FP2級実技(個人)解説-2023年9月・問1~9
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(48歳)は、会社員の妻Bさん(49歳)および大学生の長女Cさん(19歳)との3人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務しており、継続雇用制度を利用して65歳まで働く予定である。
Aさんは、最近、公的年金制度について理解したいと考えており、また、確定拠出年金の個人型年金にも興味を持っている。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(1974年12月10日生まれ・48歳・会社員)] | |||
・ | 公的年金加入歴 | : | 下図のとおり(2023年4月までの期間) |
・ | 全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。 | ||
・ | X社が実施している確定給付企業年金の加入者である。 |
[妻Bさん(1974年3月20日生まれ・49歳・会社員)]
・ | 公的年金加入歴 | : | 20歳から22歳の大学生であった期間(25月)は国民年金の第1号被保険者として保険料を納付し、22歳から現在に至るまでの期間(329月)は厚生年金保険に加入している。また、65歳になるまでの間、厚生年金保険の被保険者として勤務する見込みである。 |
・ | 全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。 | ||
・ | 勤務先は確定拠出年金の企業型年金および他の企業年金を実施していない。 |
[長女Cさん(2003年11月15日生まれ・19歳・大学生)]
・ | Aさんが加入する全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。 |
※ | 妻Bさんおよび長女Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ | 家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
① | 老齢基礎年金の年金額 |
② | 老齢厚生年金の年金額 |
① | 老齢基礎年金の計算上、第1号被保険者として保険料を納付した期間以外に、厚生年金保険の被保険者であった期間等も、保険料納付済み期間として扱います。 よって、老齢基礎年金の額=795,000円×480/480=795,000円となります。 |
② | 報酬比例の額=250,000円×7.125/1,000×72+420,000円×5.481/1,000×440=1,141,138.8円≒1,141,139円。 経過的加算額=1,657円×480-795,000円×452/480=46,735円(被保険者期間の月数の上限は480月)。 配偶者が年上である場合、加給年金は支給されない。 よって、老齢厚生年金の額=1,141,139円+46,735円=1,187,874円となります。 |
Ⅰ | 「Aさんおよび妻Bさんは、老後の年金収入を増やす方法として、個人型年金に加入することができます。個人型年金は、加入者の指図により掛金を運用し、その運用結果に基づく給付を受け取る制度であり、拠出できる掛金の限度額は、Aさんの場合は年額144,000円、妻Bさんの場合は年額( ① )円です。加入者が拠出した掛金は、その全額を所得税の( ② )として総所得金額等から控除することができます」 |
Ⅱ | 「Aさんが60歳から個人型年金の老齢給付金を受給するためには、通算加入者等期間が( ③ )年以上なければなりません。なお、Aさんの通算加入者等期間が( ③ )年以上である場合、老齢給付金の受給開始時期を、60歳から( ④ )歳になるまでの間で選択することができます」 |
イ.5 ロ.10 ハ.20 ニ.75
ホ.80 ヘ.85 ト.240,000
チ.276,000
リ.816,000
ヌ.社会保険料控除
ル.小規模企業共済等掛金控除
ヲ.生命保険料控除
① | 企業型DCおよび企業年金が無い企業に勤務する第2号被保険者のiDeCoの掛金の拠出限度額は、年額276,000円です。 |
② | 個人が拠出した掛金は、全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除されます。 |
③ | iDeCoの老齢給付金を60歳から受け取るためには、通算加入者等期間が10年以上なくてはいけません。 |
④ | iDeCoの老齢給付金は、最も早いと60歳から、最も遅いと75歳から受給を開始することができます。 |
① | 「Aさんが希望すれば、66歳以後、老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をすることができます。仮に、Aさんが70歳で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、当該年金額の増額率は24%となります」 |
② | 「長女Cさんが、2023年11月以降の大学生である期間について国民年金の学生納付特例の適用を受ける場合、長女Cさん本人に係る所得要件はありますが、Aさんおよび妻Bさんに係る所得要件はありません」 |
③ | 「Aさんが確定拠出年金の個人型年金の加入後に死亡した場合において、個人別管理資産があるときは、Aさんの遺族は所定の手続により死亡一時金を受け取ることができます。Aさんの遺族が受け取る死亡一時金は、所得税と相続税のいずれの課税対象にもなりません」 |
① | 老齢年金を繰下げると、1月あたり0.7%増額されますから、70歳から受給を開始して60月繰下げると、増額率は、0.7%/月×60月=42%となります。 |
② | 正しい記述です。 |
③ | iDeCoの死亡一時金は、原則として、相続税の課税対象となります(死亡後3年以内に支給が確定した場合。3年を超えた場合は一時所得)。 |
会社員のAさん(30歳)は、将来に向けた資産形成のため、株式や投資信託に投資したいと考えているが、これまで投資経験がなく、株式や投資信託の銘柄を選ぶ際の判断材料や留意点について知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Mさんは、Aさんに対して、X社株式(東京証券取引所上場銘柄)およびY投資信託を例として、株式や投資信託に投資する際の留意点等について説明を行うことにした。
・株価:1,700円
・発行済株式数:5,000万株
・決算期:2023年11月30日(木)(次回の配当の権利確定日に該当する)
銘柄名:エマージング株式ファンド
投資対象地域/資産:海外/新興国株式
信託期間:無期限
基準価額:13,500円(1万口当たり)
決算日:年1回(11月15日)
購入時手数料:3.3%(税込)
運用管理費用(信託報酬):2.068%(税込)
信託財産留保額:0.3%
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
① | 81期におけるROE(自己資本は80期と81期の平均を用いる) |
② | 81期における配当利回り |
① | ROE=当期純利益÷自己資本=5,200百万円÷(79,000円+83,000円)=0.06419…≒6.42%です。 |
② | 1株あたり配当金=2,600百万円÷5,000万株=26億円÷0.5億円=52円です。 よって、配当利回り(%)=1株当たり年間配当金÷株価×100=52円÷1,700円×100=3.058…%≒3.06%です。 |
① | 「X社株式のPERは15倍を下回っています。一般に、PERが低い銘柄ほど株価は割安とされていますが、Ⅹ社株式に投資する際は、他の投資指標とあわせて同業他社の数値と比較するなど、多角的な視点で検討することが望まれます」 |
② | 「仮に、Aさんが特定口座(源泉徴収あり)において、Ⅹ社株式を株価1,700円で300株購入して同年中に株価1,750円で全株売却した場合、その他の取引や手数料等を考慮しなければ、売却益1万5,000円に対して20.315%相当額が源泉徴収等されます」 |
③ | 「上場株式の配当を受け取るためには、普通取引の場合、権利確定日の2営業日前までに株式を買い付け、権利確定日まで売却せずに保有する必要があります。仮に、Aさんが2023年11月28日(火)にⅩ社株式を普通取引により買い付け、翌営業日の29日(水)に売却した場合、Ⅹ社株式の次回の配当を受け取ることはできません」 |
① | 1株あたり当期純利益=5,200百万円÷5,000万株=52億円÷0.5億円=104です。 X社のPER=株価÷1株当たり当期純利益=1,700円÷104円=16.346…≒16.34倍です。 なお、後半の記述は正しいです。 |
② | 正しい記述です。売却益=(1,750円-1,700円)/株×300株=15,000円です。 源泉徴収ありの特定口座内で生じた株式の譲渡益には、20.315%の税金が源泉徴収されます。 |
③ | 文章の前半は正しいです。権利確定日が11月30日(木)である場合、権利付き最終日が11月28日(火)、権利落ち日が11月29日(金)です。 権利付き最終日までに買い注文が約定し、それを売却しなければ、配当金を受け取ることができますから、11月28日に買い注文が約定し、11月29日に売り注文が約定すれば、配当金を受け取ることができます。 |
① | 「運用管理費用(信託報酬)は、投資信託を保有する投資家が負担する費用です。一般に、アクティブ型投資信託は、パッシブ型投資信託よりも運用管理費用(信託報酬)が高い傾向があります」 |
② | 「ドルコスト平均法は、価格が変動する商品を定期的に一定口数購入する方法であり、定期的に一定額購入する方法よりも平均購入単価を引き下げる効果が期待できます」 |
③ | 「仮に、Y投資信託から収益分配金が支払われ、分配後の基準価額がAさんの個別元本を上回っていた場合、当該分配金はすべて元本払戻金(特別分配金)となります」 |
① | 正しい記述です。アクティブ型の投資信託はパッシブ型の投資信託に比べて、運用にノウハウが必要な分、信託報酬が高い傾向があります。 |
② | ドルコスト平均法は、同じ商品を定期的に一定金額ずつ購入する方法です。 |
③ | 分配落ち後の基準価格が個別元本を上回っている場合、支払われた分配金は全額が普通分配金となります。 |
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務する会社員のAさん(60歳)は、妻Bさん(53歳)および長女Cさん(21歳)との3人暮らしである。Aさんは、2023年8月に定年を迎え、X社から退職金の支給を受けたが、X社の継続雇用制度を利用して、引き続き同社に勤務している。なお、下記の<Aさんの2023年分の収入等に関する資料>において、不動産所得の金額の前の「▲」は赤字であることを表している。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(60歳)]
会社員
[妻Bさん(53歳)]
パートタイマー。2023年中に給与収入90万円を得ている。
[長女Cさん(21歳)]
大学生。2023年中の収入はない。
<Aさんの2023年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
900万円
[不動産所得の金額]
▲40万円(白色申告)
※ | 損失の金額40万円のうち、当該不動産所得を生ずべき土地の取得に係る負債の利子の額10万円を含む。 |
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2014年7月
契約者(=保険料負担者)・被保険者:Aさん
死亡給付金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:500万円
正味払込保険料:430万円
[X社から支給を受けた退職金の額]
2,450万円
・ | 定年を迎えるまでの勤続期間は36年5カ月である。 |
・ | 「退職所得の受給に関する申告書」を提出している。 |
※ | 妻Bさんおよび長女Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
<退職所得控除額>
800万円+( ① )万円×{( ② )年-20年}=( ③ )万円
<退職所得の金額>
(2,450万円-( ③ )万円)×□□□=( ④ )万円
① | 勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の式で計算されます。 |
② | 退職所得控除額の計算上勤続年数の1年未満の端数は切り上げますから勤続年数は37年となります。 |
③ | 800万円+70万円×(37-20)=1,990万円です。 |
④ | 退職所得=(2,450万円-1,990万円)×1/2=230万円となります。 |
① | 「Aさんは不動産所得の金額に損失が生じているため、確定申告をすることによって、純損失の繰越控除の適用を受けることができます」 |
② | 「Aさんが長女Cさんの国民年金保険料を支払った場合、その支払った保険料はAさんの社会保険料控除の対象となります」 |
③ | 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除および扶養控除の額は、それぞれ38万円です」 |
① | 純損失の繰越控除は、損益通算してもなお引ききれない金額を、翌年以降の所得と通算する制度です。本問では、損益通算の対象となる損失が、給与所得の額以下ですから、純損失の繰越控除はありません。 |
② | 正しい記述です。社会保険料控除は、本人だけでなく、生計を一にする配偶者や親族のために払ったお金も控除の対象となります。 |
③ | 配偶者の給与所得の額は、90万円-55万円=35万円ですから、合計所得金額が48円以下となり、配偶者控除の対象となります。 配偶者控除の額は、合計所得金額が900万円以下、配偶者が70歳未満である場合、38万円です。 長女Cさんに係る扶養控除の額は、長女Cさんが特定扶養親族(19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族)に該当するため、63万円です。 |
① | 総所得金額に算入される給与所得の金額 |
② | 総所得金額 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
① |
23歳未満の扶養親族を有する場合、所得金額調整控除の適用を受けることができます。
<別解> |
② | 給与所得の額700万円は、全額総所得金額に算入される。 不動産所得の赤字40万円のうち、土地取得のための借入金の利子相当額10万円を除いた、30万円が損益通算の対象となる。 一時所得の額=総収入金額-収入を得るために直接支出した金額-特別控除額(最高50万円)=500万円-430万円-50万円=20万円であり、2分の1相当額の10万円が総所得金額に算入される。 退職所得は分離課税され、総所得金額に算入されない。 よって、総所得金額=700万円-30万円+10万円=680万円となります。 |
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