お金の寺子屋

FP2級実技(個人)解説-2021年1月・問1~9

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(44歳)は、妻Bさん(41歳)、長女Cさん(8歳)および二女Dさん(6歳)との4人暮らしである。Aさんは、住宅ローンの返済や教育資金の準備など、今後の資金計画を考えるうえで、自分が死亡した場合に公的年金制度から遺族給付がどのくらい支給されるのかを知りたいと思っている。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん]
1976年11月13日生まれ(44歳)
会社員
公的年金加入歴:下図のとおり(2020年12月までの期間)
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中

[妻Bさん]
1979年10月15日生まれ(41歳)
パート従業員
公的年金加入歴: 20歳から22歳の大学生であった期間(30月)は国民年金の第1号被保険者として保険料を納付し、22歳からAさんと結婚するまでの8年間(96月)は厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。

[長女Cさん]
2012年4月16日生まれ(8歳)

[二女Dさん]
2014年12月22日生まれ(6歳)

妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
Mさんは、Aさんに対して、Aさんが現時点(2021年1月24日)で死亡した場合に妻Bさんが受給することができる公的年金制度からの遺族給付について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

「Aさんが現時点において死亡した場合、妻Bさんに対して遺族基礎年金および遺族厚生年金が支給されます。遺族基礎年金を受けられる遺族の範囲は、死亡した被保険者によって生計を維持されていた『子のある( ① )』または『子』です。『子』とは、18歳到達年度の末日までの間にあるか、20歳未満で障害等級1級または2級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻していない子を指します。妻Bさんが受給することができる遺族基礎年金の額は( ② )円(2020年度価額)となり、長女Cさんの18歳到達年度の末日終了後は( ③ )円(2020年度価額)となります」
「遺族厚生年金の額は、Aさんの厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の( ④ )相当額になります。ただし、その計算の基礎となる被保険者期間の月数が□□□月に満たないときは、□□□月とみなして年金額が計算されます」
<語句群>
イ.781,700 ロ.1,006,600 ハ.1,081,600 
ニ.1,231,500 ホ.妻 ヘ.配偶者 
ト.2分の1 チ.3分の2 リ.4分の3
正解:ヘ、ニ、ロ、リ
遺族基礎年金の受給権者は死亡した日保険者によって生計を維持されていた子のある配偶者又は子です。
遺族基礎年金の額(2020年度価額)は、781,700円+子の加算額で、子の加算額は、第1子と第2子までは、1人当たり224,900円です。
よって、遺族基礎年金の額(2020年度価額)=781,700円+224,900円+224,900円=1,231,500円となります。
長女Cさんの18歳到達年度の末日終了後の遺族基礎年金の額(2020年度価額)は、781,700円+224,900円=1,006,600円となります。
遺族厚生年金の額は、死亡した人の厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の4分の3相当額です。
【問2】
Aさんが現時点(2021年1月24日)で死亡した場合、《設例》の<Aさんとその家族に関する資料>および下記の<資料>に基づき、妻Bさんが受給することができる遺族厚生年金の年金額を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。なお、年金額は2020年度価額に基づいて計算し、年金額の端数処理は円未満を四捨五入すること。

<資料>
正解:485,122
厚生年金保険の被保険者が死亡した場合に支払われる遺族厚生年金の額は、亡くなった人の被保険者期間が300ヵ月に満たない場合300ヵ月として計算します。
具体的には、報酬比例部分の年金額を亡くなった人の被保険者期間で割って、1ヵ月あたりの報酬比例部分を求めた後、これに300ヵ月をかけます。
本問では、亡くなった人の被保険者期間は48月+213月=261月ですから、300月/261月をかけることになります。
したがって、(28万円×7.125/1,000×48+40万円×5.481/1,000×213)×3/4×300/(48+213)=485,121.55…≒485,122円となります。
【問3】
Mさんは、Aさんに対して、妻Bさんに係る遺族給付の各種取扱い等について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。

「Aさんの死亡後、妻Bさんが厚生年金保険の被保険者として働くことは可能性として考えられると思います。遺族厚生年金の年金額は、妻Bさんの総報酬月額相当額と基本月額との合計額が47万円(2020年度価額)を超えなければ、全額支給されますので、支給停止となるケースを過度に心配されることはないと思います」
「二女Dさんの18歳到達年度の末日が終了し、妻Bさんの有する遺族基礎年金の受給権が消滅したときは、妻Bさんが65歳に達するまでの間、妻Bさんに支給される遺族厚生年金の額に中高齢寡婦加算が加算されます」
「妻Bさんが受け取る遺族基礎年金および遺族厚生年金の年金額は、所得税法上、非課税所得となります」
正解:×、○、○
遺族厚生年金に在職老齢年金のような仕組みはありません。
正しい記述です。遺族厚生年金を受給者している妻が遺族基礎年金も受給していた場合、遺族基礎年金が支給停止された時には中高齢寡婦加算が支給されます。
正しい記述です。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(40歳)は、預貯金を500万円程度保有しているが、上場株式を購入した経験がない。Aさんは、証券会社でNISA口座を開設し、同じ業種のX社株式またはY社株式(2銘柄とも東京証券取引所市場第一部上場)を同口座で購入したいと考えている。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<財務データ> (単位:百万円)

<株価データ>
[X社]
株価1,250円
発行済株式数5億株
1株当たり年間配当金40円

[Y社]
株価1,354円
発行済株式数2億株
1株当たり年間配当金50円

《設例》および各問において、以下の名称を使用している。
少額投資非課税制度に係る非課税口座を「NISA口座」という。
非課税上場株式等管理契約に係る少額投資非課税制度を「一般NISA」といい、当該非課税管理勘定を「一般NISA勘定」という。
非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度を「つみたてNISA」といい、当該累積投資勘定を「つみたてNISA勘定」という。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
《設例》のデータに基づいて算出される次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。

X社およびY社のROE
X社およびY社のPER
正解:10.18、8.33、11.16、13.54
ROE=当期純利益÷自己資本より、
X社のROE=56,000÷550,000=0.10181…≒10.18%です。
Y社のROE=20,000÷240,000=0.08333…≒8.33%です。
PER=株価÷1株あたり当期純利益より、
X社のPER=1,250円÷(560億円÷5億)=11.160…≒11.16倍です。
Y社のPER=1,354円÷(200億円÷2億)=13.54倍です。
【問5】
Mさんは、Aさんに対して、《設例》のデータに基づいて、株式の投資指標等について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「 PBRは、株価(時価総額)が企業の純資産(自己資本)と比べて割高であるか、割安であるかを判断するための指標です。PBRが1倍を下回るX社株式およびY社株式は割安と判断できます」
「一般に、配当利回りが高いほど、株主に対する利益還元の度合いが高いと考えることができます。Y社株式の配当利回りは50%であり、X社株式の配当利回りを上回ります」
「一般に、自己資本比率が高いほど、経営の安全性が高いと考えられています。自己資本比率はY社よりもX社のほうが高くなっています」
正解:×、×、○
X社のPBR=1,250円÷(5,500億円÷5億)=1.363…倍、Y社のPBR=1,354円÷(2,400億円÷2億)=1.128…倍ですから、どちらも1倍を割っていません。
配当利回り=1株当たり年間配当金÷株価より、Y社の配当利回り=50円÷1,354円=0.03692…≒3.69%です。
ちなみに、問題文は配当性向の説明です。
正しい記述です。
自己資本比率=自己資本÷総資産より、
X社の自己資本比率=550,000÷920,000=0.59782…≒59.78%です。
Y社の自己資本比率=240,000÷720,000=0.33333…≒33.33%です。
【問6】
Mさんは、Aさんに対して、NISAについて説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「 NISA口座で上場株式を購入する場合は、一般NISAを利用してください。つみたてNISA勘定に受け入れることができる対象商品は、所定の要件を満たす公募株式投資信託やETFですので、上場株式をつみたてNISA勘定に受け入れることはできません」
「一般NISAとつみたてNISAは、同一年中において、併用して新規投資等に利用することができませんので、どちらか一方を選択して、利用することになります」
「2020年度税制改正により、2021年中に一般NISA勘定に新規で受け入れることができる非課税投資枠は、年間120万円から102万円に見直されています」
正解:○、○、×
正しい記述です。
正しい記述です。
2024年以降の新NISAの説明です。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務する会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんとの4人家族である。Aさんは、2020年10月に定年を迎え、X社から退職金の支給を受けた。Aさんは、X社の継続雇用制度を利用して、引き続き、X社に勤務している。なお、金額の前の「▲」は赤字であることを表している。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(60歳)]
会社員

[妻Bさん(53歳)]
専業主婦。2020年中に、パートタイマーとして給与収入100万円を受け取っている。

[長女Cさん(25歳)]
大学院生。2020年中の収入はない。

[母Dさん(84歳)]
2020年中に、老齢基礎年金60万円を受け取っている。

<Aさんの2020年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
750万円

[不動産所得の金額]
▲150万円

損失の金額150万円のうち、土地等の取得に係る負債の利子10万円を含む。

[一時払変額個人年金保険(確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2009年5月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:800万円
一時払保険料:500万円

[X社から支給を受けた退職金の額]
2,200万円

定年を迎えるまでの勤続年数は34年9カ月である。
「退職所得の受給に関する申告書」を提出している。
妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2020年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
AさんがX社から受け取った退職金に係る退職所得の金額を計算した下記の計算式の空欄①~③に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、Aさんは、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

<退職所得控除額>
800万円+( ① )万円×(□□□年-20年)=( ② )万円
<退職所得の金額>
(2,200万円-( ② )万円)×□□□=( ③ )万円
正解:70、1,850、175
勤続年数が20年を超える場合の退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20年)です。
退職所得控除額の計算上、勤続年数の一年未満の端数は切り上げますから、800万円+70万円×(35-20)=1,850万円となります。
退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(2,200万円-1,850万円)×1/2=175万円となります。
【問8】
Aさんの2020年分の所得金額について、次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は万円単位とすること。

総所得金額に算入される一時所得の金額
総所得金額
<資料>給与所得控除額
給与収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%-10万円 
(最低55万円)
180万円超
360万円以下
収入金額×30%+8万円
360万円超
660万円以下
収入金額×20%+44万円
660万円超
850万円以下
収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円
正解:125、550
一時所得の金額=800万円-500万円-50万円=250万円です。
一時所得の金額はその2分の1が総所得金額に算入されますから、総所得金額に算入される一時所得の金額は、250万円×1/2=125万円となります。
給与所得=給与収入-給与所得控除額=750万円-(750万円×10%+110万円)=565万円で、給与所得の額はその全額が総所得金額に算入されます。
また、不動産所得の計算上生じたマイナスは損益通算の対象となりますが、これに含まれる土地取得のための借入金の利子は損益通算することができませんので、損益通算の対象となる損失は、150万円-10万円=140万円です。
したがって、総所得金額=565万円+125万円-140万円=550万円となります。
【問9】
Aさんの2020年分の所得税の課税に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「妻Bさんの合計所得金額は48万円以下であるため、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます」
「Aさんが適用を受けることができる長女Cさんに係る扶養控除の控除額は、38万円です」
「Aさんが適用を受けることができる母Dさんに係る扶養控除の控除額は、48万円です」
正解:○、○、×
正しい記述です。(問8より、)Aさんの合計所得金額は1,000万円以下ですから、配偶者控除を受けるための要件を満たしています。また、妻Bさんの給与所得=100万円-55万円=45万円で、これが合計所得金額となり、合計所得金額が48万円以下の配偶者は、配偶者控除の適用対象となります。
正しい記述です。23歳以上70歳未満の控除対象扶養親族に係る扶養控除の金額は38万円です。
70歳以上の控除対象扶養親族は 、同居していれば、同居老親等という区分で、58万円の扶養控除の対象となります。

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