FP2級実技(個人)解説-2021年9月・問10~15
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさん(57歳)は、8年前に父親の相続によりM市内(三大都市圏)にある甲土地(440㎡)を取得している。甲土地は、父親の代から月極駐車場(青空駐車場)として賃貸しているが、数台の空きがあり、収益性は高くない。
Aさんは、先日、ハウスメーカーのX社から「2年後、甲土地から徒歩10分の最寄駅近くに有名私立大学のキャンパスが移転してきます。需要が見込めますので、賃貸アパートを建築しませんか。弊社に一括賃貸(普通借家契約・マスターリース契約(特定賃貸借契約))していただければ、弊社が入居者の募集・建物管理等を行ったうえで、賃料を保証させていただきます」と提案を受けた。
Aさんは、X社の提案を積極的に検討したいと思っているが、賃貸アパートを経営した経験はなく、判断できないでいる。
会社員のAさん(57歳)は、8年前に父親の相続によりM市内(三大都市圏)にある甲土地(440㎡)を取得している。甲土地は、父親の代から月極駐車場(青空駐車場)として賃貸しているが、数台の空きがあり、収益性は高くない。
Aさんは、先日、ハウスメーカーのX社から「2年後、甲土地から徒歩10分の最寄駅近くに有名私立大学のキャンパスが移転してきます。需要が見込めますので、賃貸アパートを建築しませんか。弊社に一括賃貸(普通借家契約・マスターリース契約(特定賃貸借契約))していただければ、弊社が入居者の募集・建物管理等を行ったうえで、賃料を保証させていただきます」と提案を受けた。
Aさんは、X社の提案を積極的に検討したいと思っているが、賃貸アパートを経営した経験はなく、判断できないでいる。
<甲土地の概要>
・ | 甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。 |
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
甲土地上に耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求めなさい(計算過程の記載は不要)。
① | 建蔽率の上限となる建築面積 |
② | 容積率の上限となる延べ面積 |
正解:352、880
① | 特定行政庁が指定する角地は建蔽率が10%緩和されます。 また、準防火地域耐火建築物を建てる場合にも建蔽率が10%緩和されます。 よって、甲土地の建蔽率の上限は、60%+10%+10%=80%となりますから、建蔽率の上限となる建築面積は、440㎡×80%=352㎡となります。 |
② | 前面道路の幅員によって定まる容積率の上限は、6m×4/10=2.4(240%)です。 前面道路の幅員が12m未満である場合、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、どちらか小さい方を適用しますから、容積率の上限は、200%となります。 よって、容積率の上限となる延べ床面積は、440㎡×200%=880㎡となります。 |
【問11】
X社が提案する賃貸アパートの自己建設方式に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「Aさん自身が不動産賃貸事業の業務のすべてを行うのであれば、賃貸経営から得られる収益をすべて享受することができますが、専門的な知識や経験の有無、相応の手間と時間を要することを考えると、業務の全部または一部を外部の専門業者に委託することが現実的な選択であると思います」 |
② | 「X社に一括賃貸(普通借家契約・マスターリース契約(特定賃貸借契約))することで、賃料収入が保証されることはメリットだと思います。普通借家契約の場合、借地借家法の規定により、X社から賃料の減額請求をされることはありません」 |
③ | 「Aさんが金融機関から融資を受けて賃貸アパートを建築する場合、借入金による事業リスクを考慮する必要があります。DSCR(借入金償還余裕率)の値が1.0未満のときは、賃料収入だけでは借入金の返済が困難であることを示しています」 |
正解:○、×、○
① | 正しい記述です。 |
② | 一括賃貸を行った場合、借地借家法の規定により、賃借人から賃料の減額請求をされる可能性があります。 |
③ | 正しい記述です。DSCR=年間純収益÷元利返済額であり、この値が1よりも大きければ、不動産から得られる収益で元利金の返済が可能になり、数値が大きいほど空室リスクに耐えられる余裕があると言えますが、1未満であれば賃料収入だけで借入金の返済ができていないと言えます。 |
【問12】
Aさんが甲土地に賃貸アパートを建築した場合における賃貸事業開始後の甲土地の相続税評価額に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「甲土地は、地積規模の大きな宅地の評価の規定の適用を受けることができます」 |
② | 「甲土地は、貸家建付地として、『自用地価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)』の算式により評価されます」 |
③ | 「対象地の面する道路に付された『250D』『200D』の数値は、1㎡当たりの価額を千円単位で表示した相続税路線価です。数値の後に表示されている『D』の記号(アルファベット)は、借地権割合が70%であることを示しています」 |
正解:×、○、×
① | 地積規模の大きな宅地の評価の規定の適用を受けることができるのは、三大都市圏においては500㎡以上の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000㎡以上の宅地です。 |
② | 正しい記述です。 |
③ | 路線価図に記載されている英数字は、数字部分が1㎡当たりの価額を千円単位で表示しており、英字部分が借地権割合を示しています。 借地権割合は、A(90%)~G(30%)まであり、Dは60%であることを意味します。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(75歳)は、妻を10年前に亡くし、現在は長男Bさん(45歳)家族とX市内の自宅で同居している。独身の二男Cさん(40歳)は他県に所在する企業に勤務しており、当地で持家(マンション)に住んでいる。二男Cさんは、X市に戻る意思はない。
Aさんは、自宅および自宅に隣接する賃貸アパート等の財産を同居する長男Bさんに承継してもらいたいと考えているが、自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと心配している。なお、賃貸アパートは、土地の有効活用と相続対策を考えて、2015年2月に自己資金で建築し、同年3月から全室賃貸中である。
Aさん(75歳)は、妻を10年前に亡くし、現在は長男Bさん(45歳)家族とX市内の自宅で同居している。独身の二男Cさん(40歳)は他県に所在する企業に勤務しており、当地で持家(マンション)に住んでいる。二男Cさんは、X市に戻る意思はない。
Aさんは、自宅および自宅に隣接する賃貸アパート等の財産を同居する長男Bさんに承継してもらいたいと考えているが、自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと心配している。なお、賃貸アパートは、土地の有効活用と相続対策を考えて、2015年2月に自己資金で建築し、同年3月から全室賃貸中である。
<Aさんの家族構成(推定相続人)>
[長男Bさん]
会社員。妻と子2人がおり、Aさんと同居している。
[二男Cさん]
会社員。持家(マンション)に住んでいる。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
[現預金等]
5,000万円
[自宅]
敷地(250㎡):6,000万円(注1)
建物:2,500万円
[賃貸アパート(全室賃貸中)]
敷地(250㎡):5,000万円(注1)(注2)
建物(6室):3,000万円
合計 2億1,500万円
(注1) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
(注2) | 貸家建付地としての評価額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
現時点(2021年9月12日)において、Aさんに相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は1億6,000万円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
(a)相続税の課税価格の合計額 | 1億6,000万円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
長男Bさん | ( ② )万円 |
二男Cさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
正解:4,200、1,070、2,140
① | 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×2=4,200万円となります。 |
② | 課税遺産総額は、1億6,000万円-4,200万円=1億1,800万円です。 相続人は、血族相続人のみですから、長男Bさんと二男Cさんの法定相続分はそれぞれ1/2になります。 よって、長男Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億1,800万円×1/2=5,900万円となります。 したがって、妻Bさんの法定相続分に対応する相続税額は、5,900万円×30%-700万円=1,070万円となります。 |
③ | 二男Cさんの法定相続分は、長男Bさんと同じく1/2です。 よって、二男Cさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億1,800万円×1/2=5,900万円となります。 二男Cさんの法定相続分に対応する相続税額は、5,900万円×30%-700万円=1,070万円となります。 ゆえに、相続税の総額は、1,070万円+1,070万円=2,140万円となります。 |
【問14】
Aさんの相続に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言書の作成をお勧めします。自筆証書遺言については、その方式が緩和されたことにより、遺言書の全文をパソコンで作成することが可能になりました」 |
② | 「公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成しますが、長男Bさん、その妻子および二男Cさんは証人になることができません」 |
③ | 「二男Cさんが、Aさんの生前に家庭裁判所に遺留分の放棄をする旨を申し立てることは可能です」 |
正解:×、○、○
① | 自筆証書遺言を作成する際に、財産目録は自書以外の方法で作成することができますが、それ以外の部分については、全て自書により作成しなくてはいけません。 |
② | 正しい記述です。公正証書遺言を作成するためには、証人2人以上の立会いが必要です。但し、推定相続人とその配偶者など、一定の人は証人になる事ができません。 |
③ | 正しい記述です。遺留分は、被相続人の生前にも死亡後にも放棄することができますが、生前に放棄する場合には、家庭裁判所に申し立てる必要があります。 |
【問15】
Aさんの相続等に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「遺言により自宅および賃貸アパートを長男Bさんに相続させた場合、二男Cさんの遺留分を侵害する可能性があります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額を2億円とした場合、二男Cさんの遺留分の額は( ① )万円となります」 |
Ⅱ | 「長男Bさんが自宅の敷地および建物を相続により取得し、自宅の敷地(相続税評価額:6,000万円)のすべてについて『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、相続税の課税価格に算入すべき価額を( ② )万円とすることができます」 |
Ⅲ | 「長男Bさんが賃貸アパートの敷地および建物を相続により取得し、賃貸アパートの敷地(相続税評価額:5,000万円)のすべてについて『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、相続税の課税価格に算入すべき価額を( ③ )万円とすることができます」 |
Ⅳ | 「自宅の敷地と賃貸アパートの敷地について『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けようとする場合、適用対象面積は調整されます。Aさんの相続においては、( ④ )の敷地を優先して『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けたほうが相続税評価額の軽減幅は大きくなります」 |
<語句群>
イ.1,000 ロ.1,200 ハ.2,000
ニ.2,500 ホ.3,000 ヘ.4,000
ト.4,800
チ.5,000
リ.自宅 ヌ.賃貸アパート
イ.1,000 ロ.1,200 ハ.2,000
ニ.2,500 ホ.3,000 ヘ.4,000
ト.4,800
チ.5,000
リ.自宅 ヌ.賃貸アパート
正解:チ、ロ、ホ、リ
① | 具体的遺留分の金額は、抽象的遺留分の金額×法定相続分です。 抽象的遺留分の金額は、相続人が直系尊属のみである場合を除いて、遺留分算定の基礎となる財産の価額の2分の1相当額ですから。2億円×1/2=1億円です。 よって、二男Cさんの法定相続分は1/2ですから、二男Cさんの具体的遺留分の金額は、1億円×1/2=5,000万円となります。 |
② | 自宅の敷地は特定居住用宅地等として330㎡まで80%評価減されますから、敷地の全てが評価減の対象となり、相続税の課税価格に算入すべき金額は、6,000万円×(1-80%)=1,200万円となります。 |
③ |
賃貸アパートの敷地は貸付事業用宅地等として200㎡まで50%評価減されますから、相続税の課税価格に算入すべき金額は、5,000万円×200/250×(1-50%)+5,000万円×50/250=3,000万円となります。 <別解> |
④ | 貸付事業用宅地等の方が特定居住用宅地等よりも㎡単価が高い場合には、有利判定を行う必要がありますが、本問のケースでは、特定居住用宅地等の方が貸付事業用宅地等よりも㎡単価が高いので、有利判定をすることなく、自宅の敷地を優先した方が有利であると分かります。 |
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