FP2級実技(個人)解説-2019年1月・問10~15
Aさん(60歳)は、8年前に父親の相続により取得した自宅(建物とその敷地である甲土地)および賃貸アパート(建物とその敷地である乙土地)を所有している。
自宅は、建物の老朽化が激しく、管理にも手間がかかるため、Aさんは駅前のマンションを購入して移り住むことを考えている。また、賃貸アパートは建築から30年近くが経過し、キッチン等の水回りが古いタイプということもあり、入居率が思うように上がっていない。この際、自宅同様、賃貸アパートも処分して、マンションの購入資金に充当しようと考えている。
先日、Aさんが知り合いの不動産会社の社長に相談したところ、「Aさん宅の周辺は商業性があり、都心へのアクセスもよい。甲土地と乙土地を一体とした有効活用の方法を検討してみてはどうか」とアドバイスを受けた。
甲土地および乙土地の概要は、以下のとおりである。
※ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
※ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
<計算の手順>
1.建蔽率の上限となる建築面積
(1)甲土地(第一種住居地域)の部分
400㎡×□□□%=(ⓐ)㎡
(2)乙土地(近隣商業地域)の部分
600㎡×( ① )%=(ⓑ)㎡
(3)建蔽率の上限となる建築面積
ⓐ+ⓑ=( ② )㎡
2.容積率の上限となる延べ面積
(1)甲土地(第一種住居地域)の部分
400㎡×□□□%=(ⓒ)㎡
(2)乙土地(近隣商業地域)の部分
600㎡×□□□%=(ⓓ)㎡
(3)容積率の上限となる延べ面積
ⓒ+ⓓ=( ③ )㎡
甲土地と乙土地は一体利用しますら、一つの土地が防火地域と準防火地域にまたがると考えます。ですから、(甲土地を含めて)敷地全体に防火地域の規定が適用される事に注意してください。
建蔽率の計算上、甲土地は、防火地域に耐火建築物を建てるので、+10%、乙土地は、建蔽率80%の防火地域に耐火建築物を建てるので、100%となります。
よって、建蔽率の上限となる建築面積は、
(1)甲土地(第一種住居地域)の部分
400㎡×70%=280㎡
(2)乙土地(近隣商業地域)の部分
600㎡×100%=600㎡
(3)建蔽率の上限となる建築面積
280㎡+600㎡=880㎡
となります。
甲土地と乙土地は一体利用しますら、容積率の計算上、甲土地と乙土地の前面道路は、どちらも16m(>12m)となります。
よって、法定乗数は使いませんので、容積率の上限となる延べ面積は、
(1)甲土地(第一種住居地域)の部分
400㎡×300%=1,200㎡
(2)乙土地(近隣商業地域)の部分
600㎡×400%=2,400㎡
(3)容積率の上限となる延べ面積
1,200㎡+2,400㎡=3,600㎡
となります。
Ⅰ | 「 Aさんが居住用財産を譲渡した場合に、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の適用を受けるためには、家屋に自己が居住しなくなった日から( ① )年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること等の要件を満たす必要があります」 |
Ⅱ | 「Aさんが居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けた場合、課税長期譲渡所得金額が( ② )円以下の部分について軽減税率が適用されます。本特例の適用を受けるためには、譲渡した年の1月1日において譲渡した居住用財産の所有期間が( ③ )年を超えていなければなりません。なお、本特例と居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除は併用して適用を受けることができます」 |
Ⅲ | 「Aさんが自宅を譲渡し、マンションを購入した場合、譲渡した年の1月1日において譲渡した居住用財産の所有期間が( ③ )年を超えていること、譲渡価額が( ④ )円以下であること等の要件を満たせば、特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例の適用を受けることができます」 |
イ.1 ロ.2 ハ.3 ニ.5
ホ.10 ヘ.20
ト.2,000万
チ.4,000万 リ.6,000万
ヌ.8,000万 ル.1億
① | 3,000万円の特別控除の適用を受けるためには、家屋に自己が居住しなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までに譲渡する事等の要件を満たす必要があります。 |
② | 軽減税率の特例は、3,000万円特別控除後の譲渡所得のうち、6,000万円以下の部分に係る税率が、所得税10%、住民税4%になるというものです。 |
③ | 軽減税率の特例の適用を受けるためには、居住用財産を譲渡した年の1月1日において、その所有期間が10年を超えていなくてはいけません。 |
④ | 特定の居住用財産の買換え特例の適用を受けるためには、譲渡価格が1億円以下である事等の要件があります。 |
① | 「等価交換方式とは、Aさんが所有する土地の上に、事業者が建設資金を負担してマンション等を建設し、完成した建物の住戸等をAさんと事業者がそれぞれの出資割合に応じて取得する手法です。Aさんとしては、自己資金を使わず、収益物件を取得できるという点にメリットがあります」 |
② | 「建設協力金方式とは、入居するテナント(事業会社)から、Aさんが建設資金を借り受けて、テナントの要望に沿った店舗等を建設し、その建物をテナントに賃貸する手法です。借主であるテナントのノウハウを利用して計画を実行できる点はメリットですが、借主が撤退するリスクなどを考えておく必要があります」 |
③ | 「事業用定期借地権方式とは、借主が土地を契約で一定期間賃借し、借主が建物を建設する手法です。賃貸借期間満了後、土地はAさんに返還されますが、Aさんが残存建物を買い取らなければならないという点にデメリットがあります」 |
① | 正しい記述です。等価交換方式においては、建物の建設資金はデベロッパーが拠出します。 |
② | 正しい記述です。建設協力金方式は、建物の建設資金の一部または全部をテナントから借りる代わりに、テナントが意図する設計で建設するため、テナントの退去後に転用が難しい場合があります。 |
③ | 事業用定期借地権方式では、賃貸借期間満了後、原則として、借地人は更地にして土地を返還しなくてはいけません。 |
Aさんは、妻Bさんとの2人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、大手自動車メーカーに就職し、関連会社に転籍してからの期間を含め、43年間勤務した。5年前に退職してからは、年金収入に加えて、上場株式の配当収入もあり、生活は安定している。
昨年、長女CさんがDさんと離婚した。長女Cさんは、仕事の都合上、別の都市にある賃貸マンションで子2人と暮らしている。Aさんは、長女Cさんや孫たちの将来の生活や学費等について面倒を見てやりたいと思っており、現金の贈与を検討している。
<Aさんが所有する財産(相続税評価額)>
預貯金:8,000万円
上場株式:7,000万円
自宅の敷地(400㎡):6,000万円
自宅の建物:1,500万円
※ | 自宅の敷地は、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用 前の金額である。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
Ⅰ | 「Aさんが生前贈与を実行するにあたっては、暦年課税制度による贈与、相続時精算課税制度による贈与、教育資金や結婚・子育て資金の非課税制度を活用した贈与などが考えられます。仮に、長女Cさんが暦年課税(各種非課税制度の適用はない)により、平成31年中にAさんから現金700万円の贈与を受けた場合、贈与税額は( ① )万円となります」 |
Ⅱ | 「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用を受けた場合、受贈者1人につき( ② )万円までは贈与税が非課税となります。非課税拠出額の限度額は、受贈者ごとに( ② )万円となりますが、学習塾などの学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については500万円が限度となります」 |
Ⅲ | 「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用後、受贈者であるAさんのお孫さんが( ③ )歳に達すると教育資金管理契約は終了します。そのとき、当該贈与財産から教育資金に充当した金額を控除した残額がある場合、当該残額はその年分の贈与税の課税価格に算入されるため、贈与税の申告義務が発生した場合は、その申告をする必要があります」 |
<贈与税の速算表(抜粋)> | ||
[特例贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 400万円以下 |
15% | 10万円 |
400万円超 600万円以下 |
20% | 30万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
30% | 900万円 |
[一般贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 |
15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 |
20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 |
30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
40% | 125万円 |
① | 直系尊属からの、その年の1月1日において20歳以上の者に対する対して贈与された財産は、贈与税の計算上、特例贈与財産として扱われます。 したがって、贈与税額=(700-110)万円×20%-30万円=88万円となります。 |
② | 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度を利用した場合の非課税枠は、1,500万円(学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については500万円)までです。 |
③ | 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用を受けた場合、受贈者が30歳に達すると、基本的に、教育資金管理契約は終了します。 |
① | 「Aさんが長女Cさんに現金を贈与する場合、本制度の活用が考えられます。本制度を選択した場合、累計で3,500万円までの贈与について贈与税は課されませんが、その額を超える部分については、一律20%の税率により贈与税が課されます」 |
② | 「本制度における受贈者は、贈与をする年の1月1日において20歳以上でなければなりません。したがって、現時点において、Aさんが孫Eさんおよび孫Fさんに現金を贈与する場合、本制度を活用することはできません」 |
③ | 「Aさんからの贈与について、長女Cさんが本制度を選択した場合、その後に行われるAさんからの贈与について、暦年課税を選択することはできません」 |
① | 相続時精算課税制度の特別控除額は、2,500万円です。 |
② | 正しい記述です。相続時精算課税制度の適用を受けるためには、受贈者が贈与をする年の1月1日において20歳以上である必要があります。 |
③ | 正しい記述です。一旦、相続時精算課税制度を選択すると、その人からの贈与について、暦年課税を選択する事はできなくなります。 |
Ⅰ | 「Aさんの相続が現時点(平成31年1月27日)で開始した場合、Aさんの相続における遺産に係る基礎控除額は( ① )万円となります。課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を上回りますが、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例や配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けることで相続税額を軽減することができます」 |
Ⅱ | 「妻Bさんが自宅の敷地および建物を相続した場合、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けることができます。その場合、自宅の敷地(相続税評価額6,000万円)について、課税価格に算入すべき価額を( ② )万円とすることができます」 |
Ⅲ | 「生命保険に加入していないのであれば、契約者(=保険料負担者)および被保険者をAさん、死亡保険金受取人を相続人とする終身保険に加入されることをお勧めします。終身保険に加入後、Aさんの相続が開始した場合、相続人が受け取る死亡保険金は( ③ )万円を限度として、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができます」 |
イ.990 ロ.1,000 ハ.1,200
ニ.1,500 ホ.2,000 ヘ.2,040
ト.3,000
チ.3,960 リ.4,200
ヌ.4,800 ル.5,400
① | 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数です。 本問において、法定相続人の数は2人なので、基礎控除額は、4,200万円になります。 |
② | 自宅の敷地は、330㎡まで、相続税評価額を8割減する事ができます。 よって、自宅の敷地について、課税価格に算入する金額は、 6,000万円×330/400×(1-0.8)+6,000万円×70/400=2,040万円となります。 |
③ | 死亡保険金の非課税金枠=500万円×法定相続人の数です。 本問において、法定相続人の数は2人なので、非課税枠は、1,000万円になります。 |
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