FP2級実技(個人)解説-2022年1月・問10~15
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(58歳)は、上場企業に勤務する会社員である。2021年9月、X市内の実家(甲土地および建物)で1人暮らしをしていた父親が死亡した。法定相続人は、長男のAさんのみであり、相続に係る申告・納税等の手続は完了している。
Aさんは、Y市に自宅を保有し、居住しているため、相続後に空き家となっている実家(築45年)の売却を検討してきた。しかし、先日、ハウスメーカーのZ社から、「X市は高齢化が進み、介護施設のニーズが高まっています。甲土地にデイサービス(通所介護)の施設を建設・運営したいのですが、事業用定期借地権の設定を検討していただけないでしょうか」との提案があったことで、甲土地の有効活用にも興味を持ち始めている。
Aさん(58歳)は、上場企業に勤務する会社員である。2021年9月、X市内の実家(甲土地および建物)で1人暮らしをしていた父親が死亡した。法定相続人は、長男のAさんのみであり、相続に係る申告・納税等の手続は完了している。
Aさんは、Y市に自宅を保有し、居住しているため、相続後に空き家となっている実家(築45年)の売却を検討してきた。しかし、先日、ハウスメーカーのZ社から、「X市は高齢化が進み、介護施設のニーズが高まっています。甲土地にデイサービス(通所介護)の施設を建設・運営したいのですが、事業用定期借地権の設定を検討していただけないでしょうか」との提案があったことで、甲土地の有効活用にも興味を持ち始めている。
<甲土地の概要>
・ | 甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。 |
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
甲土地上に耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求めなさい(計算過程の記載は不要)
① | 建蔽率の上限となる建築面積 |
② | 容積率の上限となる延べ面積 |
正解:480、1,680
① | 特定行政庁が指定する角地は建蔽率が10%緩和されます。 また、準防火地域耐火建築物を建てる場合にも建蔽率が10%緩和されます。 よって、甲土地の建蔽率の上限は、60%+10%+10%=80%となりますから、建蔽率の上限となる建築面積は、60㎡×80%=480㎡となります。 |
② | 前面道路の幅員によって定まる容積率の上限は、7m×4/10=2.8(280%)です。 前面道路の幅員が12m未満である場合、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、どちらか小さい方を適用しますから、容積率の上限は、280%となります。 よって、容積率の上限となる延べ床面積は、600㎡×280%=1,680㎡となります。 |
【問11】
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下、「本特例」という)に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「本特例の適用を受けるためには、相続した家屋について、1981年5月31日以前に建築されたこと、相続開始直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことなどの要件を満たす必要があります」 |
② | 「本特例の適用を受けるためには、家屋を取り壊して更地で譲渡するか、または、家屋を一定の耐震基準を満たすようにリフォームしてから、その家屋のみを譲渡するか、もしくはその家屋とともに敷地を譲渡する必要があります」 |
③ | 「本特例と相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続税の取得費加算の特例)は、重複して適用を受けることができます」 |
正解:○、○、×
① | 正しい記述です。 |
② | 正しい記述です。 |
③ | 相続空き家の特例と、相続財産に係る譲渡所得の課税の特例(相続税の取得費加算の特例)は、どちらか片方しか適用を受けることができません。 |
【問12】
借地借家法の事業用定期借地権等に係る借地契約に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
「事業用定期借地権等は、事業用に限定して土地を定期で貸し出す方式です。事業用定期借地権等は、存続期間が10年以上( ① )年未満の事業用借地権と( ① )年以上50年未満の事業用定期借地権に区別されます。事業用定期借地権等の設定契約は、公正証書( ② )。
仮に、Z社が、事業用定期借地権等が設定された甲土地にデイサービス(通所介護)の施設を建設した後に、Aさんに相続が開始した場合、相続税額の計算上、甲土地は( ③ )として評価されます」
仮に、Z社が、事業用定期借地権等が設定された甲土地にデイサービス(通所介護)の施設を建設した後に、Aさんに相続が開始した場合、相続税額の計算上、甲土地は( ③ )として評価されます」
<語句群>
イ.20 ロ.25 ハ.30
ニ.により作成しなければなりません
ホ.による等書面により作成します
ヘ.自用地 ト.貸宅地 チ.貸家建付地
イ.20 ロ.25 ハ.30
ニ.により作成しなければなりません
ホ.による等書面により作成します
ヘ.自用地 ト.貸宅地 チ.貸家建付地
正解:ハ、ニ、ト
① | 事業用定期借地権等は、存続期間を10年以上30年未満で定めた場合と30年以上50年未満で定めた場合とで、借地借家法の規定の適用が異なります。 |
② | 事業用定期借地権等の設定契約は、必ず公正証書で行う必要があります。 |
③ | 賃貸している土地は、相続税の計算上、貸宅地として評価します。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(69歳、X市在住)は、妻Bさん(66歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、上場企業に就職し、43年間勤務した。退職後は、年金収入に加え、上場株式の配当収入もあり、Aさん夫婦の生活は安定している。
昨年、長女Cさん(40歳)は夫Dさんと離婚した。現在は、自分の仕事や子どもの学業の都合で、Y市にある賃貸マンションに子2人と暮らしている。Aさんは、長女Cさん、孫Eさん(15歳)および孫Fさん(12歳)の生活資金について援助したいと思っており、生前贈与を検討している。
Aさん(69歳、X市在住)は、妻Bさん(66歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、上場企業に就職し、43年間勤務した。退職後は、年金収入に加え、上場株式の配当収入もあり、Aさん夫婦の生活は安定している。
昨年、長女Cさん(40歳)は夫Dさんと離婚した。現在は、自分の仕事や子どもの学業の都合で、Y市にある賃貸マンションに子2人と暮らしている。Aさんは、長女Cさん、孫Eさん(15歳)および孫Fさん(12歳)の生活資金について援助したいと思っており、生前贈与を検討している。
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの親族関係図>
<Aさんが所有する主な財産(相続税評価額)>
[預貯金]
9,000万円
[上場株式]
5,000万円
[自宅]
敷地(400㎡):8,000万円
建物:2,000万円
※ | 自宅の敷地は、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額である。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
生前贈与に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
Ⅰ | 「仮に、長女Cさんが暦年課税(各種非課税制度の適用はない)により、2022年中にAさんから現金750万円の贈与を受けた場合、その贈与税額は( ① )万円となります」 |
Ⅱ | 「仮に、孫Eさんや孫Fさんが、2022年中にAさんから教育資金の贈与を受け、『直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』の適用を受けた場合、受贈者1人につき( ② )万円までの金額に相当する部分の価額については、贈与税が非課税となります。ただし、学習塾などの学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については、□□□万円が限度となります。 なお、教育資金管理契約期間中にAさんが死亡した場合、教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額(管理残額)があるときは、その死亡の日において、孫Eさんや孫Fさんが( ③ )歳未満である等の一定の場合を除き、その残額は、相続税の課税の対象となります」 |
<贈与税の速算表(一部抜粋)> | ||
[特例贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 400万円以下 |
15% | 10万円 |
400万円超 600万円以下 |
20% | 30万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
30% | 90万円 |
[一般贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 |
15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 |
20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 |
30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
40% | 125万円 |
正解:102、1,500、23
① | 贈与税の計算上、20歳以上の人が直系尊属から贈与を受けた財産は、特例贈与財産になります。 よって、贈与税額=(750万円-110万円)×30%-90万円=102万円となります。 |
② | 『直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』の適用を受けた場合、受贈者1人につき1,500万円まで非課税になります。 |
③ | 教育資金管理契約期間中に贈与者が死亡した場合、管理残額があるときは、その死亡の日において受贈者が23歳未満である等の一定の場合を除いて、相続税の課税対象となります。 |
【問14】
相続時精算課税制度(以下、「本制度」という)に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「Aさんから贈与を受けた長女Cさんが本制度を選択した場合、累計で2,500万円までの贈与について贈与税は課されませんが、その額を超える部分については、一律20%の税率により贈与税が課されます」 |
② | 「Aさんから贈与を受けた長女Cさんが本制度を選択した場合、その後に行われるAさんからの贈与については、暦年課税を選択することができません」 |
③ | 「本制度における受贈者は、贈与を受けた年の1月1日において15歳以上でなければなりません。したがって、現時点においてAさんが孫Eさんに現金を贈与する場合、孫Eさんは本制度を活用することができます」 |
正解:○、○、×
① | 正しい記述です。相続時精算課税制度を選択した場合、2,500万円の特別控除額が与えられ、税率は一律20%になります。 |
② | 正しい記述です。いったん相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者からの贈与について、暦年課税に戻すことはできません。 |
③ | 相続時精算課税制度を利用するためには、贈与を受けた年の1月1日時点において、受贈者が20歳以上の推定相続人である必要があります。 |
【問15】
Aさんの相続が現時点(2022年1月23日)で開始した場合の相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。なお、本問においては、特別養子縁組以外の縁組による養子を普通養子という。
① | 「仮に、Aさんが、契約者(=保険料負担者)および被保険者をAさん、死亡保険金受取人を長女Cさんとする終身保険のみに加入していた場合、長女Cさんが受け取る死亡保険金は、相続税法における死亡保険金の非課税金額の規定により、最大1,000万円が非課税となります」 |
② | 「仮に、Aさんが相続開始前に孫Eさんと孫Fさんを自分の普通養子としていた場合、Aさんの相続における相続税額の計算上、遺産に係る基礎控除額は、5,400万円になります」 |
③ | 「仮に、妻Bさんが自宅の敷地と建物を相続し、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、自宅の敷地(相続税評価額8,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額は1,600万円となります」 |
正解:○、×、×
① | 正しい記述です。死亡保険金の非課税枠=500万円×法定相続人の数=500万円×2=1,000万円です。 |
② | 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×2=4,200万円です。 |
③ | 自宅の敷地について小規模宅地の評価減の特例を受けた場合、330㎡までの部分について、相続税評価額が80%減額されます。 本問のケースでは、敷地が400㎡ですから、相続税評価額は、8,000万円×330㎡/400㎡×(1-80%)+8,000万円×70㎡/400㎡=2,720万円となります。 |
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