FP2級実技(個人)解説-2019年9月・問1~9
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさんは、高校を卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。長女Cさんの教育資金にもめどがつき、Aさんは老後の生活資金の準備として、どれくらいの年金額を受給することができるのか、公的年金制度について知りたいと思うようになった。
X社では、65歳になるまで勤務することができる継続雇用制度があるが、Aさんは60歳で仕事を辞めたいと思っている。妻Bさんは、Aさんが60歳で仕事を辞めると生活が苦しくなるのではないかと心配している。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(52歳)]
1966年11月8日生まれ
会社員
公的年金加入歴は下図のとおり(60歳定年時までの見込みを含む) 。
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。
[妻Bさん(50歳)]
1968年10月16日生まれ
パート従業員
公的年金加入歴:18歳からAさんと結婚するまでの9年間(108月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
[長女Cさん(22歳)]
1997年6月25日生まれ
大学4年生
公的年金加入歴:20歳から国民年金に第1号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
※ | 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
イ.12.0 ロ.18.0 ハ.25.2
ニ.1961(昭和36) ホ.1966(昭和41)
ヘ.行わなければなりません
ト.する必要はありません
① | 昭和36年4月2日以降に生まれた男性と昭和41年4月2日以降に生まれた男性には、特別支給の老齢厚生年金は支払われません。 |
② | 減額率は1ヵ月あたり0.5%ですから、0.5%/月×36月=18%です。 |
③ | 老齢基礎年金と老齢厚生年金は、同時に繰上げなくてはいけません(繰下げは別々可)。 |
① | 「Aさんが60歳でX社を定年退職し、厚生年金保険の被保険者でなくなった場合、妻Bさんは、国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者への種別変更の届出を行い、60歳になるまでの間、国民年金の保険料を納付することになります」 |
② | 「Aさんは、所定の手続を行うことにより、退職日の翌日から最長で2年間、全国健康保険協会管掌健康保険に任意継続被保険者として加入することができます。任意継続被保険者の保険料は、在職時と同様、事業主と被保険者の折半となります」 |
③ | 「Aさんが60歳でX社を定年退職し、雇用保険から基本手当を受給する場合、基本手当の所定給付日数は300日となります。基本手当の受給期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間ですが、定年退職の場合は最長1年間の受給期間延長を申し出ることができます」 |
① | 正しい記述です。 |
② | 健康保険の任意加入被保険者の保険料は、全額被保険者負担です。 |
③ | 雇用保険の基本手当の受給時、65歳未満の定年退職は自己都合退職と同じで、被保険者期間が20年以上ある場合、最高150日支給されます。 |
<計算の手順>
1.老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入)
( ① )円
2.老齢厚生年金の年金額
(1)報酬比例部分の額
( ② )円(円未満四捨五入)
(2)経過的加算額
( ③ )円(円未満四捨五入)
(3)基本年金額(②+③)
□□□円
(4)加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること)
(5)老齢厚生年金の年金額
( ④ )円
① | 20歳から60歳まで、年金の未納期間が無いため、満額が支給されます。 780,100円×480月/480月 |
② | 280,000円×7.125/1,000×216+400,000円×5.481/1,000×283=1,051,369.2円 より、1,051,369円です。 |
③ | 経過的加算額の計算上、被保険者期間の月数は480月が最大となります。 1,626円×480-780,100円×480/480=380円です。 |
④ | 加給年金の支給要件(本人の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上、配偶者の厚生年金保険の被保険者期間が20年未満、配偶者が65歳未満等)を満たしているため、加給年金390,100円が支給されます。 したがって、老齢厚生年金の年金額=1,051,369円+380円+390,100円=1,441,849円です。 |
会社員のAさん(42歳)は、同業種のX社株式またはY社株式(2銘柄とも東京証券取引所市場第一部上場)のいずれかを2014年にZ証券会社で開設したNISA口座で購入したいと考えている。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
なお、Aさんが開設1年目にNISA口座で購入した上場株式の非課税期間は2018年12月末に終了したことから、当該株式は2019年NISA口座に設定された非課税管理勘定に移管(ロールオーバー)している。2014年中にNISA口座で購入した上場株式の株価は、ロールオーバー時に下落していた。Aさんは、Z証券会社において、特定口座を開設している。
<株価データ>
[X社]
株価:730円
発行済株式総数:4億株
1株当たり配当金:20円
[Y社]
株価:1,000円
発行済株式総数:1億5,000万株
1株当たり配当金:30円
※ | <設例>および各問において、以下の名称を使用している。 |
・ | 少額投資非課税制度に係る非課税口座を「NISA口座」という。 |
・ | 非課税上場株式等管理契約に係る少額投資非課税制度を「一般NISA」という。 |
・ | 非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度を「つみたてNISA」という。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
Ⅰ | 「ROEが高い水準で推移していれば、一般に当該企業の収益性は高いと判断できます。X社のROEは( ① )%であり、Y社との比較では、( ② )のほうが収益性は高いと判断できます」 |
Ⅱ | 「X社のPERは( ③ )倍です。一般にPERが高いほど、株価は割高といえます」 |
Ⅲ | 「株主還元率として一般に用いられる指標に配当性向がありますが、X社の配当性向は( ④ )%であり、Y社がX社を上回ります。また、株式投資の利回りの指標となる配当利回りについても、Y社がX社を上回ります」 |
① | X社のROE(%)=当期純利益÷自己資本×100=28,000百万円÷210,000百万円×100=13.333…%です。 |
② | Y社のROE(%)=12,000百万円÷110,000百万円×100=10.909…%です。 よって、ROEはX社の方が高いです。 |
③ | PER=株価÷1株当たり純利益=730円÷(28,000百万円÷4億)=10.428…倍です。 |
④ | 配当性向(%)=配当金総額÷当期純利益=8,000百万円÷28,000百万円×100=28.571…%です。 |
Ⅰ | 「Aさんは、開設1年目にNISA口座で購入した上場株式を2019年1月にNISA口座に設定された非課税管理勘定にロールオーバーし、引き続き、当該株式をNISA口座で保有しています。一般NISAの2014年分の非課税投資枠は( ① )万円が上限でした。仮に、2014年中にNISA口座で購入した上場株式の非課税期間終了時の時価が70万円であったとした場合、ロールオーバー後に2019年分の非課税管理勘定に新規投資で受け入れることができる金額の上限は( ② )万円となります」 |
Ⅱ | 「Aさんは、ロールオーバーせずに、当該上場株式を特定口座に移管することもできました。仮に、2014年分の非課税管理勘定で購入した上場株式を特定口座に移管していた場合、当該特定口座における取得価額は( ③ )の時価となっていました」 |
イ.30 ロ.40 ハ.50
ニ.80 ホ.100 へ.120
ト.当初購入時 チ.非課税期間終了時
① | 一般NISAの非課税投資枠は、2015年(2014年に制度が開始してから最初の2年間)まで100万円でした。 |
② | ロールオーバー後に非課税管理勘定に新規投資で受け入れることができる金額の上限は、120万円-ロールオーバーした株式の時価です。 よって、120万円-70万円=50万円です。 |
③ | 非課税期間の終了後、ロールオーバーせずに非課税管理勘定で購入した上場株式を特定口座に移管した場合、当該特定口座における取得価額は、非課税期間終了時の時価となります。 |
① | 「<財務データ>から自己資本比率は、X社よりもY社のほうが高いと判断できます。一般に、自己資本比率が高いことは、総資本に対する負債の比率が低いことでもあり、財務基盤の強さを示しているといえます」 |
② | 「長期の積立・分散投資を前提とした資産運用の方法として、つみたてNISAの利用が考えられます。つみたてNISAを利用してX社株式を購入する場合、非課税投資枠は年間40万円となります」 |
③ | 「NISA口座内の上場株式を課税口座に払い出せば、その後、当該株式の譲渡損益は損益通算の対象になります。課税口座に払い出すことが有利であるか否かは、その後の価格変動や他の取引等の状況により異なります」 |
① | 自己資本比率(%)=自己資本÷総資産×100です。 X社の自己資本比率(%)=210,000百万円÷710,000百万円×100=29.577…% Y社の自己資本比率(%)=110,000百万円÷480,000百万円×100=22.916…% よって、自己資本比率は、Y社よりもX社の方が高いです。 |
② | つみたてNISAで個別株式に投資することはできません。 |
③ | 正しい記述です。 |
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務する会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさんとの4人家族である。Aさんは、2019年8月に定年を迎え、X社から退職金の支給を受けた。Aさんは、X社の継続雇用制度を利用して、引き続き、X社に勤務している。なお、金額の前の「▲」は赤字であることを表している。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(60歳)]
会社員
[妻Bさん(54歳)]
専業主婦。2019年中の収入はない。
[長女Cさん(27歳)]
アルバイト。2019年中に給与収入180万円を得ている。
[二女Dさん(25歳)]
大学院生。2019年中の収入はない。
<Aさんの2019年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
700万円
[不動産所得の金額]
▲100万円
損失の金額100万円のうち、土地等の取得に係る負債の利子10万円を含む。
[平準払養老保険の満期保険金]
契約年月:1989年8月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
満期保険金受取人: Aさん
満期保険金額:500万円
正味払込済保険料:400万円
[X社から支給を受けた退職金の額] | 2,500万円 |
・ | 定年を迎えるまでの勤続年数は36年5カ月である。 |
・ | 「退職所得の受給に関する申告書」を提出している。 |
※ | 妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2019年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
800万円+( ① )万円×(□□□年-20年)=( ② )万円
<退職所得の金額>
(2,500万円-( ② )万円)×□□□=( ③ )万円
① | 勤続年数が20年以上である場合、退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20)となります。 |
② | 退職所得控除額の計算上、勤続年数の端数は切り上げるため、勤続年数が36年5カ月であれば、37年と考えます。 よって、退職所得控除額=800万円+70万円×(37-20)=1,990万円となります。 |
③ | 退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(2,500万円-1,990万円)×1/2=255万円となります。 |
① | 総所得金額に算入される一時所得の金額 |
② | 総所得金額 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40% (最低65万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
660万円超 1,000万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 220万円 |
① | 一時所得=総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)=500万円-400万円-50万円=50万円です。 総所得金額に算入される一時所得の額は、所得の2分の1ですから、50万円×1/2=25万円が所得金額に算入されます。 |
② | 給与所得=700万円-(700万円×10%+120万円)=510万円です。 給与所得の額は、全額総所得金額に算入されます。 不動産所得の赤字は給与所得と損益通算されますが、土地等の取得に係る負債の利子10万円は損益通算されませんから、90万円が損益通算の対象となります。 したがって、総所得金額=510万円-90万円+25万円=445万円です。 <参考> |
① | 「Aさんは、退職所得の受給に関する申告書をX社に提出しているため、退職金の支給の際に退職金の額の20.42%の所得税および復興特別所得税が源泉徴収されていますが、確定申告をすることにより、当該税額を精算することができます」 |
② | 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、38万円です」 |
③ | 「Aさんが適用を受けることができる扶養控除の控除額は、63万円です」 |
① | 退職所得の受給に関する申告書を出した場合、適切な税金が差し引かれた額が振り込まれるため、確定申告をする必要はありません。 ちなみに、退職所得に対しては、超過累進課税が適用されます。 |
② |
正しい記述です。 <参考> |
③ |
長女Cさんの合計所得金額=180万円-180万円×40%=108万円>38万円より、扶養控除の対象とはなりません。 <参考> |
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