お金の寺子屋

FP2級実技(個人)解説-2022年5月・問10~15

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(69歳)は、5年前に父親の相続によって甲土地(650㎡)を含む複数の土地を取得している。甲土地は、父親の代からアスファルト敷きの月極駐車場として賃貸しているが、収益性は高くない。
Aさんは、先日、ハウスメーカーのX社から、「甲土地は、最寄駅から徒歩3分の好立地にあり、住宅需要が見込めるので、自己建設方式による賃貸マンションでの有効活用をお勧めします。弊社(X社)が、マスターリース契約(特定賃貸借契約)により、建築後のマンションを一括賃借したうえで、サブリース契約で第三者への賃貸・管理を行います。Aさんにお支払いする賃料は保証します」との提案を受けた。 Aさんは、甲土地の収益性を高めるために、X社の提案を検討することにした。

<甲土地の概要>
甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。
指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
甲土地上に耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求めなさい(計算過程の記載は不要)。

建蔽率の上限となる建築面積
容積率の上限となる延べ面積
正解:520、1,950
特定行政庁が指定する角地は建蔽率が10%緩和されます。
また、準防火地域耐火建築物を建てる場合にも建蔽率が10%緩和されます。
よって、甲土地の建蔽率の上限は、60%+10%+10%=80%となりますから、建蔽率の上限となる建築面積は、650㎡×80%=520㎡となります。
前面道路(複数の道路に面している土地については幅員が広い方の道路)の幅員によって定まる容積率の上限は、8m×4/10=3.2(320%)です。
前面道路の幅員が12m未満である場合、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、どちらか小さい方を適用しますから、容積率の上限は、300%となります。
よって、容積率の上限となる延べ床面積は、650㎡×300%=1,950㎡となります。
【問11】
X社が提案する自己建設方式による賃貸マンション事業に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「マスターリース契約(特定賃貸借契約)において、賃料が保証されている場合、その契約が定期借家契約でない限り、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律や借地借家法に基づき、AさんがX社から経済事情等により賃料の減額請求を受けることはありません」
「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建設した場合、相続税額の計算上、甲土地は貸家建付地として評価されます。仮に、甲土地の自用地価額を1億円、借地権割合を60%、借家権割合を30%、賃貸割合を100%とした場合の相続税評価額は、8,200万円です」
「仮に、Aさんが金融機関から融資を受けて賃貸マンションを建設した場合、相続税の課税価格の計算上、Aさんの相続開始時における当該借入金残高は、債務控除の対象となります」
正解:×、○、○
普通借家契約では、賃料の減額をしない旨の特約は無効になりますから、借主が誰であれ、賃料の減額請求を受ける可能性があります。
正しい記述です。土地所有者名義の貸家が建っている土地は、土地所有者の死亡時に貸家建付地として評価され、相続税評価額の計算上、「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」の算式で計算されますから、1億円×(1-60%×30%×100%)=8,200万円となります。
正しい記述です。
【問12】
賃貸マンションの事業計画とリスク対策に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「賃貸マンションの賃料収入を想定する際にはレンタブル比が重要です。一般に、賃貸マンションのグレードが高いほど、また規模が大きくなるほど、レンタブル比は低くなる傾向があり、レンタブル比が低いほど投資効率が高いことを示しています」
「借入金の返済には、元金均等返済と元利均等返済の2つの方法があり、元金均等返済の場合、毎年の支払利息は同額になります。そのため、賃貸マンションの所有者は毎年、不動産所得の金額の計算上、一定額の支払利息を必要経費に算入することができます」
「賃貸マンションの地震リスクに備えるため、火災保険に地震保険を付帯することをお勧めします。地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の60~80%の範囲で\設定することができます」
正解:×、×、×
レンタブル比とは、「賃貸可能面積(専有面積)÷延床面積」の算式で計算され、一般的に、この値が高いほど投資効率が高いと言えます。
レンタブル=rentable=rent(貸す)+able(~できる)=(延床面積のうち)貸すことができる(面積の割合)という意味です。
元金均等返済は、毎回支払う元金部分の金額が同じ返済方法ですから、毎年の支払利息は、時間の経過とともに減少します。
地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30~50%の範囲で設定することができます。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
非上場企業であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であったAさんは、2022年4月に80歳で死亡した。Aさんが保有していたX社株式(発行済株式数の全部)は、後継者である長男Cさんが相続により取得する予定である。 Aさんの親族関係図等は、以下のとおりである。なお、二男Dさんは、Aさんの相続開始前に死亡している。

<Aさんの親族関係図>
<Aさんの親族関係図>

<各人が取得する予定の相続財産(遺贈やみなし相続財産を含む)>
[妻Bさん(78歳)]

現金および預貯金:3,000万円
自宅(敷地330㎡):2,000万円(「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の金額)
自宅(建物):1,500万円(固定資産税評価額)
死亡保険金:1,500万円(契約者(=保険料負担者)・被保険者はAさん、死亡保険金受取人は妻Bさん)
死亡退職金:3,000万円

[長男Cさん(53歳)]

現金および預貯金:8,000万円
X社株式:1億2,000万円(相続税評価額)

続税におけるX社株式の評価上の規模区分は「中会社の大」であり、特定の評価会社には該当しない。

[孫Eさん(18歳)]
現金および預貯金:2,000万円

[孫Fさん(21歳)]
現金および預貯金:3,000万円

【問13】
Aさんの相続等に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが2022年分の所得税および復興特別所得税について確定申告書を提出しなければならない場合に該当するとき、相続人は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から( ① )カ月以内に準確定申告書を提出しなければなりません」
「配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けた場合、妻Bさんが相続により取得した財産の金額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか( ② )金額を超えない限り、妻Bさんが納付すべき相続税額は算出されません」
「仮に、妻Bさんが自宅の敷地および建物を相続により取得し、相続税の申告期限までに自宅の敷地を売却した場合、当該敷地は、特定居住用宅地等として小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けること( ③ )」
<語句群>
イ.3 ロ.4 ハ.10 
ニ.少ない ホ.多い 
ヘ.ができます ト.ができません
正解:ロ、ホ、ヘ
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内です。
相続税の配偶者控除は、配偶者が相続または遺贈により取得した財産のうち、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか多い金額までにかかる相続税額を0にする制度です。
被相続人の居住の用に供されていた宅地等を被相続人の配偶者が取得した場合、小規模宅地の特例の適用を受けるための特別な要件はありません。
【問14】
Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「孫Eさんは、相続税額の2割加算の対象になりますが、孫Fさんは、二男Dさんの代襲相続人ですので、相続税額の2割加算の対象にはなりません」
「X社株式の相続税評価額は、原則として、類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式により評価されます。そのうち類似業種比準方式は、類似業種の株価を基に、1株当たりの『配当金額』『取引金額』および『簿価純資産価額』の3つの要素から算出します」
「相続税の総額は、各相続人の実際の取得割合によって計算されますので、分割内容によって異なります」
正解:○、×、×
正しい記述です。被相続人の孫は、孫養子を含めて、原則として、2割加算の対象になりますが、代襲相続人である孫は2割加算の対象外です。
類似業種比準方式における比準要素は、配当金額、利益金額、簿価純資産価額の3つです。
相続税の総額は、課税遺産総額を法定相続分通りに按分したと仮定して計算しますから、実際の分割内容によって変わることはありません。
【問15】
各相続人は《設例》の記載のとおり、相続財産を取得した。Aさんの相続に係る相続税の総額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

妻Bさんに係る課税価格 ( ① )万円
長男Cさんに係る課税価格 □□□万円
孫Eさんに係る課税価格 2,000万円
孫Fさんに係る課税価格 3,000万円
(a)相続税の課税価格の合計額 □□□万円
(b)遺産に係る基礎控除額 ( ② )万円
課税遺産総額(a-b) □□□万円
相続税の総額の基となる税額
妻Bさん □□□万円
長男Cさん □□□万円
孫Fさん ( ③ )万円
(c)相続税の総額 ( ④ )万円
<資料>相続税の速算表
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
20,000万円超
30,000万円以下
45% 2,700万円
30,000万円超
60,000万円以下
50% 4,200万円
60,000万円超 55% 7,200万円
正解:8,000、4,800、1,415、6,770
死亡保険金と死亡退職金はそれぞれ、500万円×法定相続人の数=1,500万円まで非課税になります。
よって、3,000万円+2,000万円+1,500万円+(1,500万円-1,500万円)+(3,000万円-1,500万円)=8,000万円となります。
基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×3=4,800万円です。
長男Cさんに係る課税価格は、8,000万円+1億2,000万円=2億円です。
よって、課税価格の合計額は、8,000万円+2億円+2,000万円+3,000万円=3億3,000万円となり、課税遺産総額は、3億3,000万円-4,800万円=2億8,200万円となります。相続人は、妻Bさんと長男Cさんと孫Fさん3人ですから、孫Fさんの法定相続分は1/4になります。
よって、孫Fさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億8,200万円×1/4=7,050万円となります。
したがって、孫Fさんの法定相続分に対応する相続税額は、7,050万円×30%-700万円=1,415万円となります。
妻Bさんの法定相続分は、1/2です。
よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億8,200万円×1/2=1億4,100万円となります。
妻Bさんの法定相続分に対応する相続税額は、1億4,100万円×40%-1,700万円=3,940万円となります。
長男Cさんと孫Fさんの法定相続分に対応する相続税額は等しい事から、相続税の総額は、3,940万円+1,415万円+1,415万円=6,770万円となります。

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