お金の寺子屋

FP2級実技(個人)解説-2023年1月・問10~15

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(55歳)は、M市内(三大都市圏)に甲土地(500㎡)を所有している。甲土地は、月極駐車場として賃貸しているが、収益性は高くない。
Aさんは、先日、トランクルーム事業者(サブリース業者)のX社から、「最近、個人や企業の物品を収納するトランクルームのニーズが増えています。Aさんがトランクルームとして利用する建物を甲土地に建築し、マスターリース契約に基づき、弊社に一括賃貸していただければ、弊社がトランクルームについて利用者の募集や管理等を行い、賃料も保証します」との提案を受けた。
Aさんは、X社の提案について積極的に検討したいと思っている。

<甲土地の概要>
<甲土地の概要>
甲土地は、普通商業・併用住宅地区に所在する。
甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。
指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
甲土地の相続税評価に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「甲土地は、地積が500㎡以上であり、指定容積率が400%であるため、地積規模の大きな宅地の評価の規定が適用されます」
「対象地の面する道路に付された『250C』の数値は、1㎡当たりの価額を千円単位で表示した相続税路線価です。数値の後に表示されている『C』の記号(アルファベット)は、借地権割合が70%であることを示しています」
「Aさんが、甲土地を青空駐車場として賃貸している場合、相続税額の計算上、甲土地は自用地として評価されます」
正解:×、○、○
地積規模の大きな宅地とは、三大都市圏においては500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の地積の宅地をいいますが、指定容積率が原則として400%以上である地域、市街化調整区域、工業専用地域などに所在する土地は除かれます。
正しい記述です。
正しい記述です。
【問11】
X社が提案するトランクルーム経営に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが、金融機関から融資を受けてトランクルームとして利用する建物を建築する場合、借入金の返済リスクを考慮する必要があります。DSCR(借入金償還余裕率)の値が1.0未満のときは、賃料収入だけでは借入金の返済ができないことを示しています」
「AさんがX社に賃貸した建物の一部が、X社の責めに帰することができない事由で滅失等し、使用および収益をすることができなくなった場合、民法上は、その使用および収益をすることができなくなった部分の割合に応じて賃料が減額されることとされています。X社と契約する際は、賃料が保証される期間やその条件等について事前に確認しておくことが重要です」
「近年、サブリース業者に対する規制が強化されています。賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律では、サブリース業者がマスターリース契約を締結しようとする際に誇大広告や不当な勧誘を行うことを禁止しており、当該契約に基づき、Aさんから建物を一括賃借するX社も当該規制の適用を受けます」
正解:○、○、×
正しい記述です。DSCR(借入金償還余裕率)=各年毎の元利金返済前のキャッシュフロー÷返済総額であり、この値が大きいほど、返済の余裕がある事を表し、この値が1.0を下回ると、投資対象から得られる収入だけでは借入金の返済ができないことを示します。
正しい記述です。民法611条1項の定めです。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律では、サブリース業者がマスターリース契約(特定賃貸借契約:不動産を一括で賃貸借すること)を締結しようとする際に、誇大広告や不当な勧誘を行うことを禁止していますが、この法律が適用されるのは賃貸住宅のみであり、事業用の事務所や店舗などは対象外です。
【問12】
甲土地上に準耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。

建蔽率の上限となる建築面積
容積率の上限となる延べ面積
正解:500、1,800
準防火地域に準耐火建築物を建てる場合には、建ぺい率の上限が10%緩和されます。
また、特定行政庁が指定する角地に建物を建てる場合には、建ぺい率の上限が10%緩和されます。
よって、建蔽率の上限は、80%+10%+10%=100%となります。
したがって、建ぺい率の上限となる建築面積は、500㎡×100%=500㎡です。
前面道路の幅員が12m未満である場合、容積率の上限は、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、いずれか小さい方となります。
前面道路の幅員によって定まる容積率=6×6/10=3.6=360%ですから、容積率の上限は、360%となります。
よって、容積率の上限となる延床面積は、500㎡×360%=1,800㎡です。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
非上場会社であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(70歳)は、3年後をめどに、X社の専務取締役である長男Cさん(40歳)に事業を承継したいと考えている。Aさんは、長男Cさんに、保有するX社株式のすべてを取得させるとともに、長男Cさん家族と同居している自宅建物(区分所有建物の登記なし)とその敷地を相続させようと考えているが、長男Cさんと長女Dさん(39歳)が遺産分割でもめてしまうのではないかと心配している。
また、Aさんは、長女Dさんから、「マンションの購入を検討しているので、資金を援助してほしい」と頼まれており、住宅取得資金の援助をしたいと考えている。

<Aさんの親族関係図>
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
現預金 1億円
X社株式 2億円
自宅敷地(400㎡) 8,000万円 (注)
自宅建物 2,000万円
X社株式 2億円
(注) 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問13】
Aさんの相続に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言書の作成をお勧めします。自筆証書遺言は、法務局における保管制度を利用することで、遺言書の紛失等を防ぐことができ、相続開始後、家庭裁判所における遺言書の検認が不要となります」
「Aさんの相続に係る遺留分を算定するための財産の価額を4億円とした場合、長女Dさんの遺留分の金額は、1億円となります。遺留分を侵害する内容の遺言は無効となるため、遺言書を作成する際はご注意ください」
「長男Cさんが自宅の敷地および建物を相続により取得し、当該敷地(相続税評価額:8,000万円)について、特定居住用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、相続税の課税価格に算入すべき価額を1,600万円とすることができます」
正解:○、×、×
正しい記述です。
抽象的遺留分の割合は、相続人が直系尊属のみである場合を除いて、遺留分算定基礎財産の1/2です。
また、各相続人の具体的遺留分は、抽象的遺留分を遺留分権利者が法定相続分通り按分した割合となります。
よって、長女Dさんの具体的遺留分の割合は、1/2×1/4=1/8です。
したがって、具体的遺留分の額は、4億円×1/9=5,000万円となります。

自宅の敷地は特定居住用宅地等として330㎡まで80%評価減されますから、相続税の課税価格に算入すべき金額は、8,000万円×330㎡/400㎡×(1-80%)+8,000万円×70㎡/400㎡=2,720万円となります。

<別解>
400㎡のうち330㎡(82.5%部分)が適用対象となりますから、8,000万円のうち82.5%部分の6,600万円について評価減され、残りの17.5%部分の1,400万円については全額が課税価格に算入されますから、6,600万円×(1-80%)+1,400万円=2,720万円となります。

【問14】
「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(以下、「本特例」という)に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「長女Dさんが本特例の適用を受けるためには、贈与を受けた年の翌年3月15日までに所定の要件を満たす住宅用家屋を取得等してその家屋に居住するか、または同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれることが必要です」
「長女Dさんが2023年2月に住宅取得等資金の贈与を受けた場合、本特例による非課税限度額は、一定の省エネ等住宅であれば1,500万円、それ以外の住宅であれば1,200万円です」
「長女DさんがAさんから贈与を受けた住宅取得等資金について本特例の適用を受け、その後、Aさんの相続が開始した場合、本特例の適用を受けたことにより贈与税が非課税とされた金額は、相続税の課税価格に加算しなければなりません」
正解:○、×、×
正しい記述です。
「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受けた場合の非課税限度額は、一定の省エネ等住宅であれば1,000万円、それ以外の住宅であれば500万円です。
「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」の適用を受け非課税になった部分の金額は、生前贈与加算の対象外です。
【問15】
現時点(2023年1月22日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は3億5,000万円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)相続税の課税価格の合計額 3億5,000万円
(b)遺産に係る基礎控除額 ( ① )万円
課税遺産総額(a-b) □□□万円
相続税の総額の基となる税額
長男Cさん ( ② )万円
長女Dさん □□□万円
(c)相続税の総額 ( ③ )万円
<資料>相続税の速算表(一部抜粋)
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
20,000万円超
30,000万円以下
45% 2,700万円
30,000万円超
60,000万円以下
50% 4,200万円
正解:4,200、4,460、8,920
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×2=4,200万円です。
課税遺産総額=3億5,000円-4,200万円=3億800万円です。
よって、長男Cさんの法定相続分に対応する相続金額は、3億800万円×1/2=1億5,400万円となります。
これに対応する相続税額は、1億5,400万円×40%-1,700万円=4,460万円です。
長女Dさんの法定相続分に対応する相続金額は、長男Cさんの法定相続分に対応する相続金額と等しく、4,460万円です。
よって、相続税の総額は、4,460万円+4,460万円=8,920万円となります。

スポンサーリンク




スポンサーリンク



<戻る ホーム 進む>
LINEで送る
Pocket

コメントは受け付けていません。