FP2級実技(個人)解説-2019年9月・問10~15
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
Aさん(58歳)は、上場企業に勤務する会社員である。2019年2月、X市内の実家(甲土地および建物)で1人暮らしをしていた母Bさんが死亡した。法定相続人は、1人息子のAさんのみであり、相続手続は完了している。
Aさんは、別の都市に自宅を保有し、居住しているため、空き家となっている実家については売却することを検討しているが、先日、大手ドラッグストアのY社から「商業性の高い甲土地での新規店舗の出店を考えている。Aさんには、建設協力金方式での有効活用を検討してもらえないか」との提案があった。Aさんは、実家の売却と有効活用のどちらを選択したらよいか、迷っている。
Aさん(58歳)は、上場企業に勤務する会社員である。2019年2月、X市内の実家(甲土地および建物)で1人暮らしをしていた母Bさんが死亡した。法定相続人は、1人息子のAさんのみであり、相続手続は完了している。
Aさんは、別の都市に自宅を保有し、居住しているため、空き家となっている実家については売却することを検討しているが、先日、大手ドラッグストアのY社から「商業性の高い甲土地での新規店舗の出店を考えている。Aさんには、建設協力金方式での有効活用を検討してもらえないか」との提案があった。Aさんは、実家の売却と有効活用のどちらを選択したらよいか、迷っている。
<Aさんの実家(甲土地および建物)の概要>
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(以下、「本特例」という)に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「本特例の適用を受けるための要件の1つとして、1981(昭和56)年5月31日以前に建築された戸建て住宅であることが挙げられます。本特例の適用を受けるためには、家屋を取り壊して更地で譲渡するか、家屋を一定の耐震基準でリフォームしてからその家屋のみ、またはその家屋とともに敷地を譲渡しなければなりません」 |
② | 「本特例の適用を受けるための要件の1つとして、敷地の相続税評価額が1億円以下であることが挙げられます。甲土地の相続税評価額は8,000万円になりますので、Aさんは本特例の適用を受けることができます」 |
③ | 「本特例と相続税の取得費加算の特例は、重複して適用を受けることができますので、適用を受けるための要件を確認し、適用漏れがないようにしてください」 |
正解:○、×、×
① | 正しい記述です。 |
② | 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用を受ける為には、敷地の評価額の要件はありませんが、売却代金が1億円以下である必要があります。 |
③ | 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」と「相続税の取得費加算の特例」は、どちらか一方しか適用を受けることができません。 |
参考:三井不動産リアルティHP 国税庁HP:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm |
【問11】
建設協力金方式の一般的な特徴等に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句を、下記の<語句群>のイ~チのなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「 建設協力金方式は、( ① )が建設資金を預託金としてAさんに貸し付け、Aさんがこの資金を利用して店舗を建設し、その建物をY社に賃貸する手法です。建設資金は、賃料の一部で返済していくため、実質的には、Aさんの資金負担はありませんが、契約期間中の撤退のリスクやそれに伴う建設協力金残債務の取扱いなど、契約内容を事前に精査しておくことが必要です」 |
Ⅱ | 「建設協力金方式により建設された建物は、相続税額の計算上、貸家として評価され、土地は( ② )として評価されます。また、所定の要件を満たすことで、土地は( ③ )事業用宅地等として、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けることもできます」 |
<語句群>
イ.Y社 ロ.金融機関 ハ.自用地
ニ.貸宅地 ホ.貸家建付地
ヘ.特定 ト.特定同族会社 チ.貸付
イ.Y社 ロ.金融機関 ハ.自用地
ニ.貸宅地 ホ.貸家建付地
ヘ.特定 ト.特定同族会社 チ.貸付
正解:イ、ホ、チ
① | 建設協力金方式は、土地所有者が、テナントから建設資金の一部または全部を借りて建物を建築する手法です。 |
② | 土地・貸家とも、土地所有者の名義ですから、相続税額の計算上、土地は、貸家建付地として評価されます。 |
③ | 貸家が建っている土地は、一定要件を満たせば、貸付事業用宅地等として、小規模宅地等の特例の適用を受けることができます。 |
【問12】
甲土地上に耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求めなさい(計算過程の記載は不要)。
① | 建蔽率の上限となる建築面積 |
② | 容積率の上限となる延べ面積 |
正解:320㎡、1,152㎡
① | 指定建蔽率が80%である防火地域に耐火建築物を建築すると、建蔽率の制限は無くなります。 よって、建築面積の最高限度は、320㎡×100=320㎡となります。 |
② | 前面道路の幅員が12m未満であるため、容積率の上限は、前面道路の幅員によって定まる容積率の上限、もしくは、指定容積率(400%)のどちらか小さい方になります。 前面道路の幅員によって定まる容積率の上限は、6×6/10=360%です。 よって、延べ床面積の上限は、320㎡×360%=1,152㎡となります。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
Aさん(70歳)は、飲食店X屋を営む個人事業主(青色申告者)である。X屋は、Aさんが父親(既に他界)から承継したもので、現在では年商1億円を超える有名店となっている。 Aさんは、体力の衰えを感じており、長男Cさんに事業を承継することを決意した。
Aさんは、所有財産のうち、妻Bさんには自宅および自宅に隣接する賃貸アパートを相続させ、長男CさんにはX屋の店舗およびその敷地を承継したいと考えている。長女Dさんは、会社員の夫、2人の子と他県の賃貸マンションに住んでおり、Aさんに対して、住宅取得資金の援助を期待しているようである。
なお、長男Cさんと長女Dさんは、日頃から折り合いが悪く、Aさんは自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと不安を感じている。
Aさん(70歳)は、飲食店X屋を営む個人事業主(青色申告者)である。X屋は、Aさんが父親(既に他界)から承継したもので、現在では年商1億円を超える有名店となっている。 Aさんは、体力の衰えを感じており、長男Cさんに事業を承継することを決意した。
Aさんは、所有財産のうち、妻Bさんには自宅および自宅に隣接する賃貸アパートを相続させ、長男CさんにはX屋の店舗およびその敷地を承継したいと考えている。長女Dさんは、会社員の夫、2人の子と他県の賃貸マンションに住んでおり、Aさんに対して、住宅取得資金の援助を期待しているようである。
なお、長男Cさんと長女Dさんは、日頃から折り合いが悪く、Aさんは自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと不安を感じている。
<Aさんの推定相続人>
[妻Bさん(68歳)]
X屋勤務。Aさんと自宅で同居している。
[長男Cさん(43歳)]
X屋勤務。妻と子2人がおり、Aさん夫妻と同居している。
[長女Dさん(40歳)]
専業主婦。夫と子2人で賃貸マンションに住んでいる。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
[現預金等]
7,000万円
[自宅]
敷地(300㎡):6,000万円(注)
建物:3,000万円
[賃貸アパート]
敷地(240㎡): 5,000万円(注)
建物:2,000万円
[X屋店舗]
敷地(450㎡): 8,000万円(注)
建物:5,000万円
合計 3億6,000万円
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
X屋の事業承継に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のイ~ルのなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「2019年度税制改正において、個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予および免除の特例(以下、「本特例」という)が創設されました。本特例の適用を受けた場合、後継者が先代事業者から贈与または相続等により取得した特定事業用資産に係る贈与税・相続税の( ① )の納税が猶予されます。後継者は、2019年4月1日から2024年3月31日までの5年間に個人事業承継計画を( ② )に提出し、確認を受ける必要があります。また、特定事業用資産とは、先代事業者の事業の用に供されていた宅地等(( ③ )㎡まで)、建物(床面積800㎡まで)、その他一定の減価償却資産で青色申告書の貸借対照表に計上されていたものをさします」 |
Ⅱ | 「長男CさんがAさんの相続によりX屋店舗敷地を取得した場合、所定の要件を満たすことで、特定事業用宅地等として、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けることができます。特定事業用宅地等に該当するX屋店舗敷地は、( ③ )㎡までの部分について、通常の価額から80%相当額を減額した金額を、相続税の課税価格に算入すべき価額とすることができます」 |
Ⅲ | 「本特例の適用を受けて相続等により取得した事業用の宅地は、特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の対象( ④ )」 |
<語句群>
イ.240 ロ.330 ハ.400
ニ.75%相当額 ホ.90%相当額 ヘ.全額
ト.経済産業大臣 チ.都道府県知事
リ.所轄税務署長
ヌ.となります
ル.とはなりません
イ.240 ロ.330 ハ.400
ニ.75%相当額 ホ.90%相当額 ヘ.全額
ト.経済産業大臣 チ.都道府県知事
リ.所轄税務署長
ヌ.となります
ル.とはなりません
正解:へ、チ、ハ、ル
① | 「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税 猶予および免除の特例」の適用を受けると、後継者が先代事業者から贈与または相続等により取得した特定事業用資産に係る贈与税・相続税の全額の納税が猶予されます。 |
② | 「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税 猶予および免除の特例」の適用を受ける為に必要な個人事業承継計画は、都道府県知事に提出します。 |
③ | 特定事業用資産とは、先代事業者の事業の用に供されていた宅地等(400㎡まで)、建物(床面積800㎡まで)、その他一定の減価償却資産で青色申告書の貸借対照表に計上されていたものを指します。 |
④ | 「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税 猶予および免除の特例」と「小規模宅地等の特例」は、どちらか一方しか適用を受ける事が出来ません。 |
【問14】
Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言の作成をお勧めします。自筆証書遺言は、遺言者が、その遺言の全文、日付および氏名を自書し、これに押印して作成するものでしたが、自筆証書遺言の方式が緩和され、自筆証書遺言に添付する財産目録をパソコン等で作成することが可能となりました」 |
② | 「遺言により、相続財産の大半を妻Bさんおよび長男Cさんが相続により取得した場合、長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分算定の基礎となる財産を4億円とした場合、長女Dさんの遺留分の金額は5,000万円となります」 |
③ | 「自宅の敷地と賃貸アパートの敷地について、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けようとする場合、適用対象面積の調整はせず、それぞれの宅地の適用対象の限度面積まで適用を受けることができます」 |
正解:○、○、×
① | 適切な記述です。 |
② | 適切な記述です。 相続人の組み合わせが、配偶者相続人と第一順位の血族相続人の組み合わせである(第二順位の血族相続人のみでない)ため、抽象的遺留分の額は、遺留分算定の基礎となる財産の2分の1、つまり、4億円×1/2=2億円です。 遺留分権利者の具体的遺留分は、抽象的遺留分の額に各人の法定相続分を乗じた額ですから、法定相続分が4分の1である長女Dさんの具体的遺留分は、2億円×1/4=5,000万円となります。 |
③ | 小規模宅地等の特例において、特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等の両方について適用を受ける場合、適用対象面積が調整されます。 ちなみに、特定居住用宅地等と特定事業用宅地等の両方について適用を受ける場合、適用対象面積は調整されません。 |
【問15】
現時点(2019年9月8日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は3億円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
(a)相続税の課税価格の合計額 | 3億円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長男Cさん | ( ② )万円 |
長女Dさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
正解:4,800、1,190、5,720
① | 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×3=4,800万円です。 |
② | 課税遺産総額=3億円-4,800万円=2億5,200万円となります。 また、相続人は、配偶者相続人と第1順位の血族相続人ですから、長男Cさんの法定相続分は、1/4になります。 よって、長男Cさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億5,200万円×1/4=6,300万円となります。 したがって、長男Cさんの法定相続分対応する相続税額は、6,300万円×30%-700万円=1,190万円となります。 |
③ | 相続人は、配偶者相続人と第1順位の血族相続人ですから、妻Bさんの法定相続分は、1/2になります。 よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億5,200万円×1/2=1億2,600万円となります。 したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、1億2,600万円×40%-1,700万円=3,340万円となります。 また、長女Dさんの法定相続分対応する相続税額は、長男Cさんの法定相続分対応する相続税額と等しいので、相続税の総額は、3,340万円+1,190万円+1,190万円=5,720万円となります。 |
スポンサーリンク
スポンサーリンク
<戻る | ホーム |