FP2級実技(個人)解説-2019年5月・問10~15
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>Aさん(60歳)は、10年前に父親の相続により取得した甲土地を所有している。現在は、地元の建設会社に駐車場および資材置場として貸しているが、収益率は低い。Aさんが、甲土地の有効活用について知人の不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地は最寄駅から近く、周辺は繁華性が高いため、自分の取引先だとドラッグストアのX社が興味を示している。X社は建設協力金方式を望んでいるが、契約形態は事業用借地権でもよいと言っている」とアドバイスを受けた。
<甲土地の概要>
・ | 幅員2mの市道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道路である。2m市道の道路中心線は、当該道路の中心部分にある。また、2m市道の甲土地の反対側は宅地であり、がけ地や川等ではない。 |
・ | 甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地ではない。 |
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
Aさんが、甲土地に耐火建築物を建築する場合、建蔽率の上限となる建築面積と容積率の上限となる延べ面積を求める次の<計算の手順>の空欄①~④に入る最も適切な数値を解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
<計算の手順>
1.建蔽率の上限となる建築面積
(480㎡-( ① )㎡)×( ② )%=□□□㎡
2.容積率の上限となる延べ面積 | |
・ | 指定容積率:400% |
・ | 前面道路幅員による容積率の制限:( ③ )% |
したがって、上限となる容積率は、□□□% | |
(480㎡-( ① )㎡)×□□□%=( ④ )㎡ |
正解:20、100、360、1,656
① | 前面道路の幅員が4m未満である場合、基本的に、当該道路の中心線から水平距離で2m後退したところが、道路と敷地の境界線となります。 よって、建蔽率や容積率の計算上、当該敷地は20m×(24m-1m)の敷地と考えます。つまり、20㎡は敷地面積に含まれません。 |
② | 建蔽率が80%である防火地域に耐火建築物を建てる場合、建蔽率の上限は100%になります。 |
③ | 前面道路幅員による容積率の制限=前面道路幅員×法定乗数です。 敷地が複数の道路に面している場合、幅員が大きい道路を前面道路としますから、前面道路幅員による容積率の制限=6×6/10=360%となります。 |
④ | 容積率の上限は、指定容積率と前面道路幅員による容積率の制限のうち、どちらか厳しい方(小さい方)が適用されます。 したがって、容積率の上限となる延べ面積=460㎡×360%=1,656㎡となります。 |
【問11】
建設協力金方式に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「建設協力金方式とは、入居予定のテナント(事業会社)が建設資金をAさんに貸し付け、Aさんがこの資金を利用してテナント(事業会社)の希望する貸店舗を建設し、その建物を借主であるテナント(事業会社)に賃貸する手法です」 |
② | 「建設協力金方式により、Aさんが建物を借主であるテナント(事業会社)に賃貸した後にAさんの相続が開始した場合、相続税の課税価格の計算上、甲土地は貸家建付地として評価されます」 |
③ | 「建設協力金方式により建設した建物については、契約期間満了後に借主であるテナント(事業会社)が撤去し、土地を貸主に更地で返還する手法が一般的です」 |
正解:○、○、×
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。建設協力金方式による有効活用を行った場合、敷地と建物の名義はともに地主になりますから、当該敷地は、相続税の計算において、貸家建付地として評価されます。 |
3. | 定期借地権方式の説明です。建設協力金方式は、建物をテナントに貸す借家契約ですから、通常、契約期間の満了時に建物を取り壊すという事はありません。 |
【問12】
借地借家法の事業用定期借地権等に係る借地契約に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の<語句群>のイ~トのなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「事業用定期借地権等は、事業用に限定して土地を定期で貸し出す方式です。事業用定期借地権等において、居住の用に供する賃貸マンションの事業運営を目的とする設定契約を締結すること( ① ) |
Ⅱ | 「事業用定期借地権等は、存続期間が10年以上( ② )年未満の事業用借地権と( ② )年以上50年未満の事業用定期借地権に区別されます。事業用定期借地権等の設定契約は、公正証書( ③ )」 |
<語句群>
イ.20 ロ.25 ハ.30
ニ.ができます ホ.はできません
ヘ.により作成しなければなりません
ト.などの書面により作成します
イ.20 ロ.25 ハ.30
ニ.ができます ホ.はできません
ヘ.により作成しなければなりません
ト.などの書面により作成します
正解:ホ、ハ、ヘ
① | 事業用定期借地権等は、居住用の建物を建てる事を目的として設定する事はできません。 |
② | 事業用定期借地権等は、建物譲渡特約の付加の有無により、存続期間が10年以上30年未満の事業用借地権と、30年以上50年未満の事業用定期借地権に区別されます。 |
③ | 事業用定期借地権等は、必ず公正証書によって設定しなくてはいけません。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
Aさん(72歳)は、妻Bさん(70歳)および長男Cさん(42歳)家族とX市内の自宅で同居している。長男Cさんは、X市内にある私立高校の教諭をしている。他方、長女Dさん(40歳)は隣県にある企業に勤務しており、当地で持家(マンション)を 購入し、会社員の夫と暮らしている。
Aさんは、将来的に自宅および自宅に隣接する賃貸アパート等の財産を同居する長男Cさんに承継してもらいたいと考えているが、自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと心配している。なお、賃貸アパートは、土地の有効活用と相続対策を考えて、2017年2月に自己資金で建築し、同年3月から全室賃貸中である。
Aさん(72歳)は、妻Bさん(70歳)および長男Cさん(42歳)家族とX市内の自宅で同居している。長男Cさんは、X市内にある私立高校の教諭をしている。他方、長女Dさん(40歳)は隣県にある企業に勤務しており、当地で持家(マンション)を 購入し、会社員の夫と暮らしている。
Aさんは、将来的に自宅および自宅に隣接する賃貸アパート等の財産を同居する長男Cさんに承継してもらいたいと考えているが、自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと心配している。なお、賃貸アパートは、土地の有効活用と相続対策を考えて、2017年2月に自己資金で建築し、同年3月から全室賃貸中である。
<Aさんの家族構成(推定相続人)>
[妻Bさん(70歳)]
Aさんと自宅で同居している。
[長男Cさん(42歳)]
高校教諭。妻と子2人がおり、Aさん夫妻と同居している。
[長女Dさん(40歳)]
会社員。夫と持家(マンション)に住んでいる。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
[現預金]
4,500万円
[賃貸アパート(現在、全室賃貸中)]
①敷地(300㎡):5,500万円(注)
②建物(6室):5,000万円
[自宅]
①敷地(330㎡):7,500万円(注)
②建物:1,500万円
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
現時点(2019年5月26日)において、Aさんに相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は2億円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
(a)相続税の課税価格の合計額 | 2億円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長男Cさん | □□□万円 |
長女Dさん | ( ② )万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
正解:4,800、560、2,700
① | 遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数です。 法定相続人の数は3人ですから、遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。 |
② | 課税遺産総額=2億円-4,800万円=1億5,200万円です。 長女Dさんの法定相続分は4分の1ですから、長女Dさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億5,200万円×1/4=3,800万円です。 よって、長女Dさんの法定相続分に応じる相続税額は、3,800万円×20%-200万円=560万円となります。 |
③ | 妻Bさんの法定相続分は2分の1ですから、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億5,200万円×1/2=7,600万円です。 よって、妻Bさんの法定相続分に応じる相続税額は、7,600万円×30%-700万円=1,580万円となります。 長男Cさんの法定相続分に応じる相続税額=長女Dさんの法定相続分に応じる相続税額=560万円より、相続税の総額は、1,580万円+560万円+560万円=2,700万円となります。 |
【問14】
Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「遺言により、相続財産の大半を妻Bさんおよび長男Cさんが相続した場合、長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分算定の基礎となる財産を2億4,000万円とした場合、長女Dさんの遺留分の金額は6,000万円となります」 |
② | 「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言の作成をお勧めします。公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成しますが、推定相続人が証人になることはできません」 |
③ | 「仮に、Aさんの相続が賃貸アパートの貸付開始から3年以内に発生した場合、当該敷地は小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の対象から除外されます」 |
正解:×、○、×
1. | 推定相続人は、妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんの3人(配偶者相続人と第一順位の血族相続人が2人)です。 抽象的遺留分は、相続人が直系尊属のみである場合を除き、遺留分の算定基礎財産の2分の1で、具体的相続分は、抽象的遺留分×法定相続分ですから、長女Dさんの遺留分は、2億4,000万円×1/2×1/4=3,000万円です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 平成30年(2018年)4月1日以降の相続または遺贈により取得した宅地等のうち、その相続の開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供されたものは、一定の条件を満たす場合を除き、3年以内貸付宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受ける事が出来ません。 但し、平成30年3月31日までに貸付事業の用に供された宅地等は、3年以内貸付宅地等に該当しないので、貸付事業用宅地等として小規模宅地等の特例の適用を受ける事が出来ます。 |
【問15】
Aさんの相続等に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句を、下記の<語句群>のイ~ルのなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「妻Bさんが自宅の敷地および建物を相続により取得し、自宅の敷地(相続税評価額7,500万円)のすべてについて、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、相続税の課税価格に算入すべき価額を( ① )とすることができます。また、『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受けた場合、妻Bさんが相続により取得した財産の金額が、配偶者の法定相続分相当額と( ② )とのいずれか多い金額までであれば、妻Bさんが納付すべき相続税額は算出されません」 |
Ⅱ | 「相続人間で争いが起こり、相続税の申告期限までに遺産分割協議が調わなかった場合、相続税の申告時において、未分割の財産に対して『配偶者に対する相続税額の軽減』や『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができません。その場合、相続税の申告の際に『申告期限後( ③ )以内の分割見込書』を提出し、申告期限後( ③ )以内に遺産分割協議が成立すれば、これらの特例の適用を受けることが可能となり、分割後( ④ )以内に更正の請求を行うことができます」 |
<語句群>
イ.1,500万円 ロ.3,750万円
ハ.6,000万円
ニ.1億2,000万円
ホ.1億6,000万円 ヘ.1億8,000万円
ト.4カ月 チ.10カ月 リ.1年
ヌ.3年 ル.5年
イ.1,500万円 ロ.3,750万円
ハ.6,000万円
ニ.1億2,000万円
ホ.1億6,000万円 ヘ.1億8,000万円
ト.4カ月 チ.10カ月 リ.1年
ヌ.3年 ル.5年
正解:イ、ホ、ヌ、ト
① | 特定居住用宅地等は、330㎡まで、相続税評価額が80%減額(2割で評価)されます。 よって、相続税の課税価格に算入すべき価額=7,500万円×20%=1,500万円となります。 |
② | 配偶者に対する相続税額の軽減は、配偶者が相続により取得した財産のうち、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか多い金額までに係る相続税額を0とするものです。 |
③ | 相続税の申告期限までに遺産分割協議が調わなかった場合、相続税の申告の際に「申告期限後3以内の分割見込書」を提出し、申告期限後3以内に遺産分割協議が成立すれば、一定の手続きを行う事により、各種特例の適用を受ける事ができます。 |
④ | 「申告期限後3以内の分割見込書」を提出後、分割協議が整い、相続税の還付を受けたい場合、分割後4ヵ月以内に手続きを行わなくてはいけません。 |
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