FP2級実技(FP協会)解説-2023年5月・問1~10
【問1】
ファイナンシャル・プランナー(以下「FP」という)は、ファイナンシャル・プランニング業務を行ううえで関連業法等を順守することが重要である。FPの行為に関する次の(ア)~(エ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。
(ア) | 税理士資格を有していないFPが、相続対策を検討している顧客に対し、有料の相談業務において、仮定の事例に基づいて、相続税額を計算する手順について説明を行った。 |
(イ) | 社会保険労務士資格を有していないFPが、顧問先企業の雇用保険に関する申請書を作成して手続きの代行を行い、報酬を受け取った。 |
(ウ) | 生命保険募集人・保険仲立人・金融サービス仲介業者の登録を受けていないFPが、生命保険契約を検討している顧客のライフプランに基づき、具体的な必要保障額を試算した。 |
(エ) | 弁護士資格を有していないFP(遺言者や公証人と利害関係はない成年者)が、顧客から依頼されて公正証書遺言の証人となり、顧客から適正な報酬を受け取った。 |
正解:○、×、○、○
(ア) | 仮定の事例に基づく税額の計算は、誰でもすることができます。 |
(イ) | 社会保険に関する申請書の作成や申請手続きの代行は、社会保険労務士の資格を持っている人しかすることができません。 |
(ウ) | 必要保障額の計算は誰でもすることができます。 |
(エ) | 公正証書遺言の承認になるために有しておくべき特別な資格はありません。 |
【問2】
「消費者契約法」に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 事業者が消費者に重要事項について事実と異なることを告げ、消費者がそれを事実と信じて締結した契約は、取り消すことができる。 |
2. | 消費者の判断力が著しく低下し、過大な不安を抱いている状況に付け込んで、事業者の不当性の高い行為により消費者が困惑した状況で契約を締結した場合、当該契約は取り消すことができる。 |
3. | 消費者契約法の保護の対象となる消費者とは、個人(事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)とされており、法人は対象外とされている。 |
4. | 消費者が、商品を買わずに帰りたいと言っても帰らせてもらえずに困惑して商品購入の契約をした場合で、購入場所が事業者の店舗であるときは、当該契約は取り消すことができない。 |
正解:4
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 困惑して消費者が契約した場合、消費者契約法に基づき、消費者は当該契約を取り消すことができます。 ちなみに、契約場所が事業者の店舗である場合、クーリングオフをすることはできません。 |
【問3】
下記<資料>は、外貨定期預金の契約締結前交付書面の一部である。この契約締結前交付書面に関する次の記述の空欄(ア)~(エ)にあてはまる語句として、最も不適切なものはどれか。なお、<資料>に記載のない事項は一切考慮しないこととする。
<資料>
1. | 空欄(ア)にあてはまる語句は、「対象外」である。 |
2. | 空欄(イ)にあてはまる語句は、「申告分離課税」である。 |
3. | 空欄(ウ)にあてはまる語句は、「1,410,000円」である。 |
4. | 空欄(エ)にあてはまる語句は、「対象外」である。 |
正解:2
1. | 外貨定期預金は、預金保険制度の対象外です。 |
2. | 外貨預金の利子は利子所得となり、20.315%が源泉分離課税されます。 |
3. | 為替相場(仲値)が1米ドル=140円、預入時の為替手数料が1米ドルあたり1円であれば、TTSは1米ドル=141円となり、1万米ドルを預け入れた際の円ベースの金額は、141万円となります。 |
4. | 外貨定期預金は、上場している有価証券ではないため、少額投資非課税制度(NISA)の対象外です。 |
【問4】
下記<資料>に関する次の記述の空欄(ア)、(イ)にあてはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
<資料> | ||
PA株式会社 | PB株式会社 | |
株価 | 7,220円 | 13,470円 |
1株当たり当期純利益 | 274円 | 685円 |
1株当たり自己資本 | 3,240円 | 9,873円 |
1株当たり年間配当金 | 90円 | 145円 |
・ | PA株式会社とPB株式会社の株価をPER(株価収益率)で比較した場合、( ア )株式会社の方が割安といえる。 |
・ | PA株式会社とPB株式会社の資本効率性をROE(自己資本利益率)で比較した場合、( イ )株式会社の方が効率的に利益を上げているといえる。 |
1. | (ア)PA (イ)PA |
2. | (ア)PA (イ)PB |
3. | (ア)PB (イ)PA |
4. | (ア)PB (イ)PB |
正解:3
(ア) | PER=株価÷1株当たり当期純利益で、この値が低いほど、割安であると判断されます。 PA株式会社のPER=7,220円÷274円=26.350…倍 PB株式会社のPER=13,470円÷685円=19.664…倍 より、PB株式会社の方が割安であると言えます。 |
(イ) | ROE=当期純利益÷自己資本で、この値が高いほど、効率的に利益を上げていると言えます。 PA株式会社のROE=274円÷3,240円=0.08456≒8.46% PB株式会社のROE=685円÷9,873円=0.06938≒6.94% より、PA株式会社の方が効率的に利益を上げていると言えます。 |
【問5】
下記<資料>の債券を取得日から5年後に売却した場合における所有期間利回り(単利・年率)を計算しなさい。なお、手数料や税金等については考慮しないものとする。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと(解答用紙に記載されているマス目に数値を記入すること)。
<資料> | ||
表面利率 | : | 年0.60% |
額面 | : | 100万円 |
購入価格 | : | 額面100円につき100.00円 |
売却価格 | : | 額面100円につき101.75円 |
所有期間 | : | 5年 |
正解:0.95
所有期間利回り(%)={表面利率+(売却価格-購入価格)÷保有年数}÷購入価格×100です。
よって、{0.6+(101.75-100)÷5}÷100×100=0.95%となります。
よって、{0.6+(101.75-100)÷5}÷100×100=0.95%となります。
【問6】
金投資に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 金は、国際的には1トロイオンス当たりの米ドル建て価格で取引される。 |
2. | 金価格の変動要因には、需給関係、金融動向、政治情勢などが挙げられ、円安(米ドル/円相場)は国内金価格の下落要因になる。 |
3. | 毎月一定額を金融機関口座等から引き落として金現物を買い付ける定額積立の場合、ドルコスト平均法の効果が期待できる。 |
4. | 個人が金現物を売却した場合の利益は、原則として譲渡所得として総合課税の対象となる。 |
正解:2
1. | 正しい記述です。 |
2. | 金は、国際的には米ドル建てで取引されていますから、為替相場が米ドルに対して円安に振れることは、金価格の上昇要因となります。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問7】
建築基準法に従い、下記<資料>の土地に建築物を建てる場合の延べ面積(床面積の合計)の最高限度を計算しなさい。なお、記載のない条件は一切考慮しないこととする。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと。
<資料>
正解:288
容積率の上限は、前面道路の幅員が12m以下である場合、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率(前面道路の幅員×法定乗数)の上限のいずれか低い値になります。
なお、敷地が複数の道路に面している場合、最も幅員が広い道路が前面道路となります。
よって、容積率の上限は、6×4/10=2.4<指定容積率30/10より、2.4(=240%)となりますから、延べ床面積の最高限度は、120㎡×2.4=288㎡となります。
なお、敷地が複数の道路に面している場合、最も幅員が広い道路が前面道路となります。
よって、容積率の上限は、6×4/10=2.4<指定容積率30/10より、2.4(=240%)となりますから、延べ床面積の最高限度は、120㎡×2.4=288㎡となります。
【問8】
柴田さんは、保有しているマンションを賃貸している。2022年分の賃貸マンションに係る収入および支出等が下記<資料>のとおりである場合、2022年分の所得税に係る不動産所得の金額を計算しなさい。なお、<資料>以外の収入および支出等はないものとし、青色申告特別控除は考慮しないこととする。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと。
<資料:2022年分の賃貸マンションに係る収入および支出等>
[賃料収入(総収入金額)]
180万円
[支出]
銀行へのローン返済金額 | : | 140万円(元金80万円、利息60万円) |
管理費等 | : | 15万円 |
管理業務委託費 | : | 9万円 |
火災保険料 | : | 1万円 |
固定資産税 | : | 13万円 |
修繕費 | : | 6万円 |
[減価償却費]
40万円
※ | 支出等のうち必要経費となるものは、すべて2022年分の所得に係る必要経費に該当するものとする。 |
正解:36
不動産所得=総収入金額-必要経費です。
<資料>の支出のうち、借入金の元本返済額以外は全て必要経費になりますから、必要経費の額は、60万円+15万円+9万円+1万円+13万円+6万円+40万円=144万円です。
よって、不動産所得の額は、180万円-144万円=36万円となります。
<資料>の支出のうち、借入金の元本返済額以外は全て必要経費になりますから、必要経費の額は、60万円+15万円+9万円+1万円+13万円+6万円+40万円=144万円です。
よって、不動産所得の額は、180万円-144万円=36万円となります。
【問9】
山岸さんは、7年前に相続により取得し、その後継続して居住している自宅の土地および建物の売却を検討している。売却に係る状況が下記<資料>のとおりである場合、所得税における課税長期譲渡所得の金額として、正しいものはどれか。なお、<資料>に記載のない事項は一切考慮しないこととする。
<資料> | |
・ | 取得費:土地および建物とも不明であるため概算取得費とする。 |
・ | 譲渡価額(合計):5,000万円 |
・ | 譲渡費用(合計):200万円 |
※ | 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例の適用を受けるものとする。 |
※ | 所得控除は考慮しないものとする。 |
1. | 1,740万円 |
2. | 1,550万円 |
3. | 1,480万円 |
4. | 1,300万円 |
正解:2
概算取得費は、売却価格の5%相当額ですから、取得費=5,000万円×5%=250万円となります。
よって、譲渡所得の額=5,000万円-250万円-200万円-3,000万円=1,550万円となります。
よって、譲渡所得の額=5,000万円-250万円-200万円-3,000万円=1,550万円となります。
【問10】
下記<資料>は、近藤さんが購入を検討している中古マンションのインターネット上の広告(抜粋)である。この広告の内容等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
<資料>
1. | この広告の物件は専有部分と共用部分により構成されるが、バルコニーは専有部分に当たる。 |
2. | この広告の物件の専有面積として記載されている壁芯面積は、登記簿上の内法面積より大きい。 |
3. | この広告の物件を購入した場合、近藤さんは管理組合の構成員になるかどうかを選択できる。 |
4. | この広告の物件を購入した場合、購入前になされた集会の決議については、近藤さんにその効力は及ばない。 |
正解:2
1. | バルコニーは専有部分に含まれません。 |
2. | 正しい記述です。マンションの記載されている面積は壁芯面積であり、登記簿面積である内法面積よりも大きいです。 |
3. | マンションの購入者(区分所有者)は、強制的に管理組合の構成員となります。 |
4. | 集会の決議の効力は、集会後にマンションを購入した人(特定承継人)にも及びます。 |
スポンサーリンク
スポンサーリンク
ホーム | 進む> |