お金の寺子屋

FP2級実技(個人)解説-2024年1月・問1~9

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(43歳)は、大学卒業後に14年勤めた会社を2017年3月末日に退職し、個人事業主として独立した。現在、事業は軌道に乗り、収入は安定している。
Aさんは、最近、公的年金制度について理解したうえで、老後の収入を増やすことができる各種制度を利用したいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんとその家族に関する資料>

[Aさん(1980年7月18日生まれ・43歳・個人事業主)]
公的年金加入歴 下図のとおり(60歳までの見込みを含む)
なお、20歳から22歳の大学生であった期間(33月)は国民年金の学生納付特例制度の適用を受けており、その期間の保険料については追納していない。

[妻Bさん(1982年12月8日生まれ・41歳・会社員)]

公的年金加入歴 20歳から22歳の大学生であった期間(28月)は国民年金の第1号被保険者として保険料を納付し、22歳から現在に至るまでの期間は厚生年金保険に加入している。また、65歳になるまでの間、厚生年金保険の被保険者として勤務する見込みである。
妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
Aさんが、原則として65歳から受給することができる老齢基礎年金および老齢厚生年金の年金額(2023年度価額)を計算した次の〈計算の手順〉の空欄①~④に入る最も適切な数値を解答用紙に記入しなさい。なお、計算にあたっては、《設例》の〈Aさんとその家族に関する資料〉および下記の〈資料〉に基づくこと。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

<計算の手順>
1.老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入)
( ① )円
2.老齢厚生年金の年金額
(1) 報酬比例部分の額(円未満四捨五入)
( ② )円
(2) 経過的加算額(円未満四捨五入)
( ③ )円
(3) 基本年金額(上記「(1)+(2)」の額)
□□□円
(4) 加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること)
(5) 老齢厚生年金の年金額
( ④ )円
<資料>
正解:740,344、276,242、126、276,348
老齢基礎年金の計算上、20歳以上60歳未満の期間における、国民年金保険料納付期間や厚生年金保険の被保険者期間などは、年金額に反映されますが、追納していない学生納付特例の適用を受けた期間は年金額に反映されません。
よって、老齢基礎年金の額=795,000円×(168+279)/480=740,343.75円≒740,344円となります。
300,000円×5.481/1,000×168=276,242.4円≒276,242円です。
1,657円×168-795,000円×168/480=126円です。
厚生年金保険の被保険者期間が20年(240月)に満たないため、加給年金は支給されません。
よって、老齢厚生年金の年金額は、276,242円+126円=276,368円となります。
【問2】
Mさんは、Aさんに対して、公的年金制度等の各種取扱いについて説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんは、国民年金の付加保険料を納付することができます。仮に、Aさんが月額400円の付加保険料を180月納付し、65歳から老齢基礎年金を受け取る場合、老齢基礎年金の額に付加年金として年額36,000円が上乗せされます」
「老齢基礎年金および老齢厚生年金は、繰下げ支給の申出により、繰り下げた月数に応じて増額された年金を受給することができます。Aさんの場合、65歳1カ月以降に繰下げ支給の申出をすることができ、その増額率は、繰り下げた月数に応じて最小で0.7%、最大で84.0%となります」
「小規模企業共済制度は、個人事業主が廃業等した場合に必要となる資金を準備しておくための制度です。支払った掛金が所得控除の対象になることはメリットですが、契約者本人の都合で任意に解約ができないことに注意が必要です」
正解:○、×、×
正しい記述です。
老齢年金の繰下げ支給の申出ができるのは、66歳0ヵ月以降です。
小規模企業共済は、任意解約が可能です。
【問3】
Mさんは、Aさんに対して、国民年金基金について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

「国民年金基金は、老齢基礎年金に上乗せする年金を支給する任意加入の年金制度です。加入は口数制となっており、1口目は、保証期間のある( ① )年金A型と保証期間のない( ① )年金B型のいずれかの給付の型を選択します。2口目以降は、2種類の( ① )年金と5種類の□□□年金のなかから選択することができます。掛金の額は、加入者が選択した給付の型や口数、加入時の年齢等で決まり、掛金の拠出限度額は月額( ② )円です。なお、国民年金基金に加入している間は、国民年金の付加保険料を納付することができません。
国民年金基金の給付には、老齢年金のほかに遺族一時金があります。遺族一時金は、加入員が年金を受け取る前に死亡した場合などに、その遺族に対して支払われます。遺族が受け取った遺族一時金は、( ③ )」
<語句群>
イ.12,000 ロ.23,000 ハ.30,000 
ニ.68,000 ホ.70,000 
ヘ.確定 ト.有期 
チ.終身 
リ.所得税の課税対象となります 
ヌ.相続税の課税対象となります 
ル.所得税と相続税のいずれの課税対象にもなりません
正解:チ、ニ、ル
国民年金基金の1口目は、必ず終身年金を選択しなくてはなりません。
国民年金基金の掛金の拠出限度額は、月額68,000円です。
国民年金基金の遺族一時金は、非課税です。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(30歳)は、将来に向けた資産形成のため、株式や債券への投資による資産運用を考えている。株式については同業種の上場会社であるX社とY社の株式に、債券については上場会社であるZ社の社債に興味を持ったが、実際に投資する前に、投資指標や売買等に係る税金について理解しておきたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<X社およびY社に関する資料>
・財務データ(単位:百万円)

純資産の金額と自己資本の金額は同じである。
・株式に関する情報
X社 株価1,500円
発行済株式数1億8,000万株
1株当たり年間配当金35円
Y社 株価2,400円
発行済株式数1億株
1株当たり年間配当金70円
<Z社債に関する資料>

・購入価格 99.30円(額面100円当たり)
・表面利率 0.55%
・利払日 年2回
・残存期間 年4回
・償還価格 100円(額面100円当たり)
Z社債は、特定公社債に該当する。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
Mさんは、Aさんに対して、《設例》のデータに基づいて、株式の投資指標について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「X社およびY社のROEはいずれも8%を上回っています。一般に、ROEが高い会社ほど、自己資本の効率的な活用がなされていると判断することができます」
「X社株式およびY社株式のPBRはいずれも1倍を下回っています。一般に、PBRが低いほど株価は割安と判断されますが、PBRが1倍を大きく下回る株式は、その企業の資本収益性や成長性に対する投資家の評価が低い可能性があります」
「配当性向は、X社のほうがY社よりも高くなっています。一般に、配当性向が高いほど、株主への利益還元の度合いが高いと考えることができます」
正解:×、×、○
ROE=当期純利益÷自己資本です。
よって、X社のROE=17,000百万円÷250,000百万円=0.068=6.8%、Y社のROE=24,000百万円÷290,000百万円=0.08275…≒8.28%となります。
なお、後半部分の記述は正しいです。
PBR=株価÷1株当たり純資産です。
よって、X社のPBR=1,500円÷(250,000百万円÷1億8,000万)=1.08倍、Y社のPBR=2,400円÷(290,000百万円÷1億)=0.8275…≒0.83倍となります。
なお、後半部分の記述は正しいです。
配当性向(%)=1株当たり年間配当金÷1株当たり当期純利益×100です。
よって、X社の配当性向=6,300百万円÷17,000百万円×100=37.058…%≒37.06%、Y社の配当性向=7,000百万円÷24,000百万円×100=29.166…≒29.17%となります。
【問5】
Mさんは、Aさんに対して、株式および債券の売買等に係る税金について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが特定口座(源泉徴収あり)においてX社株式を株価1,500円で500株購入し、購入した年に株価1,700円で全株売却する場合、その他の取引や手数料等を考慮しなければ、売却益となる10万円の20.315%相当額が源泉徴収等されます」
「AさんがX社株式やY社株式を購入して配当金の支払を受けた場合、その配当金について、申告分離課税を選択して所得税の確定申告をすることにより、配当控除の適用を受けることができます」
「Z社債の利子は、源泉分離課税の対象となり、その支払を受ける際に当該利子額の20.315%相当額が源泉徴収等されることで納税が完結するため、X社株式やY社株式などの上場株式の譲渡損失の金額と損益通算することはできません」
正解:○、×、×
正しい記述です。売却益=(1,700円-1,500円)/株×500株=100,000円です。上場株式に係る譲渡所得は、申告分離課税の対象となり、20.315%相当額の税金が源泉徴収されます。
配当控除を受けるためには、総合課税を選択しなくてはなりません。
特定公社債の利子は、利子所得として、申告分離課税の対象となります。
なお、その他の記述は正しいです。
【問6】
Z社債を《設例》の〈Z社債に関する資料〉に基づいて購入した場合において、次の①、②をそれぞれ求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。なお、〈答〉は、表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。また、税金等は考慮しないものとする。

Z社債を償還まで保有した場合の最終利回り(年率・単利)
Z社債を2年後に額面100円当たり99.90円で売却した場合の所有期間利回り(年率・単利)
正解:0.73、0.86
最終利回り(%)={0.55+(100-99.3)÷4}÷99.3×100=0.7301…%≒0.73%です。
所有期間利回り(%)={0.55+(99.9-99.3)÷2}÷99.3×100=0.8559…%≒0.86%です。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務する会社員のAさん(60歳)は、妻Bさん(58歳)および母Cさん(84歳)との3人暮らしである。Aさんは、2023年10月に定年を迎え、X社から退職金の支給を受けたが、同社の継続雇用制度を利用して、引き続き勤務している。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(60歳)]
会社員

[妻Bさん(58歳)]
パートタイマー。2023年中に給与収入90万円を得ている。

[母Cさん(84歳)]
2023年中の収入は、公的年金の老齢給付のみであり、その収入金額は60万円である

<Aさんの2023年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
900万円

給与所得の金額は、705万円である。

[上場株式の譲渡損失の金額]
80万円

2023年中に金融商品取引業者等を通じて譲渡したことにより生じた損失の金額であり、全額が特定口座(源泉徴収あり)内で生じている。

[確定拠出年金の老齢給付金の年金額]
6万円

2023年中に支払った掛金の額は、12万円である。

[個人年金保険契約に基づく年金収入]
90万円(必要経費は60万円)

[X社から支給を受けた退職金の額]
2,500万円

退職所得の金額は500万円であり、退職金の受給時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している。
妻Bさんおよび母Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
Aさんの2023年分の所得税の課税に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんは、退職金の受給時に『退職所得の受給に関する申告書』を提出しているため、退職金の額の20.42%相当額が源泉徴収されていますが、他の所得とあわせて確定申告をすることで所得税の還付を受けられる可能性があります」
「Aさんが、特定口座(源泉徴収あり)内で生じた上場株式の譲渡損失の金額について、翌年分以後の上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除するためには、当該損失の金額について確定申告をする必要があります」
「Aさんの給与収入の金額は850万円を超えているため、総所得金額の計算上、給与所得の金額から所定の算式により算出した所得金額調整控除額を控除します」
正解:×、○、×
退職所得の受給に関する申告書を提出した場合、正しい税額が源泉徴収されるため、原則として、確定申告は不要となります。
なお、問題文は、退職所得の受給に関する申告書を提出しなかった場合の記述です。
正しい記述です。
所得金額調整控除は、給与の収入金額が850万円を超える人が、本人が特別障害者に該当する者である、年齢23歳未満の扶養親族を有する者である、特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族を有する者である、その年分の給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額がある居住者でその合計額が10万円を超える者である、のうち、いずれかの要件を満たす場合に適用を受けることができます。
【問8】
Aさんの2023年分の所得金額について、次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。なお、〈答〉は万円単位とすること。

雑所得の金額
総所得金額
<資料>公的年金等控除額の速算表(一部抜粋)
収入金額(A) 公的年金等控除額
130万円以下 50万円
130万円超
410万円以下
A×25%+17.5万円
410万円超
770万円以下
A×15%+58.5万円
770万円超
1,000万円以下
A×5%+135.5万円
1,000万円超 185.5万円
65歳未満で、公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円超2,000万円以下の場合
正解:30、735
確定拠出年金の老齢給付金は、年金で受け取ると公的年金等の雑所得となりますが、公的年金等控除額以下のため、これに係る所得は0となります。
また、個人年金保険契約に基づく年金収入は、その他の雑所得となり、これに係る所得は、90万円-60万円=30万円となります。
給与所得705万円は全額総所得金額に算入されます。
上場株式に係る譲渡損失は、損益通算の対象外(給与所得・雑所得・退職所得とは損益通算できない)です。
①より、雑所得の額は30万円であり、全額総所得金額に算入されます。
退職所得は、申告分離課税の対象ですから、総所得金額には算入されません。
よって、総所得金額=705万円+30万円=735万円となります。
【問9】
Aさんの2023年分の所得税における所得控除に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが支払った確定拠出年金の掛金は、小規模企業共済等掛金控除の対象となります。Aさんが適用を受けることができる小規模企業共済等掛金控除の控除額は、( ① )万円です」
「Aさんは、妻Bさんについて配偶者控除の適用を受けることが( ② )」
「母Cさんは、老人扶養親族のうち同居老親等に該当します。Aさんが適用を受けることができる扶養控除の控除額は、( ③ )万円です」
「Aさんの合計所得金額は2,400万円以下であるため、基礎控除の控除額は( ④ )万円となります」
<語句群>
イ.4 ロ.6 ハ.12 ニ.38 
ホ.48 へ.58 ト.63 
チ.できます 
リ.できません
正解:ハ、リ、ヘ、ホ
小規模企業共済等掛金控除の対象となる支出は、全額小規模企業共済等掛金控除の対象となりますから、控除額は12万円です。
合計所得金額(申告分離課税の対象となる所得の額も含みます)が1,000万円を超える人は、配偶者控除の適用を受けることができません。
扶養控除の計算上、老人控除対象親族は、1人当たり58万円の控除の対象となります。
合計所得金額が2,400万円以下の人が適用を受けることができる基礎控除の額は、48万円です。

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