お金の寺子屋

FP2級実技(FP協会)解説-2023年5月・問11~21

【問11】
自動車損害賠償責任保険に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、加害車両が複数の場合については考慮しないものとする。

1. 原動機付自転車を除くすべての自動車に加入が義務付けられている。
2. 交通事故の被害者が保険会社に保険金を直接請求することができる。
3. 死亡による損害に対する保険金の支払限度額は、被害者1人につき3,000万円である。
4. 被保険者が被保険自動車を運転中に、ハンドル操作を誤って路上で遊んでいた自分の子にケガをさせた場合、補償の対象となる。
正解:
1. 原動機付自転車も、自賠責保険への加入が義務付けられています。
2. 正しい記述です。
3. 正しい記述です。
4. 正しい記述です。自賠責保険での補償対象は、車の運転者(加害者)と運行供用者以外の人ですから、運行供用者(=車の所有者など)でない家族も補償の対象とされています。
【問12】
馬場和彰さん(51歳)が加入の提案を受けた生命保険の保障内容は下記<資料>のとおりである。この生命保険に加入した場合、次の記述の空欄(ア)~(ウ)にあてはまる数値を解答欄に記入しなさい。なお、各々の記述はそれぞれ独立した問題であり、相互に影響を与えないものとする。

<資料/生命保険提案書>

馬場さんが、交通事故により事故当日から継続して9日間入院し、その間に約款に定められた所定の手術(公的医療保険制度の給付対象、給付倍率20倍)を受けたが死亡した場合、保険会社から支払われる給付金の合計は( ア )万円である。
馬場さんが急性心筋梗塞で継続して31日間入院し、その間に約款所定の手術(公的医療保険制度の給付対象、給付倍率10倍)と公的医療保険制度における先進医療に該当する治療(技術料5万円)を受け、検査等のため退院後3ヵ月間で10日間通院して治癒した場合、保険会社から支払われる給付金の合計は( イ )万円である。なお、「5疾病で所定の入院をしたとき」、「公的医療保険制度における所定の先進医療を受けたとき」に該当するものとする。
馬場さんが初めてがん(悪性新生物)と診断され、治療のため継続して22日間入院し、その間に約款に定められた所定の手術(公的医療保険制度の給付対象、給付倍率40倍)を受けた後に死亡した場合、保険会社から支払われる給付金の合計は( ウ )万円である。なお、「5疾病で所定の入院をしたとき」、「初めて悪性新生物と診断確定されたとき」に該当するものとし、放射線治療は受けていないものとする。
正解:29、152、262
(ア) 疾病入院給付金10,000円×9+手術給付金10,000円×20=29万円です。
(イ) 疾病入院給付金10,000円×31+手術給付金10,000円×10+就業不能給付金100万円+通院給付金6,000円×10+先進医療給付金5万円=152万円です。
(ウ) 疾病入院給付金10,000円×22+手術給付金10,000円×40+就業不能給付金100万円+がん診断給付金100万円=262万円です。
【問13】
天野三郎さんが契約している生命保険(下記<資料>参照)に関する次の記述の空欄(ア)~(エ)にあてはまる語句を語群の中から選び、その番号のみを解答欄に記入しなさい。なお、同じ番号を何度選んでもよいこととする。また、三郎さんの家族構成は以下のとおりであり、課税対象となる保険金はいずれも基礎控除額を超えているものとする。

<三郎さんの家族構成>
[天野 三郎(本人)]
56歳・会社員(正社員)

[天野 紀子(妻)]
52歳・パートタイマー

[天野 晴彦(長男)]
17歳・高校生

[天野 美鈴(長女)]
13歳・中学生

[天野 雄太(二男)]
8歳・小学生

<資料:三郎さんが契約している生命保険契約の一覧>
[特定疾病保障保険A]
保険契約者(保険料負担者):三郎さん
被保険者:三郎さん
死亡保険金受取人:紀子さん
満期保険金受取人:-

[がん保険B]
保険契約者(保険料負担者):三郎さん
被保険者:紀子さん
死亡保険金受取人:三郎さん
満期保険金受取人:-

[養老保険C]
保険契約者(保険料負担者):三郎さん
被保険者:三郎さん
死亡保険金受取人:紀子さん
満期保険金受取人:晴彦さん

養老保険Cの保険期間は15年である。
現時点で三郎さんが死亡した場合、みなし相続財産として相続税の課税対象となる死亡保険金に係る非課税限度額は( ア )である。
特定疾病保障保険Aから三郎さんが受け取る特定疾病保険金は( イ )である。
がん保険Bから三郎さんが受け取る死亡保険金は( ウ )である。
養老保険Cから晴彦さんが受け取る満期保険金は( エ )である。
<語群>
1.贈与税の課税対象 2.相続税の課税対象 
3.非課税 
4.所得税・住民税の課税対象 
5.2,000万円 6.2,400万円 

7.2,500万円 8.5,400万円
正解:5、3、4、1
(ア) 死亡保険金の非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」の式で計算されます。
よって、死亡保険金の非課税限度額=500万円×4=2,000万円です。
(イ) 個人が受け取った、特定疾病保険金などの身体の疾病やケガを原因として支払われる保険金や給付金は、非課税です。
(ウ) 契約者(=保険料負担者)と保険金受取人が同一の個人である保険契約から支払われた死亡保険金は、所得税・住民税の課税対象となります。
(エ) 契約者と満期保険金受取人が異なる個人である保険契約から支払われた満期保険金は、贈与税の課税対象となります。
【問14】
株式会社QSの代表取締役の川久保さんが任期満了で退任した場合、同社の役員退職慰労金規程に基づき、川久保さんが受け取ることができる役員退職慰労金の金額を計算しなさい。なお、解答は以下の<前提条件>および<資料>に基づくものとし、記載のない事項については一切考慮しないものとする。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと。

<前提条件>
入社時年齢:45歳
退任時年齢:70歳(役員在任年数25年間)
退任時の最終報酬月額:80万円
入社から退任までの役位は継続して代表取締役
<資料:株式会社QSの役員退職慰労金規程>
正解:6,000(万円)
<資料>に、役員退職慰労金=最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率(役位別係数)とあります。
よって、役員退職慰労金の額は、80万円×25×3.0=6,000万円となります。
【問15】
個人事業主で青色申告者である志田さんの2022年分の所得等が下記<資料>のとおりである場合、志田さんが2022年分の所得税の確定申告を行う際に、事業所得と損益通算できる損失に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、▲が付された所得の金額は、その所得に損失が発生していることを意味するものとする。

所得の種類 所得金額 備考
事業所得 660万円 喫茶店経営に係る所得で、青色申告特別控除65万円控除後の金額
不動産所得 ▲80万円 必要経費:680万円
必要経費の中には、土地の取得に要した借入金の利子の額60万円が含まれている。
譲渡所得 ▲60万円 上場株式の売却に係る損失
雑所得 ▲6万円 執筆活動に係る損失
1. 不動産所得▲80万円と譲渡所得▲60万円が控除できる。
2. 不動産所得▲80万円と雑所得▲6万円が控除できる。
3. 不動産所得▲20万円と譲渡所得▲60万円が控除できる。
4. 不動産所得▲20万円が控除できる。
正解:
不動産所得の計算上生じた損失は、土地取得のための借入金の額を除いた額が損益通算の対象となりますから、80万円の赤字のうち、80万円-60万円=20万円が損益通算の対象となります。
また、上場株式の譲渡に係る損失や、雑所得の損失は、損益通算の対象外です。

【問16】
会社員の大津さんは、妻および長男との3人暮らしである。大津さんが2022年中に新築住宅を購入し、同年中に居住を開始した場合等の住宅借入金等特別控除(以下「住宅ローン控除」という)に関する次の(ア)~(エ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。なお、大津さんは、年末調整および住宅ローン控除の適用を受けるための要件をすべて満たしているものとする。

(ア) 2022年分の住宅ローン控除可能額が所得税から控除しきれない場合は、その差額を翌年度の住民税から控除することができるが、その場合、市区町村への住民税の申告が必要である。
(イ) 大津さんが所得税の住宅ローン控除の適用を受ける場合、2022年分は確定申告をする必要があるが、2023年分以降は勤務先における年末調整により適用を受けることができる。
(ウ) 一般的に、住宅ローン控除は、その建物の床面積の内訳が居住用40㎡、店舗部分30㎡の合計70㎡の場合は適用を受けることができない。
(エ) 将来、大津さんが住宅ローンの繰上げ返済を行った結果、すでに返済が完了した期間と繰上げ返済後の返済期間の合計が8年となった場合、繰上げ返済後は住宅ローン控除の適用を受けることができなくなる。
正解:×、○、×、○
(ア) 住民税の計算において住宅ローン控除を受ける場合、確定申告は不要です。
(イ) 対象外です。住宅ローン控除を受けるためには、最初の年は必ず確定申告をする必要がありますが、2年目以降は年末調整により適用を受けることができます。
(ウ) 住宅ローン控除の適用を受けるための床面積の要件は、50㎡(合計所得金額が1,000万円以下である場合は40㎡)以上であり、その2分の1以上が専ら居住の用に供するものであることです。よって、問題文の条件は、床面積要件を満たします。
(エ) 正しい記述です。繰り下げ返済により総返済期間が10年を下回った場合、その年以降住宅ローン控除を受けることができなくなります。
【問17】
会社員の香川さんが2022年中に支払った医療費等が下記<資料>のとおりである場合、香川さんの2022年分の所得税の確定申告における医療費控除の金額(最大額)として、正しいものはどれか。なお、香川さんの2022年中の所得は、給与所得700万円のみであるものとし、香川さんは妻および中学生の長女と生計を一にしている。また、セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)については考慮せず、保険金等により補てんされる金額はないものとする。

<資料>

1.  75,000円
2.  88,200円
3.  93,700円
4. 228,200円
正解:

合計所得金額が200万円以上である場合、 医療費控除の額は、「正味負担した医療費-10万円」の式によって計算されます。

美容のための施術は、医療費控除の対象外です。
健康診断により重大な疾病が発見されたため、引き続き入院して治療を行った場合、健康診断の費用は医療費控除の対象となります。
治療のための費用は、医療費控除の対象となります。
治療を受けるためにやむを得ず支出したタクシー代は、医療費控除の対象となります。
通院のために支払った、自家用自動車のガソリン代や駐車場代金は、医療費控除の対象外です。

よって、医療費控除の額=(11,000円+150,000円+25,000円+2,200円)-10万円=88,200円となります。

【問18】
横川さん(40歳)は、父(72歳)と叔父(70歳)から下記<資料>の贈与を受けた。横川さんの2022年分の贈与税額を計算しなさい。なお、父からの贈与については、2021年から相続時精算課税制度の適用を受けている。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと。

<資料>
[2021年中の贈与]
父から贈与を受けた金銭の額:1,500万円
[2022年中の贈与]
父から贈与を受けた金銭の額:1,500万円
叔父から贈与を受けた金銭の額:1,000万円
<贈与税の速算表>
[18歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産の場合]
基礎控除後の
課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超
400万円以下
15% 10万円
400万円超
600万円以下
20% 30万円
600万円超
1,000万円以下
30% 90万円
1,000万円超
1,500万円以下
40% 190万円
1,500万円超
3,000万円以下
45% 265万円
3,000万円超
4,500万円以下
50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
[上記以外の場合]
基礎控除後の
課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超
300万円以下
15% 10万円
300万円超
400万円以下
20% 25万円
400万円超
600万円以下
30% 65万円
600万円超
1,000万円以下
40% 125万円
1,000万円超
1,500万円以下
45% 175万円
1,500万円超
3,000万円以下
50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
正解:331(万円)
2021年に使える相続時精算課税制度の特別控除額は、2,500万円-1,500万円=1,000万円です。
よって、父からの贈与に係る贈与税額は、(1,500万円-1,000万円)×20%=100万円です。
また、叔父からの贈与に係る贈与税額は、(1,000万円-110万円)×40%-125万円=231万円です。
よって、2021年分の贈与税額は、100万円+231万円=331万円となります。
【問19】
下記<親族関係図>の場合において、民法の規定に基づく法定相続分および遺留分に関する次の記述の空欄(ア)~(ウ)に入る適切な語句または数値を語群の中から選び、その番号のみを解答欄に記入しなさい。なお、同じ番号を何度選んでもよいこととする。

<親族関係図>
[各人の法定相続分および遺留分]
被相続人の配偶者の法定相続分は( ア )
被相続人の甥の法定相続分は( イ )
被相続人の弟の遺留分は( ウ )
<語句群>
1.なし 2.1/2 3.1/3 
4.1/4 5.1/6 6.1/8 
7.1/12 
8.1/16 9.2/3 10.3/4
正解:10、8、1
(ア) 相続人の組み合わせが配偶者相続人と第3順位の血族相続人である場合、配偶者相続人の法定相続分は3/4になります。
(イ) 血族相続人全体の法定相続分は1/4です。また、代襲相続が起こる場合、代襲相続人の相続分は、被代襲者の本来の相続分を代襲相続人の数で按分したものとなります。
よって、甥の法定相続分は、(1/4×1/2)×1/2=1/16となります。
(ウ) 被相続人の兄弟姉妹に遺留分はありません。
【問20】
下記<資料>の土地に係る路線価方式による普通借地権の相続税評価額の計算式として、正しいものはどれか。

<資料>

注1 奥行価格補正率(20m以上24m未満) 1.00
注2 借地権割合 60%
注3 借家権割合 30%
注4 その他の記載のない条件は一切考慮しないこと。
1. 200千円×1.00×300㎡
2. 200千円×1.00×300㎡×60%
3. 200千円×1.00×300㎡×(1-60%)
4. 200千円×1.00×300㎡×(1-60%×30%×100%)
正解:
自用地の相続税評価額(自用地評価額)=路線価×各種補正率×地積です。
また、借地権の相続税評価額は、「自用地評価額×借地権割合」の式で計算します。
【問21】
自筆証書遺言と公正証書遺言に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1. 自筆証書遺言を作成する際には証人が不要であるが、公正証書遺言を作成する際には証人が2人以上必要である。
2. 家庭裁判所の検認が不要になるのは、遺言書が公正証書遺言である場合に限られる。
3. 自筆証書遺言を作成する場合において、財産目録を添付するときは、その目録も自書しなければ無効となる。
4. 公正証書遺言は公証役場に原本が保管されるが、自筆証書遺言についての保管制度は存在しない。
正解:
1. 正しい記述です。
2. 家庭裁判所の検認が不要になるのは、遺言の原本が保管されており、改ざんなどの恐れが無い場合です。つまり、遺言書が公正証書遺言である(原本が公証役場にある)場合と、自筆証書遺言保管制度を利用した自筆証書遺言である(原本が法務局にある)場合です。
3. 自筆証書遺言は、財産目録のみ自書以外の方法で作成することができます。
4. 自筆証書遺言には、自筆証書遺言保管制度があります。

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