンドによって投資者が負担する費用項目や内容が違うことがあります。 |
正解:○、×、○
(ア) | 正しい記述です。購入時手数料は、購入価額に3.3%(税抜3.0%)を乗じた額ですから、税込みで、10万円×3.3%=3,300円です。 |
(イ) | 運用管理費用(信託報酬)は、毎日信託財産から控除され、基準価額に影響を及ぼします。 |
(ウ) | 正しい記述です。例えば、<資料>の投資信託の外国証券の保管等に要する費用等は、外国証券に投資しない投資信託であればかかりません。 |
【問7】
建築基準法に従い、下記<資料>の甲土地に建物を建築する場合の建築面積の最高限度を計算しなさい。なお、記載のない事項については一切考慮しないものとする。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと。
<資料>
正解:210(㎡)
道路の反対側が宅地で、敷地が面している道路の幅員が4mに満たない場合、道路の中心線から2m後退した線が、道路と敷地の境界線とされます。
よって、道路と敷地の境界線は、18m-3m÷2=0.5m後退した線となり、建築基準法上の敷地面積は、20m×(18m-0.5m)=350㎡となります。
よって、建築面積の最高限度は、350㎡×60%=210㎡となります。
よって、道路と敷地の境界線は、18m-3m÷2=0.5m後退した線となり、建築基準法上の敷地面積は、20m×(18m-0.5m)=350㎡となります。
よって、建築面積の最高限度は、350㎡×60%=210㎡となります。
【問8】
山岸さんは、所有しているマンションを賃貸している。下記<資料>に基づく2023年分の所得税に係る不動産所得の金額として、正しいものはどれか。なお、<資料>以外の収入および支出等はないものとし、青色申告特別控除は考慮しないものとする。
<資料:2023年分の賃貸マンションに係る収入および支出等>
[賃料収入(総収入金額)]
126万円
[支出]
銀行へのローン返済金額:73万円(元金50万円、利息23万円)
管理費等:18,000円
管理業務委託費:63,000円
火災保険料:7,000円
固定資産税:125,000円
修繕費:38,500円
[減価償却費]
246,000円
※ | 支出等のうち必要経費となるものは、すべて2023年分の所得に係る必要経費に該当するものとする。 |
1. | 32,500円 |
2. | 278,500円 |
3. | 532,500円 |
4. | 778,500円 |
正解:3
支出のうち、借入金の元本返済額は必要経費となりませんが、これ以外は全て必要経費となります。
よって、不動産所得の額=1,260,000円-(230,000円+18,000円+63,000円+7,000円+125,000円+38,500円+246,000円)=532,500円となります。
よって、不動産所得の額=1,260,000円-(230,000円+18,000円+63,000円+7,000円+125,000円+38,500円+246,000円)=532,500円となります。
【問9】
浜松さんは、居住している自宅マンションを売却する予定である。売却に係る状況が下記<資料>のとおりである場合、所得税に関する次の記述の空欄(ア)、(イ)にあてはまる数値または語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については一切考慮しないものとする。
<資料>
取得日:2019年2月5日
売却予定日:2024年2月9日
取得費:4,800万円
譲渡価額:8,300万円
譲渡費用:290万円
取得日:2019年2月5日
売却予定日:2024年2月9日
取得費:4,800万円
譲渡価額:8,300万円
譲渡費用:290万円
※ | 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例の適用を受けるものとする。 |
浜松さんがこのマンションを売却した場合の特別控除後の譲渡所得の金額は( ア )万円となり、課税( イ )譲渡所得として扱われる。
1. | (ア)210 (イ)短期 |
2. | (ア)500 (イ)短期 |
3. | (ア)210 (イ)長期 |
4. | (ア)500 (イ)長期 |
正解:1
(ア) | 譲渡所得の額=8,300万円-4,800万円-290万円-3,000万円=210万円です。 |
(イ) | 不動産の譲渡に係る譲渡所得は、売却日が属する年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるか否かで、長期と短期に区別されます。 本問では、2019年2月5日から2024年1月1日までの期間が5年以下であるため、課税短期譲渡所得として扱われます。 |
【問10】
下記<資料>は、横川さんが購入を検討している中古マンションのインターネット上の広告(抜粋)である。この広告の内容等に関する次の(ア)~(エ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。
<資料>
(ア) | この物件の出入り口から××線△△駅までの道路距離は、720m超800m以下である。 |
(イ) | この物件の専有面積として記載されている面積は、登記簿上の面積と同じである。 |
(ウ) | この物件は専有部分と共用部分により構成されるが、バルコニーは共用部分に当たる。 |
(エ) | この物件を購入する場合、売主である宅地建物取引業者に仲介手数料を支払う必要がない。 |
正解:×、×、○、○
(ア) | 不動産広告における「徒歩1分」は、「0~80m」を意味しますから、徒歩9分は、640m~720mを意味します。 |
(イ) | マンションの面積は、不動産広告には壁芯面積で表示され、登記簿上は内法面積で表示されます。 |
(ウ) | バルコニーは共用部分として扱われます。 |
(エ) | 取引形態が「売主」となっている(売主である不動産会社が直接取引を行う取引形態であり、仲介業者を挟まない)ため、この物件を購入する場合、仲介手数料はかかりません。 なお、「代理」となっている場合も買主には仲介手数料はかかりませんが、「媒介」となっている場合には仲介手数料がかかります。 |
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